響はと言うと。
管理外世界のミッドチルダへと来ていた。
『え?
なんで?』
「今更過ぎる疑問だな。アイシテル。」
『うん・・・まぁ。』
「ふふふふ。どうして?
そう思ったことだろう?」
『・・・うん、まぁ。』
「ほら、聞いてごらん?
どうしてこんなとこに来たの?って。
かもーん。りっすんみー。」
『うざキモいってこういうのを言うのかな?』
「そんなことを聞けとはいっとらんっ!!」
『・・・はいはい。で、どうしてミッドチルダにまで来たの?
地球、ほっといてよかったの?』
「ふふふ、良くぞ聞いてくれた。」
『聞けって言うから・・・面倒くさいな、もう。』
「簡単な話だ。
俺のことを誤解しまくるバカドモなど知ったことかっ!!
という真理にたどり着いたのだ!!」
『・・・それで?』
「は?」
『オチは?』
「いや・・・あの・・・」
『オチは無いの?』
「えと・・・その・・・あれだよアレ。」
『無いのね。つまらない男は嫌われーーー』
「いや、待てっ!!
それで俺は気づいたんだよっ!!」
『何に?』
アイシテルはもちろんオチなどないことは気づいている。
理由もきっとなんとなく前々からアイシテルに聞かされ、興味が深かった魔法の世界というものの典型。ミッドチルダ。ここに来てみたかったとかそんなところだろう。
端的に言うなら響をちょっと苛めて楽しんでいたのである。
余裕綽綽である。
しかし、次の響の一言で爆弾を投下された。
「アイシテルを人型にするのだっ!!」
『え゛?』
「俺はアイシテルが好きだ。
前回の一件でアイシテル以上の女はいないと気づいた。
なればこそ!!
おっぱいを揉んだりしたいっ!!
え、えええ、えっちなことかもしたいっ!!
だが、残念ながら、アイシテルはデバイスだっ!!
おっぱいも無ければ股間もない。
さらに言えば、むちっとした足も手を繋ぐための手も無い!!
その可憐な笑顔であろう顔を見る術もないっ!!
だからこそ・・・そうだからこそっ!!
俺はアイシテルの改造方法を知るため、ミッドチルダの無限書庫とやらに行こうと思ったのであるっ!!」
『ふぇっぇええええええっ!?』
「驚いてる声も良いっ!!
ああ、これに表情が付けば、その笑顔や驚く顔で俺は昇天してしまうだろうっ!!」
『ば、ばか言ってーーー』
「俺は結構本気だっ!!」
『・・・ま、また好きとか言って・・・その、私デバイスだよ?』
「問題ない。仮に人型になれなくてもなっ!!」
『私・・・人型になっても子は残せないと思うよ?』
「ふっ!
愚問だな。
それもまた問題は無い。些細な問題だ。」
『からかってる?』
「ふざけて愛の告白をするほど落ちぶれたつもりも無い!!」
『・・・。』
「アイシテル?」
『・・・別に。勝手にすればいいじゃない。』
「えーっと・・・告白の答えとかは頂けないんでしょうか?」
『いや。』
「え?」
『イヤだって言ってるの。』
「な?」
響が泣きそうになる。
『情けないし、ビビリだし、逃げ腰だし、誤解されやすいし、アホだし、馬鹿だし、少しナルシ入ってるし、イケメンといっても見た目だけだし、魔法の腕も下手だし、戦闘も弱いし、おっぱい揉む揉むって下品だし。銀髪でオッドアイで気持ち悪いし。』
「・・・ぐずり。」
響はさめざめと泣いてしまった。
『でも・・・その・・・ずっと私を好きで居てくれるって言うなら・・・考えてあげないことも・・・無いよ?』
無いよ?のあたりで響の眼下には黒髪黒目のツインテール美少女が小首を傾げて頬を軽く染めながらこちらを上目遣いかつ流し目で見てくるような幻視が見えた。
鼻血を垂らす。
『ど、どうしたの?』
「いや、なんでも・・・。でも本当にいいの?
そのあれだけ言っておいて・・・」
『なんだかんだでずっと見てきたんだから。
貴方がどういう人間かは分かってるつもり。
・・・デバイスを好きだって言うほどの変態だとは思わなかったけど・・・別に悪い気はしないし・・・どうせずっと一緒にいるんだから隣にいる形として、デバイスとして・・・道具としてじゃなくて・・・恋人として大事にされながらも悪くないかなぁって・・・』
「あ、あいしてるぅ・・・」
『キモイから鼻水拭いてよ。
もうっ!』
「ずず、ごめん。」
『ちゃんと惚れるような男の子に成長してよ。』
「うん!
