旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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六課

ヴィヴィオを預かって2週間とちょっと。

徐々にヴィヴィオとの生活に慣れてきたかなぁ、と思えてきた日々の中。

響のミッドの仮住まいにお客がやってきた。

もちろん高町なのは、その人である。

ヴィヴィオを引き取りに来たのだ。

もちろん、ヴィヴィオに情が移りつつあった響にとって多少なりとも抵抗感はあるものの、ヴィヴィオは恐らく原作に関わるキャラクター。

響の基本方針的にはむしろ都合がいい。

 

 

「こんにちは。」

「いらっしゃい、なのはちゃん。」

「・・・久しぶりです、高町さん。」

 

翠屋における特訓時に少しづつ仲良くなったと言えど、いまだ他人行儀の響。

敬語だ。

 

「こ、こんにちは。」

 

ヴィヴィオも初めて見る人間、なのはに多少の警戒の色を見せつつも挨拶をする。

 

「2人とも久しぶり。ええと・・・変わりない?」

「もちろん。」

「・・・お、おう。」

「おう。」

 

響の返事を真似するヴィヴィオ。

別にヴィヴィオも答える必要は無いのだが。

 

「・・・君がヴィヴィオ?」

 

なのはがかがんでヴィヴィオと目線を合わせる。

アイシテルもそうであるが、子供との相手の仕方をナチュラルに分かっている人たちだ。

響はそんなこと思いも依らなかったのだけれども。

 

「ヴィヴィオ、自己紹介してごらん?」

「う、うん。」

 

アイシテルの言葉にヴィヴィオは頷き、自己紹介をし始める。

 

「ヴィヴィオ、ろ、六歳。よろしくお願いします。」

「ご丁寧にどうも。私は高町なのは。こちらこそよろしくね、ヴィヴィオ。」

 

「良く出来ました。」

「えへへー。」

 

これから先、ヴィヴィオはなのはに引き取られ、六課の寮で面倒を見られるというから色んな人に会うだろう。

まずは挨拶を教えるべきだというアイシテルによって簡単な挨拶くらいなら出来るようになっていたヴィヴィオ。

しっかりと挨拶できたことに頭を撫でつつ誉めるアイシテル。ヴィヴィオは照れくさそうにしていた。

 

「ヴィヴィオ、言ってあったろ?

この人がヴィヴィオのママだ。」

 

響がそういった。

もともと一時的にしか預かる予定が無かったので、引き取りに来る人にいっそのことママという役割を押し付けてしまえと急遽思いついた作戦である。

昨日の晩にはやてと話して思いついた作戦だ。

作戦と言えるほど大仰なものでもないが。

 

ヴィヴィオには記憶の転写が不十分な状態で培養槽から出したので6歳児並みの言語力と日々における基本的な名詞郡しか知らない。

過去の記憶も当然無く、ママはとある事情からヴィヴィオを響達に一度預けた後、ヴィヴィオを引き取りにくるということだけ言った。

ママの顔を知らないわけだし別にいっか!と言う感じである。

 

「まま?」

「そうだ。」

「この人が?」

「私がママじゃがっかりした?」

「・・・。」

 

ヴィヴィオはただ不安げになのはを見つめる。

そんなヴィヴィオになのはは笑顔を浮かべて、言う。

 

「これから一緒に頑張っていこ?」

「う、うん。」

 

そのままつれられていくヴィヴィオ。

去り際に何度もこちらを振り返っていたのが印象的だった。ドナドナド~ナド~ナ。そんなBGMが頭の中で鳴り響いた気がした。ヒビキなだけに。・・・なんてね、

アイシテルがちょっとだけ怖い顔をしていたが、もしかしたら母性本能的なものが芽生えたのかもしれない。

 

☆ ☆ ☆

 

「どうしたんだよ?アイシテル。」

「ううん?

