旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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アイシテルの葛藤

響は慌てて近くの物陰に隠れた。

もちろんスターライトブレイカーなんて喰らいたくないからだ。

 

アイシテルは響の体内に入り込んで隠れる。

そのままタッタと去っていくなのは。

響の病室に向かったと言うことだろう。

響がはやての見舞いに来ていなければ、響の病室でばったり。そのまま訓練場でスターライトブレイカー。

幸いだった。

胸を撫で下ろす響。

 

「・・・別の意味で彼女と会いたくない理由がまた増えたな。」

『・・・見た目に合わず脳筋よね。なのはちゃんって。』

 

深く考えないことにして、はやての病室に入る。

 

「なんや。響君か。

ほんま助かったわ。」

「・・・何が?」

 

病室に入ると、いきなりはやてに礼を言われた。

一体何のことを言ってるのか一瞬考えたが、守護騎士から全て聞いたのだろう。

リンカーコア集めやヤミちゃんを止めたことだろうとあたりを付ける。

 

「リンカーコア集めや暴走を止めたこと?・・・まぁ、どういたしまして。」

「それだけやないよ。うちの体も治してくれたんやろ?」

「そんなことあったっけ?」

『あれでしょ?

はやてちゃんが倒れた時の。っと、もう出てもいいか。』

 

アイシテルが響の体から出る。

 

「えと・・・それは・・・一応、胸揉んでたんだよ?」

 

はやてはううんと考えた後。

 

「別にそれが?

治療のためやったんやろ?」

「いや、だからって・・・」

 

響としては女の子の胸を勝手に揉んだことに嫌われるのでは?という不安があったのだが、はやては9歳児である。

言うことなすことでちょっと9歳児離れしているなのは、フェイト、はやての三人娘だが、それでも紛れもなく9歳児である。

すなわち男女間の意識が薄く、もちろんエロイ視線で揉まれるならば嫌悪感を抱くだろうが、治療のためというならばそれは気にするほどのことではない。

 

重ねて言うが、なのはに嫌われたのは相手が嫌がったのにも関わらず無理やり揉んだからである。

すなわち、今回の場合は全く問題ないのだ。

 

「・・・。」

「何が納得いかへんのや?」

 

少し不安げな響。

確かに問題ない。それは問題ない。のだが、それでも響にはまだ最大の懸念がある。

なのはの件だ。

山田君からその話を聞く前にはやてが話を切ってしまったが、本来ならばあそこで響の過去を知って嫌われてたんじゃないだろうか?

その不安が胸に広がる。

気づいたら、響はそのことを自分で独白していた。

 

「・・・。まったく。」

 

アイシテルが嘆息し、愛しそうに響を見た。

響がわざわざ自分で言ったのは後から知って、これ以上仲良くなった後に嫌われるのが怖かったと言うのもあったし、はやてなら―――という甘えもあった。

そう信じて話してみたものの。

 

「ぷく、あははははっ!!」

「な、何がおかしいんだよっ!?八神っ!!こっちは真面目に・・・」

 

 

はやてが笑ったのも無理はあるまい。

なのはのおっぱいが大きくなるようにと胸を揉んで上げようなどという発想は、同じチートを持ったところで中々無い考えだろうし、そもそもの響の昔のキャラがバカすぎて笑うしかなかったと言うのもある。

はやてからすると無理なキャラ付けで変なことになってる芸人やアイドルのようなものだ。むしろ滑ってますと言う感じのキャラ。

その滑った感じが好きなタイプの人間であるはやてとしては笑いの壷に嵌ってしまったといったところか。

はやて自身、なのはの気持ちを思えば不謹慎だと思っているし当事者であるならばわけの分からんことを言って自分の胸を無理に揉んでくる同級生は確かに怖いと思う。

なおかつ自分でも軽いトラウマとなっていただろうし、今のように響と笑って語り合うことも無かっただろう。

が。

当事者じゃない自分としては、出来の悪い滑ったバラエティ番組のようで、それははやての大好物であった。

もちろん普通の笑いでも笑えるが、やはり一番はそういった方向である。

とにかくはやてとしては確かに誉められたことではないが、反省していて謝っていると言うならすでに気にすることは無い。

それに。

 

