旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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因縁の対決

なのはと相対する響。

 

緊迫した空気があたりに充満する。

 

さて、戦う前に。

どうなるかの予想を多少なりとも述べておく。

 

「あの・・・」

「ん?

ええと、君は槍を使ってた・・・」

「え、エリオです。」

「そう。私はアイシテル。響の・・・相棒かな。いろんな意味でのね。それで何かな?エリオ坊や。」

「ぼ、ぼうや・・・えと、その。貴方達はなのはさんの・・友人の方たちですか?

その、制服は着てないので六課の人ではないですよね?」

「ううん・・・後者はそう。友達・・・というよりは知人?良くて戦友・・・ううん、微妙な仲かな?」

「び、微妙・・・ですか?」

「うん。」

 

という会話をキャロやティア、スバルも聞いていた。

だが、ティアだけは反応が違う。

 

「アイシテル?・・・響、か・・・どっかで聞いたことがあるような・・・」

「・・・なのはさんに勝てるんですか?あの人。」

 

スバルが不安げに、しかしどこまで強いのかが気になったようでアイシテルに響の実力を聞く。

 

「そうだねぇ・・・強いよ、響は・・・でも・・・」

 

響は強い。

そう強い。

その辺の魔導師100くらいなら叩き潰せる強さだ。

が、それは六課の隊長人クラスなら余裕で出来るレベル。

なのはも同じだ。

 

響となのはを直接比べると、魔力では響が一段階劣り、近接戦ならば響に部があれど魔法的技術では響が劣る。

なおかつ経験でも管理局のエースとして戦ってきたなのはには叶わない。

そしてなのはにはバカらしいほどの戦闘センスまである。戦闘における超直感とも言うべき長年戦い続けた戦士がようやく手に入れることの出来るレベルの超直感が。

 

響の勝っているところは近接戦と言う部分だけ。

近接戦ではまず負けないだろうが、それはなのはも承知のはず。

生半可なことでは近づけない。

そのように戦いを組み立てられる。

 

はっきり言ってしまうと負け戦と呼べるほどの歴然とした差があるのだ。

響が勝つための問題はまだある。

 

火力不足。

響は速度(スピード)タイプの近接戦魔導師だ。

仮に近づけたとしても、魔素の凝縮が上手い砲撃型魔導師のなのはが張るシールドはおそらくもってどの技であろうと破れない。

管理局員にとって高町なのはと聞けば、まず収束砲撃と連想できるほどに彼女の高火力ぶりは有名だが、実際の彼女の最たる長所はその鉄壁とも言える防御能力の高さにある。

シールド魔法はただ魔力を込めるのではなく、魔力を、ひいてはその元である魔素を凝縮することから始まる。

すなわち。

高町なのはは高火力を有しているのと同時に、滅多な手段では墜とされない壁役でもあるのだ。

つまり響はどう頑張ってもかなり不利な戦いを強いられるということである。

 

勝てない。とは言わない。

戦いに絶対は無く、手段さえ選ばなければ勝ちようはいくらでもあるだろう。不意打ちとか使って。

 

しかしこれは試合と言う形。

さらに油断しないようになのはにはあらかじめ本気で行くように言ってある。

改めて考えるとまさしく試合とは名ばかりの茶番劇。

公開処刑だ。

負けてもらわないと困るので、ユニゾンする気は無かったが、ユニゾンくらいはしても良かったかもしれないとか思いなおすアイシテル。

 

響もなのはに劣りこそすれ、フリー魔導師として実戦を続けてきた。

その経験ゆえか、勝つのがかなり難しいことを知っているのあろう。

顔が青ざめていた。

多少なりとも鼓舞しないと一手目で倒されかねない。

 

「響・・・勝って。」

「アイシテル・・・無茶振り過ぎないか?」

「だったらユニゾンする?」

「いや・・・あっちがしてないのにこっちだけするのも・・・卑怯な気がする。」

「じゃあ勝ちなさい。」

「じゃあ!?今、じゃあって言った!?あんな化け物相手にどうしろとっ!?」

 

