旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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はやてとの一幕

「さて、はやてちゃんのお見舞いにでも行こうか。」

「ん。ま、そうだな。」

「どうしたの?気がすすまなそうだけど・・・」

「いや、その・・・もう俺の過去、聞いちゃってるだろうなぁって。」

「それで?」

「嫌われてるころあいかなぁって。」

 

いよいよこの日がやってきてしまった。

響とはやてのお別れの日である。

もちろんはやてが響の昔の話を聞いていないなんてはずは無い。

響はまだ知らないことであるが、はやてはヤミちゃんの中でずーっと半覚醒状態―――眠れそうで眠ってない、あの一番気持ちの良い状態で外の様子を見ていた。

すなわち響が魔導師でドンパチやっており、ほんとの髪色が銀でオッドアイと言う見た目であることも知っている。

となればだ。

 

響のことを疑問に思うがてら魔導師のことを知るだろうし、響がどんな人間であるかも周りの人間―――特になのはと山田君から聞くだろう。

響に関する説明も受けて当然。

仮にそれが無かったとしてもフェイトとなのはは二人揃ってすでにはやてと仲良しモード。

なのはからしたら友達になりうる人(はやて)がいやなヤツ、もといプレシアの―――人妻の胸を揉み揉みしていた意味のわからない人間と仲良くするのを黙ってみているだろうか?

否。

恐らく忠告をするだろう。

こんなこと言いたくないけど、あの人とは縁を切ったほうが良いよ。的な。

 

 

「でもさすがに何の挨拶も無しってのはないでしょ?」

 

アイシテルが仕方ないなぁと風に言う。

だが、同時にこれはこれで―――との思いも不謹慎ながらある。アイシテルとしては複雑である。

なんせここ最近、響はなんだかんだで自分(アイシテル)の胸―――失礼―――おっぱい以外ばかり揉んでいる。はやてのおっぱい、闇の書改めヤミちゃん改め夜天の書のおっぱい、プレシアのおっぱい。

惚れた男が他の女のおっぱいばかり追いかけている現状。

もちろん追いかけていると言うよりはなりゆきであり、響にも揉まれる側にも非はない。

だったら、自分のを揉ませてやれ?

確かにぱっと見、そういいたくもなる状況だが、それとはちょっと問題点が違う。

 

なにはともあれ頭で理解できても感情で納得することが出来ない。

顔にこそ、声にこそ出してないのだがアイシテルはここのところずっと不機嫌であった。

 

しかし響が嫌われてくれるなら自分が独り占めに出来る。

自分を見てくれる。

主人第一で設計されるデバイスでありながら利己的な思考で埋め尽くされているアイシテルの心境。

これは良くも悪くも良い傾向と言えるだろう。

恋は奇麗事ではないのだ。

アイシテルはもちろんその気持ちを自覚している。

自覚した上で直すつもりは無かった。

これはそういう類の物で、人を愛する以上仕方の無いことだろう。

一言で言うならば“独占欲”。

愛ゆえの独占欲が今になってフタをあけて出てきたのだった。

アイシテルとしては嫌われても良し。

そのままでも響の友達ができると言うことで、まぁ良し。はやてが名のイメージ通り、男だったならばなおさら良し。であったがそれは言っても仕方が無い。

これから先、友情が親愛に。親愛が恋慕に。そうなることのないよう監視しようと決意するアイシテルだった。

正直ヤンデレ気味かもしれない。

 

「アイシテル?

どうした?」

「ん?何?」

「いや。今、すごいぶすっとしてた。」

「・・・期待はしてないけど女心の欠片くらいは分かって欲しいな・・・」

「はぁ?」

 

当然、彼にそんなことが分かる甲斐性があるはずもない。

 

☆ ☆ ☆

 

「はやて。悪いことは言わない。あいつは止めて置け。」

 

はやての病室の前に響が来ると山田君の声がした。

どうでもいいですけど山田君、いきなり呼び捨てなんですね。

 

「・・・なんでや?」

「・・・。なのは言ってやってくれ。」

「えと・・・その・・・」

 

なのはは言いづらそうにする。

それはそうだ。

もともと彼女は過ぎたことをぐちぐち言うような陰気な性格ではない。

今更、ちくちくと昔のことを―――他者の悪いところを告げ口すると言うのはどうかと思われた。

のだが。

 

今までの彼の奇行が走馬灯のようになのはの頭の中を巡った。

将来おっぱいが大きくなるように私(なのは)の胸を揉んであげよう!と気味の悪いことを言いつつ、こちらがヤダと言っても無理やり揉んできたこと。

しかしそれは謝ってくれたこと。

惚れさせるためにジュエルシード。

すずかちゃんのスカートの中から登場(厨房―――もといアイシテルの幻術人形だが)。

自分の胸を揉みし抱いていた。

闇の書との戦いでは自分達を助けてくれたみたいだということ。(容姿が最初と最後で変わっていたためいまだ何だったのか理解していない)

闇の書の胸を揉みし抱いていた。

プレシアの胸を揉みし抱いていた。

 

なのはは思った。

分からない。

あの子が全然分からないの。

と。

 

なのはは混乱した。

忠告するべきか。

しないべきか。

 

仮に忠告したとして何を言えばいいのだろうか?

