気付いたら古代中国   作:銀鱈

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本当はもう少し先まで書いてから投稿しようと思ってたんですが、
話が思ったより長くなったので今回はここまでで。


後書きに追記しました。(2015/03/06)


風鈴

 俺は会議室を出た後、その足で朝に訪れた倉庫までやって来ていた。文和に任された仕事のために倉庫内を一度確認したかったからだ。あの倉庫には武器や防具が所狭しと置かれていた。恐らく糧食なんかは他の所にあるんだろうから、そっちの確認は後にしよう。置かれている場所も誰かに尋ねないといけないしな。

 

 キョロキョロと辺りを見回しながら倉庫内を回る。少し歩いた感じだと、どうやらこの倉庫内はまず、武器と防具で場所が分かれていて、更にその中で訓練用と実戦用で場所が分かれているらしい。今、俺が居るのは訓練用武器の区画だ。恐らくこの先に進めば実戦用武器の区画に出るはず。

 

 そう思いながら歩いていると、武器が反射する陽の光が強くなるのを感じた。陽の光自体は天井近くの小さな窓から入って来ていて、これは訓練用武器の区画でも同じだった。なのにいきなり光が強くなるのは何でだ?

 

 理由が分からないまま、近くにある剣を手に取ってみる。んー、刃は付いているから実戦用なのは間違いないんだけど。

 

 ん?あぁ、金属のくすみ具合が違う気がするな。訓練用と実戦用の武器では、使われている金属の純度が違うのか?もしくは製造方法が違うとか。まぁ金属に詳しいわけじゃないからなんとも言えないけど。

 

 武官、特に華雄なんかは、何かあった時の為に訓練用も実戦用と同じ水準の物を配備して欲しいとか言ってそうなんだけどな。もしくは兵士に常在戦場の意識を持たせる為、とか。でも現状は武器の質が違う。やっぱり文和の苦肉の策なのかね。懐事情はかなり厳しいとみていいか。

 

 まあ、それは今は置いておくか。とりあえず思っていた通り、この辺りは実戦用武器が集められている区画で間違いないみたいだ。周囲の棚を覗くと、置いてあるのは槍や戟、それに剣だった。あ、更に向こうには弓が見える。それにクロスボウに似ているあれは、弩ってやつか?話には聞いたことがあったけど、実際に見るのは初めてだ。

 

 それぞれ並び方は少しばかり雑多だけど、物自体はよく手入れされてるな。指示してるのは文遠か華雄だろうか。どちらだとしても流石だ。

 

 更によく見ていくと、近接武器で一番量が多いのはやっぱり長柄だった事に気づいた。俺の得物は大脇差だから、長柄についてはあまり詳しくはないけど、なにかの本で『長柄の真価は間合いの長さではなく、相手に向かう時の恐怖を緩和すること』というのを見た気がする。兵だって常備兵が多いわけじゃないだろうから、長柄が多いのはそういう理由からなのかもしれない。

 

 そういえば戦国時代じゃ槍衾なんてものもあったか。槍を並べて壁を造る槍衾は、兵数が少ない董家では良い手かもしれない。こちらの被害を少なくすると共に、相手に痛撃が与えられるはずだ。もしも文和達が知らなければ進言してみるか。出来れば同時に長槍も作りたいところだ。

 

 

 あ、ちょっと待て、俺。なんかいつの間にか考えていることが、客分の領域を飛び越えてやしないか?会議の後に聞いた文和の想いにあてられたんだろうか。確かに文和の顔を見て、思う所があったのは事実だが。

 

 まぁ文和の想い云々は置いておくとしてもだ。そもそもよく考えれば、文和の俺に対する仕事の振り方って割とあざとい気がする。普通、客将なんてものに政治に関わる仕事は振らないだろ。客っていうぐらいだし。ということは、機密に関わらせて、それを盾に有無を言わさず俺を取り込もうとしている?知ってしまったんだから他の土地に行くことは許さない、っていう感じだろうか。

 

 俺がそう言われたら、少なくとも無断で出て行くことはないって文和は考えているのかも知れない。まぁ否定は出来ないんだけど。

 

 もしも俺の予想通りなら、文和に対する恐怖度がまた一段階上がってしまうな。まぁそれだけ仲穎が大事だってことか。策略を巡らされてる側のはずなのに不思議と気分が悪くないのは、文和の想いが凄く真剣だからだろうか。そこまで一途に大事な人の事を考えられるのって心から尊敬する。

 

 

「お、十蔵やん。ようやっと見つけたで」

 

「文遠に華雄?どうした?」

 

 

 呼びかけられて後ろを振り向くと、そこには文遠と華雄が居た。どうやら俺を探してたみたいだが。約束とかはしてなかったはずだよな?

