旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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ぷろろーぐ3

あれから半年の月日が流れた。

彼はと言うとそれはもう、猛省した。

 

『大丈夫ですって。そろそろ頑張ってみましょ?』

「そうだろうか・・・アイシテル。俺は怖い。また大きな罪をこの手で犯してしまうのを・・・」

『はい、その言い回しは厨二くさいので直しましょうね。』

「・・・俺は厨二じゃない。もう目が覚めたし。」

『厨二の人は誰もがそう言うの。』

 

今彼が居るのは自室。

神様から貰ったチート特典の一つ。

神様に用意してもらったデバイス“アイシテル”と話している。

二対のナイフ型デバイスであり、片方はベルカ式でカートリッジを搭載しているため、非常にゴツい。

もう片方はすらりと長いスリムなミッド式の魔法が組み込まれたナイフである。

近接戦や身体強化に置いて優れているベルカと、小手先や技術、手数の多さに優れているミッド式。

どちらの魔法も満遍なく十二分に使えるという特殊なデバイスである。

待機状態はナイフを模ったネックレス。服の下に入れておけば一番目立たない形である。

普通のインテリジェントデバイスよりは遥かに感情豊か。

ちなみにドイツ語を喋っている。

 

良い機会なので彼のチートを振り返ってみた。

 

まず一つはその容姿。

銀髪オッドアイ。

しかし、これは現在では意味を成さなくなっている。

アイシテルによる変装魔法で一般的な黒髪黒目の人間にしているのだ。

理由は言わずもがな。

 

二つ目は神様印のデバイス。

アイシテルの性能は下手なロストロギアよりも強力で、ジュエルシード並みの魔力貯蓄機能があったりとチートらしいチート。なのだが、どんなスーパーコンピューターも扱う人が幼児並みの知識と能力値しかないのでは宝の持ち腐れ、豚に真珠、ぬこに小判、というもの。

一度もセットアップしたことが無い。

彼はこの世界について美少女がヒラヒラした服を纏って飛び回る。程度の認識しか持っておらず(逆に言えば彼にとってはそれが全てであり、それで十分だった)、そもそもデバイス自体この世界のコンピューターだとしか考えていない。

もちろんこの時点からして勘違いなのは言うまでも無いことである。

何が言いたいかと言うと、彼はデバイスを単なる便利な魔法が使える生活を助ける道具、程度にしか考えておらず、戦いに使えるなどと微塵も灰燼も気づいていないのだ。

そしてそれを知りつつも面白そうだと言うことで放って置くアイシテル。

これまた現状では使えないチートである。

 

三つ目は言わずもがな我らが夢。おっぱいチートである。

よく考えて欲しい。

全てのヒロインに直面する絶対的な悲劇とはなんであろうか?

・・・引っ張る意味も大して感じられないので早々に明かしてしまうが、それは「老い」である。

どんな可愛いヒロインも時が流れれば老化し、言い方は悪いが劣化する。

いつまでも若々しい姿で。

これはほぼ全てのーーー容姿に自信を持つ人間であるほど必ず抱く欲求の一つではないだろうか。

もちろんアニメを見ていると言う立場であるならばなんら問題は無かったのだが、同じ世界に現実として生まれた以上はそうしたヒロインの姿も見なければならない。

自然の摂理とは言え、それを解決する手段があれば望んでしまうのが人の業という物だ。

 

耳障りは悪いがおっぱいチートはそんな夢を叶える最高のチートと言える。

劣化によって垂れるおっぱい。

垂れたおっぱいは二度と戻らないと言うのが現在の学説で、事実そうである、らしい。

巨乳キャラであればあるほど何十年後かにお世辞にも綺麗とは言えない肢体を晒す事になる。

もう少しオブラートに包むべきなのだろうが、どんなに言い繕っても厳然たる事実であり条理である。

ゆえに目を背けるようなことはしてはならない。

 

二次元に置いてはそんな心配はいらなかったものの、その世界に暮らすとなれば10年、20年と先があり、魔法的な何かが無ければ等しく老いさらばえ、おじいちゃま、おばあちゃまと化す。

加齢臭もするだろうし、皺も増えていく。

背骨が曲がり、筋肉や脂肪がこそげ落ち、歩けなくなるかもしれない。

だが安心してくれ。

このおっぱいチートは微乳、ひんぬう、巨乳、爆乳、横乳における曲線美の調整や下乳において良く見えるように脂肪の配置や柔らかさを微妙に変えることによってうんぬん、あのキャラが巨乳であれば、ひんぬうであればという願望を叶えることもできるーーー「おっぱいを操る程度の能力」ではあるがその能力にはレベル2があり、そのレベル2はまさしく神の御業とも言うべき効果を発揮する。

そう、名づけるとしたならばアンチエイジングEXである。

 

アンチエイジングとは意訳し、分かり易く簡潔に述べるならば老化防止のことを言う。

とはいえ生きていれば老化していくのは自然、老化しないのは不自然である。

防止と言うよりは抑制といった方が正しいか。

そんなアンチエイジングの効果を極限まで高め、全く別物し、上記の正しく老化“防止”を実現させたおっぱいマッサージ。

それがレベル2の効果だ。

具体的なメカニズムを語るのは省略するが、とにかく凄いおっぱいマッサージで老化を防止し、どうにかしておっぱいの時を止め、しかしおっぱいはおっぱいという単体の生き物ではないーーーゆえに体にもその時の留まりが影響し、すなわち寿命で死ぬことは無い不老と化す能力。

