メールでも楽しみしてたという方もいましたしとにかく昔掲載されていた分は今度こそ投稿しきることにしちゃいます。
序章
さてはて。
プレシアテスタロッサ事件。
闇の書事件と続き。
9年の月日が経った。
響は18歳となり、なのは達もまた18歳となっていた。
高校三年生で、なおかつ今は進路に迷う冬であった。
いや、すでに進路を決めた者が殆どであろう。
高校生活も残りわずか。
それぞれが思い思いに過ごす時期。
そして選択するのだ。
これからの人生に関わる大事な一歩を。
どんな一歩を歩むかを。
その一歩は人によって違うだろう。
確かな夢を持って歩むもの。
ただ惰性で流されていくもの。
日々の糧を得るために早々に仕事に就くもの。
とりあえず勉強をしておくもの。
その選択をやり直すことは出来ず。
後悔も。
充足も。
後になって始めて分かることである。
☆ ☆ ☆
「ううむ・・・」
「どうしたの?」
「いや、進路どうするかなぁって。」
自宅にて悩む男がいた。
その姿は一目見れば可愛らしくも美しいと表現できるような美貌で。
顔における美形と言うのは、突き詰めていくと性差が無くなっていく。
それを如実に表したのが彼の顔と言えよう。
もっとありていに分かり易く言えば男だと言えば美男子だし、女だと言えば美女であろうと言えるような端正な顔立ちをしていた。
神に創られたと言われた方がまだ納得できるほどの美麗さを誇っている。
声は男と女を混ぜ合わせたような中世的なもの。
そして、どこか透る声。
男が歌手を目指したならば、歌の曲調や流行りといったもんではない、その声でもってベストセラーを出すことが可能であると思わせるほどに絶妙な声である。
髪は作り物のようでありながら人工物のような不自然さを残さない綺麗な銀色。
そして眼球は人類ではほぼありえないと断ずることが出来るオッドアイ。
さらにはその眼球は赤と金という中学二年生が見れば憧憬を抱かずには居られないような色合いだ。
身長は170センチ。
日本人男性としては低いと言うほどでもないが、高いと言うほどでもない平均的なもの。
筋肉は何かしらの運動をする人程度には付いており、たるみが無い程度には引き締まっていた。
ご存知。
18歳になった相馬(そうま) 響(ひびき)である。
見れば彼は誰もが振り返るような絶世の美男子へと成長を果たしていた。
・・・色々な意味で。
その整った顔は確かに素晴らしいものだが、人類にはありえない髪と目の色が―――しかし、その色が着色されたものではない自然なものと受け入れてしまえるがゆえになおのこと気持ち悪さに拍車をかけている。
との話はまたとして。
「まだウジウジなやんでたの?
全く・・・管理局の誘いに乗ればいいじゃない?
なのはちゃんたちはなんて?」
「・・・知らんがな。」
「はぁ?」
そしてその男の対面に座っているのはアイシテル。
響の恋人兼デバイスである。
融合騎であり、独立行動を可能としている。
彼女の姿もまた変わっていた。
元来、デバイスは成長しないものだが、そこは響のチート。おっぱいチートのレベル1の体型変化によってアイシテルも少し大人びている。
14、5くらいの黒髪ツインテール少女だったのが、今では少し大人びてクーデレツインテール少女。という雰囲気を醸し出していた。
ちなみに、クーデレとは普段はクールで時々デレるという女の子のことを言うわけであるが、彼女がそうなのかは分からない。
クーデレと見えるようになった一番の原因は、成長に際して若干目が鋭くなったことだが彼女自身はちょっとしたコンプレックスと考えている。
しかし響としてはむしろ自分好みになったわけで内心喜んでいた。
ちなみにおっぱいも大きくなっており、かなりのおっぱいを持つ。
張り、柔らかさ、形、反発力、大きさ。
おっぱいにおけるステータスは大まかにこの五つであるが、それら全てがパーフェクトなアイシテルのおっぱい。
おっぱいコンテストがあれば誰もが勝てまいと戦う前から諦めるほどの一品であろう。否。逸品である。
などという話はともかくとして。
響とアイシテルは響の今後の進路について話し合っていた。
「響、オマエはまだなのは達とろくに話せていないのか?」
そこへリインフォースがやってくる。
彼女は特に変わっては居ない。
しかし内面的には非常に変わっており、一言で言うならば響をより好きになったといったところだろうか?
