気付いたら古代中国   作:銀鱈

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これから基本的には2週間で1話ぐらいの更新速度になりそうです。
妄想力が働きまくった時は、定かではありませんが。

そして話の内容が遅々として進まず、すいません。
虎牢関が遠いなぁ・・・



彼女の期待

 俺は今、食堂にいる。飯を食べ終わって食休みをしている最中だ。味付けの違いが心配だったが、それ程違和感はなかった。というか、この時代ってもう麺ってあったんだな。それともこの世界だからか?あまりコシがない、うどんを太くしたみたいな感じだったが。

 

 そういえば飯を食べてる時に聞いたけど、東南の暖かくて水が豊富な所では稲作が行われているらしい。良いなぁ、米。現代の日本じゃ朝食にパンを食べる人も増えてたらしいけど、俺としてはやっぱり米だなぁ。あったかい米に鮭か鯵の干物、あと味噌汁。ベタだろうけどそれが良い。機会があれば東南の方へ行ってみたいものだ。

 

 

「予定よりは数日早いけど、これからいつもの会議を開きたいの。皆の予定はどう?」

 

 

 賈文和の問いかけに俺以外の皆が頷いている。話から察するにどうやら定期的に会議を開いてるらしい。定期的ってことは進捗状況の報告とかそういうのをしてるってことだろうか。

 

 

「鈴居もこれからは出席してもらえる?5日毎に定期的に会議を開いてるの。内容としては皆の仕事の進捗状況を確認したり、新しい方針を提案、審議したりってところね。会議の時刻は、皆が集まりやすい朝食後ってことにしてるわ。霞や華雄は街に警邏に行くことも多いから」

 

「成程。わかった、文和殿」

 

 

 俺がそう答えると彼女は眉間に皺を寄せて不審な顔をしてきた。なんだ?俺なんか変なこと言ったか?

 

 

「文和『殿』?貴方がボク達の真名を呼ばない理由は理解したけど、なんで殿なんてつけるの?」

 

「ん?君は董家の筆頭軍師なんだから、仲穎殿に次ぐ地位に居るんだろう?俺に直接命令出来るんだから、付けてもおかしくはないじゃないか」

 

 

 今度は、董仲穎が眉間に皺を寄せている。む、これはあれか。俺が『殿』をつけるのを気に食わないということなのか?いやしかし、上司なんだから当たり前だと思う。それに賈文和が自分の事を『ボク』って言ってる?初めて会った時は『私』だった気がしたが。あれはよそ行きで、これが本来の彼女なのかな。

 

 

「ボク達に殿や様は要らないわ。勿論、公の場では付けて貰わなければ困るけど」

 

「詠ちゃんの言う通り、普段は字で呼び捨てにして下さい。お願いします」

 

「いやしかし」

 

「お願いします」

 

 

 なんか董仲穎から凄い圧力を感じるんだが。怖い。大人しそうな子が放つ圧力って怖い。つい後退ってしまった俺は悪くないはず。

 

 

「月がこうなったらもう止められないわ。貴方が思ってるよりもずっと頑固だもの。諦めて呼び捨てにしなさい。大体、ボクは置いておくとしても、霞や恋が既に呼び捨てにしてるわ。今更なのよ」

 

「むー。頑固ってひどいよ。詠ちゃん」

 

「事実でしょ?」

 

「へぅ」

 

 

 へぅってなんだ。どんな意味なんだ。いや今はそれはいいか。外堀埋められて逃げ道が無くなってきてるこの状況の方が問題だ。流石に本人が許可してても雇い主に対して呼び捨ては良くないよなぁ。

 

 口元に手を当ててどうするかと考えていると、また董仲穎さんの圧力タイムがやってきた。そんな悲しそうな顔をして俺を見ないで欲しい。本当に居た堪れない。まるで俺が苛めてるみたいじゃないか。

 

 周囲を見ると、賈文和と文遠は何故かにやけ顔になってる上に、華雄は俺が董仲穎の言い分を呑まないのが不満なのか、機嫌が悪そうだ。腕は組んだまま、指がトントンとリズムを刻んでいる。

 

 溜息しか出ないな。天を仰ぎ見るってこういう時に使う言葉なのかねぇ。あ、華雄っていえば。彼女が董仲穎のことを様づけで呼んでたような気がするな。この事を指摘してどうにかならないか?