「うちから見たら、響君は結構な男前やで?」

「え?」

「自分よりも強い敵に立ち向かえるなんて中々出来ひんことや。当然やろ?」

 

闇の書。

それは魔力量だけで言えばなのはの30倍以上。

技量や経験も守護騎士のがあるため、まともに戦っていたら確実に負けていただろう。

それでも立ち向かったのははやてのためであり、皆のため。

闇の書の暴走時は特に自分を嫌っているであろうなのはを救うためと言うのが大きかった。

はやては素直に感心していた。

 

アイシテルはそれを聞きつつ、確かにと頷く。特に響はビビりで、まず逃げることを考える。

その響にしては―――尚のこと感心できることだ。

 

誉められなれない響は照れ照れと頬を掻く。

 

「響君の過去よりも、今までうちが見てきた響君を信じる。これじゃだめか?」

「・・・だめ゛じゃない゛。」

「えっ!?ちょっ!?なぜ泣くねんっ!?」

「やがみ゛・・・君はいい・・・ぐず・・・やつ゛だ。本当に。俺には゛・・・もった、ないほ、どに・・・いいやつだよお゛・・・」

「・・・やれやれ。」

「ふふふ。」

 

泣く響を宥めるはやてを見て、笑うシグナムと肩をすくめるアイシテル。

ここでアイシテルがふと気づいたように口を開いた。

 

「そういえば夜天の書・・・ええと、リインフォースって名前をつけたんだっけ?」

「ああ。」

 

シグナムが答えた。

 

「その子はどうしたの?

ていうか他の三人は?」

「・・・少し大事な話がな。私は単なる主の見舞いだ。五人の代表としてな。」

「大事?

属託魔導師としての契約とか?」

「・・・そうであった方がまだマシだったろう。」

 

シグナムは少し沈黙した後、アイシテルに聞こえる程度の声量でその内容を語る。

 

「まだリインフォースの暴走の危険が無くなったわけでは無いということだ。」

「・・・なるほどね。完全には治せなかったか。」

「・・・ああ。そのようだ。」

 

響のおっぱいチートで暴走を納めたのは良かったとしても、そこには問題が残った。

響は揉むことで暴走を―――レベル2の時間退行による治癒で暴走する前まで時間を戻し、なおかつ暴走の原因となる防衛プログラムをレベル1のおっぱいの整形能力もとい体型変化によって取り除いた。

のだが。

防衛プログラムはしばらく経てば再度、再生されてしまうらしい。

戻そうにも元の姿である夜天の書の形が闇の書の中には残っておらず、今や夜天の書とは名ばかりで実際は闇の書と言っていいような状態となっている。

これは響の能力でも治すことは出来ない。

体型変化の応用で弄っても、元の姿が分からないというのは響の能力でも同じ。というかおっぱいチートはあくまでも肉体的なものであるため本来の使用用途を逸脱している。

デジタルの領域である防衛プログラムを除けただけでもかなりの成果なのだ。

 

時間退行も問題がある。おっぱいチートはそれをするのに相応の魔力を必要とする。

夜天の書が正しく夜天の書であったのはかなり昔。少なくとも1000年以上は昔の話だ。

そこまでさかのぼれるほどの魔力となると闇の書に込められてるものよりもさらに大量の魔力が必要となる。

即解決と言うのは無理な話だ。

そう、即解決は無理と言うだけの話。

おっぱいチートのことを知るアイシテルは即でなければ解決できる手段を思いつく。

しかし。

 

「・・・嫌だな。」

「ん?何か言ったか?」

「いや、別に。」

 

アイシテルはとにかく黙っておくことにした。

もともとの物語があるだろうし、きっと何かのご都合主義で解決されるだろうと。

 

「そういえば、お前たちはあいつに会っていかんのか?」

「・・・それもそうね。あの子にも挨拶していきましょうか。」

 

 

その言葉どおり、はやてとの話もほどほどに響達はリインフォースの元へ向かった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

「俺、ちょっと会いづらい。」

「・・・告白したもんね。私が好きだとか言っておいて。」

「いや、それは・・・」

「別にぃ。作戦だしぃ。」

「いや、別にとか言うならそういう顔を・・・」

「別にぃ。納得と理解は別だとは思ってないし。」

「・・・いや、その。」

 

