次郎と節乃が桃色のハートエプロンを挟んで将来を誓い合い、二鳥とカカが二人きりの寝室でどんなに長い年月が流れようと、も決してセピア色にはならない思い出を築いたあの日から数日後の昼下がり。
アカシアが一龍、二鳥、次郎、そして三虎を連れて、人間界へと実技修行に赴き、家を完全に留守にしている間のことだった。
普段は男たちの賑やかな怒号と笑い声が響くアカシアの家では現在、フローゼ、カカ、そして節乃の女性3人組が本当に優雅で穏やかなお茶会を開いていた。いわゆる『女子会』(フローゼとカカの果てしない年齢から算出するに、正確には女子会とは呼べないのだが……そこは絶対にツッコんではいけない禁忌の領域)というやつだ。
居間のテーブルの上には、虹の実の蜂蜜をたっぷりと練り込んだ甘いクッキーや、フローゼ様特製の瑞々しいショートケーキ、そして気品ある香りを漂わせる温かい紅茶が綺麗に用意され、3人はそれぞれ本当に楽しそうにガールズトークに花を咲かせていた。
「ふふふ、カカさん、節乃ちゃん。こうして男たちがいない間に、女の子だけでゆっくりとお茶を頂くのなんて、わたしも本当に久しぶりで心が弾んでしまうわねぇ」
フローゼが優雅に紅茶のカップを傾ける。
「はい、フローゼ様! 男たちの過剰な熱量から完全に解放されたこの空間は、私にとっても、これ以上ないほど最高にリフレッシュできる極上の環境ですよ!」
カカも上質な黒のセットアップの裾を嬉しそうに揺らしながら左手でクッキーを上品に口へと運んでいた。 心なしか、食欲が増しているように見える。
――しかし。そんな和やかな女子会の中で、カカの口から飛び出す話題は、その大半が二鳥に対する猛烈な惚気で埋め尽くされていた。
「聴いてください、フローゼ様、節乃さん! 先日の夜の我が家でのお披露目会にて二鳥さんはですね、私が仕立て屋で選んだあのタキシードのネクタイを不器用にも結ぶことができず、顔をこれ以上ないほど真っ赤に染め上げて斜め後ろへと逸らしていたのですよ? 何でも作れて何でも解体できる無敵の大工なのに、そんなマヌケで可愛い隙を見せて私を悶えさせるなど、本当に、本当にずるい旦那様だとは思いませんか……っ!?」
詳細すぎる解説の皮を被った、熱烈すぎる旦那への愛の惚気をノンストップの長話で捲し立てるカカ。
お揃いの指輪をこれみよがしにきらきらと光らせながら、その顔を早くも林檎のように大赤面させてソワソワと身を乗り出している。
「 カカおねえちゃん、相変わらず二鳥義兄さんのことが大好きで、ご馳走様なんだよねぇ!」
節乃はピンクの髪を揺らしながら、次郎から贈られたあの桃色のハートのエプロンを大切に身に纏ったまま、カカのブレない重すぎる愛の惚気っぷりをすっかりお気に入りのおもちゃのように楽しそうに見つめ、キャッキャと無邪気な笑い声を響かせていた。
「さあ節乃ちゃん! 今度はあなたの番ですよ! 次郎さんからあのハートのエプロンで『毎日味噌汁を作ってくれ』とド直球プロポーズをブチかまされた際、あなたの心臓がどれほどの異常値を記録したのか、詳細な説明をしてくださいね!」
「いやだぁ、カカおねえちゃん! あたしの話は恥ずかしいんだよぉねぇ!でも…」
フローゼの優しい笑い声に包まれながら、どこまでも賑やかに、どこまでも甘く進んでいく最高の女子会お茶会。彼女たちの温かい絆を、人間界の心地よい昼下がりの太陽の光がどこまでも優しく包み込んでいく。
ふと、節乃は自分の小さな左手の薬指に輝く、あの『絶対に枯れない花の指輪』を愛おしそうにじっと見つめながら、ぽつり、ぽつりと語り始めた。
「この指輪ねぇ、次郎が愛を大爆発させて、あたしのために一生懸命ノッキングして作ってきてくれたんだよ。……あいつ、普段はあんなにガサツで半裸のくせにさ、あたしの前だと時々、信じられないくらい初心で優しくなるんだよぉねぇ……」
幼き日の出会いから、今日という一生のコンビ、将来の約束を果たすまでの甘酸っぱい思い出を、節乃は本当に幸せそうに目を細めて振り返っていた。
その言葉を聴きながら、カカもまた、自身の薬指で眩い光を放っている二鳥とお揃いの指輪をそっと右手で愛おしそうにひと撫でした。
「ふふ、指輪、ですか……。ええ、私にとっても、二鳥さんからその無敵の誓いの指輪を嵌められたあの夜の記憶は、細胞の隅々まで永久保存されている最高の宝物ですよ……」
最初は、節乃ちゃんの初々しい話に同調して、どこまでもほんわかと懐かしそうに目を細めていたカカさん。
――しかし。彼女の優秀すぎる記憶力が、その指輪にまつわる『ある特定の過去の記憶』を正確に弾き出したその瞬間、居間の空気が一変した。
(……おや? そういえばこの指輪を嵌められた夜というのは、そもそも二鳥さんが、私たちの最も重要な『同棲1周年の記念日』を完全に忘れて帰ってきたからこそ、私が磨き続けた技術をフル活用して猛烈な【お仕置き】を執行した夜ではありませんでしたか……?)