 

 

「これから街に警邏に行くのだ。十蔵も来い」

 

 

 ああ、そういえば文和が言ってたな。二人が警邏に行くこともあるから、会議を集合し易い朝食後にしてるって。警邏っていうとパトロールってことだよな。軍がそれを担当してるってことは、警察組織がないってことか。その時間を訓練に充てられれば、部隊が更に強くなれるか?

 

 うーん。いや、それも善し悪しだな。将軍格が街を見廻ってることで、住民が安心するってこともあるだろうし。街で不穏な事があっても迅速に対処出来るっていう利点もある。出来ればいいとこ取りしたい所ではあるが。

 

 

「警邏ついでに十蔵の馬を買いたいんよ。厩舎行って良さそうな奴が居らんか探したんやけど、みんな将が乗るには力不足やったわ」

 

 

 あぁ、俺に乗馬を教えてくれるって話か。態々、馬を探してくれてたなんて有り難い。しかし、街に行って馬を買うにしても、金はどうしよう。俺、まだ給金貰ってないんだよな。

 

 

「なぁ文遠。俺、まだ文和から給金を貰ってないんだが、支払いはどうなる?」

 

「軍馬やからな。軍費から出るやろ。正式に十蔵のものにしたいんやったら、詠にその分の金でも渡せばええんとちゃう?」

 

 

 どうやら支払いの方はなんとかなりそうだ。よし、二人について行こう。街も詳しく見れるだろうし。今後、武官の仕事もするなら警邏の仕事も来るだろう。多分二人はそういう事も考えて、今回警邏に誘ってくれてるんだろう。感謝だな。

 

 

「じゃぁ済まないが案内を頼む」

 

「よっしゃ、行くで。こっちや」

 

 

 二人が先に倉庫から出て行く。俺も倉庫の確認を中断して、その背中について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 件の馬屋は城から出て左手の城壁近くにあるらしい。この馬屋は出張所みたいな扱いになっていて、置いてある馬は名馬ばかりって話だ。態々街に名馬を持ってきている理由は、宣伝と賊による窃盗対策らしい。城壁に守られてるから安全度が段違いだとか。他の馬達は街の外に牧場があって、そこで飼育されていると聞いた。まあ数が多いだろうし、仕方がないんだろう。

 

 馬屋の店主とは文遠達も面識があるらしく、度々軍馬を購入しに来てるって話だ。店主の馬に対する目利きはかなりのモノで、知り合っておいて損はないらしい。

 

 ん、あれが厩舎か?動物の飼育小屋みたいな匂いがしてきてるし、多分間違いないと思うけど。厩舎らしき建物の隣には小さめの広場が併設されてるな。

 

 

「街の中だからもっと規模が小さいのかと思ったけど、広場もあるんだな」

 

「そらそうや。馬だってずっと窮屈な厩舎に居ったら気が滅入るやろ?」

 

 

 成程ね。馬って臆病で繊細な生き物だって聞くしな。たまに広場に出して息抜きさせてるっていうわけか。

 

 

「おっちゃんー! 居らんー!?」

 

 

 おー、流石知り合いと言うべきか?文遠が遠慮という言葉なんて知らないかの如く、ズンズンと建物の中へ入って行った。あ、馬の顔が見えた。やっぱりこの建物は厩舎なんだな。

 

 

「そんな大声で叫ばなくても聞こえてんだよ!!」

 

「いや、おっちゃんの声のが大きいやん」

 

 

 どうやら『おっちゃん』が見つかったらしい。厩舎の奥で二人がやいやい言い合いをしている。離れているから内容は良く分からないが。まぁこのまま放置していても話が進まなそうだから、近づくとしようか。

 

 そう思っていたら、俺よりも早く華雄が動いた。

 

 

「店主」

 

「ん?おお、文遠の嬢ちゃんだけじゃなくて、華雄の嬢ちゃんも居るのか。どうした?もしかしてこの前言っていた新兵用の馬の件に進展でもあったか?文和の嬢ちゃんから購入の許可を貰うという話だったが。ん?後ろに居るその坊主は?」

 