化け物のところでぴくりと動くなのは。

ちょっとなりとも肩が落ちた。

傷ついたようだ。

 

「・・・その・・・じゃあ、勝ったら・・・ひ、膝枕してあげる、から。」

「ほんと?」

「ほ、ほんと。でも、勝ったらだからねっ!?」

 

膝枕。それは男のロマンの一つ。

良い雰囲気の時に頼んだのだが、結局してもらえなかったのだった。

表向きは足が痺れるから。実際はアイシテルが恥ずかしかったから。

それをすること自体ではなく、それを思い浮かべてにんまりとしてしまった自分に恥ずかしさを感じて、そんな自分の恥ずかしさを誤魔化すように、つい断ってしまったのだ。実際はしてやっても良い。むしろしてあげたい。

そのまま良い雰囲気をつくってあわよくば子作りを・・・なんてことも。まぁ子供は出来ないけれど。

 

とにかく。

どうせ勝てないし良いかと考えたのである。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「じゃあ、行くよ、響君。」

「開始の合図?それ。」

「うん。」

「そう、かっ!!」

 

まずは響の様子見。

地力という点で見れば確実に格上と呼べる相手である。

最初から本気のブリッツモードでなのはの背後に回りこんで切り込む。

しかしそれをいとも簡単にラウンドシールドで防ぐなのは。

パキンと甲高い音を発てて剣が折れる。

 

「堅すぎる。なんて堅い女だ。」

 

はたから聞くとガードが固い女と聞こえないことも無い。

 

「尻軽だと思われていたのなら心外だね。」

 

なのはもそうした連想をしたのだろう。響の言葉に対して、軽口で答えた。

 

「まさか。これで決まるとは思っ―――っ!?」

 

瞬時にディバインバスターを撃つなのは。

その時間、約1秒。

収束から発射まで1秒。

これがどれほど凄いのかを例えるならば、難易度ルナティックである。

分からなかったら・・・そう、例えるなら…特に思い浮かばなかったので、まぁ別にいいや。

 

なのはは足に翼を生やして、距離を取り瞬時に収束砲。さすが公式バグキャラである。

響はまともに受けることをせず、そのまま距離を取り、物陰に隠れる。そして高速で這い依っていく。

獲物に忍び寄る蛇のように。

 

幸い、バトルフィールドはバーチャルで再現された市街地。

隠れるための物陰は一杯ある。

物陰をうまく使って接近しようと考えていたが、そんな甘い考えはすぐに消し飛んだ。

 

 

「でぃばいーん・・・バスタァアアアアアアアッ!!」

「まじかっ!?」

 

なのはの前方の市街地がまるまる吹き飛ぶ。

まさに天災。

台風や地震だって猶予の一つや二つは与えてくれるだろうに。

攻撃の余波に巻き込まれ、距離を取らされる響。

なのははそこから容赦なく遠距離攻撃をぶっ放す。

無数のディバインシューターが響に向かう。

 

「あんまり・・・舐めんなッ!!」

 

某弾幕ゲーよろしく、響は弾の合間合間を縫うようにブリッツムーブを使用する。

どんどん距離を詰める響。もちろん予測した場所にディバインシューターを配置するがそこはブリッツムーブ。フェイトの使うソニックムーブの上位互換魔法なだけあって、置いた時にはすでに響はいない。

 

「うん!やっぱり、そう簡単には墜落(お)ちてくれないよねっ!!」

 

なのはは瞬時に攻撃を切り替え、収束砲による広範囲攻撃を行う。

 

が、それを響が投擲した剣数本に阻まれ、その一瞬に距離を詰める響。

 

「暗黒的なエクスカリバーッ!!」

「くっ!!」

 

黒いオーラを纏った剣がなのはに切り込まれた。

しかしまたしても。

 

「堅すぎないっ!?」

 

バギンと音を発てて折れる剣。

くしくも、先ほどとまったく同じ光景を見せ付けられただけだった。

ここでなのはが杖を振るい、響が避けた先にはディバインシューター。

 

響はすぐに障壁を張ってディバインシューターを受けるが、その衝撃でまたもや距離を離された。

この時点でお互いにダメージは通っていない。

 

が。悪魔の囁きが響く。

 

『ロードカートリッジ』

 

レイジングハートの機械音。

そして続く声。

 

「レイジングハート。全力全開。」

『I see.』(わかりました)

 

「させるか・・・はぃっ!?」

 

両腕、両足に巻きつくバインド。

 

「な、なん・・・だとぉぉぉっ!?