思い出した。あの日、記念日を忘れて大焦りした二鳥を、カカが強気にベッドへ固定して「朝まで一歩も帰しません!」と貪り尽くした、あのおしどり夫婦の甘いお仕置きの夜の味を。
カカはその顔を恥ずかしさではなく、妖しく興奮を帯びたピンク色へとジワリと染め上げ、隣に座る節乃へとグイッと顔を近づけた。
「……節乃さん。大変重要な…恋愛における教訓を授けておきます。将来、もし次郎さんがあなたとの大切な『記念日』をただの一秒でも忘れるような致命的な『罪』を犯したならば……その時は、遠慮も慈悲も一切論外です。全力で、徹底的に『お仕置き』を執行しなさい……ッ!!」
「えぇっ!? に、次郎にお仕置きだなんて、あたしそんなの、ちょっと恥ずかしくて出来ないよぉねぇ……っ」
純真な節乃ちゃんが顔を真っ赤にして遠慮気味に手を振るが、一度お仕置きの魅力に火がついたカカの強気なプッシュは、ただの一ミリも止まらなかった。
カカは胸元をフンスと張り、至近距離でグイグイと迫る。
「何を仰るのですか、節乃さん! 恥ずかしがる必要などこれっぽっちもありません! 事実を言うならば、私が二鳥さんにあの過酷な『お仕置き』を執行すると、翌朝の二鳥さんは高確率でエネルギーを根こそぎ吸い尽くされてアタリメのように干からびていますが……その時の二鳥さんは、いつだって、これ以上ないほどだらしなくて『幸せそうな満面の笑顔』を浮かべて私の胸の中に収まってくれるのですよ!?」
「へ、へぇ……っ?(干からびるのに幸せなの……?)」
「いいですか? あの二鳥さんです。もし本当に私のそのお仕置きという名の愛が嫌であるならば、最初から私を完璧に拒絶して引き離すに決まっています! それをただの一度も拒絶せず、ありのまま無抵抗に受け入れているということは……中身が!魂が!二鳥さんが、私の重すぎる愛を全身で『快感として受け入れている』という明確な証明なのです!」
カカの専門知識風の皮を被った、限界突破の変態的な惚気長話が居間に炸裂する。
「次郎さんも同じです! 次郎さんが節乃さんを世界で一番愛しているという漢のプライドが本物であるならば……大好きなあなたの愛が詰まった『お仕置き』くらい、翌朝どれだけ脳みそがオーバーヒートしようとも、難なく笑顔で受け入れるはずです! さあ、遠慮なく次郎さんをベッドに押し倒すのです、節乃さん!!」
「はわわ……っ! カ、カカおねえちゃん、お顔がすっごく肉食の顔になってるよぉおおっ!!」
カカさんのあまりの圧倒的な『お仕置きのすすめ(惚気)』の覇気の凄まじさに、節乃ちゃんは顔を真っ赤に染め上げながら、桃色のハートのエプロンをぎゅっと抱きしめて完全に圧倒されていた。
その横では、一部始終を優雅に眺めていたフローゼ様が、「ふふふ……。あたしも昔、アカシアが記念日を忘れた時に、ちょっとだけ可愛いお仕置きをしたことがあったわねぇ。男の子はみんな、大好きな女の子にお仕置きされるのが、本当は一番大好きなのよ?」と至高の、だけど一番恐ろしい微笑みを浮かべてクスクスと笑い声を響かせていた。
「さあ節乃さん! 次回の修行の合間に、水筒のお味噌汁と一緒に、この『お仕置きの恐ろしさと中毒性』も次郎さんの脳裏にバチッと記憶しておくのですよ!!」
「う、うん……っ! あたし、次郎が忘れたら、ちょっとだけ頑張ってみるんだよぉねぇ……っ!」
カカさんの熱烈な洗脳により、未来の最強のコンビの夜の力学までもが、おしどり夫婦のバかっぷるの構造によって、どこまでも甘く、どこまでも恐ろしくアップデートされていった。
しかし、楽しいお仕置きの講義という名の惚気話で大盛り上がりしていた女子会の空気が、フローゼ様の穏やかな一言によって一転して引き締まった。
「ふふふ……。さて、節乃ちゃん。お仕置きのお話で随分と温まったところで、そろそろ本題に入りましょうか?」
「あ……。はいっ、フローゼ様」