まかせとけっ!!」
『まかしといたら不安だから私も手助けするけどさ。』
「・・・あいかわらず一言余計だな、オイ。」
『それで、無限書庫に入るんでしょ?
身分証明とか大丈夫なのかな?』
「ふっ。安心しろ。
俺は出来る男。
そこで身分証明書を売ってるオッサンから結構な高額で買い取った。
この世界に来て稼いだ金がぱーになってしまったが、これもアイシテルのためを思えばこそ。
痛くも痒くもない。財布には痛いけれど。」
『・・・怪しいとは思わなかったの?』
「何が?」
『・・・もういいわ。どうせ通れないだろうし。』
「何を言ってるんだよ?
そろそろ行くぞ。」
『はいはい。』
もちろんのこと。
「だ、騙された・・・。」
『でしょう?』
「良い人だったのに・・・」
『身分証明書をその辺の人に売って歩く人間が良い人なわけないでしょうに・・・馬鹿のままじゃ、お嫁さんになってあげないよ?』
「ま、まてっ!
今のは何かの間違い、手違いで・・・」
『言い訳しない。
とっとと次の手段を考えて。』
「・・・うん」
ちなみに無限書庫には普通に立ち寄れた。
変な身分証明書を見せたがために引き止められただけだったのである。
「なんという無駄金。」
『アホ過ぎる・・・』
「まぁ・・・高い授業料だとでも思って置こう。」
『そうでなきゃやってられないわよ。』
無限書庫で調べていくと、デバイスの擬人化。
もとい人化は現在ではほぼ失われた技術だと言われている。
現存する人型デバイスは全てユニゾンデバイスといわれ、デバイス単体での戦闘やデバイスを術者が展開した場合の戦闘力の飛躍的な向上から需要や研究は盛んにされているものの、未だ一般化できるほどの報告はないとのこと。
現在は一部の試験機が研究所のいくつかに点在してるのみで、もちろんのことそういったところの技術が外に漏れるわけもなし。
早くも手詰まってしまった。
「どうしよう?」
『気長に見ていくしかないと思うよ?』
「この・・・図書館をですか。」
響は無限書庫を見回し、げんなりする。
「・・・とてもじゃないがそんな気にはなれない。」
『魔法を使えば?』
「どんな?」
『グーグレ先生っていう魔法があってね・・・』
さっそくその魔法で検索をかけてみると検索に引っかかった本がひとりでにやってきた。
やったね!グーグレ先生!!
「便利すぎる。」
『ほら、とっとと読む。私を人にしてくれるんでしょ?』
「おうともさっ!!」
日が暮れるまで読み続けた響であった。
☆ ☆ ☆
一ヵ月後。
「こ、これだぁっ!!
ふむふむ・・・なになに?
古代ベルカの夜店の書?」
『それだと訳し方が違う。
私に良く見せて。』
「うん。はい。」
『えーっと夜天の書・・・なるほど、確かに。夜天の主に守護騎士・・・か。』
「で、結局どうすればいいの?」
『この手法だと、まず私の本体はナイフであることには変わりない。
それとは別に依り代を用意する・・・人形に私の魂を移すって言った方がわかりやすい?』
「へー。」
『ナイフは心臓代わり。依り代は死なない操り人形って言ってもいいかも。作るのに半月はかかりそう。』
「・・・ふふふ、ようやくアイシテルと抱き合える日が・・・」
『・・・まだそこまで許してないんだからね。』
「それを許さないとどこまでだっていうのさっ!?」
『て、手を繋ぐ?それくらい。』
「なっ!?
なんという生殺しかっ!!
俺がアイシテルに惚れてるのを知ってるくせにっ!!」
『う、うるさいなっ!!
私だって初めてで恥ずかしいんだからそんなこといきなりできないよっ!!』
「・・・うぐぐ・・・恥ずかしがってると言うならばまぁ・・・許そう。」
『何様よ。嫌いになるよ?』
「ごめんなさい。」
『よろしい。』
☆ ☆ ☆
というわけで。
さらに半月後。
『・・・上手く行かないなぁ。』
「うーむ。」
意外と難しかった。
それは当然。
仮にもミッドチルダを始めとした全次元世界の研究者がこぞってユニゾンデバイスを作ろうとしつつも汎用化には至っていないのである。
いくらチートデバイスによる作成とはいえど簡単なことではない。
『とりあえず一回帰る?
