担任による、直接の公開処刑。それは普通の学生なら「よーーし、これから楽しいクラス生活にする為に頑張るかー!」と張り切る戦場だ。
ここで上手く行けば高確率でクラスを引っ張る存在か弄られキャラで通る。
だが、上手くいかない者はそのまま砕け散りやがては「あ...お前居たんだ」と言う悲しき言葉をかけられる。もはやクラスメイトが試験官みたいなものだ。
そんな中、沼上蒼は非常に焦っていた。
「.....おかしい」
「何が?どしたん」
先程話した遠野結花が頬杖をつきながら蒼に問いかけた。
「去年まではこんな焦ってはいなかったはずだ、自己紹介だぞ。自己紹介、たった宜しくだけ言えばいいだけだ。」
「まぁ、それはそうだね。んで、だからそれがどしたん」
「......他にも言わなければならないような気がする」
「どゆこと?」
「ほら聞いてみろ」
クラスメイトの自己紹介が進む中、1人の自己紹介に耳を通した。
「村松翔吾です!!部活はテニス部入ってて、学校終わり自主練してるんで練習付き合ってください!!あと、パンケーキ好きなので美味しい店知ってるところあったら教えてください!!よろしくお願いします!」
ぱちぱちと拍手をされ、村松は席に戻る。
席に戻った時には周りの男子女子から話しかけられるあれが完璧な自己紹介の仕方。
「まぁ、確かに結構みんな好感が持てる自己紹介やってるなぁ〜。.....んで蒼きゅんはそれがどしたん。」
「蒼きゅん言うな。遠野はこの僕に何か趣味があったり想像つくか?」
「へ?うーん、そうだなぁ....なさ、そう?」
「そうなんですよ!」
「そんな真剣な眼差しで見んな笑う。」
「つまり、この状況を作ったクラスメイトを全員潰さなければならない。」
「ごめん、それだけは1mmも共感できないわ、趣味がない自己紹介が下手な蒼きゅんを恨みな。」
そのまま顔を逸らす遠野であった。
蒼は頭の中で整理をする、本当に自分に趣味は無いのか....部活は入っていない、勉強もできない....好きな物も大してない...いや待て、なんで僕は自分から目立つ行動をしているんだ?
天宮華恋という存在、遠野結花という金髪ギャル....何よりこの陽気溢れるクラス内。
......翻弄されている、完全に。
それに気づけただけでも救われた。だったらその流れを断ち切るように名前とよろしくだけで済む話だ。何を考えていたんだろうかそれで良いじゃん。
「それじゃあ、次。沼上くんね。」
担任に名前を呼ばれ立ち上がる。やばい、身体が軽い。ニヤけが止まらない、なんだ簡単じゃないか自己紹介なんて。
教壇に上がりクラスメイトたちを見る、天宮と遠野と目が合った。
「.....沼上蒼です。よろしくお願いします。」
頭を下げてそのまま戻ろうとしたその時。
「はいーー!!質問!!!」
「?!?!?!」
バッ...顔を振り返らせたと声の主を探った。天宮華恋だった、しかも手を上げている。
なんだ!?何を企んでいるっっ!?なにを言うつもりなんだっ、、この幼馴染はっ!?
「私が川で溺れてて、その隣で100万円が落ちていたらどっち取る??」
「そんなん100万だわ」
「即答!?」
「いや、当たり前だろ金には勝てん」
「薄情より....最低が勝ちそうだよ」
「お前から聞いたんだからな!?!?」
はっっ!!!と目が覚めた気分だった。いつも通り、天宮に話しかけられた感じで話してたから素が出てしまった。
「沼上くんって、ツッコミ気質なのかな?」
「怖くなさそう」
「てか、あの天宮さんと一緒に登校してたしな」
おい、聞こえてんぞそこの班。....全くこいつにはいつもペースを崩される...。
ニヤけてやがるぞ天宮、してやったりじゃねぇんだわマジで。そのまま席に着いた。
「華恋とやっぱ仲良しじゃんやっぱり」
「うるさい」
「うふふん、じゃ放課後、華恋と私と蒼きゅんとでファミレスだから帰んなよ?」
「は?....はーーっ!?!?」
「沼上くんうるさいですよ。」
「あ、ごめんなさい.....」
沼上蒼は頭を抱える、面倒な事に再び巻き込まれるんだと。