「あぁ、今日の会議で許可が出た。いつも通り質の良い馬を200頭用意して城へ頼む。代金はその時に。それとこいつは董家の客将だ」

 

 

 華雄がそう言うと、何故か知らないが馬屋の店主に凄い凝視され始めた。まさか品定めされてるのか?おっと、黙ってないで自己紹介しないとな。特にこういう職人肌っぽい人に挨拶は重要だ。円滑な人間関係を築く第一歩になる。

 

 

「初めまして。先日から董家の客将をしています。姓は鈴居、名は十蔵です。宜しくお願いします」

 

「ふむ」

 

 

 挨拶したら顔への凝視は終わったんだが、今度は俺の体をジロジロと見てきた。こういう視線は親父との稽古の時に受けたことがあるな。俺の筋肉の付き方を見てるのか?俺は親父のせいで慣れてるからあまり気にはしないが、初対面の男から体つきを見られるとか、なかなか新鮮だな。

 

 

「俺の事は『おっちゃん』でも『店主』でも好きに呼べ。名で呼ばれるより、そっちの方が呼ばれ慣れてる。で、用件はなんだ?馬に乗ったことの無い坊主。見た感じ、未来の愛馬でも探しに来たか?」

 

「俺が馬に乗ったことが無いと、よく分かりますね」

 

「大したことじゃない。坊主の筋肉は上下で均整が取れ過ぎてんだ。大抵、馬に乗ってる奴は上下で筋肉の付き方が違うもんなんだよ。腹から下が鍛えられるからな」

 

 

 やっぱりさっきの視線は俺の筋肉の付き方を見てたんだな。しかし、筋肉の付き方で馬に乗ったかどうかを判別出来るなんて、思った以上に凄い人だった。流石に文遠と華雄が信頼しているだけある。これは馬の方もかなり凄いんじゃないか?まぁ馬の善し悪しなんて俺には全くわからないが。

 

 

「よし。嬢ちゃん達は全ての馬を外に出してくれ。坊主は俺について来い」

 

 

 おっちゃんの指示を聞いた彼女達が厩舎の馬柵を外して、馬を一頭ずつ外に連れ出し始めたな。流石手際がいい。ん、悠長に眺めてる場合じゃなかった。早くおっちゃんを追いかけないと。怒られるのは勘弁だ。

 

 

「何してる、坊主!早くこっちに来い!」

 

「今行きます!」

 

 

 怒鳴り声を浴びながら外に出ると、おっちゃんが広場の隅で手招きしていた。急いでおっちゃんに近づく。

 

 

「すいません、遅れました」

 

「今さっき知り合った人間に怒鳴られて謝るのか。律儀っていうか素直な奴だな、お前。まぁいい。嬢ちゃん達が全ての馬を外に出したら、お前が気になった馬に近づいて行け。あぁ、馬の後ろからは近づくなよ。強烈な蹴りが来る。最悪、死ぬぞ」

 

「気になった馬に?」

 

 

 馬の能力や他人の意見ではなく、自分の直感で決めろということなのか?相手は馬の専門家だ。何か意味があるんだろうけど。俺をおちょくってるわけでもないだろうし。

 

 怪訝な表情になっていたんだろう。俺の顔を見て、おっちゃんが軽く鼻で笑った。

 

 

「お前は能力を重要視して馬を選ぶべきじゃないかと思っているのかもしれんが、一番重要なのは其処じゃない。相性って奴が一番重要なんだ。信頼が皆無な相手に自分の命を預けたくはないだろ?馬もそう思ってんだよ。だから能力なんて二の次なんだ。まぁここに居る馬達は俺が一から手塩に掛けて育てた奴らだ。全てが名馬と言っても差し支えの無い能力は持ってる。勿論、それぞれに得手不得手な分野ってのはあるがな」

 

 

 つまりはいくら高い能力を持っていようが、人と馬の信頼が強固じゃないとその能力は十全に発揮出来ないし、そんな状態で戦闘なんて出来るはずがない、と。よく考えれば当たり前のことだな。でも、こんな御時世じゃ忘れがちになる事の一つかも知れない。色々と勉強になる。ここに来れて良かった。

 

 そんな事を考えてる内に文遠と華雄が馬を全て広場に出したようだ。満足気な顔で俺達の方へ歩いてくる。

 

 

「おっちゃん、みんな出したでー?」

 

「ご苦労さん。さて、じゃぁ坊主の出番だ」

 

 

