旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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アイシテルのたくらみ

困ったことに厨房に手も足も出なかった響。

その晩、彼が枕を濡らしたのは言うまでも無い。

さらに一週間ほどが経ち、段々剣を振るのに慣れてきたかな~と思っていると、なにやらひし形の宝石のようなものを拾う。

そして響の目の前には金髪の美少女が。

フェイト・テスタロッサ。その人である。

 

「それを渡して。」

 

鎌状のものを向けられ、焦る響。

だが、響も慣れた物。

訓練でちょっと強くなっていた気がした響は調子に乗っていた。

 

「むむっ!なにやつっ!!」

 

瞬時にアイシテルをセットアップ。鎧を発現させずにナイフのみを手に持った。

調子乗っているとはいえ中身が中身。もちろん戦う気など無く、単にビビって武器を構えたというのが大きい。

少し逃げ腰になっているのが哀愁を誘う。

 

「・・・渡してくれないなら力づくでーーー」

「はいどうぞ!

では、さようなら!!」

「・・・あ、ありがとう。」

 

カチャと武器を構えたフェイトにビビった響は即ジュエルシードを渡す。

響は小声でアイシテルと相談した。

 

「・・・ちょ、この子この歳で武器持って脅し取るとか!?」

『きっとろくな教育をされなかったのね。かわいそうに。』

「それ以前に表情を全く変えないあの余裕・・・強者とみた。」

『ええ、響よりも大分魔力が高いね。振る舞いもデバイスを振るうことに対する慣れがある。』

「魔力って・・・デバイスを動かすのに必要な力だったよな?」

『そうよ。』

「では彼女の持っているものもデバイスだったりする?」

『そうね。』

「また武器か。・・・もしかしてデバイスってパソコンの進化型とかじゃないの?」

『今更すぎてデバイスの私は涙目。』

「き、気づかんかった。」

『・・・。』

「まぁまて、ほら。一度死んでるからさ。死んでた間にそんな感じの物が出てきたのかなぁとか思ってたわけで。」

『・・・それにしても気づくと思うけど。他の人は持ってなかったじゃないの。』

「いや、高級品なのかなぁって。」

『・・・。』

「まぁいいじゃないか!ほら、結局のところアレでしょ?

アレアレ。あの・・・あれだよ。デバイスってのは魔力とやらを持つものが使える護身用の武器とか・・・そんな感じでしょ?それを脅しに使うとは・・・許せん。彼女のためにも説教してくる。あのままでは将来的に犯罪者の仲間入りしかねない。」

『・・・止めはしないけど。』

 

響はこうしてアホな行いへと走るのである。

ちなみに彼女はすでに犯罪者の仲間、というか娘である。

 

「ちょっとそこの君。」

「・・・何か用?私は忙しい。」

 

ちょっとイラッとしてる気がする。

反射的に謝りそうになったけれどそこを我慢する。

 

「い、忙しいところ申し訳ないんだけどイキナリ武器を構えて脅し取るのはどうかと思うんだよ、お兄さんは。うん。」

「貴方から構えたのに?」

「え?」

 

そうだっけ?

 

「そうだよ。私から構えたわけじゃないし、望んで貴方に危害を加えようとしたわけでもない。」

「そうだったか・・・あ、えと・・・だからといって・・・」

「・・・話すことは何も無い。それじゃ。」

「あ、はい。」

 

そのまま去っていくフェイトを見送る響だった。

 

 

「俺、間違ってたか?

普通に考えてあんな怪しいコスプレして鎌っぽいのを持ってるやつが居たら警戒してしかるべきだよね?」

『・・・とりあえず帰ろうか。』

「・・・うん。どうでもいいよな。正直言うとお近づきになりたいとか思っていたのだが。」

 

 

次の日。

響は図書館にいた。

猿でもわかる乙女心を返しに来たのだ。

 

「次はどんな本を借りるべきか・・・乙女大図鑑・・・乙女はこうして男を選ぶ百選・・・女の子は複雑なのだ・・・女子の憂鬱・・・女の子の気持ち・・・全部借りるにも小学生は一冊のみだし。」

 

返し忘れなどを防止するために図書館では年齢に応じて借りれる冊数の上限が決まっている。

小学生は一冊までだ。

 

「っと、あ、すいません。」

「こちらこそすいません。」

 

本棚を見ながら横歩きをしてると人とぶつかる響。

響の視界にまず入ったのは紫色の髪の毛。

紫とか人類的にありえないなぁとか自分のことは棚に上げて少し驚く響。

今では黒髪黒目としているのだが。

 

「・・・というか紫とか懐かーーーおおおうっ!?」

「あの、どうかしましたか?」

 

瞬時に顔を逸らした響。

月村すずか。彼女はちらほらとこの図書館にやってくる常連さんである。

響は響で毎度のごとく焦る。

最近焦ってばかりだなと内心思いながらも響は気づかれないようにと声を若干高くして、なおかつ顔は俯いて顔のつくりを分からないようにした。

どおりでどこかで見たことがあるわけである。

 

