『そういえばグラーフアイゼンと言えば、鉄槌の騎士と呼ばれた守護騎士のデバイスだった気がする。』
「は?
唐突に何を言ってるの?」
『ほら、夜天の書についての本を見つけたでしょ?
そこにそう書いてあったのよ。』
「ふーん。それで?」
『だーかーらー。彼女達を撃退。その後をつけていけば夜天の書を見つけられるかもしれないってこと。』
「ほうほう。なるほど・・・ってバカ言うなよ。
そう都合よく見つかるわけ無いだろ?
漫画の読みすぎだ漫画の。たまたま名前が一緒だったとかの方がまだ説得力があるわ。」
『響が言うなっ!』
「・・・試す価値はあるかもしれないけどさ。このままだとアイシテルの擬人化は下手をすれば20年後とかになりかねないし。」
『一応言っておくけど、何も無いとこから20年前後で守護騎士プログラムを作り出すなんて普通は不可能だからね?』
「はいはい、分かってます。アイシテルは凄いっ!
可愛いっ!!格好いいっ!!」
『馬鹿にしてるでしょ?』
「少なくとも可愛いは本心だ。」
『ふーん、なら許すけど。』
「そこは照れて欲しかった。」
『それよりもどうするの?』
「どうもしないってば。そもそも戦うのは勘弁。理想を言えば横から掻っ攫うのが一番。あれほど強い人間ともなると多分原作組みの誰かでしょ?あんなモブ今までに一度も出会ったこと無いし、キャラ濃いし。主人公と戦わせて撤退するところか、主人公組みとやりあってる隙に彼女を捕縛して詳しい話を聞こう。敵ならば彼女を捕縛しようとしても少なくとも高町さん達は敵に回ることはない・・・と思いたい。」
『漁夫の利ってやつ?
・・・主人公にはなれないタイプね。』
「ほっとけ。」
なんだかんだで彼はこの物語の主人公ではあるのだが。
響達はというと夕食をとりつつ、自宅でのんべんだらりと過ごしていた。
母親はすでに魔法については知っているため問題は無い。
当初、魔法もといデバイスが普通に売られているものと思っていたため、普通に使っていたのだ。
それを見て、最近の玩具はすごいのねぇとつい最近まで思っていた文香も文香だが。
この親ありにしてこの子ありというやつだろうか?
一応響は前世の親の記憶を持っているのだけれども。
「何の話かは分からないけれど、悪いことはダメよ。」
「大丈夫、母さん。そんなことしないつもりだから。」
「つもり、じゃなくてダメよ。」
「分かってるって。」
『で、じゃあ待つの?』
「おうさ。伏して機を待つ・・・ってね。」
『名言臭いけど、別に名言じゃないね。』
☆ ☆ ☆
「おわーっ。ドンパチやってるなあ。」
『なのはちゃんを助けなくていいの?』
どうやら赤のゴスロリ少女。ヴィータになのはが襲われている。
響は黙って隙をうかがうのみ。
「助けに入って、まとめて撃墜されるフラグですね?わかります。」
『・・・卑屈になりすぎでしょう。』
「こっちに残して置いた厨房からの映像・・・見ただろ?
お話とか言っておいて友達になりたがってた相手を全力で撃墜するんだぞ?
正気を疑うわ。子供は残酷だって良く聞くけど、それを目の辺りにしたね。戦慄しました。確かに可能性は低いだろう。性格的に。だがアレを見た後だと彼女ならやりかねないと思わせる何かがある。」
『で、堕ちるフェイトを助けた山田君が何気に好感度アップと・・・』
「妬ましい、妬ましい、妬ましい・・・三段活用。」
『活用されてないよ。』
「しかも撃墜されて置いて普通に友達になろう的なことを言ってそれを了承するあの金髪少女・・・フェイトとか言ったっけ?日本語訳で運命を意味する名前、親が厨二としか思えない。というのはともかくとして、あのフェイトとやらもすぐに仲良しこよしじゃん?
なのはが撃ったスターライトブレイカーとやらで服が破れてたから・・・殺傷設定の収束砲喰らっておいてだよ?
それを受けておいて友達になるとか・・・心が変態的なまでに広いか、もしくはドMとしか思えない。
見目麗しいというのに、変態だったんだ。今更ながら深く関わらなくてラッキーだったね。」
『どことなく悔しさがにじみ出てるけど?
あのフェイトとか言う女の子にまで好かれた山田君に対する負け惜しみにしか聞こえないよ。』
「そ、そんなこと・・・あるはずないだろ。」
『ていうか、私が好きなんでしょ?
