『英雄の器は俺じゃない ~世界最強の盟主になった一般人は、人類最後の希望を演じ続ける~』   作:マスターBT

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暑い……


雷鳴起動

「集音装置が銃撃音を感知!!場所は此処より北東へ三キロほど」

 

「衛星リンク開始……成功、AIによる画像補正完了後モニターへ映像を映します」

 

 時は少し遡りスラヴィク達が狼のアマルガムと戦闘を開始した頃、本部に残っていたミリネは緊張感のある声を聞き目を開けた。

 

「うんうん。流石はスラヴィクだねぇ〜今回の新兵達もしっかり手懐けてる様でなにより〜なにより〜」

 

 相変わらず緊張感のないトーンだが、視線はしっかり映像に向けられておりいつ自分の出番が来ても良い様に身体をほぐすミリネの姿はやはり、立派な軍人である。

 

「現場の環境データ確認。気温、マイナス十度、微風のため干渉はほぼなしかと思われます」

 

「該当地域探索記録より、中型及び大型のアマルガム発見報告あり。現在、衛星と集音装置を用いた索敵を敢行中」

 

「他支部との兼ね合いにより、衛星使用時間残り十分!!索敵を急げ!!」

 

「報告!!小型アマルガム三匹と現地部隊の戦闘終了を確認。予想される弾薬消費から継戦能力の半数を消失」

 

「ありゃ、じゃあボクの出番がありそうだね」

 

 ミリネの言葉に部隊の者達の雰囲気が浮つき始める。

 彼等は皆、アマルガムとの戦闘中にミリネに救われた者達であり、普段の彼女が見せる緩い姿とのギャップに脳を焼かれているが故に彼女の出番が嬉しくて仕方がないのだ。

 

「ッッ!!衛星カメラに反応あり!!大型のアマルガム……ヘラジカタイプだと思われます!!」

 

「おっ、それはボクが撃ち抜かなきゃダメだね。上に行くよ」

 

「はっ!!屋外の者達へ通達!!これより超長距離電導砲撃戦を開始する!!各員、放電に備えよ」

 

 ガゴンッという音共にミリネが座っていた場所が、赤いランプの光と共にゆっくりと屋上へ向けて迫り上がっていく中、彼女は着ていた軍服を脱ぎその下に着込んでいた身体にピッチリとくっ付く特殊なスーツ姿になる。

 

「っっふぅぅ」

 

 腰まである水色の髪を後ろに束ね、壁に取り付けられた絶縁コーティングの施された特殊な長距離レンズを身に付けるとガゴンッと屋上へ到着したことを知らせる揺れが起きる。

 プシュッと空気が抜ける音共に扉が開き、ユーラシアの冷たい空気がミリネの頬を撫でるが表情一つ変えず、彼女は耳に取り付けた通信機の電源を押す。

 

「あ、あー、聞こえる?」

 

『はい。感度良好です』

 

「それは良かった。方角と距離をもう一度教えてくれるかな?」

 

 決して撃ち漏らす訳にはいかないため、最終確認を行うミリネ。

 

『はっ……北東三.四キロ、風は微風、空間摩擦による空気抵抗及び弾丸の気温変化による誤差0.02%が予想されています。ご武運を!!』

 

 その言葉と共に前に出るミリネが立ち止まると、床がせり上がり半円状に彼女を包み込む。

 唯一、外界へと向けられているのは報告が上がっていた北東方向のみだ。

 

「じゃ、やろっか」

 

 軽い言葉と共に腰からナイフを引き抜くと、彼女は勢いよくその刃を自身の右掌へ振り抜き()()()()を噴き出させる。

 勢いよく噴き出した()()()()は、空気中でバチバチと青白い閃光を散らしながら一つの塊へと自動に集まっていき、反応が落ち着く頃には銃のように構えた指先に直径二センチ程の球体を形成していた。

 

『……スラヴィクだ。見えているかミリネ』

 

 まるで見計らった様に届くスラヴィクの通信に思わず、笑みが溢れるミリネ。

 

「うん〜見えてるよぉ。新人達のチュートリアルはもう良いの〜?」

 

『狼共で十分だろう。アレはユズリハの教本とする』

 

「多分、何が起きたか分からないと思うけどねぇ〜」

 

 気の抜ける声とは裏腹に彼女の身体から放たれる青白い閃光──即ち、電気はもはや雷と呼べる次元へと変化し周囲を青白く染め上げながら放たれるその時を獣の如き、咆哮を上げながら待っている。

 

『──撃て』

 

「待ってたよぉ!!その言葉!!」

 

 瞬間、あれ程うるさかった雷が無音となり全てがただ一点、ミリネの指先へと収束する。

 

「雷鳴起動──グロモヴォイ・ペルーン」

 

 静寂が撃ち破られ、彼女の合金活性(メタモルフォーゼ)により発射された球体が弾丸となり標的を撃ち抜かんとあらゆる物理法則を破壊し、一秒にも満たない時間で大型のアマルガムであるヘラジカを貫くのを彼女は特殊な長距離レンズでしっかりと見届けた。

 

「ふっふっふ〜〜これがボクの実力だよぉ☆」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべるミリネだが、彼女の着ている特殊スーツが起動し背中から杭の様なものを何本も出現させ体内の電気を必死に放電しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、すごい……今のがミリネさんの合金活性(メタモルフォーゼ)なんですか?」

 

「そうだ。破壊力という一点においては、アルタを超えるだろうな」

 

 アルタを超える──こうして実物を見る前なら、ミリネさんの雰囲気もあって信じられなかっただろうなぁ。

 ただ、余計自分がああいう能力に覚醒するイメージが持てないというか、皆凄すぎない?って感じ。

 

「無論、代償はあるがな」

 

「そうなんですか?」

 

「聞きたければ本人から聞け。それと、お前はお前で他の誰でもない。比べるのはそこまでにしろ」

 

 この人、心の中読めすぎじゃないかな。

 

『こちら本部。周囲にアマルガムの反応はありません』

 

「そうか。ミリネというカードを切った以上、今回はここまでだな。総員、荷物を纏めろ!!アマルガムが来る前に帰還する」

 

 僕も含めてだけど、アマルガムを相手した時の興奮が終わって疲れが顔に出てるもんね。

 ミリネさんの一撃でも、興奮した分もあるかな……

 

「あぁ、そうだ。帰りはビリの奴が罰で各種筋トレ百回な」

 

「「「「え゙っ」」」」

 

「ゆっくりピクニック気分で帰れると思うなよ?」

 

 鬼!悪魔!筋肉!!

 

 

 

 

「ほら、腕が止まってるぞ。さっさと動かせユズリハ」

 

「うぐぐ……!!」

 




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