魔導師への第一歩
「なにこれ?」
歩いていたら何かに出くわした。
黒い形にネコーーーいや、ぬこの目をした珍妙な生き物である。
なんか触手が生えていた。
「・・・こういう生き物もいるんだなぁ。」
響はそんなことを呟く。
もちろんそんな生き物がはびこるような世界ではない。
「うぉっ!?」
『ぷろてくしょ~んっ!』
触手が響に襲い掛かるがそれを基本魔法のプロテクションで防ぐアイシテル。
響は少し焦る。
目の前の黒い塊は何らかの生き物にジュエルシードが憑依した姿。寄生、共生?なんにせよ合体した姿だ。
合体したからといってなぜこんな形になるのかが意味不明であるが。
「こ、こんな気性の荒い生き物がこの街の近くに居たとは・・・知らんかった。」
『何言ってるの。これは生き物というより魔法生物なのよ。』
「ん?
生物には変わらないんでしょ?」
『そうだけどそうじゃない・・・というかそれどころじゃないというか。ほら、キタっ!!』
「はっ?
ってぎゃぁぁぁああああっ!?」
さらに触手を増やして攻撃を続けてくる黒い塊。
アニメであるならばただ黒いだけだが、いまやこれは現実として目の前にある。
うごめく体はどうも肉質的で結構気持ち悪い上に、そこかしこから触手が生えてそれが突き刺そうと襲いくる。そして目玉は大きいのがそのまま実写化されたもので、正直下手なホラーよりもグロイ。
当然のごとく一般人気質の響は声を荒げた。
そして逃げた。
『ちょ、ちょっとっ!?
た、戦わないのっ!?』
「あれと!?バカじゃないのっ!?
あんな意味不明な生き物と戦うとかバカかっ!?」
『誰がバカとっ!?
所詮私の玩具のクセに私をバカにするとは・・・ちょっと生意気じゃない?』
「誰が玩具かっ!?」
とか言い争いながら逃げる響。
そして触手に足をとられた。
「や、やばっ!?
え、これ?どうされるの?何されるの?
食べられちゃう?頭から丸齧りですかっ!?」
『ふふふ・・・ざまぁ。』
「ちょ、おまっ!!食われる前にアンタだけは壊すっ!!」
『そんなこと出来ないでしょうに。ほら、手まで巻きつかれて。』
「うっぉぉおおおっ!?
しまったぁあああっ!!手が・・・手が引っ張られるっ!?」
『そのまま丸齧りされてね、響。』
「ちょ、えっ!?マジで助けてくれないのっ!?ていうか助けられるっ!?」
『確かに助けられる。でも嫌。』
「えっ!?だめもとで言っただけなのに・・・最近のパソコンパナイね。っていうか、助けられるんならハヨう助けんかっ!?」
『えぇぇぇぇぇぇ・・・気分じゃない。』
「気分で人助けとかどんな鬼畜ですか。ホントまじ助けてください。」
『ていうか、さっき助けたから良くないかな?』
『いやそんなこと言ってる場合じゃなーーーやばっ?ほんとマジやばい、やばすぎる。お願い、ほんとお願い。お願いだから助けーーーぐおぉぉぉぉぉっ!?間近に牙が、牙が迫ってるっ!?
ていうかこんな場所に口があったのかっ!!ヒトデみたいなやつ・・・とか言ってる場合じゃなくてだなっ!!