そう、今日のこの女子会は、ただカカが二鳥の惚気をノンストップで捲し立てるために開かれたわけでは断じてなかった。
事前に節乃から「人妻であるフローゼ様とカカおねえちゃんに、どうしても真剣に相談に乗ってほしいことがあるんだよぉ」と打ち明けられ、二人が「ええ、喜んで!」と進んで引き受けたからこそセッティングされた、特別な時間だったのだ。
節乃は先ほどまでの限界突破の大赤面から少しだけ赤みが引いた顔を上げ、一人の誇り高き料理人としての真剣な顔になって、二人の偉大な先輩へと真っ直ぐに告げた。
「あのね、カカおねえちゃん、フローゼ様。あたしと次郎は、昨日やっと将来の約束をしたばかりで、今はまだ婚約段階だし、一緒に住んでもいないんです。……だけど、今後……その、本当に結婚して、次郎と一緒に暮らすようになったら……」
節乃は桃色のハートのエプロンをきゅっと両手で握り締め、花の指輪をきらめかせながら、覚悟を決めた声音で言葉を紡いだ。
「あたし、料理のことなら誰にも負けないくらい死ぬ気で修行してきたけど……。大切な人とひとつの『家族』を築くためには、料理以外にも絶対にたくさん必要な技術、お仕事があると思うんです。次郎を退屈させないための居心地のいいお部屋作りとか、次郎が怪我して帰ってきた時の看病とか、夫婦としての完璧なやりくりとか……。えっと、つまり……。お二人に、あたしの『花嫁修行』をつけてもらえませんか……っ!?」
大好きな次郎のために、料理人としてだけでなく、一人の完璧な『妻』として隣に立ちたいという、節乃の健気で強固な【愛の執念】。
「まぁ……っ! 花嫁修行、ですか……!」
その素晴らしい申し出を聴いた瞬間、カカは瞳をパァッと一瞬で眩しい光でいっぱいに輝かせ、フンスと強気に胸を張った。
「素晴らしい……! 実に素晴らしい、未来の家庭環境構築への熱量です、節乃さん! 料理だけでなく、生活空間全体のインフラを完璧に整備しようとするその心意気、味仙人のこの私が、これ以上ないほど喜んで進んで引き受けさせていただきますからね……ッ!!」
カカは嬉しさのあまり、早くも明日からの「新妻としての完璧な生活科学座学」のカリキュラムを脳内で猛烈に組み立ててそわそわと目を輝かせ始めた。
フローゼもまた、愛する夫のために全てを捧げて家を守ってきた一人の偉大な妻として、これ以上ないほど深い、慈愛に満ちた最高の神後光の笑みを浮かべて深く頷いていた。
「よし、それでは節乃さん! 新妻としての生活カリキュラム第一章、夫婦関係を完璧に調和、円満に保つための『愛の伝達効率』についての特別講義を開設いたします!」
カカは自身の両手を胸の前でパン!と叩いた。
「ズバリ言います。夫婦関係を永続的に、これ以上ないほど強固な土台として維持するのに最も必要不可欠な事……それは【愛を絶対に隠さない】こと、これに尽きます!」
「愛を、隠さない……?」
「そうなのです! 人間界の不器用な夫婦は、長く一緒にいると恥ずかしさや慣れから、相手への情愛の分子を内側へと隠匿しがちですが、それは関係性を劣化させる重大な原因となります。愛の言葉やスキンシップの出力は、毎日、毎秒、限界突破のフルパワーで相手へとダイレクトにぶつけ続けなければならないのですよ!」
カカさんの強気で、だけどこれ以上ないほど熱烈な熱弁を正面から浴び、節乃ちゃんはピンクの髪を少し揺らしながら、桃色のハートのエプロンをきゅっと握り締めて、頬をほんのりと赤らめた。
「次郎への愛、なら……あたし、恥ずかしいけど、誰にも隠したりなんてしてないんだよぉねぇ……」
「まぁ……っ!」
上目遣いで、恥ずかしがりながらも次郎への一途な【愛】を素直に口にする初々しい節乃ちゃん。 カカさんはそのあまりにも可憐で純真な姿を見つめているうちに、ふと、胸の奥がじわーっと温かい記憶で満たされていくのを感じていた。