ばかなっ!?」

 

追い詰められた悪役が言うセリフを言ってしまった響。負けフラグである。

毎度見るたび響が驚くことなのだが、収束砲を準備しながらバインドってかなりの高難度テクニックなのだ。

すくなくとも響には出来ない。

いや、出来ることは出来るが、バインドを上手く当てられないのだ。

 

「スターライト・・・ブレイカァアアアアアアアッ!!」

「え、ええ、え・・・栄光は我にあ―――ぐおああああああっ!?」

 

シールドを張ることも出来ずに意味の分からないことを言って沈(ちん)する響。

ピンクの閃光が響を飲み込み、地面に叩きつけ、そして一気に魔力爆発が起こる。

その爆炎球の半径は役5キロ。直径にして10キロの爆発が起こった。

まさに外道。

そういってもいいくらいの過剰殺戮(オーバーキル)である。

 

 

「ふぅ。なかなか楽しかったよ、響君。」

 

とにっこり笑うなのはは可憐であった。

 

だが、次の瞬間になのはの笑みは引きつる。

 

「暗黒的なエクスカリバーッ!!」

 

懐にブリッツムーヴで入り込んだ響が突きをなのはに打ち据える。

狙いは眼球。

フェイントであるが、いつぞやに一度やったこと。二度は通じない。

ヒヨッコである自分の部下たちと違って、自分と同じとまでは行かずとも経験豊富な目の前の彼ならばそんなミスはしない。

おそらくこれはフェイクに見せた本気の一撃。

バリアジャケットが常時展開するフィールドで守られているからといってもここまで穿った狙いをしてくるのは正直以外だった。

とはいえ、自分の防御力を鑑みれば仕方ないことかとも思える。

正直、友人とはいかないまでも知人程度にはなっているであろう自分を殺してしまいかねない方法で攻めてくるとは、考え無しなのか、恨まれているのか、それとも夢中になりすぎたのか。

なのははなんだかんだで良い人という響に対する評価を落とした。

簡潔に言えば、いくら本気の勝負とはいえ、いくら化け物呼ばわりした相手とはいえ、いくら格上とは言えども、いくら非殺傷設定でも、試合で相手に取り返しのつかない怪我を負わせかねない攻撃手段を取る。

自分の父や兄、姉が響を良く見ていただけに、落胆を隠せなかった。

嗚呼、この程度か。と。

確かにこれはヴィヴィオを守るのにどちらが相応しいかを決める戦い。

限りなく実戦に近い形をとるのは当然だ。

しかし。

だからこそ守るための戦いをするべき人間が相手を必要以上に傷つける戦いをする。

それが許せないと感じる。

 

暗黒的なエクスカリバーはかなりの魔力が込められている。下手をすればバリアジャケットのフィールド程度ではさすがのなのはも貫いて眼球を傷つけるかもしれない。

ならば、となのははガード態勢に入るが。

 

 

もちろん。

 

ご存知のとおり。

 

彼はへたれ(・・・)だ。

殺すかもしれない、特に女の子の顔への攻撃なんてことをするはずがない(・・・・・・・)

 

ゆえに。

なのはが響の剣先を取ったと思った瞬間、響の身体は霧のように霧散した。

 

「っ!?」

「ディザスター・・・ブレイカァアアアアアアアッ!!」

 

 

上空から響による、魔力強化も可能なディザスターブレイカーEX(エクセリオン)が襲い掛かった。

 

「えっ!?」

『ラウンドシールド。』

 

戸惑って、反応し切れなかったなのはと、それをカバーするレイジングハート。

 

黒色の魔力爆発に包まれた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「うわっ!?あっ!?ちょっ!?」

「は、はやっ!?」

「見た目どおりの強さだったんですね・・・早い。」

「ふ、フリード、凄いねあの2人。」

 

四人の訓練生達が響となのはの戦いの一挙手一投足に反応する。

スバルに至ってはちょっと楽しそうである。

 

 

「ふうむ。どうやらやっぱりなのはちゃんの優勢のようやね。」

「ん?