・・・べっつにー。」

 

ヴィヴィオの世話を甲斐甲斐しくしていたアイシテルはどうもこの一週間の世話の忙しさと暇さのギャップで無気力状態となってしまったようである。

ちなみに実際、母親が息子や娘の自立と同時に鬱病にかかることがある。

それまでに世話をかけていた対象が急にいなくなるためだ。

たった2週間とちょっとの世話でそれに近い無気力状態となるのだから、アイシテルの母性はよっぽどのものかもしれない。

それから3日が経つ。が、

 

「今頃ヴィヴィオはどうしてるかなぁ?」

とか。

「ちゃんとご飯食べてるだろうか?」

とか。

「おねしょして泣いてないかな?」

とか。

「お腹壊してないかなぁ?」

とか。

「ちゃんと夜眠れているだろうか?」

とか。

 

もうヴィヴィオのことばっかりで頭が一杯なようだった。

正直、ヴィヴィオに嫉妬する響だ。

それよりも自分を見て欲しい。

 

「いつまで気にしてんのさ。」

「・・・今だけは原作にビビる響の性根が憎い。」

「う、うるさいな。そんなに言うならそのまま引き取っちゃえば良かったじゃないか。」

「でも響が・・・」

「人のせいにすんなっ!別にアイシテルが言うなら多少くらいは関わっても・・・」

「でも響が・・・」

「だから人のせいに―――」

「でも響が・・・」

「あれ?何このループ。デバイスAの会話が変わらない?」

「ようこそ。ここは始まりの村じゃ。」

「村人Aの会話内容になったっ!?」

「見せてやろうっ!これが勇気と努力と根性を込めた勇者の最後の一撃だぁっ!!」

「勇者の決めゼリフッ!?」

「・・・そうだ。ヴィヴィオに会いに行かない?」

「・・・すごい話の脈絡の無さだ。まぁいいんじゃないかなぁ。」

「んじゃ、早速いこっ!!」

「ぐおっ!?ちょっ!?

襟首を持ったまま引きづらっ!ぐえっ!?がっ!?あいたっ!?でっ!?ぶっ!?」

 

お尻が色々な家具にぶつかりつつも響達は家から出てすぐにヴィヴィオのもとへと向かうことになった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

六課についた頃。

どうやら隊員の訓練中の様である。

はやてに連絡をしてすでに見学許可証なるものは転送してもらってる。

それを首から提げて、六課施設内を見て回っていると。

 

「すっご。」

「うわぁ・・・スパルタだねぇ。」

 

訓練所にてなのはは見つかった。

が、部下たちをしごいてる。

そのしごき方がまぁ大変。

 

隊長1人に部下が複数人で殴りに行くと言うものだが、何が無茶ってあのなのはと戦うってのが無茶である。

魔力量とかの問題じゃなくて、あの戦闘においては右に出るもののいないくらいのセンスを持つなのはとやりあうなんて、どう考えても正気の沙汰じゃない。

非殺傷のようだが別に痛みが無いというわけではない魔法を受けながらも懸命になのはにアタックをしかける部下たち。

 

「いや、そこは当たらんとダメだろ・・・」

 

明らかにガード不能だったはずなのにも関わらず瞬時に翻ってガード。

最早引く。

高三後期の時から卒業するまでの半年。今まで士郎に鍛えてもらったからこそ分かる体の動き。

正直今の響でも勝てないかもしれない。

10年。

その年月は確実になのはを強くしたようだ。

経験も豊富。

エースオブエースの名は伊達じゃない。

 

そして部下も部下でようも集めたものだと言う関心を抱く。

完全な死角からの攻撃をシューターで打ち抜いたり、弾幕を張ったりと、そんなのを普通にやってのける化け物相手に訓練と称し堕とされるであろう毎日。

負けるのが確実な戦いによくもまぁあんなに意気揚々と望めるものだ。

何より痛いだろうに、辛いだろうに、苦しいだろうに。

 

特に「ティアッ!いけるっ!?」「ええ!まだまだよっ!!」とか言ってる仲良さげな2人。

 

「自分が強くなってるのを実感して楽しくて楽しくてたまらないと言う表情だ。・・・あんな漫画にしかいないような人間っているもんなんだな。痛いのが嫌な俺としては理解できん精神構造だ。」

「響も翠屋だとあんな感じだったよ?」

「あ、あんな変態たちと一緒にしないでくれっ!?

俺は純粋にあの料理屋店主とは思えないくらいの化け物を個人的にブチノメシたいからであってだなっ!!あくまでも痛みに耐えてるのはその借りを後で万倍にして返すためであって・・・」

「はいはい。それよりもなのはちゃんに聞こうにも取り込み中みたいだね。」

「・・・スルーかい。」

「通信でいいか―――」

「アイちゃん!ひびきっ!!」

「ヴィヴィオッ!?」

 

はやてに連絡しようとしたところ、ヴィヴィオがこっちに走り依ってきたのに気づいた二人。

ちなみにヴィヴィオのアイシテルの呼び方は2週間の間に仲良くなったためだ。他人行儀的な意味のお姉ちゃんからアイちゃんに変わっている。

 