あからさまに不機嫌になるアイシテル。

あたふたする響。

もちろん嫉妬する女の子を鎮めるなどと言うなどという高等テクニックなど知らない。

前世では中学2年という短さでその生涯を閉じ、今生はろくに女の子との恋愛など経験する間も無い―――というか9歳児である響にまともな恋愛経験などあるはずもない。

 

そんなやりとりをしながら歩いていくと、リインフォースが仮住まいとしてる部屋に着く。

中には残りの守護騎士とリインフォースがいるそうだ。

 

「ええと・・・お加減はどうかな?」

 

そろそろと入っていく響と、ずかずかと入っていくアイシテル。

 

「おう、響かっ!」

 

まずはヴィータが挨拶をして、次にザフィーラ、シャマルとなっていく。

最後に夜天の書改めリインフォースがなにやら様子がおかしかった。

 

響を見た瞬間にほんのりと頬が赤くなり、顔を逸らす。

そして手はぎゅっと堅く結ばれており、自身の服を強くつかんでいる。ありていに言えば緊張している。

アイシテルはそれを見ただけで気づく。

響もはっきりとは行かずとも、鈍いわけではないのであれ?と雰囲気の違いに首を傾げる。

 

そう。

リインフォースは恋をしていた。

もちろんのこと響に対してである。

いや、正確に言えばまだ恋と断言できるほどの強い気持ちではなく、なんかいつも目で追ってしまう、ないしは気になると言ったほうが正しい。

簡単に過ぎる!と思う人もいるかもしれないが、彼女に対して好意的に接する人間は今まで居なかったのだから仕方が無い。

いわばちょっと前の響と同じーーーいや、響の場合はアイシテルという心の支えが居てくれたが、リインフォースの場合には存在しなかった。

ただただ孤独に寂しく酷い人生を送ってきたリインフォースからすると、とても嬉しいことだったのだ。

 

さらには、響や―――概ねのオリ主からすれば1人の美女、もしくは美少女に過ぎないのだが一般的な魔導師にとってデバイスと言うのは武器であるとの認識であるということもそれに助力した。

はっきり言ってデバイスに対する恋慕と言うのはありえないことなのだ。

分かり易く例えるなら人形に恋をするようなものである。

もちろんこれはあくまでも例えであり、価値観の差異を分かり易くするためのものだ。

実際にデバイスが人形であるというわけではないのだが、少なくともミッドの人間にとっては例え人の形をしていようともそれは人間と同等と扱うことは無い。頼れる相棒となることはあっても恋愛対象になることは無いのだ。それが子供の頃から刷り込まれる価値観で、ミッドの人間からしてみれば響のようにデバイスに惚れたり、作戦だからと臆面もなく好きだと言えるのは変態に分類される。

 

さて、何が言いたいかというと、例え見目麗しくとも恋愛対象としてをデバイスを見ることなど無いというのに、ただでさえ危険物として憎しみや悪意と慣れ親しんできたリインフォーズにとって、響の好意は新鮮で、とても喜ばしく、それだけで相手に惚れこみかけるほどに衝撃的だったということだ。

 

 

変態とののしられることになったとしてもそれはそれで良かっただろう。

結局デバイスだろうと美女でおっぱいなのだ。

地球の男として嬉しく無いということは無いだろう。

だが、しかし。

 

ここで問題が発生する。

その好意。

その好意はぶっちゃけ嘘なのである。

 

その場しのぎの嘘。

その衝撃を利用するためについた―――言い方は悪いがリインフォースの気持ちを利用した悪趣味な作戦だったのだ。

しかしそれは仕方ないと言えよう。

窮地に立てば眠っている力が覚醒するとか、ありえないほどの天才だとか、絶対に負けないチートを持ってるとかならばともかく、多少魔力量に融通が効く程度のチートしか持たない響にとってそういった卑怯な手段でも使わない限り勝てない戦いだったのだ。

響の選択は例え女心を踏みにじる最低な手段だったとしても、それがなければなのはとフェイトは殺されていたのだから仕方が無い。

そう、仕方が無いのだ。

もっと良い方法もあったかもしれないが特別戦闘センスに優れたと言うわけでもない一般人のとっさの手段としては上等と言えよう。

 

