旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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終幕への序章

「はぁ暑い。ここ蒸し暑すぎる。」

「文句ばっかり言ってないで手を動かしなさい。」

「・・・いや、まずアイシテルだけなんでそんな優雅な格好で来てんの?

ここ森よ?

場違いにもほどのある服装ですよね?」

 

響達はというとリンカーコア集めに辺境の異世界に来ていたわけであるが、そこは熱帯雨林のような環境がずーっと続くような世界であり、非常に温暖な気候である。

太陽が照りつけ、どこからか鳥の声が聞こえたり、時たま巨大な昆虫が闊歩していたり、足の踏み場も無いほどに陰陽植物が生い茂っていたりと。

そんなアマゾンの熱帯雨林も霞むような大自然の中でアイシテルは白の優雅なワンピースに赤い靴。

どこから出したのか、白い円形のテーブルにパラソルという、そこだけ女の子受けが良い様な喫茶店のような模様が繰り広げられていた。

ヒルや蚊といった好んで人に近づこうとする生き物は虫除け魔法で寄り付けない。

 

紅茶を飲みつつもショートケーキを食むという傍らで汗を滝のように流しながらせっせと戦っている響としては異論の一つ二つは上げて当然だった。

 

「はやての命がかかってるんだからアイシテルも真面目にーーー」

 

異論を上げようとしたところでアイシテルは手を差し出した。

そこには10~20ではきかないような数のリンカーコアがふよふよと纏まっている。

 

「え?」

「響はいくつあつめたのかな?」

「えーっと・・・」

 

響は冷や汗を流しながら自分の手の中にあるリンカーコアを数えた。

 

「じゅ、10個だけど・・・」

「9個しかないように見えるけど?」

「か、数え間違えただけだよ。」

 

一個くらいなら・・・と盛ってしまうほどに響は恥ずかしかった。

となると気になるのはどうやったのか?ということ。

 

「え?

そんなの簡単でしょ?

ここからシューターで打ち抜いて転送。リンカーコアを取ったら送還。で、万事OKじゃない?」

 

全然万事OKではない。

まずここからシューターで打ち抜くこと自体が響には不可能だ。

おそらくサーチャーとの兼用をしているのだろうが、同時に二つ以上のことをやるのはデバイスの補助か並列思考の会得が必須。

響の場合、デバイスに頼るしかないのだがそれは無理というものである。

目の前のデバイスがその計算を自分のためにしているからだ。

となれば残った手段は並列思考だが才能がある方と言えども、なのは達ほどでない響としては並列思考なんてのは10年かけて会得できるかどうか。

 

そして転送。もとい転移。

リンカーコアを抜くには触れる必要がある。

そのためシューターの遠隔操作で倒したとしてもそれだけではコアの回収は出来ない。

そこで転移によって手元に持ってくる。

あとは戻すために送還するだけ。

そちらもまた響には出来ない芸当だ。

転移には数学者並みの計算が必要で、単独で転移が出来る人間などプレシアやサポート特化のユーノやアルフくらいだ。

もしくは転移を感覚的にやってしまうような天才。それを除くとデバイス無しにはまず不可能。

響は後者のデバイス無しでは出来ない人間であり、本体であるナイフはある程度の計算能力を有しているとはいえ、その大半の計算能力を人化したアイシテル自身のコア蒐集において使われているため響のサポートはあまりできない。

 

「さ、さぁーて、また集めてくるかな?」

「はいはい、頑張ってね。」

「・・・ずるいや。」

 

なんか納得いかない響である。

 

 

☆ ☆ ☆

 

一週間後。

シャマルは焦っていた。

 

「どうしようどうしよう!?

大変、大変なのっ!!」

「落ち着け、シャマル。何があった?」

「はやてちゃんの友達が来ちゃうのッ!!で友達がダメなのっ!!」

「は?