 

胸をもまれるかも?

変な性癖をもっているかも?

 

胸を揉む。

あれは映像やリンディの言を聞くになんらかのレアスキルである可能性が高いらしい。

すなわち必要なことだったってこと。

 

変な性癖。

自分の胸を揉むくらいいいじゃないか。

人に迷惑をかけなければ性癖の一つや二つ。常軌を逸していたところで問題は無い。

現実でやると犯罪になってしまうような性癖も別に人様に迷惑がかからないようにすればいいだけ。

 

 

となると自分に言えることは無理やり揉んでくるかもしれないから気をつけろ?

それくらい?

でもはやてちゃんの話を聞くにそんなことは一度も無いらしい。

と考えていたところで。

 

「なのは?」

「あ、うん。なんでもないの。ちー君。」

「・・・確かに今回はあいつの手柄だ。

でもそれはかなり危うい橋であったことには変わりないし、そもそも今回あいつが頑張ったのはおそらくはやてと守護騎士に惚れられるために、ハーレムを作るために―――」

「出て行きや。」

「は、はやて?」

「悪いけど、うちは友達のことを悪く言うようなやつと仲良くできる気がせぇへん。

それにさっきからはやてはやてはやてと馴れ馴れしいやっちゃ。

八神様と呼ばへんかい。」

「ええっ!?」

「ハーレムなんてアホらしいもんをまじめに作ろうだなんて考えるバカがおるかいっ!!どあほう!!」

「いや、おいっ!!」

「シグナム、悪いけどこいつ摘み出してくれへんか?」

「了解しました。我が主。」

「だからこれはオマエのために・・・」

「だまれ。小僧。私も戦友を侮辱されて些か腹を立てている。これ以上の話は無意味だ。立ち去ってもらおう。」

「・・・。分かった。ただこれだけは言わせてくれ。」

「なんや?」

「生きててくれてありがとう。」

「・・・?」

「別にただ言いたかっただけだ。じゃあな。」

 

山田君はなんだかんだでプレシアを―――原作を変えた事で本来なら死ぬはずの無い女の子が死ぬような目に遭わせてしまったことに強い罪悪感を感じていた。

もちろん山田君は聖人君子などではない。

見ず知らずの人間ならばともかく、原作知識と言うものではやての人柄を。人格を知っている。

ゆえにこそ山田君は自分の仲間たちを―――同じ職場の仲間が闇の書に蒐集(しゅうしゅう)されることを知りつつもそれを未然にふさがなかった。

見ず知らずの職場が同じだけの仲間よりもかわいそうな女の子1人を助けることを取ったのだ。

男としては正しい選択であるが、仮にも就職している社会人としてはどうかと思う選択である。

職場の仲間を取ってやれよ!と。

とはいえ、男と言うのはそういう馬鹿な生き物なのかもしれない。

何かの枠組みの外に美少女、美女が居ればその枠組みを壊してでも外へ行ってしまうという。

いわば本能である。多分。

なんだかんだでこいつこそ響(一般人レベル)以上の、女好きなんじゃないかという疑いが浮上する。

そして“生きててくれてありがとう”という彼の言葉は彼が罪悪感を感じずに済んだため、その感謝をはやてにしたということ。

いや。

響にしろよ!と。

段々いやなヤツに・・・まぁ、待って欲しい。

彼は嫌なやつじゃないのだ。

ただ先入観と言うか、思い込みが激しいと言うか。

何かを決めたら一直線と言うか。

単純バカというか。

それが証拠に響を相手取る以外は男女問わず感じが良い。

 

銀髪オッドアイ=厨二かつハーレム願望と言う先入観がちょっとばかし強いだけなのだ。

彼は嫌なやつじゃないのである。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

扉の前で話を聞いていた響は号泣していた。

アイシテルが軽く引くくらいに。

 

「ひ、ひびき?」

「・・・ぐず・・・うぐ・・・ずず・・・」

「その・・・感動したの?」

「ぐず。ふっ。まざか。

過去のことをぎいでないがら・・・ぐず・・・やがみ゛はああいったに違いない。」

「んじゃ何で泣くのさ・・・もう泣き虫だなぁ。」

 

アイシテルがハンカチを取って響の涙を拭く。

もちろん感動したゆえに泣いているのは言うまでも無い。

誰かから自分のことを悪く言われても「そんなはずあるわけないっ!!」と間も空けずに断言する。

割と良く見そうな光景であるが、実際これが初めてだったりする。

すずかもこのようなことを言ってくれればと今更ながらに頭をよぎる。

 

「おまえ・・・」

 

山田君が出てきたところで響と出くわした。

思わず響は構えたが、山田君はフッと笑ってそのまま去っていった。

いや、小声でぼそりと。

「フラれちまったぜ。」と面白そうに言っていた。

響は「あれ?こいつ漫画原作のチートと言い、今の気取った感じと言い・・・もしかして俺以上に厨二なんじゃ・・・?」と気づきかけたが、野郎のことに脳細胞を割くのもバカバカしいので早々に脳ミソのかなたへその疑問を送った。

 

 

そしてさらに盗み聞きを続ける。

いや、望んでしたように聞こえるが、実際はそのまま入りづらい話が始まってどうにも入りづらくなったというだけの話である。

 

 

「どないしたん?