「ヴィヴィオ、元気だったっ!?」

「うんっ!!」

「いや、たかだか三日だろ?」

「響も元気だったっ!?」

「お、おう。」

 

ツッコミなどものともせずヴィヴィオは愛情を示すためにも抱きついてきた。

ツッコミは無粋だったなとか考えなおしながら無邪気に笑うヴィヴィオを見て、大丈夫そうだと安心する響。

去り際の時の様子ゆえ、心配だったのはアイシテルだけではない。

響もなんだかんだで不安だった。

そんな響の様子を見てニヤニヤと見つめるアイシテル。

 

「な、なんだよ。」

「響も心配だったんじゃん。」

「わ、悪いかッ!?」

「いんや~。さんざん大丈夫だとか言っておきながらさ。あれは自分に言い聞かせてたっていう面が大きかったのかにゃ?」

「・・・ひ、人の勝手だろっ!」

「しんぱい?」

「そうだよ、ヴィヴィオ。私たちすっごい心配してた。苛められてない?」

「苛められてない。」

 

そりゃそうである。

 

「あれ?

2人とも来てたの?」

 

ヴィヴィオと他にもちょこちょこと話しているとなのはが訓練が終わったのか響達に気づく。

 

「ヴィヴィオが心配だったの。」

「俺は別にそれほど・・・」

 

とっさに否定するが、ソレに対しヴィヴィオが

 

「響はしんぱいしてなかった?」

 

と言うと。

 

「いや。その・・・心配だった。」

「えへへー。」

 

すぐに意見が翻った響だった。

 

「それはそうとせっかく来たんだし・・・ちょっと手合わせしていく?」

 

なのはがそう言った。

 

「いや、しな―――」

「響も戦うの?強い?」

「響は強いよぉ、ヴィヴィオのママよりもずっと強いよぉ。」

 

ヴィヴィオの疑問にアイシテルが答えた。

響はすごい勢いでアイシテルの顔を見た。

するとええ笑顔で響を見ていた。

そしてこっそりと小声でなのはに言う。

 

「ヴィヴィオはもともと管理局の膿が生み出した実験体よ。」

「ええと・・・そうだね。」

「その実験体を管理局の中で管理するってのはどういうこと?」

「・・・それは・・・」

「とはいえどこにいても危険度は対して変わらないでしょうね。調べようと思えば私たちの仮住まいであろうと意味が無いし。」

「・・・つまり何が言いたいの?」

「強い方がヴィヴィオを預かるべきだと思うの。私は。」

「・・・ふーん。・・・そうだね。つまり戦ってヴィヴィオをどっちが預かるか決めるってこと?」

「そのとおり。だから本気(・・)で来てね。」

「・・・いいよ、それで。」

 

という女2人の密談は終わりを告げる。

 

「というわけでなのはちゃんと戦ってぶちのめしてあげる!!響が。」

「は?

・・・なんで俺がっ!?というかどういうつも―――」

「ヴィヴィオを私たちの手で守るためよ!」

「いや、ちょっ!?」

 

アイシテルはこう言ったが実際の動機はいい加減、響となのはとの間のぎこちなさを解決することにある。

ヴィヴィオをダシに使ったことは多少なりとも罪悪感を感じるし、いったこと全てが嘘というほどでもない。

が、響はずっとなのはとの昔の確執を気にしている。

いわばトラウマだ。

トラウマで条件反射的に響はなのはに対して負い目を感じている。

いい加減、アイシテルとしてはそれをどうにかしてやりたかった。

そこで考えたのがいっそのことぶっ飛ばされれば良いということである。

響は一方的に自分がなのはに危害を加えたから何時までも負い目が消えないわけで、彼女自身が気にしてないといっても罪悪感は響の方の問題だ。

それを消すための荒療治。

それが今回のこれ。

模擬戦とは名ばかりの響の公開処刑であった。

 

ヴィヴィオはどう考えても隊長陣がいて、守護騎士もいる六課の方が安全だ。

残念だけれどヴィヴィオを引き取ることは出来ない。

今日は単にヴィヴィオに会って踏ん切りをつけるつもりだったのだが、それ以外にもなのはと響の今の関係にも終止符を打つ。

ヴィヴィオの強いの?という疑問を聞いてひらめいたことだったが、割と悪くない思いつきなんじゃないか?

そんな自画自賛をしていたアイシテルだった。

 

 

 

 

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