浮気は許さないからね。』
「ああ、分かってる。例え今更高町さんや月村さんが“二番目でもいいのっ!!私を好きになって”と言ったとしても俺はことわーーー」
『それは無いから私としては安心ね。』
「・・・。」
『ほら馬鹿な話はここまで。決着がつきそうだからセットアップしといて。』
「夢を見るくらいいいじゃん・・・せっとあっぷ。」
響の西洋甲冑が出現する。
毎度の事ながら脱げる。
ロングソードを抜く。
このロングソード。一応バリアジャケットの一部として展開されているため、バリアジャケットと同等の耐久性を持つのにも関わらずにちょいちょい折れる。
周りの人間がどれほどチート性能なのかが分かるというものである。
いまや魔力を纏わせないと使い物にならない。
「その辺の魔導師ならこれで十分なんだけどなぁ・・・まぁいいや。いくよ、アイシテル。」
『ちゃんと覚悟決めて、ちゃっちゃと攻め込まないと援軍が来るからね。』
「わかってる。」
『目標は?』
「それもわかってる。
今回の目標は鉄槌の騎士・・・もといあのスティック使いの少女の捕縛。そして離脱。」
『おっけー。んじゃ・・・カートリッジロード。
なおかつブリッツフォーム!!』
鎧が離着(パージ)。
ヒラッとした服装に変わり、加速する。
なのはを倒し、本を構え、油断している今がチャンスだ。
なお、なのはに対する誤解はもう解くことを考えていないため、この件で助けが来たと思われても、むしろまた変な誤解を受けることになっても問題ないと考えている。
ゆえにためらいはない。
「暗黒的なエクスーーーっとやばっ!?」
大きな魔力反応が2つと小さな魔力反応が一つ。なのはへ飛来する。
それを見て瞬時にバックに下がり、魔力を抑えて隠れる。
「・・・は、早すぎるだろ・・・」
『どうも何かの手段で転移してもらったみたいね。』
「そういえば高町さんが主人公だということを忘れていた。主人公のピンチに仲間が助けに入るのはお決まりなのに・・・すっかり忘れてた。くそう。」
『悟飯が死にそうになった時にピッコロさんが助けに入るようにね。』
「ふっ、そこであのシーンを持ってくるとはオヌシもやるのう?」
『いえいえ、オヌシほどでは・・・で?
どうするの?』
「切り替えが凄いっすね。
・・・どうしようか?」
『今出ていっても・・・』
「うん、まぁ言わなくても分かる。
確実に面倒だよね。山田君(ヤツ)もいるし・・・少なくとも彼は俺を重点的に狙ってくるだろうから、捕縛どころじゃないな。」
『主人公組みが撃退するまで待つ?』
「・・・そう簡単に後をつけることが出来るとも思わんが・・・それ以外方法もないしね・・・」
『あ、敵方の援軍もやってきた。』
烈火の将シグナムと盾の守護獣ザフィーラだ。
激しくバトルをおっぱじめる2人。
『ますますつけるのが難しくなったね。』
「・・・今回は退こう。あいつら怖い。」
普通に剣で切り結ぶフェイトとシグナム。
そして殴り合うフェイトの使い魔アルフとザフィーラ。
正直この乱戦の最中に入るのは気が引けた。
『でも弱いみたいだよ?』
「弱いって?誰が?」
『あの守護騎士達。
多分、まだ夜天の書が覚醒して無いからじゃない?
今ならまだ叩ける。』
「・・・あれで?」
響はアイシテルから目の前の激戦へと視線を戻す。
そして逸らす。
『古代から戦ってる騎士たちが、いくら才能があっても10にも満たない子供にまともに戦う必要があるワケないでしょ。
本来ならとっくに潰されてる。カートリッジの有無もあるし。』
「へぇ・・・じゃあなんで?」
『だから彼女達(シグナムたち)が弱いって言ったの。覚醒して無いから主からの魔力の供給が不十分。
多分魔力ランクで言えばCかDあたりね。』
「・・・え?それで互角に・・・というか推し始めてるっていうのか?」
『戦闘経験と技術、デバイスの性能差・・・これでカバーしてるみたい。とんでもない力量よ。だからこそ夜天の書を確保する機会は今を置いて他は無い。いつ完成させられるかも分からないし・・・チャレンジは出来るだけしておくべき。どうする?』
「・・・どうするも何も時間制限があるなら参加するしかないだろう・・・そんなのが四体。ぞっとするな。今の内に夜天の書のことを聞かないと・・・」
ここらで、なぜ素直に話をして夜天の書を見せてくれないのかをたずねないのか?
と気になった人もいるだろう。
が、夜天の書と主はいわば彼ら守護騎士にとっては自身の身よりも大事な存在。
そんな存在にあわせようとするはずもないし、ヴィータという名の話が通じない前例がある。
とてもじゃないけどその手は使えないと判したのだった。
こうして響はただひたすらに機会を待つことにした。