そもそも、どうしてぼくがユズを負かすことにこだわるようになったのか。もちろんユズの興味関心をぼくに向けさせる…のもあるんだけど、実はもっと大事なきっかけがある。
それは5年前、カロスでフレア団の事件が起きた時。それはもう大変だった。ぼくの配信にもカロスアンチが湧くし、フレア団自体がカロスに強く根付いてたのもあって、カロス全体が混乱してた。それでもミアレは好きだったし、何よりじーちゃんやユズが一緒にいてくれたから苦しくはなかった。……でも。あの時、ユズが言ったんだ。
「……なあ、カナリィ」
「どうしたの?やけに真剣な顔して」
「俺、いつかミアレを出るよ」
「………え?」
「今回フレア団の事件でカロスが大変なことになってさ……俺、改めて感じたんだ。もっと、強くならなきゃなって。だからいつかミアレを出て、自分をもっと鍛える。それで……」
他にもなんか言ってた気がするけど、ぼくはもう放心状態でなんも耳に入らなかった。ユズ……ぼくを置いていくの?そんなのやだよ、ずっと、ずっと一緒にいようよ……
そのあと、ぼくは必死で考えた。どうやったらユズを繋ぎ止められるんだろう、どうしたらユズはぼくから離れない?そうして必死に思いついたのが、ぼくがユズより強くなることだった。一番身近なぼくの方が強ければ、ユズは負けず嫌いだからそれに噛みつく。ユズはみず使いだから、それの弱点をつけばいい。ユズの相棒のラグラージだって、手持ち全員にくさ技を覚えさせればいい。ずるいって思う?でも、それだけぼくは必死なの。
「は〜い、今日もぼくの勝ち!ユズ、今日もぼくのお願い聞いてね?」
「くっそ……カナリィお前、ほんっと……」
「なになに〜?文句ならぼくに勝ってからにしてよねwww」
ユズを負かすのは正直気持ちいい。それにユズは勝負好きだからぼく…勝者の言うことをなんでも聞いてくれる。優しいユズが、ぼくに対してだけは分かりやすく負けず嫌いをむき出しにしてるのがちょっと快感。
「なぁカナリィや……いつまでこんなこと続ける気じゃ?」
「……どういう意味?」
「ユズくんを負かして言うことを聞かせて……お前がユズくんのことを好きなのはわかるが、素直に気持ちを伝えた方がいいんじゃないのか?」
「……だって。それでユズに拒まれて、この関係が崩れたらどうするの。そんなの……」
「カナリィ……」
ぼくだってユズの気持ちを無視してるのはわかってる。でも……怖いんだ。ユズからもし、ぼくのこと恋愛対象として見てないとか言われたら。そんなの考えたくもない。ユズとぼくはずっと一緒の幼馴染。それでいいんだよ。
《side ユズ》
5年前、フレア団がカロスで3000年前の最終兵器を起動させるという大事件があった。事態こそ収まったものの、そのあとは芋づる式にフレア団の悪事が明るみになっていった。ミアレの停電も、ポケモンたちの行方不明事件も。さらにはトップが捕まって、フレア団の下っ端どもがミアレで暴れるなどした。その時……俺は自分の立っていた地面が、今までの幸せが崩れ去るような感覚に襲われたんだ。
こんな身近に、脅威が潜んでいる。特に恐ろしかったのは、下っ端どもの大暴れだ。カナリィには隠しているが、実はあの時、俺はフレア団の下っ端どもと戦ったんだ。下っ端1人1人は弱かった。でもその時に、下っ端たちの悪意というか、人間としての違いみたいなものを見せつけられた。
嬉々として人を傷つけて、自分のポケモンが傷ついても気にも留めない。そんなやつらが知らん顔して今まで潜んでいた……その事実が、どうしようもなく怖かった。だから、強くなりたかった。
「いつかミアレを出て、自分をもっと鍛える。それで……」
「カナリィ。お前を、守れる男になるから」
が、現実とは厳しいもので。カナリィのでんきポケモンに俺は負け続きだ。こんなじゃお前を守れない。俺はお前を守りたいんだよ。
カナリィ。お前は俺にとって、一番大切な女の子なんだから。
ユズの手持ち
ラグラージ マリルリ ギャラドス ミロカロス
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