 

 そう思ってチラッと董仲穎を見るが、彼女の顔はさっきよりも酷くなっていた。

 

 ちくしょう。流石にこの雰囲気の中で言い出せるほど、俺の精神力は強くないぞ。・・・なんか悲しくなってきたな。

 

 俺は溜息を吐いた後、両手を上げ、降参のポーズを取る。するとそのポーズの意味を理解したのか、さっきまで悲しそうにしていた董仲穎の顔が一瞬で華やいだ。・・・ああ。なんとも可愛らしいね。

 

 

「条件がある。呼び捨てにする代わりに、俺の事も姓じゃなく名で呼んでくれないか?姓で呼ばれるのはあまり好きじゃないんだ。他の皆も頼むよ。特に俺を敵視してるであろう華雄にお願いしたいね」

 

「む。私はお前を名で呼ぶつもりは無い」

 

「じゃぁ君が俺の事を名で呼ばない限り、董仲穎殿と呼び続けるとしようか」

 

 

 俺がそう言うと、董仲穎は悲しそうな、申し訳なさそうな顔をしながら、上目づかいに華雄を見始めた。反対に華雄は目を見開いて、「謀ったな‼」といった具合だ。・・・成程。さっきの賈文和と文遠のにやけ顔の意味が分かった。これは確かに傍から見ていると楽しいな。

 

 

「ゆ、月様」

 

「すいません、華雄さん。何とかお願い出来ませんか?」

 

「ぐ・・・」

 

 

 時間を追うごとに董仲穎の圧力効果が高まっている。華雄も流石にあれには耐えきれないようだな。唇がひくついてるぞ。しっかし、董家最強って董仲穎だったんだなぁ。今後、出来るだけあの圧力を喰らわない様に気を付けよう。

 

 

「ぅう、わかりました!わかりましたからそんな顔で見ないでください!」

 

「っ! それじゃぁっ」

 

「はい。鈴居のことを名で呼びます」

 

 

 そう言った華雄が俺の方を向いてくる。ようやく俺を名で呼んでくれるようだ。もう少し楽しんでいたかったけど。

 

 

「・・・・・」

 

 

 む?しばらく待っているんだが、華雄がずっと黙ったまま動かない。どうしたんだ?目線がキョロキョロしてる。口もモゴモゴしてるし。

 

 そのまま華雄をずっと見ていると、段々、彼女の顔が赤くなって来た。これはあれか。恥ずかしがってるのか?あ、目が合った。そろそろ名前を呼ばれるかな?

 

 

「・・・じゅ、十蔵」

 

 

 ・・・ギャップのせいかな。猛将で名の通った華雄が、凄い恥ずかしそうにしながら俺の名前を呼ぶもんだから、照れくさいんだけど。あ、顔背けられた。やっぱり恥ずかしいのか。可愛らしいとこもあるんだな。

 

 とりあえずこのままだと収拾がつかないし、彼女の弱味を攻めてわざわざ呼んでもらったわけだから、ちゃんと返答はした方がいいよな。

 

 

「ありがとう、華雄。これから宜しく頼むよ」

 

 

 華雄に向かってそう言うと、彼女が目線だけこっちに向けてきた。小さく「ああ」と聞こえたのは聞き間違いじゃないと信じたいな。とりあえずしばらくは董家に居るんだ。無用ないがみ合いは遠慮したいしな。

 

 

「話が纏まったところで、いつもの部屋に行くわよ。十蔵もついて来て」

 

 

 そう言って、文和が足早に食堂を出て行った。他の皆もそれに続いている。俺も急ごう。場所がわからないから、遅れたら道に迷う自信しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 「ここよ。ここでいつも会議をしてるわ」

 

 

 文和がそう言って入っていった部屋は、謁見の間からそう離れてないみたいだ。どうやらこの建物は執務室なんかが多く集まってるみたいだな。となると、この辺りの部屋の配置を早く覚える必要がある。良く来ることになりそうだし。それに、もしも非常事態に陥った時、慌てたくはないからな。あまり戦闘が得意そうじゃない仲穎と軍師二人の良く居る場所は、特に覚えておかないと。

 

 そう思いながら部屋の中に入ると四隅が円い、どちらかというと楕円形に近い机があった。それぞれ席が決まっているらしく、皆が淀みなく座っていく。俺もそれに続いて、空いている席に座った。

 

 

「それじゃあ会議を始めるわ。まずは霞からお願い。十蔵を見つけた時、領内巡回中だったのよね?その報告を聞かせて」

 

