「おはようございます、先輩!」
「ああ、おはよう。」
さわやかな挨拶にさわやかな受け答え。
響は最近、まさにモテ期に入っている。
それは当然だろう。
響は髪と目の珍妙な色合いこそ目立つものの、見た目は文字通り神が手づからに作った美形である。
男らしさ、ワイルドさと言った物が少ないとは言え、そういった男臭さが受けていたのはちょっとした昔の話。
今はその美形ゆえに響は―――
「今日もこラブレターが・・・」
下駄箱に入ったラブレターを回収するのであった。
響の心境は?
というともちろんのこと嬉しい。
人からの―――特に異性の好意を受けて嬉しくないやつなどあろうはずもない。
ところが。
ところがである。
嬉しいのだが、正直迷惑でもある。
我ながら贅沢な悩みだとは分かっている。分かってはいるのだが、こんなことを言いたくはないとは思うものの、ラブレターの処理に困るのだ。
ご存知のとおり、すでに彼女持ち。
デバイスとの結婚を認める世界があるなればそこにいって結婚式をあげたいくらいのものである。
日本で挙げようとも思うのだが、それはちょっと無理だ。
だってデバイスだし。
戸籍が無いのだからして。
ちょっと日本で結婚、そのまま仲良く暮らすというのはいろんな意味で難しかった。
閑話休題。
とかくまぁ、モテる響。
ラブレターの処理に困っていて、いっそのこと男子校に転校しようかと思っていた時期すらあった。
まぁラブレターを送ってくる人間が大抵知らない人ばかりなので、顔だけしか見てないんだろうなぁと思うと少し虚しい思いもするのだが。
実際、ある程度話すクラスメートの女子からは貰ったことが無い。だからこその知らない人ばかりからのラブレターでもある。
響のヘタレ具合はやはりもって、普通は魅力的に映らないのであろう。
アイシテルとリインフォースが特異なのだ。
しかもそういったモテる人間は同性から疎まれ易い。
ろくに友達が出来ず、むしろデメリットの方が大きかった。
だからこそ響は今生で男友達というのをクロノ以外に持ったことがないのだ。
ちょっと寂しい。
ラブレターの返事だって、書くか、言いに行くかしないといけない。
無視するのはさすがに良心が・・・といった具合だ。
もちろんラブレターといっても今の時代、そんなに多いわけではないから助かるのだが、ちょいちょい貰うと面倒さが先立つというものである。
そんなラブレターのなかに一通。
大抵、ピンクや可愛らしいシールで着飾ってる封筒なのだが質素な白い手紙が混じっていた。
といってもそれを併せても二通しかないのだが。
「ええと・・・あて先は誰?」
封筒にすら入れられてないノートの切れ端を使った紙に丸っこい文字で、放課後屋上に来てくださいとだけ書いてある。
さすがにこんな質素なラブレターはないだろう。
となれば単なる呼び出しだが、こんな丸っこい文字を書くような知り合いはいない。
というか呼ばれるほどの親密度を持つ男友達すらいないのだから、思わずため息がでる。
ハーレムの犠牲は大きい。
しかも望んだわけじゃないのがまた辛い。
「ふっ、この程度のすれ違い。9年前はしょっちゅうだった俺に何のダメージももたらさんぞ。」
『で、行くの?』
いつものごとくアイシテルは響の体内だ。
アイシテル曰く、いつ何が起こっても対応できるため、であるが、もてることを聞いたアイシテルが響が他の女の子に目を向けないかの心配をして付いてきている。
『ふむ、怪しいな。主よ。行かぬほうがいいのではないか?』
続いてリインフォースが答える。
リインフォースも主に何かあっては自分の存在意義がどうのこうのと言って響の体内に入り込んだわけだが、実際はアイシテルと同じような理由である。
響が告白を受けたり、女の子と近づくたびに相手の女の子を殺しそうになってしまうのが悩みのタネである。
リインフォース自身は自分の防衛プログラムの暴走だろうとして響に胸を揉んでもらおうとするのだが、それをアイシテルに阻止されていた。
それは絶対違うでしょっ!と。
しかしリインフォースとしてはこの胸のムカつきといい、それしか考えられないと思っているのだが。
もちろん彼女自身は気づいていないものの、ただの嫉妬であることは言うまでも無い。
「まぁ、ラブレターでは無いみたいだし行ってみるさ。ちょうどもう一通のほうも一緒の場所だし。」
『他の人間がいるところで女の子を振るとか、どんだけ鬼畜なの?』
『さ、さすがにそれは・・・し、しかし私の主人愛は変わらぬっ!安心してくれ、響っ!!ドンビキするけれどもっ!!さすがにドンビキするけどもっ!!』
「き、鬼畜とかっ!?
そしてドンビキドンビキと連呼すなっ!」
『いや、だって・・・ないわぁ。ありえんわぁ。』
『うむ・・・その・・・ドンビキだ。』
「う、うるさいなっ!!
