「くそ、あいつら・・・好き放題しやがって。」
「シャマル、まだかっ!?」
「・・・無理よ・・・こうまで詰められたら・・・闇の書を使う余裕も・・・っ!?」
ヴィータたちは追い詰められていた。
「ヴィータちゃん、話を聞かせて。」
「話すことなんざ・・・何もねぇっ!!」
弾丸を撃ち放つが、それは全てなのはのラウンドシールドに防がれる。
なのはは防御型の魔導師。
なのは自身の才能に加えて、魔力ランクC~Dに過ぎないヴィータには満に一つも傷をつけることは出来ない。
それは他の2人も同じである。
一番の攻撃力を持つヴィータですら不意打ちでもない限り倒せない。
これは完全な手詰まりであった。
勇者王―――仮面の男の目的は闇の書の完成で、できれば彼女達に加勢したいがこの状況でしたところで結果は目に見えている。
だが、そこに赤色の雷が降り立つ。
シグナムだ。
「シグナムッ!?」
「ヴィータ、まだ元気なようだな。なによりだ。」
管理局の皆はそれぞれが驚く。
そして続く黒い軌跡。
響だ。
重厚な音を発てて、砂漠に降り立った。
「ぶはっ!?
ぺっぺっ!おいこらッ!誰だがしらねぇが砂が舞うんだよっ!!もっと大人しくできねえのかっ!!」
ここは格好いいシーンのはずなのにヴィータに起こられて台無しになった。
『ぷくくく。』
「笑わないでくれる?アイシテル。」
「アイシテル?
オマエ、まさか?」
「ああ、鎧変えたまんまだったね。これでーーーわかるだろ?」
いつもの甲冑に姿を変える響。いや、そこは顔が分かるブリッツフォームだろ?と思わないでもない。
「オマエ・・・どうして・・・」
「・・・。まぁしょせん誤解が増えるだけ。そう思うことにした。いざとなったら世界の果てまで逃げてやる。それに一応の対策もしてる。」
『見て驚かないでよね?』
ここでユニゾンデバイス。融合騎の特徴を述べておく。
融合騎と魔導師がユニゾンした場合、その姿かたちは相性や融合騎自体の力によって千差万別に変わる。
さらに言うと融合騎の力が強ければ強いほどユニゾン対象に強い影響を与える。
すなわち。
肉体的なチートを持たない響が、神様印のーーー神が用意したチートデバイスであるアイシテルとユニゾンするともちろんのことアイシテルの方に大きく軍配が上がる。
鎧を取る響。
そこから出た顔はアイシテルよりでアイシテルと響の容姿を付け足したもので、今更であるが身長も幾許か伸びているし、鎧の下では胸も出ていた。
さらには股間にあるべき物がない。
要はアイシテルの人化姿に近づいたのだった。
響の元の肉体の影響が出ているのはせいぜいアイシテルの髪と目の色。銀髪であり、オッドアイであるということだけだ。
これにはモニター越しに見ていたリンディとクロ、エイミィも驚く。
てっきり響かと思ったら、別人だったのだ。
デバイスの形や鎧姿から無関係ではないとは思えるが、それだけである。
響は剣を抜く。
ユニゾンすることによって力の増した剣は煌々と輝きを放つ。
光沢が増したような気がした。
「さぁ、いくぞ。」
こうして戦闘は始まる。
☆ ☆ ☆
響の相手は同じくイレギュラーたるプレシアテスタロッサだ。
「まさか融合騎とはね。」
「・・・ここまで速攻でバレルとは。」
「私を見くびらないで欲しいわ。」
プレシアはストレージデバイスを構え、早速攻撃を開始する。
「今なら子供のオイタで済ませることが出来るのよ?
止めておきなさい。覚悟も無しに犯罪者の仲間入りはーーーっ!?」
「暗黒的なエクスカリバー!!」
「くっ!?」
響が暗黒的なエクスカリバーをふるって、その口を強制的に閉じさせた。
プレシアはデバイスで剣を受ける。
「覚悟はすでにしたーーーと思う。だから余計なお世話だよ、お姉さん。」
「お姉さんね、嬉しいことを言ってくれるじゃない。」
なのはの両親もそうであるし、響の親も含めてそうであるがどうしてこうも若々しい親御さんが多いのだろうか?
若返りの秘薬が巷で流行しているに違いない。
そのまま響は押し出して、プレシアの態勢を崩し、そのままバインドで締め上げる。つもりだったが、それを瞬時に移動したプレシアに避けられた。
「っ!?」
「仮にも大魔導師。さらに言えば、フェイトに技術を教え込んだのは誰だと思ってるの?今のあの子に出来て私に出来ないことはないわ。」
「ちっ!」
ソニックムーブで響の背後に回ったプレシアが響に向かってその鎌を振り下ろす。
彼女のデバイスは鎌形で、バルディッシュに似ている。
『ぷろてくしょんっ!』
「ただのプロテクションくらいなら・・・カートリッジロードッ!!」
『ロードカートリッジ。』
ガシャコンと音を発てて、カートリッジが装填される。
同時に鎌に強力な魔力エネルギーが迸り、それが響のプロテクションと反応し、大爆発を起こした。
吹き飛ぶ響。
「ハーケンセイバー!」
飛び来る刃。
それらが響を襲うが、それらを意に介さず切り落とす。
爆発する。
その爆発に紛れてプレシアはさらに追い討ちをかけた。
「プラズマ・・・スマッシャーッ!!」
雷の波が響に襲い掛かる。
「アイシテル、カートリッジロード。」
『あいさ。』
アイシテルの本体を収納している篭手からカートリッジが飛び出す。
それと同時に魔力が湧き上がった。
「ディザスターブレードッ!!」
剣に纏わり付く黒い魔力が増殖し、巨大な剣となってプラズマスマッシャーと激突する。
轟音を発てて、咲き乱れる黒と黄色の火花。
それをゆっくりと見る間もなく。
「これで終わりよ。」
プレシアは背後に回り、剣を振り抜いた響の一瞬の隙を突いて鎌を突き刺そうとする。
非殺傷設定なので急所に当たっても死ぬことは無いが、気絶は免れない。
が、それを腕で止め、なおかつ。
「なっ!?」
プレシアにバインドが撒きつく。
関係ないが肉感が凄い、大人の女性がびっちりと撒きつかれた姿は、それはもうすごいものである。
さらにはプレシアのバリアジャケットはPT事件時のものらしく、やたらと胸が開いてるのでなおのことエロイ。歳を考えているのだろうか?
