「ひーびーきっ!!」
「・・・そのもう少し静かに入ってこれないかな?」
響はげんなりと教室に入ってきたアリシアを見る。
幼馴染と仲良さげに毎日話す。
可愛い幼馴染が自分のクラスに飛び込んでくる。
そして特に目立たない、もしくはちょっと浮いた感じの主人公となぜか仲が良い。
そんなシチュエーションに始めこそ身もだえしたものだが、(アイシテルとリインフォースに冷たい目で見られた)やはり人間とは慣れる生き物で。
しばらく経つと男達の嫉妬の視線による不快感の方が増し始め、今ではただげんなりする毎日である。
きっと一昔前の俺だったら、例えそれでも良いから立場を交代してくれと思っていたものだ―――と昔を懐かしむ響だ。
そして人間ってのは贅沢を覚えるとさらに贅沢をしたくなるもので、今ではアリシアに絡まれることなく目立たず、過ごしたいと言う思いの方が勝っていた。
重ねて言おう。
非常に贅沢なリア充独得の悩みである。
可愛い女の子の知り合いがいる時点で幸せを感じる男が世にいる一方、響は可愛い幼馴染がいて不幸せを感じている。
響なんて死ねばいいんだっ!!
そう思うそこの方。
それは正しい憤慨である。
その負を爆発させて響をフルボッコにしてしまおうじゃないか?
ちなみにアリシアも同性からは疎まれている。
なんせイケメン笑の響と仲が良いのだ。
女子特有の陰湿な虐めを受けているのだが、その純真さゆえに気づいてない、もしくは全く気にしてない。
今ではアリシアの知らないところでアリシアのクラスの男子が妬む女子を押さえ込むなどという女子対男子のような構図になっており、そのため修学旅行ではアリシアはぼっちだったりする。リアルで友達がいない。ゆえに響と話すしかなく、それを聞いた女子がまた嫉妬を引き起こしーーーという可哀想な悪循環に巻き込まれている。が、それに気づいてないアリシア。
純粋、悪く言えば天然とはそれだけで強い武器になると言う実例だろう。
修学旅行の時は酷く寂しい思いをしたと思いきや、デバイスを通じてずっと響と話していたりとむしろ都合が良かったり。
そしてそんなアリシアと仲よくなればなるほど響もハブられていくのだ。
お互いにお互いの足を引っ張り合い、結果、二人が唯一の気心知れた友という現状。
響は気づいてるものの、どうしようもなかった。
本人にしばらく距離を置こうと、まるで彼氏の別れ話のようなことをいえば泣きそうになるのだから。
なんだかんだでアリシアも響を唯一の救いとしてることである。
もちろん響とて男。女の子の泣き顔など見たくないため、内心うんざりしながらアリシアと付き合い続けた。
結果が、男友達が1人もいないという事実。
これがリア充の宿命か、と嘆いたのだが、それをアイシテルに鼻で笑われたのは言うまでも無い。
ついでに言うとたった一人の親友とかそんなポジションの友人もいないのであしからず。
アリシアを除くと本当にぼっちである。
などという話はともかく。
「おっぱいを揉むための作戦を考えたんですっ!!」
「ぶはっ!?」
昼飯を噴出す響。
それはそうである。
見た目美少女のアリシアがおっぱいをぷるんと震わせながら教室にすごい勢いで入ってきたと思ったら、いきなりおっぱいを揉むためのうんたらかんたら。
誰であろうと何事かと二度見するだろう。
おっぱいという単語に反応して女子以上の機敏さでこちらを見た男子生徒諸君はお互いに隣の男子と見合って、気まずそうに俯いている。
彼女持ちは彼女から叱咤をうけたりと一気に困惑の様相を浮かべた響のクラス。
「と、とりあえず屋上で話さないか?」
「別にここでも良いとも思いますけど?」
「いいから、来てくれ」
「あ、ちょっ・・・」
そして屋上。
「毎度言いたいんだけども、お前はもう少し人の目を気にするべきだ。」
「別にどうでもいいです・・・皆なぜか私と仲良くしてくれないんですもん。
そんな人達になんて思われようと、どうでもいいですから。」
少しふてくされたように言うアリシア。
意外と気にしてたみたいである。理由が分かってない時点で大概であるが。
「いや、だから・・・まぁいいや。面倒だし。
で、作戦って?
ていうかまだ諦めてなかったのか?」
「ふふふふ。そうです!
私が考えた作戦は至極簡単!!
そう、フェイトの周りの人間に頼めば良いということを忘れていました。」
「具体的には?」
「聞きたいですか?
聞いちゃいますか?」
『毎度思うんだけど・・・アリシアって響に似てる感じが・・・』
『・・・うむ。確かに。』
「・・・はよ話してくれ。
授業が始まってしまうだろ。」
響はそんなデバイス二人の言葉を無視した。
美少女と似通ってることを喜ぶべきか。
それとも回りくどくバカにしてることを怒るべきか。
響もちょっと俺と似てる気がする、と思ってしまったので怒るに怒れないけれど。
「もう行くな。俺。将来の夢を考えるのに忙しいから。」
「あああんっ!?