も、もう・・・ほんと限界。』
閉じようとする口に手を当ててなんとか閉じられないようにと頑張っているのだが、如何せん態勢が悪い上に腕もぷるぷるしてきた。
彼の精神年齢は20台ちょっとであるが、肉体年齢はあくまでも9歳なのだ。
それでも仮にも動物のアゴの力に耐えられてるのはさりげなくアイシテルによる肉体強化の魔法があるからである。
しかし、このままでは黒い塊の糞と化してしまう。
『くそぉぉおおぉぉおおおっ!!こんなはずじゃなかったのにっぃぃぃぃっ!!』
悪役が死に間際に発するようなセリフを言ってプルプル震える腕が外れそうになる。
さすがにみかねたアイシテルが助けに入ろうとするがそれよりも重大な案件が発生した。
もとい元祖主人公である高町なのはの登場である。
本来の歴史とは打って変わって、すでに変身済み。
なおかつリンカーコアを求めるこの黒い塊に襲われるのはユーノであり高町なのはであるはずだった。
そこへ通りかかったリンカーコアを持つ生物。
もとい響は丁度言い獲物であったのだ。
その戦闘時の余波をかぎつけたユーノ・スクライアがなのはに助力を請い、レイジングハートを手に取りやってきたというわけである。
「きゅ、救援かっ!?」
人の気配に振り向いた瞬間、響は固まった。
当然である。気まずさゆえにだ。
そこで響が起こした行動はもちろん。
「や、やばい・・・よりやばいぞ・・・っていつまで噛み付こうとしてんのっ!!
邪魔だぁっ!!」
目の前の黒い塊を触手に纏わりつかれながらも蹴っ飛ばし、その辺の庭の草むらに隠れることだった。
火事場のなんとやら。というやつだ。
「戦略的撤退と言うやつだな。うん。」
『逃げてばかりじゃだめだと思うよ?』
「やかましい。これは俺のためではなく、彼女のためだ。夜の街を飛行しているところ、いきなりいつぞやの変態が現れてみろ。むしろ俺を見て逃げかねんだろう?」
『・・・確かにそうかもしれないけど可哀想なくらいにみじめな気遣いね。』
「・・・うるさいやい。」
『というか飛行してることには突っ込まないの?』
「え?ああ、そういえば飛んでるけど・・・すごいテクノロジーだな。オマエといい、今の地球はやたらとか科学力が高いみたい。空も飛べるのかぁ・・・アイシテル、俺も飛べないの?」
『飛べるけど・・・普通に受け流すのね。』
「死んだ時にこの世界は空を飛んで弾幕芸(シューティングゲーム)をする少女達がいると聞いていたからな。」
『しゅ、シューティング・・・』
「あ、それより見てみろ、なんか倒したみたいだぞ。
ていうか、今更だけどあの黒い塊って何?それと気のせいじゃなければフェレットらしき動物が喋ってる気がする。」
『とりあえず帰らないの?』
「そうだな・・・すっごい疲れたし、腕ぷるぷるしてるし今日は早く寝よう。」
『んじゃ結界抜けるね。』
「なんか良く分からんが了解だ。どうせなら空を飛んで帰りたい。」
『はいはい、ええと空を飛ぶやり方は・・・』
こうして響はリリカルでマジカルな世界に片足を突っ込むのであった。
☆ ☆ ☆
「これ、やんなくちゃだめなの?」
『また襲われるかもよ?』
さて、俺はというと特訓することになった。
なぜかというとアイシテルの話によるとまだこんな感じの出来事が起きるらしい。
じゅえるしーどとか言う厨二な名前のアイテムが街のあちらこちらに落ちたとかなんとか。その結果なんちゃらかんちゃらとか。厨二過ぎて聞いていられなかった。
よく分からないが、あんな生物に襲われるのは勘弁なので少なくとも逃げられるような魔法は使いたい。
「えーっと、まずは何々?
アイシテルセットアップと言いましょう・・・とな?」
そのためにもアイシテルの取り扱い説明書を読んでいる。
アイシテルが口で説明するのが面倒だから勝手に読めといわれて作られた冊子である。
こんなことを言えと要求してくるとは。
アイシテルだって厨二じゃないか。
「アイシテル・・・せ、せっとあ~っぷ。」
小声なのは仕方ないよね。
恥ずかしいし。
すると胸のアイシテルがぱっと光り、アイシテルから自信を守る強靭な衣服をイメージしろとかいわれた。
強靭な衣服ってなんだよ。
綿100パーセントの服じゃ駄目と言うことだろうか?
ポリエステル繊維を使えと?
『そういう意味じゃないっ!あほっ!!』
もういっそのこと鎧でいいじゃんと考えたら服が脱げた。
・・・なぜ?
意味が分からない。
上着が溶ける様に消えていき、次にズボンが溶け消え、パンツが最後にはじけ飛ぶ。
確かに魔法少女的なアニメの変身シーンでは脱げるのがセオリーだが、男の子でも変わらないのだろうか?