(……おや。この健気で愛らしい節乃ちゃんの心……。なんだか、私が遠い昔、世界一大好きな二鳥さんと出会ったばかりの頃の、あの不器用でウブだった自分自身の姿と、完璧にシンクロしているような気がいたしますね……)
自分を世界一の宝物のように抱きしめてくれた二鳥の、あの温かい大きな手。あの頃の、目が合うだけで心臓の脈拍数が異常を起こしていた自分たちの初々しい日々が、カカの脳裏を優しく明滅する。
(ふふふ。この眩しいほどに初々しくて、甘酸っぱい節乃さんの姿を特等席で観測できるのも、きっと次郎さんと本格的に同棲を始めて、夜の営みに慣れていくまでの、今この空白の期間だけなのですね……。実に貴重で愛おしいです)
カカは胸の中でそんな愛の姉バカ全開の独白を紡ぎ、お揃いの指輪をそっと愛おしそうに見つめてから、コホンと一つ咳払いをして、さらに蕩けるような笑みを浮かべて講義へと戻った。
「その意気ですよ、節乃さん! では、私と二鳥さんの具体的な毎日の一連の行動を実例として提示いたしましょう。――例えば、我が家でお皿洗いを行う時です」
「お皿洗い? 料理の後のお片付けだねぇ」
「そうです。私たち夫婦は、夕食後にどちらか一方が単独で作業するのではなく、必ず二人並んで、一緒に食後の皿洗いを行います。その際、私は二鳥さんのあの逞しく、頑強な腕のすぐ隣へと、自分の肩をピトッと完璧に隙間なく密着させて、体温を感じながら作業を遂行するのです!」
「わぁ……っ! いつもお皿洗いの時からそんなにベタベタくっついてるんだよぉねぇ……っ!」
節乃ちゃんが顔を真っ赤にして驚く。だがカカのフルスロットルな惚気は止まらない。
「それだけではありません! お皿洗いが終了したその刹那、私は二鳥さんの瞳を真っ直ぐに見つめ、笑顔で『今日も愛してますよ、二鳥さん』と、愛の言葉を必ず、ただの一度も欠かさずにダイレクトに伝達するのです。すると二鳥さんは顔を破顔させ、すぐに私の腰をガシッと抱き寄せて『俺の方こそ、世界一カカさんを愛してるよ』と、最高の返事で返してくれますからね……ッ!?」
「はわわわわ……っ! カカおねえちゃん、それお皿洗いの後からも絶対に寝室の『検証実験』へと雪崩れ込んでるんだよぉおおおっ!!」
カカの詳細すぎる、だけどこれ以上ないほど甘くて重すぎる愛妻言動の暴露に節乃は顔を耳の裏まで真っ赤に染め上げ、自分を抱きしめるようにして大慌てで叫んでいた。
その横では、一部始終を優雅に眺めていたフローゼが、「ふふふ、本当にご馳走様ねぇ。節乃ちゃん、言葉でちゃんと『ありがとう』を伝えることと、おねだりするように寄り添うのは、男の子の細胞を最高に活性化させる素晴らしい新妻の技術なのよ?」と、笑みを浮かべて、楽しそうにクスクスと笑い声を響かせていた。
「さあ節乃さん! この『肩ピト密着システム』と『食後の愛してます宣言』も、セットで次郎さんの脳裏に刻み込むのですよ!」
「う、うん……っ! あたし、将来次郎の隣でお皿洗いする時、ちょっとだけ肩をピトッてくっつけてみるんだよぉねぇ……っ!」
再びカカさんの熱烈な新妻洗脳により、未来の最強のコンビの生活習慣までもが、おしどり夫婦のバかっぷるによって更にアップデートされてしまった。
カカの熱烈な「肩ピト密着システム」の熱弁がひと段落したところで、その言葉を優しく引き継ぐように、今度はフローゼが穏やかに言葉を紡ぎ始めた。
「ふふふ。カカさんの言う通り、愛を隠さず言葉やカタチに表すのは、とっても素敵なことよ。……だけどね、節乃ちゃん。長く寄り添っていると、敢えて言葉にして語らなくても、日々の静かな生活の中で、心と心がしっかりと繋がっていたりするものなのよ?」
「敢えて、語らなくても……?」
節乃が小首を傾げてじっと見つめる。フローゼは温かい紅茶を一口啜り、微笑みを浮かべて自らの愛する夫・アカシアとの『夫婦の静かな絆』を語り聞かせた。