 

畏怖されるべき異能(レアスキル)である。

戦慄してくれても構わない。狂喜乱舞してくれても構わない。

どこぞの学園都市であるならば女性研究者によって研究され尽くすであろうこの能力。

おっぱいーーーいや、胸を揉めば男にも効果を発揮する正しく等しく全てのおっぱいーーー男の場合は胸とするーーーをチートさせるこの能力。

もしばれれば比喩ナシに真面目に解剖されるに違いない。

 

と熱心に語りすぎたところで閑話休題。

 

彼は自室でアイシテルと話しながらもとある本を読んでいた。

 

『猿でも分かる乙女心』

 

そう、彼は勘違いスキルを消し去ろうと努力しているのである。

涙ぐましい努力。

その姿に拍手をせざるを得ないが、したところでなんだというのは明白。

とりあえず拍手は自重した。

 

 

「アイシテル・・・乙女心はかくも難しいんだな。」

『それを読んで分かった気になってたら、また勘違いするよ。きっと。』

「・・・どうしてそういうことを言うんだ。頑張ってるんだから応援してくれれば良いのに。」

『だって・・・せっかく間近で勘違い系主人公の滑稽な姿を楽しめるからと神様に志願したのに。結局良い子ちゃんっぽくなってるんだもん。私つまらない。』

 

デバイスは志願制らしい。

 

「・・・俺を怒らせると酷いぞ?」

『どうするっていうのよ?勘違い坊や。』

「納豆ごはんに混ぜ込んでやる。」

 

汚いと思うよ?

そして君は金属の塊を食べようと言うのだろうか?

 

『ぶふっ!?な、なんていう鬼畜。げ、外道っ!!外道だわっ!?

私の美しいボディが納豆菌で汚れるじゃないっ!?』

「嫌だったらこれを教えろ。」

『ん・・・何々?

葛藤?これが何?』

「かっとうーーーって読むんだな。」

『・・・。』

 

デバイスがアホの子を見る目で見つめた。

目、無いんですが。

 

「しょ、しょうがないだろっ!?

中学二年の時に死んだんだから、学があるわけじゃないんだよっ!!」

 

 

そして彼は本を読み終わるとおもむろに胡坐をかき、手を股のあたりに置く。目を瞑って身じろぎもしなくなる。

 

瞑想である。

 

ちゃんとしたオリ主であれば瞑想と聞けば「体内の魔力を感じ取る訓練か!」とティンと来るものだが、彼の場合は違う。

彼女達の将来が楽しみがゆえについついエロい視線を向けていたーーーもといこの色欲を抑制する訓練である。

まず彼は魔力がどうとかというよりもその人格の矯正から始めた。

アホである。が、切実な問題でもある。

 

瞑想をし、できれば悟りを開くのが目的だが、ドウ考えてもそれは無理に違いない。

彼の思考回路を除いて見る。

 

おっぱい・・・無限のおっぱい・・・

いや、待て待て。

おっぱいは違う。おっぱいなんていらないんだ。

だがしかし、おっぱいというのは如何せん俺の心をつかんで離さない。

これほどまでに拒絶してもおっぱいが出てくるということはもしや俺の心に巣食うおっぱいはただのおっぱいじゃないんじゃないだろうか?

きっとおっぱい型宇宙人などが俺の精神から侵略し、体をのっとり、俺の体のいたるところをおっぱいに変えるに違いない。

それは嫌なようで嬉しいかもしれない。

そもそもおっぱいチート自体、おっぱいを揉むための口実がてら貰ったようなものだし、自分の体がおっぱいとなりえるなら誰かのおっぱいを求めて徘徊せずに済む。が、自分の体のおっぱいで俺は満足できるのだろうか?

おっぱい神としてーーーいや、おっぱいの神を名乗るのはまだ早いか。

最低限おっぱいスカウターの技術を会得しなければーーー

というかおっぱいを考えていたら肉まんが食べたくなってきた。

あの白い肌にホカホカの具。正直肉まん神。チョコまんなるものもコンビニに売っていた気がする。

チョコまん。中々惹かれる。そういえば犬にチョコを与えるといけないとか聞くが一体どうしてだろうか?

ネギもそうだったな。あ、ネギはあれか。ユリ科の植物か。

ユリ科の植物には毒が含まれてるとかなんとか。だからかな?たまねぎやネギは大丈夫なのだろうか?

今まで食ってたんだけど・・・いや、そもそもユリ科の植物だっけ?

 

 

非常にドウでもいい思考回路だった。

結果から言えば一年後ぐらいには彼はなんとかエロから脱する。

頑張ったね・・・うん。

 

「ご飯よ」

 

下の階から母親の文香が晩御飯に呼ぶ声が聞こえる。

こうして彼の一日は終わる。

 

PT(プレシアテスタロッサ)事件の始まりはすぐそこである。

 

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