そして体が西洋鎧に包まれる。
俗に言うフルプレートメイルで、肌の露出部分が無くなった。
そしてゴツイナイフが一本とすらりとした眺めのナイフが一本。
両手に一本づつ出現した。
「ゴツイナイフとはいえ、西洋鎧姿には合わなくないか?」
『ならさらに剣もイメージして腰に差して置けば?』
「じゃあそうしよう。」
うむ、なんかそれっぽくなった。
ただ身長が足らないのでなんか気持ち悪い。
『じゃあその姿のまま裏山にでも行って見ましょうか。』
「裏山で練習?」
『そゆこと。』
てなわけでパッと移動して裏山。
取り扱い説明書にしたがって順々に練習していく。
とりあえず一度使ってみることを目標にやっていくと、重大なことに気づいた。
「・・・なんか攻撃系多いな。」
『そらそうでしょ、私デバイスだし。』
「デバイスなのに?」
『いや・・・だから・・・まぁいいか。
とにかくさっとやってみたわけだし、模擬戦といこうか。』
「模擬戦?
いや、別に戦う必要は・・・」
『あまああああああああああああいっ!!』
「おおう!?」
『もし誰か惚れた女の子が出てきたらどうするのっ!?
オマエだけは俺が守ってやる!的なセリフを言ってみたくは無いのっ!?』
「・・・た、確かに。むしろ積極的に言いまくりたい。」
「でしょっ!!」
やばい、かっこいいんじゃないだろうか。それ。
そうと決まればさっさとやろうっ!!
『んじゃ今、出すから。』
何を?
「なはっ!?」
目の前に音を発てて現れたのは銀髪オッドアイのーーーいつぞやの俺だった。
野郎が何見てんだコラ的な目線をくれている。
「あ、あてつけか?」
『おっとと、間違えちゃった、テヘ!』
「・・・まぁ良い。模擬戦ということならばこいつに斬りかかって問題ないんだよな?」
『まね、そう簡単にはいかないだろうけど。』
「・・・ふふふふふ。よしきた。殺そう。こいつを殺して俺は過去から決別するんだ。」
すらりと腰から剣を抜く俺。
そしてそれを見て、銀髪オッドアイのーーーイタイやつも虚空から剣を出した。
「俺に挑もうとは・・・バカなやつだ。なのは、見ていてくれ。今俺がオマエに纏わり付く蛆虫を殺してやるからな。」
「殺せるもんなら・・・っておいぃぃぃぃっ!?」
『何?』
「いや、何じゃないよっ!?
あれのセリフどうなってるのっ!?ていうか彼女、今ここにいないよねっ!?」
『半年前の響を再現してみました!』
「せんでいいっ!!ていうか、あれか。これを倒すまでこれを相手しないといけないの!?」
『もちろんサァ!』
「お、おまえ・・・ほんと鬼畜な。」
げんなりする。
とっとと斬り捨ててしまおう。
そうだ、それがいい。
「せいやっ!」
「ふっ・・・さすが非モテ君だ。剣筋がなっちゃいない。」
「ごはっ!?」
振った剣はかわされて、俺に向かって俺が蹴りを繰り出してきた。
しかし俺は負けじと態勢を立て直し、俺に向かってもう一度しかける。
俺はその銀髪の髪を気障ったらしくかきあげ、俺に向かって再度カウンターを放つ。
しりもちをつく俺。
そして愚者を見るかのように見下してくる俺が目の前に突っ立ている。
非常に腹が立つ。
ていうか、俺が相手だとややこしいなっ!?
とりあえず目の前のコイツは厨房と呼ぼう。
で、厨房は俺に向かって
「僕としたことが・・・つい本気になってしまった。許してくれたまえ。」
殴って良いだろうか?
というか殴れないんだった。こいつ俺のくせに強かった。
魔法とか魔力とか使って思いっきり忌々しい過去ごと吹き飛ばすつもりで攻撃しても死んでくれない。
俺は日が暮れるまで厨房に斬りかかり魔法をうちまくったのである。