『英雄の器は俺じゃない ~世界最強の盟主になった一般人は、人類最後の希望を演じ続ける~』 作:マスターBT
「おはようございます。二人とも昨日はよく眠れましたか?」
「はい!!アルタ様から直接、ご指導を頂ける幸運を噛み締めお言葉の一つも聞き逃さぬために、きっちり七時間眠りました!!」
「……え、この人さっきと全然違う」
ユズリハ君、アリッサさんの言動には早めに慣れることをお勧めしますよ。
一々、ツッコミを入れていては保たないのはこちら側だと俺はここ数日間、アリッサさんとライラさんと過ごして学びましたから。
「ンンッ、ここは人甲連が保有する訓練場の一つです。外の環境を再現した場所もありますが、お二人には
四方を多少、頑丈の壁で覆っているだけの空間ではありますがどんな能力か不明な以上、環境の補修が必要な訓練場よりここの方がコストが安く済みますからね。
「アルタ様!!何かコツなどは御座いますでしょうか!!」
「まっずく伸びた良い挙手ですね。コツというわけではありませんが、
俺の『
この辺り、今の俺に記憶が引き継がれていなかったらと思うと背筋に冷たいものが走りますよまったく。
「……自分の力が何か分からないのに強くイメージを持つって難しくない?」
「ユズリハ君!!アルタ様のお言葉を疑うの??」
「ヒッ、い、いやそ、そういう訳じゃなくて純粋な疑問だよ疑問!!」
「なら良いけど」
「……なぁ、アンタアリッサさんに何したの?」
「俺は特に。強いて言うならこの立場ですかね?」
ユズリハ君には嫌われているものだと思っていましたが、アリッサさんのキマった目を見て避難してきましたね。
その気持ちは分かりますよ、正直、俺も真正面からあの目を見続けると自己認識が狂うというか肯定感が達してはいけないところに達しそうになります。
「アルタ様から直に囁いて頂けるとは羨ましいねユズリハ君?」
「スゥゥ……さ、早速訓練を始めよう!!」
「そうですね。時間は無限ではありませんから。では──実践形式で行きましょうか」
「「え?」」
おぉ、この二人の言葉が綺麗に重なるのは中々、珍しいのでは?
「お二人は確かに貴重なメタリカに適合したアマルガメイトですが、盟主である俺が直々に立っている事に違和感を覚えなかったのですか?」
新入社員に社長が発破をかける挨拶をする事はありますが、こうして自ら細かく説明をする事はないでしょう。
ましてや俺は人類を預かる人甲連の盟主、この時間に他のやるべき事を成すべきです。
「──俺の能力は既に知っていますね?」
「『
「そうですユズリハ君。俺は一人で軍を動かす者、君達を極限の状況に持ち込むのには最適であるという事ですよ」
おや、俺は笑顔を浮かべた筈なんですがね?二人とも、引き攣った顔をしていますよ。
「では始めましょうか。安心してくださいね、死ぬ事はありませんから──
「ッッ、いきなりだなぁ!!」
「おぉ……これがアルタ様のお力!!」
飛び退いた瞬間、顔のスレスレを金属の棒が冷たく通り過ぎ反射的に息を呑む。
「アルタ様の一撃であればこの身で受けるのも厭いませんが、減点は嫌!!」
いや、これを受けるのは流石に骨が折れそうな気がするんだけどアリッサさん、二人だけで話した時は普通の優しい人だと思ったんだけどなぁ。
「余所見とは余裕ですねユズリハ君?」
「ぇ」
圧を感じた瞬間、思わず顔を守れば両手に冷たさと重さが走り景色が後ろに流れていく。
この勢いが止まったのは背中に強い衝撃を受けてからだった。
「……いった……」
「メタリカに適合した事で骨は折れていない筈ですよ」
「え、あ、確かに」
腕の何処にも赤みはなく、ジンジンとした痛みだけが残っている。
特殊な能力に目覚めるだけじゃなくて、単純な肉体の強度も上がっているなんて凄いな。
お父さんがこうなる事を望んでいたのなら、確かに命を賭ける理由にはなるのかもしれない。
「攻めるだけではなく、守りに特化した力に目覚めるかもしれません」
「なるほど!!」
ガンッッッ!!と鈍い音が響き渡って、びっくりしながら視線を向けるとアリッサさんが思いっきり、
いや、ほんと迷いないね!!!あの人!?!?!?
「ッッ……確かに折れてない!!あは、あはは!!日光にすら負ける私が折れてない!!」
歓喜の声に続くように鈍い音が響き渡る。
彼女の雰囲気に呑まれている間に、次々と拳が
「凄い凄い!!!!痛いけど、苦しくない!!」
「アルビノ体質による苦悩ですか。一種の興奮状態のようですが、興奮したままイメージを強く持てますか?」
「持ってみせます!!私は……私が今まで苦しんで生きてきたのは、空っぽの人生を歩んで来たのは今日この日に意味を得るためだったんです!!だから──見ていてください!!」
ガンッッッ!!ガンッッッ!!と殴る音が彼女の気合と連動して高まり、より強く響き渡っていく。
自分の手が壊れても構わない──そんな風に感じる光景にいつの間にか僕もアルタも、じっと彼女を見つめている視線の先でソレは始まった。
「はぁぁ!!」
ガンッッッ!!
真っ直ぐに放たれた右ストレートが
「ぜりゃぁぁ!!」
重く、腰をしっかりと落とした正拳突きが
その狂気的な笑みは何処か確信を持っているように僕は感じた。
「これが私の
両手を揃えて突き出した刹那、
「……なるほど。アルビノ体質で常に陽に焼かれていたアリッサさんだからこその金属の燃焼、科学用語で言うのなら炎色反応を自らの力とイメージしましたか」
「えんしょくはんのう……」
「金属は一見すると燃える素材には見えませんが、高温下であれば彼等も燃え特有の色を放ちます。それが炎色反応、世界が荒れ果てるまでは花火にも使われていたものですね」
そんなものがあるんだってそれって……
「……メタリカで得た力でメタリカを燃やしてる?」
「理論上は可能でしょう。彼女の火は如何なる存在であれ、燃やし尽くす業火となる可能性を秘めています──まぁ、今は
ガシャンっと音を立てて
「これが
「えぇ。おめでとうございますアリッサさん、まさかこんなに早く会得するとは思っていませんでしたよ。イメージをより強固にするためにもその能力の名前を考えておいてくださいね」
「……
「アリッサさんらしいですね」
褒めてるのになんか、困った様に笑ってない?アルタ。
まぁ、明らかに誰に捧げるものなのかは彼女の様子を見ればすぐに分かるけどさ。
「さ、さぁ、次はユズリハ君ですよ」
「……逃げた」
「逃げてませんとも。えぇ、何か?」
目が泳いでますよ盟主様?
感想待ってます!!!!!