 おっちゃんがそう言いながら、顎で馬達を指す。うーむ。気になった馬か。そう思いながら目の前にいる馬達に視線を向けた。

 

 目の前には8頭の名馬達。白色、茶色、赤褐色、黒色、色々な毛色をしている。体格も様々だ。筋肉が多めな奴、引き締まった奴。当たり前だけど体長もだな。特徴が有り過ぎるだろ。この中から直感で気になった馬を探せと言われてもなぁ。

 

 軽く頭を抱えながら溜息を吐く。しばらく馬達を眺めていると、思い思いに行動している馬達の中で、1頭だけがこっちに顔を向けているのに気付いた。その馬を一通り眺めた後、他の馬にも視線を移すが、何故か無性にあの馬の顔が頭に浮かんで、また見てしまう。

 

 もしかしてこれが直感って奴なのか?よし。とりあえず近づいてみるか。

 

 ゆっくりと気になった馬に向かって、歩を進めると目が合った気がした。多分間違いじゃない。俺が横移動するとあの馬の顔が動くから。俺があの馬を観察してるように向こうも俺を観察してるのか。

 

 段々とお互いの距離が近づいてきているのに、あの馬、一向に動く気配がないな。誰だ、馬が繊細で臆病だって言ってた奴。後退りすらしないんだが。

 

 そんな事を考えている間も足を動かしていく。5歩、4歩、3歩・・・・着いた。近くに立つと思った以上にでかいな。完全に見下ろされてる。文遠の馬より一回りか二回りぐらいはでかいか?こんなでかい馬なんて、乗馬以前に背中に登るだけで一苦労だろ。ていうかこの馬、鼻息が凄いんだけども。匂い嗅がれまくってる。

 

 手を馬の鼻先に持っていくと、軽くビクッとした後、俺の手の匂いを嗅ぎ始めた。今度は俺の手の匂いか。まさか俺、汗臭い?本当に臭うなら、かなり不味い。董家、女性ばっかなんだけど。

 

 そのまま愕然としていると、馬が俺の手に自分の鼻っ面を擦り付けてくる。もしかして甘えられてるんだろうか。嫌われてはいないようなんだけどな。とりあえずおっちゃんの所に戻るか。

 

 そう思っておっちゃんの所に戻ろうと思っていたら、いきなりガクンと首筋に衝撃が来た。一体何だ、と思っていると、直ぐにグイグイと体が後ろに引っ張られ始める。どうやら襟足を馬に噛まれているらしい。凄い力だな、おい。

 

 

「どうしたんだ、お前」

 

 

 そう馬に呼び掛けると「ブルルッ」と唸り声を上げて、更に俺を後ろへ引き摺り始める。これ、傍から見たら凄いシュールな画じゃないか?ちょっと勘弁して欲しい。

 

 んーと。この状況、どう対応するのが良いのかな。暫く悩んでいると、待ちくたびれたのか、おっちゃん達が近づいてきた。

 

 

「よう、坊主。滅茶苦茶気に入られてんじゃねぇか」

 

「この状況って気に入られてるって言っていいんですかね?」

 

「見りゃ分かんだろ。そいつは甘えてんだよ。しっかし、いきなり牝馬に甘えられるとはな。女垂らしなのか?お前」

 

 

 いやいやいや。いきなり人聞きの悪いことを言わないで欲しい。何時、俺が女性を誑かしたっていうんだ。そんな経験、現代でもしたこと無いぞ。

 

 

「十蔵は完璧な女垂らしやで。なんせうちらの上役に一日、二日で自分の事を認めさせたんやから」

 

「仲穎の嬢ちゃんはまだしも、文和の嬢ちゃんがか?そりゃ、先が恐ろしいな。いつか血を見るんじゃねえか?」

 

 

 何で仲穎と文和に自分を認めさせたことで、女垂らしに認定されるのか、緊急で説明が欲しい。ていうか血って・・・怖っ。華雄の俺を見る目も怖っ。

 

 

「しかし、坊主がこいつを選ぶとはなぁ。こいつもお前を気に入ったようだし、万々歳ではあるか」

 

「なにか問題があるんですか?」

 

「いや、そういうわけじゃねぇよ。こいつは引っ込み思案な所があってな。買い手が付かなかったんだ。馬を買いたい奴が来ても、その性格が災いしてか自分を主張しないからな。腹が据わるとそんな性格は吹っ飛ぶんだが。ああ、そういえばそういう所、仲穎の嬢ちゃんにそっくりだな。なんだ、やっぱり坊主、垂らしじゃねぇか」