あら?

はやてちゃん。直接会うのは大分久しぶりね。仕事はいいの?」

「部下とリインに―――あ、もちろんツヴァイのことやで?

その二人に任してきたわ。こんな見応えある戦い、見いひんわけにはいかんやろ?」

「・・・まぁ見ごたえがあるのは否定しないけれど、結果の見えた茶番よ?」

「せやな。けどそこはデバイスとして、恋人として信じて待ってやるのが良い女ってもんやないの?」

「勝つ必要があって、それでいて響が負けると言う結果しかないのならば私がここで黙って見てると思う?

そんな奇跡を待つよりも私が助けた方が確実よ。

今回はこれでいいから待ってるの。」

「い、言うやね。まぁ長年一緒にいたんや。ある程度の思惑は分かるけども・・・ちと荒療治過ぎひん?

ほら、今も。

バインドにつながれて、辛うじて幻影(シルエット)を身代わりに出来ただけやで?

防戦一方。攻勢に出ても攻撃が通用しない・・・悪夢やな。士郎さんに鍛えられた剣の腕も近づけなきゃ意味が無い・・・そもそもどんな一太刀も通じない。うん、重ねて言うけど悪夢やな。」

 

苦笑するはやて。

それにはアイシテルも苦笑するしかない。文字通りまるで()が立たないのだ。

響の絶望具合が伺える。

もちろん狙いどころを変えれば良い。

首裏や眼球など。

バリアが薄く、ガードしづらい場所を選べばいいのだ。

しかし響は狙わないだろう。

間違ってバリアを抜いて怪我でもさせてしまえば大変だ。

非殺傷設定でもあまりに過剰だったり、直接攻撃の場合はショック状態に陥ることはある。

響は狙わないだろうと思いつつ。

 

響がバインドされて打ち抜かれた瞬間。

四人の訓練生全員が響は墜落(お)とされたと思った。

 

しかし。

爆風から出てきた響を見て皆は驚く。

 

「ど、どうやってっ!?」

「なのはさんのバインドを抜け出すとかすごい・・・」

「それは違うで、エリオ、スバル。」

「あ、はやて隊長。」

「こ、こんにちは。」

「はい、こんにちは。

で、バインドの話やけど、そもそも響君はバインドに捕まっとらんよ?

ていうか捕まってたら響君はもちろん、私もフェイトちゃんも何も出来ずに落とされるやろうね・・・その・・・今のなのはちゃんのバインドはおそらく現時点での次元世界最高峰の拘束魔法やろうから。簡易的なって言葉が前につくけど…。すくなくともあの一瞬で抜け出すのは無理や。」

「じゃあ・・・」

「ティアナは分かるんやない?」

「え?」

 

はやてに話を振られて戸惑うティアナ。

アゴに手を当て、少し考え込む。

 

「あの・・・もしかして幻影(シルエット)・・・ですか?」

「そや。」

「そ、そんなっ!?

あ、あの一瞬で幻影(シルエット)を作ったんですか・・・そんなはず・・・それも実体を・・・」

「あの一瞬、響君は分裂するように幻影をつくったんやな。幻影の影に隠れるように本体は退避。そして今、斬りかかったってことやろ。」

「あの人は・・・接近戦型じゃ・・・」

 