・・・もう少し詳しく言ってくれ。何がなにやら分からんぞ。」

 

念話でシグナムに連絡したシャマル。

それははやてが図書館で知り合った友達である月村すずかがフェイトとなのはを連れて、病院に見舞いに来ると言うこと。

偶然にしては出来すぎた形だ。

 

「・・・焦ることは無い。幸い主の魔力資質は殆どが闇の書の中だ。問題は無いだろう。」

「でも・・・」

「我らが出くわさなければ良い。それだけだ。ご友人が来た際には我らが席を外そう。」

「だ、大丈夫かしら・・・」

「大丈夫でなくとも大丈夫にしなくてはなるまい。あと少しだ・・・あと少しで闇の書が完成する。ヴィータたちと響達とで併せれば後2、3日で完成する。たかだか2、3日くらい誤魔化すのはたやすいことだろう?」

「・・・うん。・・・だけど・・・もしばれたときのことを考えると・・・」

 

まだ闇の書の完成までの猶予はあるがゆえに今無理して稼ぐ必要は無い。が、もしはやてのことがバレた場合はそこでゲームオーヴァーだ。

ばれたときのときのためにはやてを逃がすための戦力が居る。

それを思ってシャマルは不安に思っているのだ。

 

「・・・ふう。心配性だな。

・・・分かった。念のため私たちも一旦戻る。どの道、一度は見舞いに戻らねばならんと思っていたところだ。一週間も空けては主はやても心配しているだろう。」

「ごめんなさい。」

「そう自分の無力を嘆くこともない。コア集めは順調だが、主が万が一にでも捕まればそれも意味がなくなる。当然の懸念だ。ここまで来た以上、少しでも安全な方向をとろう。」

「ええ。」

 

しかしその選択が悲劇を招く。

 

 

「皆元気そうやな。一週間も来てくれんと、寂しかったで。」

「申し訳ありません、主はやて。どうしても外せぬ用事があったもので。」

「悪い、はやて。でも大丈夫だ。あと少ししたらずっと一緒いる。いられる。」

「ん?

別に今更そんなん言わへんでもずっと一緒や。残念なことに家に帰れへんけどな。」

「はやて・・・」

「冗談や冗談。いつかきっと、ようなる。そうお医者様だって言っとたんやから、問題はあらへん。なんもな。」

 

それは嘘である。

医者からの優しいーーーいや、酷なであろうか?

酷な嘘。

 

「大丈夫だよ、はやて。あと少しであと少しでよくなるから・・・」

 

しかしそれも嘘ではない。嘘ではなくなる。

あと少し。あと少しで。

 

「・・・?ああ、わかってるって。

それと響君とアイちゃんもありがとうな。わざわざ見舞いに来てくれて。」

「別に・・・ほら、見舞いに行かないのもどうかと思ったわけだし・・・」

「・・・。」

 

照れて頭を掻く響にジト目を向けるアイシテル。

 

「どうした?」

「別に。・・・二股とかしたら殺すから。」

「は?」

 

アイシテルがソッポを向きながら言ったことなので、響には聞こえなかった。が、シグナムとシャマルには聞こえたようでシグナムは「ほう。」と頷き、シャマルは「あらあら。」と微笑む。

それに気づいて、アイシテルが赤面しながら「ち、違うからねっ!!」と言うのは余談。

 

 

そんなひと時の平和な時に表れるKYの使者が現れる。

月村すずかとその一行である。

 

「こんにちはー」

「元気?はやてっ!!」

 

まずは月村すずかとアリサバニングスが元気良く挨拶。それを見ると同時に響はリスもびっくりな俊敏性で持って、シグナムの影に隠れる。

一番背が高くて、隠れ易かったのだ。

こんな時こそ一番大柄なザフィーラの出番だろうにっ!!と犬形態のザフィーラを睨んで歯噛みする響。

 

念のために言っておくがザフィーラは隠れ家などではない。

そして隠れながらもアイシテルを呼び、ユニゾン。

髪を黒く染めた後で、何気なく自然にシグナムの影から出た。

心臓がいまだバクバクいっており、胸をほっと撫で下ろす。

シグナムたちもさぞかし怪訝な顔をしてるだろうとこっそり理由を説明しようとしたら、シグナムたちも驚愕の表情。

なして?

