空が落ちてくる。
そう形容するしかないほどの巨大な砲撃が“堕ちた”。
「でぃざすたーぶれいかぁあああああっ!!」
遅れてアイシテルもディザスターブレイカーを繰り出す。
漆黒の空と漆黒の柱がぶつかり合う。
『頑張れっ!アイシテルッ!!』
「応援して・・・る、だけ、だと・・・楽、で・・・いい・・・よ、ねぇっ!!」
せめてもの抵抗とばかりに収束砲を全て一点に集中して、自分達のいるところだけギリギリ風穴が空く様な範囲に絞っている。
力というのは力のかかる面が小さければ小さいほど、少ない力で用を成せると言う物理法則がある。
指を壁に押し込んでも穴は空かない。
しかし、画鋲を使うと穴の大きさはともかくとしても小さな力で穴を空けることが出来る。
それと同じことが魔法に置いても起こり得る。
「く、かた・・・い・・・わ・・・これ・・・」
徐々に飲み込まれるアイシテルのディザスターブレイカー。
全て放ち終わってもいまだ漆黒の空は顕在だ。
空いた空間に周りの闇が流れ込み、補填される。
「こんにゃろうっ!!」
瞬時に手をかざし、ラウンドシールドを目の前に6重ほど展開。この一瞬で作り出せるのはこの数が限界である。
さらに勇者王達もアイシテルの前にシールドを張る。
自分達の身を守る分があるため、2枚ほどが限界だがそれでもないよりはマシである。
だが、数秒としないうちに次々と割られいく。
パリン、パリンとなんら抵抗を示さぬままアイシテル達は漆黒に飲まれた。
悲鳴が聞こえた気もするが、それらも掻き消された。
「・・・終わりか?」
「それは終わってないフラグね。」
「っ!?」
アイシテルがブリッツフォーム状態でヤミの背後に回る。
「暗黒的な―――エクス、カリバァアアアアアアアッ!!」
黒い軌跡がヤミに向かって振りかざされた。
そして魔力は爆発。
黒い光に包まれる。
「やるな。」
「ちっ!!
ディザスターシュー・・・」
「フォトンランサー。」
しかし剣は腕に展開したシールドで止められ、折れる。
ナイフを抜くよりも魔法で応対した方が早いと判し、発動の早い魔法で追撃を行おうとするがそれよりも前にヤミに反撃をされる。
「くぅっ!!ガードの上からでもこの痛みは―――しゃれにならないってばっ!!」
ただのフォトンランサーでもヤミが使えば大量の魔力が込められた必殺級の魔法。
並みの魔導師ならばガードの上から一撃で落とされていただろう。
アイシテルは、すぐにナイフを抜く。
「ロードカートリッジッ!!
ミリオンブレイドッ!!」
「ミリオンブレイド。」
万を越えるような剣閃がヤミに降りかかるが、それらを全て同じ技で叩き落す。
「なんちゃって
虚空にバリアジャケットが変形したロングソードがずらりと出現し、それら全てが飛来する。
が、それを全てシールドで防御するヤミ。
「もういっちょっ!エクセリオンモードでいっくよぉっ!!」
その場から距離を取り、手を上空へ。
体から魔力が吹き荒れ、カートリッジが装填される。
再度出現するロングソードの群れ。
しかし数が先の比ではない。
光をさえぎるほどにびっちりと所狭しと並べ立てられた無骨なロングソードの海。
空が剣で埋め尽くされる。
「
剣がヤミを引き裂こうとその剣先を一斉にぶつけに行く。
剣の海にまみれたヤミ。
地面に向けて撃ったので、着弾点の地面には直径1キロにも及ぶ大きな穴が開いていた。
これだけでも魔法の威力が十二分に分かるというものである。
しかし。
「はぁ・・・はぁ・・・これだけやれば・・・」
「・・・その傷でよくやるものだ。」
「・・・はぁ・・・ふう。・・・少しは弱ってくれてると嬉しかったなぁなんて。」
目の前には何の傷も負っていないヤミがいた。
向かいには疲弊し、肩で息をするアイシテル。
先のディザスターブレイカーにより、体のところどころが焼け焦げ、片腕に置いては千切れ飛んでいた。
今は魔法でかりそめの腕を作り、それで戦っている状態だ。
魔力そのもので作っているので遠めだとピッチリとした黒い手袋に見えないことも無い。
満身創痍だが、あれだけの魔法を受けて一番の中心地にいたアイシテルのみがダメージを受け、なおかつこれだけで済んでいること自体がかなり良い結果である。
「・・・気が済んだなら、もういいだろう?
私の目的は主の目的である、向こうの2人だ。
まとめて殺されるのがお気に召さないと言うならば、範囲攻撃はやめよう。
これでオマエが私にたてつく理由は無くなったはず。
邪魔するならば容赦はしない。」
淡々と事務的に言うヤミ。
それならばそれでアイシテルとしては良かったのだが、へたれながらもそういうのを気にしちゃうおバカさんがアイシテルのマスターなワケで。
何よりも、はやてが乗っ取られてる形になっている今、響とアイシテルに撤退の二文字はあっても邪魔しないという選択肢は存在し得ない。
どうせ邪魔するならいつしても同じなわけであるから、今しなくて何時やるのだと言う話だ。
それに一番の問題がある。
アイシテルと響は闇の書と夜天の書については十二分に知識があるのは言うまでも無い。
無限書庫の本で読んでいたためだ。
しかし守護騎士たちまでもが闇の書という正式な名前で呼ばないことからすっかり闇の書と夜天の書は別物だと考えていたわけであるが・・・
今、ヤミを目の前にしてその勘違いは解けた。
「・・・?
