魔物を操る魔法   作:さくらいJAN

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1話

 

勇者ヒンメルの死から1年後

 

 

七崩賢の一人、断頭台のアウラは再び世に顔を出した。

警戒していた勇者ヒンメルは死んだ。

老いた勇者パーティの中で唯一戦力になるのはエルフのフリーレンのみ。

アレは優秀な魔法使いだが、魔力量が低い。

彼女の魔法『服従させる魔法(アゼリューゼ)』の前では無力である。

 

故にグラナト領に攻め入る準備を開始した。

そのために優秀な戦士を確保しようと人間の集落に攻め入ろうとしたとき、

彼女は遭遇した。

 

かつての伝説へ。

 

 

 

「久しぶりだな断頭台のアウラ」

 

 

それはエルフだった。

背の高い男。体格は細い。

杖を所持している。

魔法使い。

 

アウラをそれらの情報を元に軍勢を展開する。

小さな集落を攻めるつもりだったので戦力は少ない。

20体だ。

 

そして眼前の男は断頭台のアウラを超える魔力量であった。

彼女の魔法も使えない。

選ぶべきは撤退。

 

だが、彼女は逃げなかった。

眼前の男を知っていたからだ。

 

 

「生きていたのねエルロンド」

 

「ああ、貴様とシュラハトには痛い目にあわされた。

ゆえに奇襲させてもらった。

『目視されるまで認識されない魔法』を使ってな」

 

 

聞いたことない魔法だ。

だが、目の前のエルフがそれを使うことに違和感は覚えない。

魔王が存命の時に、最も優先して狩るべき敵として指名手配された、

魔族にとっての脅威である研究者なのだから。

 

 

「すでに包囲されているということかしら」

 

「ああ」

 

 

男の言葉と共にそれらは姿を現した。

老若男女異形区別なし。

おおよそ500体。

その共通点は角が生えていること。

 

そう、魔族だ。

 

 

「相変わらず趣味が悪いわね」

 

「貴様に言われる筋合いはない」

 

 

命乞いは無駄。

それが通用しないことは知っている。

 

彼の軍勢である魔族を威嚇することも無駄。

あれらは彼女のソレと同じものだからだ。

 

ならば押し通るのみ。

 

 

「突っ切るわよ!」

 

 

彼女は不死の軍勢と手下の魔族を伴ってエルロンドへ突撃した。

アレは魔力量が多いだけで強くない。

戦う者ではないのだ。

故に彼を狙えば、彼の軍勢は陣形を崩して彼を守ろうとする。

その弱点をついて100年前にシュラハトと共に討伐した。

だが、

 

 

「それは悪手だ獣」

 

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 

「は?」

 

 

遥か遠くの上空からの狙撃。

『目視されるまで認識されない魔法』を使用した無法であった。

 

彼女は上空に目を向ける。

誰もいない。

だが、魔力で視力を強化すると見えた。

茶色い肌に白い毛髪。

腐敗の賢老クヴァールだ。

 

既に詰んでいたか。

彼女の思考は冷静に判断する。

 

勝負は決した。

アウラの心臓には穴が開き、死ぬまでの時間を待つだけだった。

彼女の軍勢も勢いを無くし、魔族の軍勢にすりつぶされた。

 

そしてエルロンドはアウラに杖を向ける。

彼女にはそれが何を示すか理解できた。

そして言いえぬ憤怒を感じた。

 

 

「ふざけるな、わたしは……」

 

「貴様も今日から私の戦力だ『魔物を操る魔法』」

 

 

彼の魔法を浴びて、アウラは表情を無くした。

それと共に体から粒子が立ち昇らなくなる。

穴が開いたまま、しかし彼女は稼働する。

 

彼の『魔物を操る魔法』は死にかけの魔物と魔族を従えるという魔法だ。

本来死んだら塵となるはずのソレらの肉体を留め続ける。

解除されて初めて対象者は死ぬ。

 

ゆえにこれはアウラの軍勢と同様。

不死の軍勢であると言える。

 

 

「次は北部の残党だ。

アウラ以上に慎重ゆえに見つけるのは困難だが、

やり遂げねばならない」

 

 

それが私の贖罪である。

エルロンドはそう呟き、その場を後にした。

七崩賢の一人、断頭台のアウラであったモノはそれに付き従う。

より多くの魔族を狩る武器として。

 

 

 

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