 

鈍くは無いが鋭くも無い響はそのことに気づかず、まずはあの日の告白が嘘だったことを謝ろうと思った。

口を開こうとした瞬間―――

 

「その・・・だな。私は・・・主はやてのデバイスで・・・貴方と一緒にいることは無理なのだが・・・しかし、その響がどうしてもと言うならば―――あ、その・・・名前で呼んでも構わないか?守護騎士と記憶を共有したから私としては自然なのだが、でも、そっちとしては初対面なわけで・・・」

「ええと構わないけど・・・っ!」

 

響もこのセリフを聞いて気づいた。

もしかしてっ!?と。

この頬を赤らめて恥ずかしがる仕草。

ぎこちない喋り方。

そして今の会話内容。

あれ?告白の方、真に受けて、なおかつ結構良い返事をいただけそうな感じ?

そう気づく。

これはまずい。

響は冷や汗を垂らす。

もちろんすぐに否定しようとするが・・・

 

「・・・響の告白は嬉しい。今まで私を嫌う人間は居ても、好いてくれる人間など1人もいなかったからな。あれだけ暴れ、それでも貴方に好かれるとは思っても見なかった。」

「いや、のぞんでやってるようには見えなかったし、泣いてたから・・・」

「貴方は優しいのだな。」

「いやそんなことは・・・」

「そもそもあそこで私と戦ったのは我が主と殺されるであろう2人を思ってだったのだろう?」

「うん・・・まぁ、そうかな?」

「ええと・・・その・・・あの時私が付けた傷は大丈夫か?

もう痛くないか?その・・・私が言えたことではないと思うが。嫌いになったか?」

「そんなことは無いよ?

ほら、しょうがなかったし、半ば暴走してるって聞いてたし。」

「そういってもらうとありがたい。・・・ほ、本当に嫌っていないのか?」

「それはもちろん。」

 

などと会話を続けながらも響は脂汗がにじみ出るのを感じていた。

やばい、やばい、やばい。

この流れはヤバイ。

なんかますます言いづらくなってきた。

 

「ああ、しかしその・・・私には一つ欠点があった。

防衛プログラムの再生だ。

そうなってはまた主はやてや貴方に迷惑をかけてしまう。

愛しい貴方達に私は傷を付けたくは無い。」

「ええと・・・何か対策は考えたの?」

「・・・私を消すしかあるまい。幸い防衛プログラムは私のプログラムの中に組み込まれている。

私を消したところで守護騎士までもが消えることは無い。」

 

雰囲気が暗くなる。

ここで響がおっぱいチートのことを喋るが、それをアイシテルが否定。

 

「無理だよ。言ったでしょ?

おっぱいチートはそれぞれの原理がある。その原理的に今すぐどうこうできるものは無いよ。」

「ううむ・・・」

 

そこでヴィータが言う。

 

「それならその時間退行?の能力で響の魔力が回復するまで待って回復したら揉んで、回復したら揉んでってのを繰り返せばいいんじゃないか?」

「それだっ!!」

 

響が名案だとばかりに顔を輝かせるが、大して顔を暗くする物がいた。

言わずもがなアイシテルである。

一つのデバイスとしては賛成だ。

響と守護騎士達との関係がまた深まり、響に友人が増えることになる。

しかし1人の女の子としては反対だ。

他の女のおっぱいを揉むなんてこと許したくない。

例え人助けでもだ。

人工呼吸だからと自分の彼が。自分の彼女が。

意識を失っている異性に口づけするのを見て、全く気にしない人間がどれほどいるだろうか?

確かに緊急事態だし、そんなことを言っていられる状況でもないのは分かる。

分かるのだが不愉快だ。

さらにはそれがこれから毎日続く。

毎日それを見せ付けられる。

彼女を完全に戻すまで一体全体何年かかることか。

どんなに少なく見積もろうとも毎日揉んで一年はかかるだろう。

下手したら5年、10年。

何もしない響の寿命の間ずーっともみ続けても無理かもしれない。

時を戻すのは大量の魔力を要する。さらにそれは1000年単位。

難しいだろう。

 

アイシテルの心に重く黒い感情が巻き上がる。

 

リインフォースがおっぱいチートのことを聞いてその顔に希望が見えた。

やはり乗る気だろうか?