「例えば、お掃除。わたしはいつも、アカシアや一龍たちが修行から帰ってくる前に、お家の中をぴっかぴかに掃除しておくの。だけどね、わたしは帰ってきたアカシアに『お掃除したわよ』なんて自分からはひと言も言わないわ」
「言わないんだねぇ。どうして?」
「必要ないからよ。アカシアはね、一龍や次郎たちが他を見ていて、誰も見ていないほんの一瞬の隙を見計らってね……わたしの隣にそっと歩み寄って、頭を撫でながら『フローゼ、いつもありがとう』って、ちゃんと優しく伝えてくれるのよ。――頑張った姿を言葉でアピールしなくても、お互いを想っていれば、ちゃーんと伝わるものなの。……カカさんも、思い当たるフシがあるんじゃないかしら? 二鳥はとっても良い子だから、そういうカカさんの隠れた頑張りにも、すぐに気づいてくれると思うのだけれど……」
フローゼから優しくそう問いかけられた瞬間、カカは「――っ、は、はい……っ! 激しく賛同いたします、フローゼ様……っ!!」と、大赤面をしながらも猛烈に首を縦に振った。
(……そうなのです。私が二鳥さんのために、内緒で彼のコートの綻びを夜な夜な見つけては綺麗に繕い、それを黙ってクローゼットにホールドしておいた時も……二鳥さんは翌朝それを羽織った刹那、一瞬で気付いて私が長話をする隙すら与えずに背後からガシッと抱きしめて『カカさん、いつもありがとう。愛してるよ』と、言いながら頬にキスをしてくれるのです……っ!)
両手を胸元できゅっと握り締め、二鳥のあのブレない『職人の目と温かさ』を思い出して、顔を真っ赤にさせて蕩けているカカ。
伝えなくても伝わる
おしどり夫婦の完璧な心は確かに繋がっていた。 そしてフローゼは、最後に節乃の小さな手を優しく包み込み、一人の偉大な『母親』としての強固な覚悟を込めて、茶目っ気たっぷりに微笑んだ。
「でもね、節乃ちゃん。……うちの次郎は、そういう細かい優しさや女の子の気遣いに関しては、本当にからっきし『疎い』から、せっかくのあなたの頑張りに気付かないことがたくさんあるかもしれないわ」
「あはは……次郎、天才だけどそういうところは本当にガサツなんだよぉねぇ……」
「ええ、知っているわ。だからね、もし次郎があんまりにも鈍感で、あなたの可愛い新妻の頑張りに気付かなくて寂しい思いをした時は、遠慮なくこのあたしに言いなさい? ――次郎の『親』として、そして何より、節乃ちゃんの未来の最高に格好いい花婿として相応しい立派な漢に、あたしが特製のお説教で責任を持って叩き直してあげるからね!」
「――っ、フローゼ様……っ!! ありがとうなんだよぉねぇ……っ!!」
フローゼのそのこれ以上ないほど心強いバックアップの言葉を聴き、節乃は胸の奥を激しく締め付けられながらも、最高の笑顔を弾けさせて大喜びした。
未来の姑と新妻の、これ以上ないほど強固な『愛の同盟』がここに完璧に構築された瞬間だった。
「さあ節乃ちゃん! フローゼ様が味方に付いたのですからもう何も恐れることはありません! 次は、次話郎さんの鈍感な脳を一瞬で覚醒させるための『愛妻おねだり』の講義へと、さらに出力を上げて突き進みましょうね……!」
「うん……っ! カカおねえちゃん、あたし一生懸命勉強するんだよぉねぇ……っ!」
カカの熱血指導が再びドカンと再開され、節乃ちゃんも嬉しそうにペンを握り直す。夕暮れ時の優しいオレンジ色の光が差し込むアカシアの居間で、未来の伝説のコンビを支えるための、世界一温かい『花嫁修行お茶会』の時間は、どこまでも賑やかに、より一層深く、熱く進んでいくのだった。
(…そういえば…カカさんは妙にお腹を擦っている気がするわね?……気のせいかしら?)
今回は女子会。つまり次回は…
皆さんはどっちだと思います?二鳥は…
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攻め?
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受け?