『英雄の器は俺じゃない ~世界最強の盟主になった一般人は、人類最後の希望を演じ続ける~』   作:マスターBT

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三回行動の三


孤独な王国

「メタリカによる凶暴化とは、適正がない者に宿った事による強い拒絶反応が起こり宿主諸共崩壊するという研究がありましたが、この目で見れば同意するしかないですね」

 

『ガァァァ!!!!!』

 

「俺としては何故、そこまでしてメタリカが他生物へ寄生しようとするのかが気になりますが……今は彼を鎮めるのが先」

 

 メタリカに適合した者は普通の人間とは異なる異能を授かる。

 故に我々はこれを分類する為に適合した人間を『アマルガメイト』と呼び、その能力を『合金活性(メタモルフォーゼ)と定義しました──厨二臭い気もしますが、記憶を引き摺り出してきた答えがコレでしたので受け入れるしかありませんね。

 

歩兵(ポーン)を二体展開、彼を押し出してください」

 

 彼を押さえ込んでいる歩兵(ポーン)の他にも新たに二体の歩兵(ポーン)が無から錬成され、平均的な成人男性ほどの体格とは思えない力で彼をこの場から遠ざけると、三体の歩兵(ポーン)は槍を構え動きを牽制する。

 

「……メタリカとの適合に失敗した個体『ラスティワン』を人に戻すのは不可能。故にここで俺が殺しましょう。歩兵(ポーン)は前進、騎士(ナイト)は一先ず、この子を運んでください」

 

 自力で逃げられるのなら良かったのですが、どうやら俺の父親を殺すという言葉で心が限界を迎えたのか動かなくなってしまった子供を馬に乗っている騎士(ナイト)に運んで貰う。

 今回のラスティワンは、ざっくりと見て体格が三倍ほど大きくなっていますがただ力尽くで暴れるばかりで歩兵(ポーン)の力量で受け流す事が出来る程度みたいですね。

 

「これなら女王(クイーン)は必要ないですか」

 

『ガァァァ!!』

 

 振り上げられる四つの拳が歩兵(ポーン)を襲うが、彼等の持つ槍が金属音を響かせながら巧みな捌きで拳を受け流し反撃の突きがラスティワンの身体を傷つけていく。

 このまま見守っていても、決着がつきそうですね──なんて事を思ったのが所謂、フラグに繋がったのでしょう。

 

『ガァァァァァァァア!!!!!』

 

 ッッ、尻尾を生やして歩兵(ポーン)を一纏めに吹き飛ばすとは流石に予想外でしたよ。

 

『ガァァァァァァァア!!』

 

「──ですがまぁ、俺には届きませんよ。城塞(ルーク)

 

 俺の後ろに四角いブロック塀の様な腕を持つ大きなゴーレムが現れると、俺の前に腕を下ろしラスティワンの突撃を弾き飛ばす強固な城塞となる。

 

『ガァァ!?!?!?』

 

「では、これにてチェックメイトです」

 

 大きく体勢を崩したラスティワンの背後から歩兵(ポーン)が槍を突き立てると、その痛みで大きく仰け反った首を子供をライラさんのところへ送り届けた騎士(ナイト)が駆けつけ一杯と言わんばかりに首を斬り飛ばし、ラスティワンの生命活動が終わり、怪物は地面へと崩れ落ちる。

 

「……一瞬で錆びて跡形も残らないのも研究が遅れる要因ですね」

 

 これであの父親がこの世界に居たという痕跡は生き残った子供だけになりましたね。

 この世界にもあるのか分かりませんが、死後の世界ではゆっくりと過ごされる様にご冥福をお祈りしますよ。

 

「ふぅ。それにしてもこれが命を奪うという感覚ですか……味わいたくはなかったですね」

 

 俺の駒達が消えていくのを見届けながら、この戦いを観測していた者達にどうか手の震えがバレていない事を祈るのみだ。

 

 

 

 

 

 

「ラスティワンの討伐、お見事でした。流石は人甲連の栄えある盟主にして合金活性(メタモルフォーゼ)孤独な王国(ワンマンアーミー)』を持つアマルガメイトです」

 

 戦いを終えて戻ってきた俺を待っていたのはやはりと言うべきか、ライラさんで彼女は用意していたドリンクを手渡すと恭しく頭を下げた。

 