こんな母親を持ったアリシアとフェイトの苦悩が目に見えるというものである。
いや、アリシアはどうかは判らないが感情の起伏の乏しいーーーというかあれはあれで変にエロっぽいバリアジャケットを着ているフェイトならばむしろカッコいいと感じるかもしれない。
あの娘にしてこの母ありということだろう。
「ど、どうしてっ!?」
「バインドを設置しておいただけだ。」
「・・・それは分かっていたわ。でもそれは全て避けて・・・いや、だからこそか。」
「そう。だからこそ避けた先にタイミングよく置けば良いだけ。あんたは確かに地力で言えばどれも俺じゃ勝てなかっただろうけど・・・戦いなれてるかどうかでは俺のほうが上手だ。もともと一撃は受ける覚悟だったから、鎧にも魔力は十二分に通してたし。」
「・・・完敗ね。」
「一番は子供だと侮ったこと。融合騎のことを知ってるあんただからこそ俺を見た目である15前後の子供ではなく、元の9歳児だと判断したんだろうが・・・大間違いだったな。ここ最近は戦いが濃密でね。」
「・・・貴方って本当に9歳?」
「・・・まぁそう言って良いと思うよ?
それと・・・アリシアだっけ?彼女の件だけど・・・俺なら完全な形で生き返らせられる。」
「っ!?」
「もし生き返らせたかったら、このことは他言無用。かつ、今回の件からは手を引け。」
響は言うだけ言って去ることにする。
殺すのはまず無理。
彼は正しく一般人なのだから。
「まっーーー」
プレシアの静止の声を無視して今度はシグナムたちの援護へ行く。
『良かったの?能力をあっちがわに明かしちゃって。』
「これで彼女が無効化できれば儲け物だと言ったのはアイシテルだろ。今のアリシアは山田君の能力によって生きてる状態だから、山田君から離れられないって。だからその弱みを突くんだろ?
あの親バカなら多少の制限でもかかってる今の状況を回復するために絶対に乗るはずだってさ。ま、信じればの話だけどね。」
『そうだけどさ。』
「とりあえずはやてを守ることだけを考えよう。後先考えてたらそれだけで動けなくなりそうだ。」
『・・・へたれなのはもう仕方ないことなのかもね。女性関係のへたれよりかはマシだろうし?』
「そこは断言しといてくれ。」
響が向かうと追い詰められてたシグナムたちが見えてきた。
「アイシテル、あの2人は手ごわいよね?」
『もちろん。彼女達が一番の敵だと言ってもいいかも。プレシアとは違って地力の強さじゃなくて才能的な強さがあるわ。これが一番怖い。多分、プレシアと同じような戦術は通用しないでしょうね。勘とかそういう曖昧なふざけてるとしか思えない物で避けかれない。』
「さすがにそれは・・・なくね?」
いや、残念なことにアイシテルの言っていることは正しい。
彼女達の恐ろしさはその驚異的なまでの才能にある。
例え相手が格上でも、その戦いの中で成長して越える。それほどの爆発的な才能が。
さらには勘ももちろん鋭い。
事実にフェイトはハンデがあるとは言え、当初は防御で精一杯だったシグナムのスピードと剣戟に慣れむしろスピードだけならば大きく上まっている。
そして高町なのはは例え不意打ちでも瞬時に防御するーーーただの9歳児とは思えないほどの長年の戦士がようやく体得するような第六感を発揮する。
魔力資質に加えて、そうした戦闘的な資質。
実は戦闘民族の出身だと聞いたほうがまだ納得できるものだ。
「同じ地球人とは思えないな・・・ほんと。」
「フェイトは魔法世界人だけどね。」
ちなみに響も才能はあるほうだ。
ないと言うよりもある。その程度だが。
「でやさっ!!」
ためしとばかりに剣で斬り付けてみた。
もちろん非殺傷で、なおかつ殆ど力を入れてはいない。
だが。
「はっ?」
確実にヒットしていたタイミングだったはずなのに。
こっちに手を向けてラウンドシールドを傾けていた。
思わず間の抜けた声が漏れ出た。
「貴方は・・・誰?
ヴィータちゃんの味方?
分かってるの?闇の書は・・・」
「こいつは・・・苦労しそうだ。」
響になのはの声は入らなかった。
それだけ驚いたということである。
ゲームで言うならばありえないタイミングでガードが成功したような物で、正直我が目を疑った。
しかもそれだけの常識はずれのことをしでかしながら本人は余裕。
まさしく戦闘民族だ。
そんなことを思った響である。