友達として、敬愛する自身の主人として。
異性としては恐らく違うのかもしれないしそうなのかもしれない。
詳細を話そう。
闇の書事件の際。
響は彼女に対して、酷いことをしている。
彼女の気持ちを踏みにじるような作戦を立てたのである。
彼女は長年。
数千年の間、孤独と戦ってきた。
そして悪役(ヒール)として扱われてきた。
彼女自身は望まなくとも。
今までに悪意、もしくは打算や下心がはっきりと見て分かるほどに醜い好意とも言えない様な行為しか受けて来れなかった。
そんな中、初めてといっても過言ではない響の好意。
さらに言えば仮にも異性からの告白である。
デバイスと言えど女性人格であるリインフォースにとってそれはどれほどの衝撃で、それはどれほど揺さぶられたことか。
結局、それは虚偽であったが。
しかし。
彼女は忘れられなかったのである。
『好意を向けられる』と言う『快感(エクスタシー)』を。
虚偽を告げられた時は非常に辛かった。
こんな呪われた自分であっても必要としてくれる人がいる。
それだけで心が沸き立ったのだ。
大好き。
自分は魔法を司るデバイスというプログラムであるが、これ以上の魔法を自分は持ちえていないだろう。
その言葉だけでどこまでも頑張れる。
どこまでもいける。
どんな困難にでも立ち向かっていける。
そんな理論的にはありえない思いを抱くまでに自分は緩んだ。
それが嘘。
絶望した。
嘆いた。
長年の内に見出した一筋の開けた道はただの虚構だったのだ。
大好きと言う魔法の言葉。
もう一度言われたい。
もう一度。
もう一度と懇願した。
しかし、悪いことは重なるもので。
プログラムの都合上、自分は消えなければならないと言う運命。
やはり呪われた存在は最後まで呪われなければならないのか。
だがそこでまた彼が救ってくれた。
一度目は虚偽であったが、二度目は本物で。
泣きそうになっていた顔がいつの間にか晴れやかになっていた。
そして人間。といっても彼女は人間ではないが、人間満たされれば次の欲が沸いてくるものである。
彼女は愛されたい。
そう考える。
どんな形でもいい。
自分に好意を向け続けて欲しい。
次に好意を、愛されるためにはどうすればいいのかを考える。
こちらが好意を向ければ好意を返してくれるに違いない。
憎悪には復讐と言う形で憎悪が“帰って”くるように。
きっと自分が向けた好意は好意として帰ってくるに違いない。
しかし好意というのは憎悪のように帰るのではなく、“返って”くるのだ。
彼女は精一杯に響に好かれるように。
大好きと言われるような努力をしてきた。
ところがしかし。
もちろんであるが普通の人間であれば親切にされれば概ねの場合で親切で返す。
情けは人のためでは無いということわざがあるように、親切は自らに跳ね返ってくるのだ。
そして彼女はいつの間にか響に惚れていた。
単純にその人格か、異性としてか。
今はまだ分からないけれども。
優しく。
穏やかで。
普段は情けないくせにブルリとしながらもやる時はやる。
どんどんと心惹かれていったのである。
もちろんこれは勘違いが少なからずある。
響が優しいのはあくまでも親切に親切を返したまで。
特別優しいわけではない。
とはいえ、別に冷たいか?と問われればそんなことはないのだが。
しかし今までに好意を受けたことの無かったリインフォースにとっては十分に心地よく、軽く傾倒してしまう程度には響が良く見えてしまっていたのだ。
もちろん5年の間に響の人となりは理解した。
今までの孤独で辛い日々ゆえのギャップで些か過剰に良い男と思えていたが今ではしっかりと響を見据えている。
しかし出来の悪いものほどなんとやら、というもので彼女はむしろさらに愛しく感じてしまったのだから手に負えない。
これが俗に言う惚れた弱みと言うものか。
重ねて言うがそれが異性としてなのかは分からない。
しかし身体を求められれば即応えることが出来る程度には愛しく思っている。
そんなことを考えながら愛する主人にリインフォースは言うのである。
「ええと・・・その、ねぇ?
いまだに顔を合わせづらいと言うか・・・というか違う学校だし、わざわざ他の学校や家に行ってまで進路どうしてる?って言えるほど親密じゃないし。」
「そんなことでは私の主人は務まらぬ。もう少し、しゃんとして欲しいものだ。」
「ご、ごめんなさい。」
「い、いや、別に怒ってるわけではないんだぞ?
そ、その・・・もう少し格好良くあって欲しいと言うかな?
そのままでも私はいいのだけれど・・・なにぶん他の有象無象ドモに響が悪く言われるのが不愉快であって・・・」
うなだれる響に対して、あたふたとしながらフォローするリインフォース。
彼女の言葉どおり彼女としては情けなくともそれは承知の上で好いているのだから構わないのだ。
「・・・で、どう悩んでるの?」
アイシテルがそんな2人を見ながら言う。
ちなみに彼女はリインフォースの好意のことは知っているし、響もリインフォースから向けられてる好意を知っている。
人を好きになる気持ちは現在進行形で重々承知している上になんだかんだで優しい彼女は嫉妬しながらもリインフォースを響の近くにいてもいいことを認めた。
渋々ながらである。
本当に渋々ながら手を繋ぐまでは許すといったのだ。だがしかし。
しかし、許せん。
嫉妬は収まらない。
滾る怒りを静めるために今日も彼女は幻影人形を血祭りに上げるのである。
とはいえ、自分ことを良く分かってくれてる相手が二人もいる。
なんだかんだで響は幸せであったのだ。
今のところは。