「せやなぁ。どこの邑行っても、賊を見たっちゅう奴はおらへんかった。襲われた邑も無かったわ。詠の指示通り、巡回の頻度や順番を変えたんが良かったんとちゃうか?」

 

「今のところはうまくいってるわね。邑への襲撃には一貫性が無く、散発的だわ。ボクの考えでは、恐らく賊の集団は複数存在してるはずよ」

 

「確かに、この前賊とやりおうた時も、聞いてた話よか小規模やったな」

 

「うん。出来る限り早めに決着をつけたいわ。でないと、周辺の賊が合流してボク達だけじゃ対抗出来なくなる。そうなった場合、頼りになるのは馬寿成ぐらいね。事なかれ主義の益州は話にならないし、洛陽は賊の数が多い他の地域に対応するので手一杯のはずだから」

 

 

 黄巾の乱で有名なのって冀州方面だった覚えがあるから、隴西の街に影響は少ないって思ってたが、成程な。隴西の街の人口が少ないのが賊の影響力を大きくしてるのか。この問題は早めにどうにかしないと、将来曹孟徳達に対抗出来なくなるんじゃないか?子供が生まれ育つには時間が掛かるから、手っ取り早いのは他の地域から移住を促すことなんだろうが。

 

 

「一層気張んで」

 

「お願い。次は華雄ね。この前募集した新兵の訓練状況はどう?」

 

「うむ。霞にも見てもらって、騎兵に向いているかどうかふるいに掛けたところだ。200名は騎兵として運用出来る。ただ、問題はやはり馬の維持費になるな。詠の考えではどれぐらいの数を許容出来るのだ?」

 

 華雄はそう言って文和に判断を促した。あの感じだと隴西の街で新たに200名の騎兵を増加するっていうのは辛いように思えるな。理由は華雄が言ってた通り、馬の維持費なんだろう。馬の維持費が幾らかなんて考えたことなかったが、話を聞く限り、かなりの金額が掛かるみたいだ。やはり食料の問題が大きいんだろうか。この辺りだと食料に使える草も少なそうだしなぁ。

 

 

「200頭ならなんとかなるわ。全員、霞か恋の隊に組み込みましょ。訓練や配備については霞と恋に任せるから。報告だけは宜しくね」

 

「了解や」

 

 

 ん?返事をしたの文遠だけだったな?そう思って奉先の方に顔を向けると、そこにはとても気持ちよさそうに夢に飛び立っている奉先さんが座っていた。あぁ、涎まで垂らして。

 

 ていうか公台。寝てる奉先をきらきらした目で見てるけど、お前軍師だろ。会議の話を聞かなくていいのか?

 

 

「残りの新兵は華雄に任せるから。次に税収をあげるという件についてだけど、ごめんなさい。正直うまくいってないわ。賊の出現のせいか、少ないけど人口の流出が起きてるみたい。そういう意味でも早めに賊と決着をつけないと」

 

 

 文和がそう言うと文遠と華雄が一層真剣な顔つきになる。未だ奉先は寝てるけど。

 

 

「最後に十蔵のことだけど」

 

 

 そう言った文和と目が合った。謁見の間で言っていた俺の仕事のことだろうか。文和の目は真剣なんだけど、少し笑ってる。嫌な予感がする。嫌な予感だけは良く当たるからなぁ、俺・・・。

 

 

「とりあえず十蔵には糧食と武器防具なんかの戦争に使う物の管理と調達をしてもらうわ」

 

 

 ふむ。なんか難しそうな仕事内容だな。昨日、算術がどうこう言ってたからこんな仕事になったのか?まぁ、今更悔やんでも仕方ないか。

 

 

「経験はないが任せられる以上、やってみよう。ちなみに聞きたいんだが、その仕事を俺に任せる目的は?」

 

「十蔵は戦争の経験がないんでしょ? だから戦争に必要な物、量を把握してもらおうと思って。もしも十蔵だけが部隊を率いなければならなくなった時、絶対に役に立つはずだから。」

 

 

 俺のこと考えてくれてるんだな。単純に嬉しい。しかし、糧食や備品の管理とかって文官の仕事だと思ってたけど。俺だけが部隊を率いる状況があるとしても、普通は文官が近くにいるだろうし。それとも武官が管理することもあるってことなのか?