どうやら私の体をサーチャーで探っているらしいな。
が、私に弱点など無い。
忌々しいことにな。」
ヤミの言うとおり弱点を探すつもりでサーチャーを使っていたのだが、弱点の変わりに妙なものを見つけた。
チートデバイスであるからこそ戦いの最中でも分かる妙な部分を。
「・・・プログラムに不自然な書き換えがされてる?」
『いててて・・・あれ?
ここは?』
「暢気に寝てないでよね。
それよりも響のおっぱいチートってデバイスにも効く?」
『は?イキナリ何を言って?』
「いいから。」
『・・・おっぱいさえあれば効くと思うよ?
ほら、アイシテルだって見てたでしょ?
幻獣からリンカーコアを奪った後で、乳房を持つ哺乳類に似た動物にはおっぱいチートでのケアをしてたのを。
幻獣に通用するんだから、デバイスにも通用する―――と思う。』
「ふうん。
まぁこれに賭けてみてもいいかな。」
『何の話?』
「となると私には使えない・・・まぁいいか。もう貯蓄された魔力も8割がた使ったし。
私が表に出る理由も少ない、と。」
『だから1人で何を納得して―――うおっ!?』
『はい。というわけで交代ね。私も疲れたし。今度は私が応援側で。』
「いきなり何をっ!?ていうか腕がイタいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!はよ治さねば・・・」
『だーめ。魔力がもったいないでしょ。ただでさえヤリクリが厳しいんだから。どうせおっぱいチートを使うなら彼女に使って上げなさい。・・・緊急事態だから渋々、渋々だよ?
本当に渋々許してあげるからっ!!普通なら絶対許さないんだからねっ!?』
「・・・話が見えないのだが?
ていうかほんと腕イタイ。涙出てきちゃった。」
『もうっ!鈍いなっ!!
あのデバイスは狂ってるみたいだからそこをおっぱいチートで治せっ!!って言ってるの!!』
「は?」
『分かったら、とっとと動く。ほら、向こうも痺れを切らして2人とドンパチ始めちゃったよ?』
「え?」
要は、である。
現在、闇の書―――いや、夜天の書は悪意ある誰かの手により改造が施されており、一度覚醒すると溜められた魔力エネルギーが使い切られるまで暴れまわると言う特徴を持つ。
今は主の願いを叶えようと動いてるが、それが終わり次第暴走を始めるとのこと。
勇者王達が何の思惑か。
なのはとフェイトに変装して八神はやての前でヴィータたちを殺したため、はやては憎しみのあまりなのはとフェイトを殺そうとしている。
しかし既に変装は解いており、その憎しみの矛先が向かうのは偽者のなのはフェイトコンビではなく、本物の2人。
根本を辿ると勇者王達が責任とれっ!って話なのだが、矛先が無かった場合は覚醒と同時に暴走したため、これはこれで仕方の無い判断ともいえる。
2人に注意を引いてもらってる間に宿主のはやてごと封印処理をする準備をするつもりだったのだ。
しかし、いまや先ほどのディザスターブレイカーの防御に際して魔力のほとんどを使い切ってしまったため、最早それも叶わない願いとなった。
「待て、アイシテル。おっぱいチートで治せ?
何を言ってるの?
高町さんとフェイトを同時に相手取って手玉に取る相手に?
ほら見ろよ?
バグキャラ達がゴミのようだ。
・・・まったく、何を言ってるのやら。
元気一杯過ぎるでしょ?
ドウ考えても俺のほうが病人な件。」
『ああもうっ!!七面倒なっ!!
とにかくおっぱいを揉んで治してこいっ!!』
「いやいやっ!?
見て分かるでしょ!?
あれレベルの相手におっぱい揉んでこいとかっ!!
色々ツッコミどころ満載だけど、とりあえず俺に死ねと申すかっ!?
いやんエッチ的な恥ずかしがりがてらのドツキで死に兼ねないレベルの相手ですよ!?
正直触りたくないですっ!!いや、触りたいけどもっ!!」
『・・・スケベ、あほ、ばかちん、まぬけ。おっぱいばかりが女の子の魅力じゃないでしょっ!!』
「いや、だからそうじゃなくて・・・」
『・・・ふん。別に揉ませてくださいって頼めば良いじゃない。』
「それで揉ませてくれた事例を俺は知らない。」
『ニコってしながら言えば?
ニコポできるかもよ?』
「まじかっ!?早速やってくるっ!ってバカ!!
俺にはすでにアイシテルがいるっ!!」
『え?あ、うん・・・えと・・・そういうのはもっと雰囲気があるときに言うもんでしょっ!!』
「ていうかそういう問題じゃないっ!!」
『1人ノリツッコミ?』
「・・・まぁ物は試しだ。
おっぱい・・・揉ませてもらえるか頼んでみようか。」
『・・・。』
自分で言っておいてなんだが、マジでかっ!と戦慄したアイシテルだった。