「いえ、別にどうもしないです。んじゃ、俺はこれで・・・」

「ん?あ、でも本は良いんですか?」

「あ、いえ、見つからないみたいなので・・・出直そうかなぁと」

「職員さんに聞けば良いと思いますよ?」

「いえ、その・・・あの・・・人見知りなので・・・それでは。」

 

その場から離れるためのとっさの嘘であるが、俯いてることと言い挙動不審気味なところと言い、すすかは納得し、それならば。と手を合わせて提案する。

 

「・・・う~ん。なら私が変わりに聞いてあげましょうか?」

「エ゛?いや、あれですあれ。そんなことしてもらうのも・・・」

「別に気にしなくて良いですよ。ついでに私の探してる本も聞くつもりですし、気にしないで下さい。」

「・・・すっごいエエ子や・・・」

「え?」

「あ、なんでもないです。・・・まぁそこまで言うならお願いします。」

 

重ねて言うが彼は悪人と言うよりは善人よりである。

そんな彼が他人の親切をつっけんどんに跳ね除けることは出来ず。

しかも見ず知らずの人に親切をするという今時の若者には珍しい心優しさに感涙し、自分の昔と彼女とを比べながらその酷さに嗚咽しかけつつも、響はなんとか彼女の親切を受けることにする。

実際困っていたのは本当で、司書さんに聞こうと思っていたところでもあるため聞くことに関してはなんら問題は無い。

 

「あの、すいません。」

「はい、なんですか?」

「えーっと私は動物のーーー特にネコに関しての本を読みたいのですがーーー」

 

いや、問題はあった。

響は気づいたのである。

俺の借りる本の内容はちょっと聞かれたくない。と。

別に職員さんならば構わない。

わざわざ職員にまで気遣ってたら図書館で本など借りられない。知られたく無いという思いもあるにはあるがそこはやむをえないことだ。

借りる際にどのみち見せなくてはいけないのだからして。

 

だが、彼女に関しては別である。

普通に気まずい。

とっても気まずい。

一応同年代の女の子―――ではあるものの中身的には妹とか娘とかそんな感じの歳の子。

この歳―――といっても9歳だがーーーで子供に自分の情けないところを曝け出すようで非常に恥ずかしい。仮に同年代でも恥ずかしいけれど。

確かに響の昔はアレであった。

アレ過ぎていたが今は少なくとも改心し、直していくべく頑張っている最中なのだ。

今の自分にそのような羞恥プレイはレベルが高すぎる。

目の前の少女が少年であればまだマシだったものを。

ゆえに彼は致命的な一手を取ってしまう。

 

「それで、貴方は何を借りにきたの?」

「え、お、俺は・・・えと・・・アレだよ、あれ・・・えーっとネ、ネコの本かな?うん!!」

 

ここだけで見れば見事な回避とも思うが、チョイスがダメだった。

 

「へぇ、貴方ネコを飼ってるの?」

「え、い、いや、ネコを飼いたいとは思ってるんだけどね?あ、でもそうそう気軽に飼おうと思ってるんじゃないよ?

ほら、動物は生き物だから可愛いだけじゃなくて飼う上での辛いことや気をつけなくてはいけないことが多々あるだろうし・・・だ、だからかな?まずは本を見てネコのことを良く知らなくちゃって思って・・・」

 

ネコを飼いたいと言われ、下手に嘘を付くとばれると思ったか響はまだ飼っていない事にしてネコについて詳しく知らなくても問題ないように嘘をついた。

とっさの嘘にしては理由がしっかりしていて内心ほくそえみ、完全に誤魔化せた!と思ったのもつかの間。

 

「・・・すごいなぁ、その歳でそこまで考えてるなんて。

私も始めてネコを飼う時にお父様にそれを言われたの。立派だなぁ。」

「君も同じ歳でしょ?」

「え?あ、うん。だからこそ余計に凄いんだよ。」

 

といって微笑む月村すずか。

 

その笑顔につい赤面する。ことは無かったが本当に良い子だなぁとちょっと泣きそうになる響である。

もちろん昔の自分の酷さがあるゆえにそれと比べて自分が一体どれほどアホだったのか。

情けなさ過ぎて悲しくなったのだ。

 

そしてこの嘘が響の首を絞めることとなる。

職員さんに案内されつつ、道中で話しつづける2人。

 

「ねぇ、貴方のお名前は?」

「え?あ、俺は・・・相馬ひーーー」

「相馬?」

「あ、いや、そ、そそ、相馬ひかりだよ。」

 

危なかったと小声で呟く響。

 

『それにしても気づかれないものね。意外と。』

「・・・多分それだけあの髪と目の色が印象深かったって事でしょ・・・あまりの性格の違いに同一人物だと思われてないってのもあるだろうし。」

 

念話で会話をする響とアイシテル。

余談であるが先ほどの嘘はアイシテルが念話で響に指示したものである。

もちろんアイシテルは今回の嘘の悪いところを理解して敢えてこの指示をしている。

 

 

ちょっとしたアイシテルのたくらみであった。

 

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