指定してる時間が一緒なんだからしょうがないだろっ!?」
『・・・ううむ、まぁそれもまた面白そうね。』
『まぁ響が嫌われる分には構わぬが・・・』
「どっちも酷いなぁオイッ!!」
こうして響は放課後、屋上へ向かうのだった。
放課後。
そこにいたのは二人。
なんか雰囲気が悪い。
1人は艶があり、枝毛が全く無いほどの黒髪が特徴的な可愛らしい小柄な女の子。
そしてもう1人はまだ来てない様だ。
とりあえず話を聞こう。
「えーっと佐久間さん?」
「あ、はい。
えと、相馬先輩。
今日はわざわざ呼びたてて申し訳ありませんでした。」
どうやら目の前の子が響にラブレターを送った子らしい。
「あ、別にいいんだけど・・・えっと、その。」
「言いたいことは分かってます。
でも、先輩を一目見て分かったんですっ!
あ、この人が運命の人だってっ!!」
確かにそういうのはあるとは聞く。
聞くのだが。
ただしイケメンに限るんじゃないだろうか?
「見た目とかじゃなくて・・・いや、見た目もカッコいいんですけど!!きゃっ!言っちゃったッ!」
「はぁ。」
「それであの・・・私尽くします。その毎日お弁当も作ってきますし・・・」
「えーっと、そのね、だから・・・」
「それにっ!!
身体を求めるなら―――きゃっ!!また言っちゃったっ!!」
『ビッチが。』
『身体なら間に合っている。どうせなら私の身体を使って欲しい、響。』
『ここにもビッチがいたか。』
『何を言う。私は響以外に肌を許すつもりは無い。』
『そっちの方がたちが悪いってのをわからないかなぁ。私からすると不都合極まりない。っていうか、あんたの持ってる愛は主人愛でしょっ!!』
『どうせならという話だ。ムキにならないで欲しい。』
『このやろぉ。』
「あの・・・あまり知らないし・・・」
「これから知っていけばいいと思いますっ!!」
「そのホント御免ね。どの道、彼女がいるんだ。」
「・・・誰ですか?」
「い、いやこの学校にはいないから・・・」
「・・・私じゃダメなんですか?」
「うん、まぁ。」
擦り寄ってあまり主張の薄い胸を押し付ける佐久間さん。それでもほのかな柔らかさが特徴的だ。
響はちょっとだけどぎまぎする。
が、どちらかといえば一途な方なのであまりうろたえはしない。
その時だった。
ばたんと屋上の窓が開かれる。
「すいません、待ちまし―――」
もう1人の手紙の―――というか切れ端の主は女の子らしい。
見事な金髪に赤い瞳。
どこかでというか、いつの日か見た女の子をそのまま大きくしたような女の子がそこにいた。
しかし、彼女は響と佐久間さんの姿を見てなんか空気読めてなかったかな?と首を傾げる。
「ええと、響。お取り込み中だったかな?」
「いや、そんなこと・・・あるけれども。」
佐久間さんはそんな闖入者。
アリシアテスタロッサを射殺さんばかりの視線で睨む。
「もしかしてオマエが・・・」
「え?え?」
「私の男を盗った泥棒ネコ・・・死ねばいいのに。」
「え?」
「・・・死ねばいいのに。本当に死ねばいいのに。」
「いや、ちょっと佐久間さん?
彼女はただの知り合いで・・・」
「ただの知り合いが名前で呼ぶんですか?
親しげに。」
「い、いや、別に・・・普通じゃないかな?」
一気に剣幕を増した佐久間さん。
なのは達はやたらと名前で呼ぶし、呼ばせたがるから別におかしいことではないのだが、やはり世間の一般常識的にはどうかと思うだろう。
響も知らず知らずのうちに毒されているようである。
というわりにはフェイト以外のメインヒロインたる、なのはとはやてには名字呼びなのだが。
はやてを変わらず八神と呼ぶのはなんかやたらと名前で呼べとしつこくなってきたので、もう断じて名前で呼んでやるものかっ!という意地を張り始めてるためである。
「彼女・・・ですか?」
「いや、彼女では・・・」
「嘘だっ!!」
「ええええええっ!?」
「だって、こんなに可愛い人が・・・くっ。
先輩のばかぁあああああっ!!
おっぱい魔人っ!!
おっぱいが大きければ何だって良いって言いふらしてやるぅぅぅぅぅっ!!」
「ちょっ、えっ!まっ!?」
「え?え?何が起こってるの?」
そのまま走り去っていく佐久間さん。
走り去る間際に、たわわに実った巨乳を持つアリシアの脛を蹴って逃げていった。
「ひたぁっ!?」
涙目になるアリシア。
かわいそうだ。
対外的に響なんかの彼女になるというのと、無駄に巻き込まれたという二重の意味で。
変な勘違いが学校内に広まらないのを願うばかりである。
ちなみに響の悪評はむしろ好都合。
これで告白してくる人間が減れば良し。減らなくてもどうせ大した評価は受けてないわけだし。
アリシアテスタロッサ。
彼女は今は響の隣の家で(これは管理局側の、監視対象は纏めた方が楽だろうとの怠慢からくる都合のため)、今まで幼馴染的な感じで仲良くやってきた。
そう幼い頃からの幼馴染である。
佐久間さんではないが死ねばいいのに。
ちょっと最近調子乗ってる気がする。響のクセに。
アリシアはプレシアを治してからしばらく、実験で安全性を知ったのかあまり時をおかずに完全に生き返った。
ゆえに彼女も高校3年生だったりするのだ。
作者である私自身、内容を忘れていたり。
まるで違う人の作品を見てるレベルで楽しんでたりしますw