 

 

「疑問なんだが、戦争に必要な糧食や備品の管理って文官がやるもんだと思ってたんだけど」

 

「ええ。普通はそうね。それがどうかしたの?」

 

「いや俺、武官だよな?」

 

 

 俺の疑問に合点がいったのか、文和が納得顔になる。そしてさっきみたいな嫌な予感のする笑顔に変わった。聞いといてなんだけど、聞きたくなくなってきた・・・。

 

 

「十蔵には武官と文官の両方の仕事を担当してもらうわ。算術ができて、謁見の間で私達を試すぐらい頭が回るんだから、ただの武官にしとくには勿体無いでしょ?」

 

 

 げ。やっぱり試したのバレてる。さすがの賈文和ってところなんだろうけど、わざわざ皆の前で言わなくてもいいと思う。まさか自分が試されたことがそんなにイラっとしたのか?いやまぁ確かに気持ちの良いものじゃないとは思うけど。

 

 いや違うか。仲穎を侮辱したことを根に持ってるんだろうな。軍師としては納得出来るけど、ってとこか。付き合いは短いが俺にも彼女達の仲が良いのはよく分かる。二人の間に壁の様な物はまったく見えないからな。

 

 

「む。試す、とはどういうことだ?」

 

 

 華雄を筆頭に、興味を持った人が数人出て来ちゃったか。あー・・・よし。今更言い訳とかしたくないし、なじられるぐらいは覚悟しよう。

 

 

「やっぱり華雄は気付いていなかったのです。流石は猪武者なのです!」

 

「なんだとっ‼ 」

 

「はいはい、こんな所で喧嘩なんてしないで。昨日の謁見の間で十蔵はわざと月を侮辱したのよ。主を侮辱して私達がどんな反応するか、侮辱された月がどう反応するかを見て、器を試そうとしたの」

 

 

 そうでしょ?という顔で俺の方を文和が見てくる。それに合わせて皆の視線が俺に集まった。

 

 

「ああ。仲穎の器は俺の予想以上に大きかったし、華雄の忠誠心も凄く高いのが良く分かったよ」

 

「へぅ」

 

「ぐ・・・」

 

 

 また仲穎がへぅって言ってる。どうやら照れたりしたときの彼女の口癖みたいだな。華雄は俺が忠誠心が高いのを褒めたからか、仲穎の器を試したことを怒るに怒れない、といった風だ。

 

 なんか視線を感じる。そう思ってその視線を方を向くと文和が微笑んでいた。なんだ?何故笑う?

 

 あ。というか俺、このままだと普通の人より単純計算で仕事量2倍じゃないか?それは遠慮したいな。俺、客将だったはずなんだけど。

 

 

「十蔵、考えてることが顔に出てるわよ。確かに文官と武官を両方こなすのは大変だと思うけど、なんとかお願い。ボクとねねの手が回らないところを助けて欲しいの。客将だけど仕事量が増える分、給金は弾むし、いきなり両方の仕事をしろなんて言わないわ。最初はさっき言った仕事をしつつ、文字の読み書きと馬に乗れるようにして欲しいの」

 

 

 うーん。それならなんとかなるか。給金を弾むっていうのは嬉しいところだし。やる気も維持出来そうだ。しかし、何で俺が馬に乗れないことを知ってるんだ?

 

 

「俺が馬に乗れないなんて言ったっけ?」

 

「霞から聞いたわ。霞の馬から降りるときの動作がたどたどしかったらしいじゃない?だから馬に乗ったことがないんだろうなと思って」

 

 

 あぁ、あの時か。流石は文遠ってことか。よく見てる。そう思って文遠の方を見ると、ニシシッ

と言った顔で俺に笑いかけてきた。

 

 

「乗馬の鍛練は霞に教わって。恋だと感覚的なところがあるから、十蔵なら霞の方が良いと思うわ。霞、なんとか霞と同等まで十蔵の腕を上げて」

 

「よっしゃ! 了解や。十蔵、気張りや? びしびし行くさかい」

 

「あ、ああ。お手柔らかに頼む」

 

 

 文遠のやる気が凄い。軽く引いてしまうぐらいだ。しかし、文遠と同等の腕前ってことは、やっぱり将来的には俺にも部隊を任せようとしてるんだろうか。

 

 

「文字の方はこれを使って」

 

 

