詠深の妹はジョーカー   作:皐華

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プロローグ

 

夏の猛暑は9月の下旬に入ると徐々に収まりはじめ、10月の初旬に入ると街路樹の木の葉は色を変え、秋の涼しさを感じ始める季節。

 

「んー……。今日のノルマ、終わった!」

 

私、武田明日香は自室で高校受験の参考書を広げながら、高校受験の勉強。

 

「合間にスマホとかタブレット弄ってたけど……ノルマ分はこなしたからいいよね」

 

勉強机には高校野球の試合の映像を記録したタブレットやパソコンがあり、勉強の合間に息抜きで見ていたけど、家に帰宅してから1時間くらいは勉強に集中してたからノルマ分はこなせた。

 

(お姉ちゃんは今日は軽めの練習っていってた)

 

参考書を閉じてからタブレットを操作する。タブレットの試合の映像には姉の武田詠深が在籍している新越谷の秋季大会。

 

(中学の頃はお姉ちゃんは静かだった。新越谷に入学にしてから元の性格に戻ったけど)

 

中学にいた頃の姉は野球の話はあまりしなかった。新越谷に進んでからはいい仲間に出会えたのか、野球部の様子を嬉しそうに語っていた。

 

コンコン

 

階段が昇る音が聞こえると部屋がノックされる。空いてるよと返答すると扉が開く。

 

「ただいま」

「お帰り。お姉ちゃん」

 

扉の前に立っていたのは練習道具と通学鞄を左肩に抱えた姉。

 

「勉強は順調に進んでる?」

「ボチボチ」

 

姉は部屋に入ると私の机にパンフレットを置いた。

 

「なにこれ?」

「新越谷のパンフレット。芳乃ちゃんにもらってきた」

 

パンフレットを手に取ってペラペラと捲っていくと新越谷の校風や部活の紹介が記載されいていた。

 

「明日香ちゃんはまだ高校を決めてないんだよね?」

「決めてないよ。スカウトも1つしかないし」

「県外は絶対ダメ」

 

見終えたパンフレットを姉に返す。

 

「お母さんからも反対された。寮生活は馴染めないだろうからって」

「私もそう思うよ」

 

中学では外野手としてプレー。左腕不足のチーム事情もあり、後半から投手を始め、素質を評価して県外の高校からスカウトが来ていたけど、母からは県内の高校の方がいいと反対。

 

「明日香ちゃん、勉強ばかりで退屈でしょ?」

「そうだね」

 

姉はそういうと思っていたと笑顔を見せながら。

 

「キャッチボールしようよ! 今日は軽めだったからまだ動けるから!」

「お姉ちゃんが体を動かしたいだけでしょ」

「そ、そんなことないよー」

 

姉は吹きなれていない口笛を吹きながら私から顔をそむける。

 

「いいよ。今日分のノルマはこなしたし」

 

夕食までは時間もあるし、ストレスの解消にもなるかもしれないしね。

 

「いくよー!」

「思いっきり投げないでよ」

 

庭でボールが取れる位置まで離れてからキャッチボールをはじめる。

 

「明日香ちゃんとキャッチボールをするのって子供の頃以来だね」

「そうだね」

「あの頃はお姉ちゃんのボールが取れないーって泣いてたのに」

 

何時の話をしてるの……?

 

「あの頃は甘えてたのに。今はツンデレみたいに冷たいし」

 

ツンデレって古いな……。ってか、何処から聞いてきたんだ。

 

「私とお姉ちゃんは別々の中学で疎遠になったからね」

「中学の野球は楽しかった?」

「楽しかったよ。成長できたと思うし」

 

私と姉は別々の中学に進んだ。中学の野球は自主性を尊重する内容で、練習は厳しかったけど、試合は思いっきり楽しむ方針で中学に入る前よりも成長できたと思う。

 

「高校でも野球は続けるの?」

「そのつもり」

 

中学の目標は全国だった。3年間で目標には届かず、野球から離れる人もいる中で、私の野球への思いは消えることなく今も燃え続けている。

 

「明日香ちゃんはタマちゃんと会ったことないよね?」

「タマちゃん?」

「子供の頃に家によく来てた子」

 

あー……。お姉ちゃんとカラーボールで遊んでた人ね。

 

「その人も新越谷なの?」

「一緒だよ」

 

幼少時に遊んでいた友達が同じ高校で再会したってわけね。

 

「新越谷に興味があるなら、皆と会ってみる?」

「秋季大会が終わったばかりでしょ? 大丈夫」

「冬の合宿前なら大丈夫なはず」

 

姉に夏の合宿のメニューを見せてもらった時に部員が少数ながらも中身の濃い練習メニューをこなしており、これは成長できると思った。

 

「じゃあ、お願い」

「かしこまり!」

 

姉が楽しそうに話す新越谷の仲間と環境。私は今年の春からは最後の年だからと関心を持たずに引退してからは、楽しそうに話す姉と新越谷の環境に興味が向いたし、会ってみたい。

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