そんな疑問が沸いたが、すぐにワケが分かった。

 

「こんにちーーー」

「どうしたの?なのーーーは?」

 

なのはとフェイトの2人である。

 

「どないしたん?」

「い、いえ何でも。」

「よ、よく来たわねぇ。」

 

何も知らないはやてのためにもしらばっくれるシグナムとシャマル。

ザフィーラとヴィータも警戒の色を示し、無言。

ヴィータに至っては殺気まで溢れている。

一般人には分からぬほどの量であるが、もしバレればこの場で殺すくらいのことはしそうな気配だ。

 

なのはやフェイトはバレるバレないは関係ないのはもちろん。

すずかとアリサに対してもどこまで知ってるかで矛先が向くかどうかが変わる。

 

フェイトとなのはは響にも目を向ける。

 

「あ、貴方は・・・」

「ワタシ、中国人アルヨ!!」

「は?」

「ワタシ、君シラナイアルヨ!!」

「いや、あの・・・」

「ワタシ、バイバイネー!」

「ちょっと待ってッ!!」

 

響がいつものように逃げ出そうとしたところで、なのはに腕をつかまれる。

唐突な響のボケとしか思えないその場しのぎのお惚けに思考がクラッシュしたフェイトに比べ、なのはは誤魔化されなかったようだ。

 

「ナ、ナニアルカっ!?」

「貴方はあの時の子でしょ?

どうして・・・それにヴィータちゃんも・・・えと・・・睨まないで・・・」

「睨んでねぇです。」

「こら!ヴィータ。にらんでるやんけ。

お客さんにそんな無礼なことしたらアカン。」

「ワタシ何ノコトカ、ワカラナイッ!

ちちんぷいぷいのチンプンカンプンねっ!!」

「絶対日本人だよねっ!?」

「知らない知らないっ!

貴方なんて知らないよっ!

きっとデジャブ、既視感、気のせいあるよ!!離すよろしっ!!」

 

わざとらしい片言の日本語が徐々に日本語に直っていく響。

彼に演技などを求める方が間違っているのである。

ばれ掛けたことで、チキンハートの彼は動揺し、その動揺で演技のメッキがあっと言う間に剥がれていく。

 

その後。空気を読んでくれたのか、特に何事もなく見舞いは終わった。

かに思えたのだが。

 

日が暮れる頃。

響と守護騎士、なのはとフェイトは屋上に居た。

 

ぴりぴりとした雰囲気の中、響は内心早く終わらないかな~とか思っている。

話し合いで終わると思ってる時点でもはや重大な勘違いであるわけだが。

 

「はやてちゃんは・・・」

「そうだ・・・我らの主だ。最早隠し立てもするまい。」

「話を聞いてもらえますか?」

「断る。

悲願はあとわずか。

例えどんな犠牲を払おうとも、主はやてが助かるならばどうでもいいこと。」

「待ってッ!!

このままじゃはやてちゃんはーーー」

 

文脈的に、このままだと何かまずいことになるのっ!?と予想だてた響が聞き耳を立てたところ、ヴィータが空から降ってきた。

不意打ちっ!?

話し合いがしたいと言いつつも、容赦なくフェイトを打ち抜いたという前科がある、なのはがせっかく言葉どおりの話し合いの意志を示したと言うのに。

 

「きゃぁっ!?」

 

バリアで防ぐが、力を流しきれずに屋上のフェンスに激突する、なのは。

 

『どうでもいいけど、またもや不意打ちに完全対応したよね。タイミングだけなら完璧だよ。』

「・・・ほんとバグキャラだわ。」

 

続いてシグナムもフェイトに斬りかかる。

響はオロオロするばかり。

 

「あとちょとなんだ。あとちょっとではやてを助けることが出来るんだ。

だから・・・邪魔すんなぁっ!!」

 

ヴィータの追撃。

なのはにぶち当たる炎激。

 

しかしなのはは無傷で炎の中を歩いて出てくる。

ついとぼやくヴィータ。

 

「・・・悪魔め・・・」

「悪魔でいいよ・・・悪魔らしいやり方で話を聞いてもらうから。」

 

自覚、あったんですね。

そんなことを2人して思った響とアイシテル。

 

「・・・ソニックフォーム。」

『ソニックフォーム。ロードカートリッジ。』

「テスタロッサ。正気か?」

 

フェイトのソニックフォーム。それはただでさえ薄いバリアジャケットをさらに薄くすることだった。

速さを意識したフォーム。

自分以上の速さを持つ響と、テクニックを持つシグナムに対抗するために考え出したフェイトの苦肉の策だ。

 

 

「これしか無いと思ったから・・・」

「そうか・・・死ぬぞ?」

「死にません。貴方を止めます。」

「・・・悪いが、容赦はせん。」

 

 

こうして戦いの火蓋が落とされた。

 

 

 

 

 

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