 そう言って手渡されたのは、数冊の本だった。竹簡ではなく、紙で出来た本だ。三国時代って竹簡のイメージがあったんだけど、紙で出来た物も有るんだな。パラパラと捲って中を見ると、左側に絵が描かれていて、右側に文字の羅列が書かれている。あまり行数は多くない。

 

 

「見れば分かるとは思うけど、その本は左側に情景が。右側はその情景を示す文が書かれてる。とりあえずそれを使いながら、自己勉強をお願いするわ。一冊毎に難しさが上がっていくから、順番に一冊ずつ終わらして。わからないところは何時でも聞きに来ていいから」

 

「わかった。使わせてもらうよ」

 

「それじゃあ会議はこれで終了ね。解散するわ」

 

 

 文和がそう言うと皆がぞろぞろ部屋を出て行く。仕事に取り掛かるんだろう。俺も行くとするか。とりあえず朝に文遠と行ったあの倉庫の中をちゃんと確認したい。

 

 

「あ、十蔵。まだ一つ話してなかったことがあったの。もう少し時間を頂戴」

 

 

 そう言われたので、部屋から出かかった足を止めて文和のところまで戻った。話ってなんだろうか。文和と視線が合うと少し悲しげに微笑んで来る。

 

 

「ごめん。朝、霞とのことで少しは気持ちが楽になってるかもしれないけど、人を殺したことがない十蔵に対して、そう為るよう導いてるわ。でもボク達に、月にとって絶対に貴方の力が必要なの。ボクの事恨んでくれても構わないから、なんとかお願い」

 

 

 彼女の手がぷるぷると震えてる。なんていうか、こんなに小さいのに凄い背負込む子なんだな。確かに思うことはあるが、それは俺の問題であってこの子が思い悩むことは無いはずだ。客将を受け入れたのは俺なんだし。

 

 

「文和が気にする必要はないよ。俺の問題だ。君は俺の事を上手く使ってくれればそれでいい。気持ちはちゃんと受け取っておくから。それに俺達は仲間なんだろう? 何かあったら君に愚痴でも聞いてもらうさ。女の子に愚痴る宣言をするとか、我ながら格好悪いとは思うけどね」

 

 

 そう文和に告げると、さっきよりも悲しみの減った顔で笑ってくれた。少しは彼女の肩の荷が下りたみたいだ。良かった。

 

 

「ありがと。感謝といえばさっき華雄を止めてくれたでしょ? あれには驚いたわ。あの猪武者の暴走を止められるのってそう居ないの。ボクの言うことも聞かないことだってあるんだから。それで決めたんだけど、乗馬と文字の読み書きがなんとかなったら、すぐ華雄と組ませるわ」

 

「華雄と?」

 

 

 そう言うと文和は頷いて俺と華雄を組ませる理由を話してきた。

 

 

「華雄は猪だけど、武は強い。そういう単純な勇猛さが良いという兵士も居るには居るんだけど、これからの董家を考えるとそれじゃあ困るの。強いんだから、その猪ささえ何とかできれば、霞にだって引けを取らないのに。何度、それを華雄に言っても聞いてはくれなかったけど、十蔵ならなんとかなるかもしれない」

 

「つまり華雄を精神的に成長させろということか?」

 

「そうなるわ」

 

 

 これはまた難題だな。華雄をなんとか出来るのって仲穎ぐらいだと思うんだが。でも言いたいことはわかる。確かに今のままじゃなんか勿体無い感じがするからな。しかし、やり方が全くわからない。人を育てた経験とか無いし。

 

 

「あまり深く考えなくてもいいから、とりあえずやれるだけやってみて。期待はしてるけど、駄目で元々なのは確かなのよ。話は以上ね。本当は十蔵の国の事とか色々聞きたいんだけど、これ以上仕事を止めとくわけにもいかないから、そっちは後日ね」

 

 

 聞かれるとは思ったけど、やっぱり他の国のこと知りたいんだな。隴西はあまり実りが良くなさそうだし、栄えてるとは言い難いみたいだから、日本の事を聞いて政策の参考にしたいんだろう。

 

 

「じゃぁ仕事に戻るよ。また」

 

「華雄の事もそうだけど、仕事の事も何かわからないことが合ったら、誰でもいいからすぐに聞きなさい。戸惑ったり、変な方法で突き進まれるより、そっちの方が後々お互い楽なんだから」

 

 

 文和のその言葉に頷いて、俺は今度こそ部屋から出て行く。

 

 ・・・しかし、華雄ね。どうすればいいのやら。

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