文香ちゃんもいい加減心配してると思うよ?』
「・・・それもそうだな。必要な材料はすでに買い込んであるし。」
ちなみにミッドチルダのお金はフリーの魔導師として稼いでいる。
ちょっとした家が買えるほど稼げたのはひとえに響の魔力的な才能とアイシテルがあったからこそだ。
『あら?もう帰っちゃうのね?』
『ええ、またこっちに来た時はよろしくお願いします。』
『はい了解。気をつけて帰ってね。』
『ありがとうござました。』
今通信している相手はリンディ・ハラウオン。
なにやら最近、事情のある子供を預かり、その子供と家族の裁判があったとか。
もといテスタロッサ家族である。
その家族のことに掛かり切りで忙しいところにフリーの魔導師として名前が売れ始めた響のことを聞き、クロノとか言う少年と一緒に仕事をしていた。
もっぱらクロノが指揮で、響が現場で動くといった具合だ。
さて、原作であるならば彼女は普通に仕事をしつつも裁判に臨んでいたはずだが、ここは現実。
裁判と言うのは法律と言う名の非常に厳しい決まりがある。
例え情状酌量の余地があったとしても完全な無罪は厳しいと言わざるを得ない。それが社会である。
さらに言えば原作との相違点。
それは山田君によるPT事件の介入。NARUTOの漫画には穢土転生と呼ばれる擬似的に死者をよみがえらせる秘術がある。
それによる反魂でアリシアテスタロッサは生き返り、プレシアテスタロッサは憑き物が取れたかのように放心し、ついでとばかりに山田君による「そげぶ」・・・すなわちS(説教して)GE(ゲンコツで)BU(ぶん殴る)によりプレシアは「フェイトを娘と見ろ」と言う旨のオリヌシくさい言葉を頂いたが、結局それだけは上手くいかなかったらしい。
そんな経緯の元、テスタロッサ家族を助けるために奔走しているのがリンディというわけだ。
もちろん原作ならばフェイト1人分であるのに対し、さらに2人分の処理が待っている。
もともとはプレシアは管理局に命じられた実験のせいで娘を失ったことが原因であることもあってなんとか軽い罪にまで押さえ込めそうなのだが、もちろんそれには多大な面倒ごとがある。
そこで頑張る以上、仕事にかまかける暇は確実になくなるわけで体を酷使したリンディに対し、クロノが艦長代理としてリンディの仕事の全てを肩代わり。とはいえクロノもまた裁判に関することで艦を開けることが多く、それでも難しいものがあった。
そうなるとリンディの艦の主戦力であるクロノが現場につけなくなるため、その補填としてフリーの魔導師である響が雇われることという経緯がある。
あわよくば人手不足解消のため、響をそのまま雇うつもりでもあったりもするが山田君が管理局勤めである以上、響は入隊するつもりは無いだろう。
『実物がみれればなぁ・・・』
「博物館にあるかな?」
『いや無理でしょ。夜天の書ともなれば少なくとも一級ロストロギア指定は受けるだろうし、仮にあったとしても手にとって見ないことには・・・ていうかアレ、今は名前を変えて色んな主を転々としてるみたいよ?』
「・・・ふう、しょうがないか。仮にあったとしても・・・サーチなんてものをかけたら・・・」
『逮捕ね。』
「・・・気長にやるしかないんだな。」
『残念ね。』
「ま、いいよ。これでもう一つの目標に全身全霊を向けられる。」
『何?』
「聞いてたろ?
ヤツの胸を揉んで、無駄に巨乳にしてやるのさ。」
『・・・本気だったのね。』
「もちろん。」
『殺されるかもよ?』
「今は腕も上がった。むしろこっちが殺してやる・・・のは日本人である俺には無理だが、ぶっ飛ばしてやる。」
『いっそのことジュエルシードを回収してそれに願えば良かったかもね。』
「なん・・・だとっ?」
『記憶の改竄も可能だったかも?』
「・・・。」
『泣いたってもう遅いよ。』
「・・・ば、馬鹿なことを言うな。そんな卑怯(チート)な手で自分の犯した責任から逃げるつもりは毛頭―――」
『あ、あんなところにジュエルシードが!』
「な、何ッ!?
どこだっ!?」
『・・・責任がなんだって?』
「・・・。」
響はがっくりと膝を付く。
「アイシテル・・・俺に恨みでもあるのか?」
『安心して。好意しかないよ?』
「・・・からかってるのは分かるけど、それでもドキっとしてしまう自分が憎い。」
『・・・結構本気なんだけどなぁ。』
「何?」
『なんでも。』
なんだかんだでようやくラブコメを繰り広げ始めた響である。
相手は機械であるが。
こうして初めてのミッドチルダ旅行は幕を閉じる。