「そう持て囃さないでください。あの子供ともう一人の適合者の調子はどうですか?」

 

「はい。あのラスティワンの息子であった7番は、やはり精神が疲弊しているのか簡単な呼びかけには何一つ反応がありません。もう一人の12番も彼よりは年上ですが、まだ子供と呼べる年齢でありながらかなり落ち着き払って与えられた部屋で待機しております」

 

「そうですか。生き残ったのはどちらも子供でしたか」

 

 未来ある若者を増やせたと喜ぶべきか、それとも古きから続く知恵を失ったと悲しむべきか分かりませんね。

 ですがまぁ、今の7番に俺が会うのは間違いなく失敗でしょうからこの目で確かめるのは先ずは12番にしましょうか。

 

「12番のところへ案内してください。それと簡単なプロフィールを」

 

 俺の指示を予想していたのかライラさんが手元のタブレットを操作すると、目の前に12番のプロフィールが投影される……SF技術すっご。

 

「試験番号12、性別は女性で年齢は14~16で多少の誤差ありです。名前はアリッサ・チェンバース、アルビノを発症しており外での生活ではかなりの苦労をした様ですね。癌の発症と共に試験を受け、現在では身体を蝕んでいた癌は消滅しております」

 

 凄い経歴ですね……確かに貼付されている顔写真は髪が白く、目は赤く染まっている。

 がん細胞の消滅は恐らく、適合したメタリカが宿主を生かす為に行なったものでしょう、何件か類似したデータがあります。

 

「精神面の方は?」

 

「ラスティワンによって少々、乱れてはいましたが今は自身の身体の不調が消え去った事に喜び、与えられた部屋の中でかなりはしゃいでいる様です」

 

「なるほど」

 

 見た目はクールそうな雰囲気でしたが、きっと経験によるもので部屋ではしゃぐわんぱくさが彼女本来の気質なのでしょうね。

 

「着きました。ここがアリッサ・チェンバースの部屋となります」

 

「ありがとうライラさん。ここからは俺一人で大丈夫ですよ」

 

「畏まりました。こちらが鍵となるカードです」

 

 ライラさんからカードを受け取り、彼女が頭を下げて離れて行くのを確認してから入り口のカードキーにカードを通すと、プシッと気の抜ける音共に扉がゆっくりと開いていく。

 

「失礼するよ、アリッサ・チェンバースさん」

 

「わわっ、避けて!!」

 

「ん?ぶぼっ!?」

 

 な、何故、備え付きの枕が飛んで……あぁ、はしゃいでいるとは聞いてましたが一人で枕投げをしていたとは予想外でしたね。

 

「ご、ごめんなさい!!わ、私、身体がどこも痛くないの初めてで……」

 

「……元気なのは良い事です。ですが、枕投げは危ないのでこれっきりに」

 

「は、はい。ええっと……」

 

 赤い瞳が困惑と共に俺の顔へと向けられる。

 ふむ、この感じは俺の顔を見て自分の記憶から該当する人物が居るか思い出そうとしている感じでしょうね。

 

「自己紹介がまだでしたね。俺はアルタ・ミカエール、この人甲連の盟主です」

 

「……盟主……」

 

「あまりピンッと来ていない様ですね。つまり、一番偉い人物という事です」

 

 アリッサさん程度の年齢であれば、これくらいは理解しても当然の筈ですが……アルビノという事で避けられ、碌な教育を受けていないのであればこの無知さも理解出来るというものですか。

 自分なりに貧困と差別に基づく、学習の遅れに納得している頃、彼女の中で凄まじい解釈が行われていることなど露知らず俺は俯いているアリッサさんを見下ろしていた。

 

「……あぁ……救いはあったのですね」

 

「うん?」

 

 やけに熱の籠った色っぽい声が聞こえた様な気がしますが……?

 

「アルタ様!!貴方様こそが神様だったのですね!!!」

 

「んん??」

 

「あぁ……漸く私の元にも神の御手が向けられたのですね……しかもアルタ様という御使まで……!!」

 

 何も持ち得なかったが故に、神に縋るしかなかった少女のあまりにも無垢な信仰心を一身に浴びせれる事になるなんて……こんなのプロフィールに書いていませんでしたよライラさん!!

 

「この命、すべて貴方様の為に!!」

 

 あぁ……頼むからただの無邪気な子供に戻ってくれ……




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