 

 

 おっちゃんのその言葉に文遠がウンウンと首を振る。華雄は微妙なしかめっ面を俺に見せてきているが。もう完全に女垂らし扱いだな。女性に気に入られる要素が皆無なことしかしてないと思うんだけど。大の男が泣きじゃくったりとかさ。思い出すだけで恥ずかしくなってきた。

 

 味方が居ない状況で項垂れていると、さっきまで俺を引き摺っていた馬が俺の頬に顔を押し付けてくる。慰めてくれてるのか?有難う。有り難すぎて涙が出そうだ。

 

 その光景を見て、文遠とおっちゃんが更にニヤニヤしてくる。もうあれだ。何を言っても無駄な気がしてきた。勝手に俺を女垂らし扱いしてればいいんだ。くそう。

 

 

「十蔵、そんだけ気に入られとるんや。名前つけたったらどうや?」

 

 

 む、名前か。無いと呼び掛けるのに困るのは確かだな。しかしなぁ、俺はネーミングセンスがないからなぁ。これから一緒に戦うことになるし、どうせなら俺の名前に関係するのがいいんだけど。うーん。

 

 そうやってしばらく唸っていると、華雄が「自分の姓名の一字を入れてはどうだ」と言って来た。ふむ。確か戦国時代とかでもそんなしきたりみたいなのが在ったな。よしそれでいくか。確かこの馬、牝だって話だしなぁ。俺の名前で可愛い感じなのって『鈴』しかないぞ。鈴、鈴ねぇ。んー、よし。

 

 

「風鈴にする。今日からお前は風鈴な」

 

 

 そう呼び掛けながら風鈴の首元をぽんぽんと軽く叩く。風鈴は軽く鼻息をあげた。気に入ってくれていたら嬉しいんだけど。

 

 

「良い名だ。風に、鈴か。柄ではないが実に雅だと私は思う」

 

「せやな。これは名は体を表すかもしれんで」

 

 

 自分が付けた名前を雅とか言われると照れる。風と鈴っていう在り来たりな文字だし。現代日本に住んでた俺にはあまり実感が無いけど、この世界じゃ字が持つ力って凄いんだろうな。そんな世界で俺は今、生きてるんだ。俺も風鈴に似合うような奴に成らないといけないな。

 

 

「んじゃ、名も決まったようだし、風鈴は数日の内に城へ届けるからな。ああ、あと200頭の軍馬もそんな遅くならずに手配出来るだろう。文和の嬢ちゃんに支払いをよろしく言っておけよ」

 

「了解や。んじゃおっちゃん、後は頼むわ。ウチらは警邏の途中やさかい」

 

 

 そう言って文遠と華雄が広場を出て行く。俺も行かなきゃな。と、その前に。

 

 

「これから宜しくな、風鈴」

 

 

 そう言って風鈴のおでこ?らしきところを撫でる。それに応えてくれたのか、また「ブルルッ」と鳴いてくれた。俺はその声に何とも言えない頼もしさを感じながら、急いで文遠と華雄を追いかけた。

 




まずは、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。


今回、読者の方からあるご指摘を頂きました。

その内容とは、今話で登場する馬の名前が、まだ発売されていない新作、恋姫英雄譚で新規に登場する盧植の真名と被ってしまっているということでした。


前提として、被ったのはワザとではなく、完全な偶然です。

自分としては、まだ主人公は盧植に会ってもいませんし、董卓陣営も何進に洛陽に呼ばれていないので、盧植の真名を知らないだろうという考えで、このままで物語を進めようかと考えています。

後々、何かの伏線になれるかもしれませんし。


ただ、自分の好きな盧植と被って欲しくない、世界観が壊れる、等のご意見もあるかもしれません。

その場合、活動報告にコメントを頂ければと思います。あまりにもコメントが多かった場合、馬の名前を変更することを考えていますので。

その際、もしも希望する馬の名前が御座いましたら、お書き下さい。響きや文字が馬のイメージと合う物を採用させて頂きたいと思っています。



ついでと言ってはなんですが、その内、主人公の直属の部下にオリキャラを出そうと考えています。姓名は李儒文優です。

ただ、真名に悩んでいまして、希望の名前などありましたらこちらも活動報告にコメント頂けると有り難いです。


それでは今後とも宜しくお願い致します。
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