アイシテルは嫌な気持ちが膨れ上がる。

でも爆発させるわけには行かない。

これは響のためだ。

私が言えばきっと響は断ってくれる。かもしれない。

そんな考えが浮かぶ。

しかしそれを振り払うように堅く目を瞑るアイシテル。

なんだかんだで響にとってアイシテルが一番の相棒であり恋人だ。

そして今まで勘違いや悪意を受けることに慣れてる響ならばきっと気にせずやってくれる。

いや、気にするだろうがそれがアイシテルのため。というならば傷つきながらも泣きながらでもやってくれるに違いない。

なんだかんだで今回の件で頑張れる子だと分かってしまった。

きっとそうしてくれる。

だからこそ我慢する。

 

「・・・こんなことならへたれのままでよかったのに。」

 

呟くアイシテル。

ここで断ったら響がいやなヤツになる。

それはアイシテルの望むところでは―――あるものの、響の望むところではない。

しかし、このままでは自分だけの響が自分だけでなくなってしまう。

リインフォースの方まで乗り気なのがネックだ。

こんなヘタレどこがいいのだろうか?

いや、でもがんばれるんだよね、ビビリながらでも逃げ出しそうになりながらも。それでも頑張れるんだ、響は。

そんな響の格好よさが自分以外に分かられたのが癪に障る。

自分の方が先に気づいたのに。

自分の方が先に好きになったのに。

 

でも恋愛は自由だ。

それに響がやった作戦に自分も賛成した以上、この結果は可能性は低いけれど考えてはいた。

しかし。

とっとと否定しろ。

自分はすでに心に決めた人がいるって言えっ!!

 

アイシテルの心の中はまるで嵐のように荒れ狂う。

 

頬を染め、恋する乙女のように振舞うリインフォースを見て。

そしてまんざらでもないように見える響を見て。

アイシテルはいつの間にか逃げ出したのであった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

「・・・何やってるんだろ?私。」

 

響の病室まで逃げてきたアイシテル。

独白するように呟く。

 

「響は何も悪くないもんね。・・・我慢・・・するしかないよね。」

 

自分に言い聞かせるように呟く。

そこに肩で息をする響がやってきた。

 

「いきなりどうしたんだよっ!!

びっくりしたよ、もうっ!!」

「別に、なんでもないよ?」

「・・・その顔止めい。」

「どんな顔よ。」

「私、辛いです、って顔。何があったんだよ?

特別鋭くも無い俺としては言ってくれないと分からないんだが・・・」

「本当に分からないの?」

「・・・ええと・・・多少の心当たりはあるけども・・・」

「分かってるんじゃん。とぼけんな、ばか。」

「・・・いや、これは仕方ないし・・・」

「そんなのむかつくくらいに承知の上だい。

でも納得できるわけ無いでしょ。私・・・響のことちゃんと好きなんだよ?」

「は。え?

えと・・・」

「・・・。ヤキモチ焼くに決まってるでしょ、ばかちん。」

 

アイシテルは俯いてた顔を上げて、響に歩み寄る。

 

「・・・分かった。じゃあ、俺、断って・・・」

「あほ。そんなことしたら冷血漢とかそんなこと言われちゃうでしょ。」

「別に今更・・・」

「今だからだよ。せっかく誤解が解けてるんだよ?

私のわがままで下手に友好関係にヒビ入れちゃ・・・どうこうしちゃだめでしょ?」

「いや、けど・・・」

 

響にとってはやはり一番はアイシテルなのだ。

ずーっと一緒にいてくれたアイシテル。

そして好きな女の子。

好きな女の子を悲しませるのと友人を悲しませる。

どちらを取るかで言えばやはり。

 

「その代わり。

少なくとも告白の件は嘘であったことはちゃんと言ってよね。

それだけはいや。おっぱいを揉むのは・・・私も揉んでくれるなら許す。」

「は?」

 

響は呆気に取られた。

 

「しょうがないもんね。人命救助だし。」

「えと・・・ごめん。」

「響が謝ることじゃないでしょ。」

 

 

 

そういって笑うアイシテルの笑顔に影は無かった。

そう感じた響であった。

 

 

 

 

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