旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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士郎を叩きのめすために

「・・・たた。」

「大丈夫?ひかり。」

「・・・う、うん?」

 

響の目が覚めると時間は夕方。

もう日が沈み始めていた。

 

響はというとすずかの膝枕でお目覚めだ。というわけでもなく。

普通に布団で寝かされていた。

 

「えと・・・俺は・・・たいっ!?」

 

気絶する前のことを思い出し、勢い良く起きるが、痛みに顔を顰める。

 

「ひかりっ!?」

「月村さん?

・・・俺・・・あ、そうか・・・くそっ。」

 

負けたことを理解して悔しそうにする響。

自分の身体を見渡すと、肋骨がまだ痛む以外は特に問題はないようだ。

折れたと思った腕もしっかりと骨が付いていた。

魔法だろうか?

 

アイシテル辺りがやってきたのかな?と思って、見渡すが特にアイシテルが来たような形跡は無い。

首をかしげながら自分でも治して行く。ここまで治して貰えれば治癒系は不得意の響でも十分に治せる。

 

「傷って誰が治した?

さすがにお医者さんってワケじゃないよね?」

「それは―――」

「お父さんっ!!」

 

響はその声だけで物陰にばっと隠れた。

 

「・・・もしかして・・・」

「そう、なのはちゃんだよ。治してくれたの。

向こうの仕事が一段楽したみたいで、これからはある程度こっちにい続けるんだって。」

「・・・余計なことを。」

「そんなこと言っちゃダメだよ。」

「分かってるよ、・・・分かってるからこそ・・・こんちくしょうめ。」

 

分かっているからこそ、お礼を言わなくてはいけない。

響は自分がビビリでヘタレなのは自覚しているものの。

さすがに最低限の礼儀は弁えているつもりである。

今まで一方的に避けていたので会うのは嫌でも治してもらった以上、礼を言わねば人としてダメだろう。

勝手に助けたくせに、とかちょっと思ったけど、みみっちい男じゃないのでそんなことは思っていない。

思っていないったら思っていないのだ。

 

「なの・・・じゃなくて、高町さんは?」

「名前で呼んであげても良いとおもうよ?

私も名前で呼んで欲しいのに。いつになったら呼んでくれるのか・・・」

「う、うるさいな。

別にどっちで呼ぼうとどうでも良いことだろ。今のは久しぶりに昔以来の場所と人に会ってちょっと名残が出ただけ。

二度と呼びそうにもならないようにするし。」

「・・・くす。」

「何がおかしいのさ。」

「別に。なんでも。」

「・・・。」

「ごめんね、気を悪くした?」

「・・・それよりも、なのはに―――

いや、高町さんに礼を言ってくる。」

 

今度は全て言ってしまった。

すずかのほんわか空気にひきづられて入るに違いないと考え、このままの流れで話すのはやめることにする。

 

「くす。」

「・・・。」

 

どうもすずかが相手だと調子が狂うと思いつつ。

響は立ち上がり、なのは達のところへ行く。

 

「すいません。」

「あ、大丈夫?」

「身体は大丈夫かい?響君。」

「ええ、おかげさまで・・・その、・・・ありがとう、なのはさん。」

 

名前で呼んだのは性が同じ父親がいるため、名前で呼んだだけである。

一瞬名前で呼ばれたことに呆気を取られたが、すぐに気づいて「ううん、大したこと無いよ」と答えるなのは。

いささか残念そうだ。

彼女は今まで嫌な相手や管理局の上司相手にも真正面からぶつかり合って分かり合ってきた。

分かり合えてきたつもりだ。

目の前の彼を除いて。

だからこそ彼女は今日も響に絡む。

 

「それよりも怪我の具合は大丈夫?私もあまり得意じゃないから・・・そのどこか不十分なところがあると思うんだけど・・・」

「いや、別に問題ないよ。

十分に動けるくらいには回復できてたから。」

「それは良かった。それとお父さんがやり過ぎたみたいでごめんね。」

「いや、お互い同意の上だったから別にどうとも思ってないよ。」

 

嘘であるが。

すごく悔しいです。

 

「私からも謝らせてくれ。

申し訳なかった。今までに私に対して怪我の心配をしてきた人間などいたことが無かったから、ついな。

私も修行が足らん。」

「それはどういう意味ですか?」

「何、強すぎて私の心配をするような人間がまずいなかった・・・いや、妻くらいか。」

 

それは暗に、そんな自分よりも遥か格下に心配されたことが舐められているみたいで、少々ムキになったといっているように聞こえる。

士郎に他意はない。実際は面白がって・・・が正しい。けれど響としては言葉に詰まる。

 

そのまま帰ることにして、負けたことを思い出しながら悔しさで泣きそうになりながら響は帰ったとさ。

 

 

☆ ☆ ☆

 

次の日。

アイシテルたちには黙って朝一に響は翠屋にいた。

朝の5時ごろに起きて、いつものように幻影人形(シルエット)を使った厨房と軽く戦い家を出て、図書館で時間を潰し。

昼頃。

 

 

「なのはさんのお父さん。

お願いがあります。」

 

 

「・・・なんだい?