ちょっと待ってくださいよっ!!
これから良いとこなのにっ!!
ていうか、そこはぜひとも聞かせてくださいアリシアたん!が正しいリアクションだと・・・」
「・・・。」
響は思った。
ダメだこいつ。早くなんとかしないと。
「じょ、冗談ですよ?
たん付けで呼ばれたいと言うほのかな望みをさりげなく加えてるわけじゃないんですよ?」
「・・・アリシアたん、早く続きをお願い。」
「あ、ありしあたん?
え、へへへ。なんかこそばゆいですね。」
「・・・。」
「ええと、おほん。
フェイトの保護者のリンディさんを味方につけて、彼女から言ってもらえればいいんじゃないかと思ったんですっ!!」
「へぇ。」
「それでですね。頼んでみたところ・・・撃沈しました。」
「理由は?」
「『今、あの子は忙しい時期だからとりあえず一段らくしてからでいいかしら?』と。やんわりとした拒絶です。」
『内心、愛着がわいた娘のフェイトを手放したくないという気持ちもあるかもね。』
「とはいえ、理にかなってる。今忙しいんでしょ?」
「ええ、ですから諦めようかと思ったんですけど・・・一応なのはさんとはやてちゃんとも話したんです・・・が、そちらも撃沈しました。」
「八神はなんて?」
「おもろそうやから、うちも一緒にいられるときにして。とだけ。」
「八神・・・らしいのか?」
『「響君が胸を揉んで嫉妬を抱くアイちゃんとかリインが見てみたいわ!んで、響君は理不尽にボコられる・・・漫画の中でしかありえへん展開をリアルで生とか、これは見逃したらアカンやろ。」とかそんな感じじゃないの?』
アイシテルが不機嫌そうに言う。
「あ、当たってます。一字一句間違いなく・・・」
アイシテルがほらね、と言い、アリシアは感嘆の表情を浮かべた。
いいなぁ、それだけ仲良くできる友達が欲しいなとアリシアが呟いていたが、努めて無視をする響。
そこをツッコンで厄介ごとになるのは御免である。
「ふうん。んじゃ仕方ないね。とりあえず今は諦めて・・・」
満面の笑みを浮かべる響。
アリシアは悔しそうだ。
「・・・ん?
なんでなのはさんのことは聞かないんですか?」
「なんでって・・・別にどうでもいいです。
興味が無いです。」
無表情にそう述べる響。
むしろ断ってくれて非常にありがたいものだ。
彼女と会うなど困る。
あれから適当に無視をこいてるのに、直接出会ったらさすがに無視は出来ないだろう。
『それって酷いと思うな、私。
いつもそうだよね。
響君って、私を無視してばっか。
悲しいなあ、私。』
田村ゆかりボイスが響く。
もといなのはの声が聞こえた。
響は瞬時にジャケットを展開。
ブリッツムーヴで学校を飛び出していく。
目を点にして呆然とするアリシア。
『・・・泣いて良いかな・・・私。私の声を聞いたとたんに逃げ出すのは・・・』
「な、なのはさん?」
『あ、ごめんね、アリシアちゃん。
ちょっと仕事中で一般回線を切ってたの。用件は何?』
「えーっとかくかくしかじかで・・・」
『なるほど・・・私もリンディさんに賛成かな。
今はフェイトちゃん、頑張ってるところだし。』
「・・・分かりました。」
『でも執務官になってしばらくしたら試すのも良いかも・・・でも胸をっていうのはどうかな?』
「やっぱり嫌なものでしょうか?」
『ううん・・・アリシアちゃんは響君に胸をもまれても大丈夫?』
「えと・・・問題ない・・・かな?」
少し頬を赤くしながら答えるアリシア。
『そう。それが見ず知らずの男の人だったら?』
「えっと・・・嫌です。気持ち悪いです。」
『だよね。フェイトちゃんって“なぜか”響君を目の仇にしてるみたいだから、きっとあまり良い気分はしないと思う。プレシアさんに頼んで記憶を戻してもらうのは・・・』
「・・・たぶんそれはどんなことがあっても無理です、そのお母さんは・・・」
『うん、まぁそうだよね。
アリシアちゃんを生き返らせるためだけに犯罪を犯すような―――あ、ごめんね、悪気は無くて・・・』
「別にもう気にしてません。私もそう思ったからお母さんには言わなかっただけで・・・きっとお母さんの場合、むしろ妨害する可能性もあるわけで・・・」
『ううん・・・確かにありそう。
分かった。
でも響君の力を借りるのは最終手段にしておこうか。』
「えと・・・?」
『こっちでも記憶の復元や再生とか…封印ならそれを解くような、そんな感じの魔法をあたってみるから。少し待っててみてくれる?』
「は、はい!ありがとうございます。」
『気にしないで、フェイトちゃんのお姉さんだもの。それじゃ、切るね?』
「は、はい。」
こうして人知れず響のおっぱいチートフラグは潰されたのであった。
…潰れた、のだろうか?