なのはちゃん?」

「その・・・はやてちゃんから見て相馬 響ってどんな人?」

「・・・変なこと聞くなぁ?何?惚れ取るとかそんなん?」

「ううん、違うよ。そうじゃなくて・・・」

 

即否定のなのは。

ですよね。

なんや、つまらんとぼやきつつ、はやては口を開いた。

 

「ううん・・・そやなぁ。

なんかちょっと優しくしただけで、やたらと泣く子やなぁ。」

「泣く子?」

「そや。

どんな辛いことがあったんか分からんけど、今までがよっぽど酷い目にあったんちゃうか?」

「・・・。」

「うちと話すとき、必ず目線を合わせてくるのも特徴やな。」

「目線?」

「普通、目を逸らしたり、そこまで真正面から見据えてくる人間っていないやんか?

少なくともうちはあったことあらへん。響君以外はな。」

「どうして・・・?」

「うちが見てる分には・・・普通の人は周りの人間の評価をまず考える。

自分が相手をどう?とかじゃなくて、自分がダサいとか・・・しょうもないとか・・・そう思われたくないって思って・・・ええ・・・あれや。ファッションとかするやろ?

でも響君にはそういうのが全然無いというか・・・」

 

人は羞恥心と言う感覚を多かれ少なかれ持っている。

おそらく羞恥。もしくは近い感覚が人の目線をそらせるものだとはやては語る。

 

これは人の自分を「良く見せたい」という気持ちが一番の原因といわれていたりする。

しかし、響の場合は違う。

響は自分を良く見せることを意識していない。正確にはすでに自分を良く見せることを諦めているため、関係ない。

そうではなく、響は自分が相手と関わるに当たって関わりたい、と。

自分が嫌われたとしても関わりたいと思えるほどの人間であるか。

それを重視する。

ゆえに観察し、視姦し、見定める。

 

だから視線を外さない。

ただじっと見つめる。

それはまるで―――

 

「小さな子供が“見捨てないで”って言ってるみたいでな。どうも、放っておけへんのや。」

「・・・。」

 

なのはは感じた。

確かに響のことは分からない。

いまだ意味不明だ。

むしろはやての話を聞いてさらに響の人物像が分からなくなった。

 

一応言っておくが、別に響が複雑な人間と言うわけではない。

誤解と言う名のすれ違いがそれを引き起こしているだけだ。

響を一言で言うなら小心者の一般人。

何から何まで一般人で。

RPGならば農民A,村人A、盗賊Aが関の山。

三流である。

 

しかし度重なる誤解の積がなのはの頭を混乱させる。

が、なのはは気づく。

気づいた。

そうだ。

自分らしくいこう、と。

あまりの変さに自分らしさを失っていたが、考えてみれば単純な話。

フェイトの時と同じだ。

 

分からなければ話せばいい。

分からなければぶつかればいい。

ぶつかってぶつかってぶつかってぶつかった果てにはきっと。

分かり合えることが出来るはずだ。

今の自分とフェイトのように。

 

「ありがとう、はやてちゃん。

私、難しく考えすぎてたみたい。」

 

とにかく話そう。

話して分からなければぶつかり合えばいい。

そうして私は今までやってきたのだから。

 

 

 

こうして響のスターライトブレイカー被爆フラグが立ったのであった。

 

 

 

「そうけ。なんかよう分からんけど、まぁええか。」

「うん。そうと決まったら、さっそく響君にスターライトブレイカー・・・ぶつけてくるよ!!」

「は?」

 

はやての間の抜けた声、略してマヌケ声が病室に響く。

 

「なん・・・だとっ!?」

 

響の戦慄した声が病室の外で響く。略してリツ声である。

 

「・・・凄い子よね。ほんと。」

 

アイシテルはその良く分からない発想に畏敬の念を抱いていた。

それと同時にそんなマスターに振り回されるレイジングハート。略してレイハに同情もしていた。

が。

レイハならば言っただろう。

例えなのはにどんな無茶を。

どんなアホなことにつき合わされたとしても。

 

No problem My Mastar!(問題ありません、マスター)

 

と。

その主人への忠誠度はデバイス一(いち)と言えよう。

 

 

 

 

 

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