娘さんを下さいと言うことならばこの私を倒せるぐらいに強くなってくれないと安心して任せれないが?」

「ふぇええええっ!?」

 

それを聞いてなのはの顔が真っ赤になる。

え?なんで?なんで?と戸惑うなのは。

なのはもしばらくは翠屋でウエイトレスをやるらしい。

普段の響ならばなのはがいると分かっていて、翠屋にやってくるなどありえないが響の目になのはは入っていない。

ただただ士郎を見つめる。

親の仇のように。

 

「そんなことじゃないです。」

「そうか・・・少し残念だ。」

 

士郎としては最近、なのはが行き遅れないか心配になってきた。

この歳で今までに彼氏がいないと聞くし、小さな頃は山田君と良い感じだったり、ユーノ君と良い感じだったりと、将来が楽しみだったのだが、ここ数年になってそれぞれがそれぞれの仕事で忙しくなり、桃子が揺さぶりをかけても一切それっぽい反応をしないことから好きな男がいないらしいことが分かった。

なのは曰く、大切なお友達だそうだ。

そこからくるちょっとしたからかいだったのだが、意外とこれは脈アリなのか?とも思った。

もちろんそれは士郎の勘違いで、あくまでも意外な―――自分が嫌われてると思っていた相手が実は自分が好きだったというギャップに照れただけであって、別になのはとしてはどうこう思うところは無い。

ついでに父親に自分を下さいと言うちょっと憧れていた展開が繰り広げられると聞いて、あたふたしただけ。

そして仮になのはが好きだったとしても響としては全く意識してない相手なのでどうにもならないことだ。

 

 

「俺を弟子にしてください。」

「は?」

 

意外な言葉に意外な声をあげる士郎。

 

「どうしてか理由を聞いても?」

「貴方の腕に惚れましたっ!!」

 

というのは嘘で。

単に悔しい。

勝ちたい。

響にとって今までの9年をたかだか料理屋店主に叩き潰されたのだ。

どうしてもぶちのめしたい。

ぶちのめし返したい。

そのためにどうすればと一晩考え、思いついた。

この人に弟子入りして強さを見極め、この人を超えたと判断した時にぶちのめせばいいという確かにそのとおりだが本当にそんなことするのね?みたいなアホっぽい作戦だった。

 

「本当かね?」

「え、いや・・・えと・・・」

 

殺気混じりの眼光に嘘は許さないと書かれていた。

あ、やばい。と思ったときには口が勝手に動いていた。

恐怖って凄いよね。

 

「あなたに弟子入りしたらぶちのめせるかと思って・・・」

 

それを聞いてぷっと吹き出す士郎。

ぶちのめすためにその人間に弟子入りするという思考は士郎の予想の外に合った。

これが笑わずに入られるだろうか?

実に面白いと叫び、士郎はそれだけか?と再度たずねる。

 

「・・・それだけです。」

「ほう?本当だな?」

 

もう一度殺気を込めた言葉を向けるが、響は口を開かない。

実際は自分の9年が。

自分の身近な人を守るための力が全く通用しなかったのが一番の理由で、例え自分が惨めに負けた相手だとしても頭を下げてでも強くなりたい。

強くならないとアイシテルたちを守れないかもしれない。

それが一番の理由である。

 

これから先、フリーの魔導師といえど完全な安全が保障されるというわけではない。

どの仕事にせよどんな場所に住むにせよ。

事故や予想もつかないような出来事で死にそうな目に会うこともあるかもしれない。

平和といわれる日本ですら事故や強盗などで死ぬ事だってある。

そのための備えとしてビビりの響しては強くなっておかないと不安なのだ。

臆病だからこそ転ばぬ先の杖を作っておく。

 

しかしこれは自分の情けなさを露出するだけであり、男の子としてはやはり言いたくないもの。

 

これを臆病だと罵るか、立派だと称えるかは人にもよろう。

 

という響の心境は士郎に全てばれていたりするのだが。

士郎の扱う剣術の祖はもともと、そういった「自分の大切な物を守りたい」という少年ジャンプにしか無いような綺麗な・・・人によっては奇麗事を!甘ったれがっ!と吐き捨てられるような信念を大真面目に追求して作られた剣である。

同種の人間を見切るなど今まで色々な経験をしてきた士郎にとっては造作も無いことである。

もちろん100パーセントの確証を持っているわけではないが、概ねそうと見てもいいだろう。

 

 

「いいだろう。」

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

なのははその隣で、何このノリとボケッとしていただけだった。

 

 

 

 

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