さて、響は授かったチートもそうだが剣術の才能、魔法を扱う才能。

そのどれも極端に良いと言うほどではない。

もちろん並みの魔術師に比べればはるかにあるが、それでもなのはたちに比べると概ねの性能で見劣りする。

ロングではなのはに劣り、ミドルでははやてに劣り、クロスではフェイトに劣る。

が、響には他にない長所がある。

特殊型とも言うべき幻術の素養があるのだ。

これは響が普段から幻影人形である厨房(昔の響を投影したホログラム人形)を使って特訓していることから分かる。

もちろんその幻影人形は当初はアイシテルが作ったものだが、アイシテルはあくまでもデバイス。

もともとの術者である響にその素養が無ければ作り出せなかったものなのだ。

 

すなわち響の本来のバトルスタイルは幻影によるかく乱を主体とした遊撃戦闘体系。

とはいえ幻影と言うのはあくまでも幻影。

色々な問題が起こる。

第一に魔力量。

魔力の消費が激しいため、そうそう戦闘に頻繁に使えない。

ただの幻影(シルエット)魔法でもかなりの魔力量を必要とするのに、そこに実体を。

さらに戦闘をしながらなんてのはそれこそ使いどころを間違えれば一気に逆転されかねないほどの魔法だ。

少なくとも今のティアナには到底無理なことだった。

 

第二に。

 

「二つ目の疑問は見てれば解消されるで。」

 

といってはやてはあごをしゃくる。

その方向を見ると今まさに響がなのはの眼球めがけて鋭い、第三者から見ても反応できないほどの鋭い突きを放っていた。

 

「あ、あぶな―――ぇっ!?」

 

なのはが切っ先を持とうとしたのか剣先に触れるか触れないかの一瞬に響の姿は消える。

これにはなのはも驚いた顔を浮かべた。

 

「ま、なのはちゃんも虚を突かれたやろうな。いや、さっきのバインドにしてもまさか外されたとは思ってへんかったやろ。手ごたえで分かってたから驚かなかったってところか。でも・・・ま。」

 

幻影(シルエット)。

これを戦闘時に流用するのに難しい理由はもう一つある。

魔力があっても出来ないと言う理由。

それは幻影(シルエット)の動きをその都度入力しないといけないのだ。

たとえば、自分のバリアジャケットが汚れていた場合、その汚れを幻影に反映させなくてはすぐにばれてしまう。

たとえば、自分のデバイスが壊れて、やむをえず違う武器を持つ場合。武器を変えなくてはいけないし、実体を持つ場合はそれに際して重心の取り方や武器を持つ握力などの設定もしなくてはいけない。

たとえば、何かをさせる場合はその動きも入力する必要がある。

ある程度はあらかじめ設定してデバイスに詰め込んで置けるかもしれないが、今の目の前の煙を掻き分け、ブリッツムーブで瞬時に懐に詰める。そして小さな的である眼球目掛けて剣を突き立てるなど、幻影(シルエット)にしては良く出来すぎている。

いや時間をかければなんとかできる。

でも、それでもあんな正確な動きはどんなに優秀な人間でも一晩かけて出来るかと言うレベルだ。

そうした設定があるからこそ幻影(シルエット)魔法は発動までに時間がかかる。

そうティアナは理解してたはずだった。

 

 

そして幻影(シルエット)はサーチャーを使わない限り、肉眼では真偽が付き難い。だからこそなのはも虚を取られたのだろう。

黒い閃光になのはの身体が飲み込まれた。

 

 

「あ、ありえないですっ!!

ど、どうやって・・・」

「ま、それは日頃の努力ってヤツやろな。」

「日頃の・・・?」

「響君な。友達が少ないんや。」

「・・・それに何の関係が?」

「で、自主錬の相手はぜ~んぶ幻影人形って響君が言ってた実体を持つ幻影(シルエット)魔法。

さて、ティアナには言わずともわかるやろうけど・・・これがどれだけ面倒か分かるか?」

「そんなことできるはずが・・・出来たとしても剣をふるとか魔法を撃つとかそういう・・・」

「そういうのを組み合わせて、一種の人工AI的な幻影人形の元を作ったのが私の隣にいるアイちゃん。

そしてそれを修行の目的にあわせて改良したり、仕様を変えてったのがあそこで戦っとる響君。」

「それって・・・」

「そや。きっとあれはすでに自分が戦った相手の一部の動きのプログラムを取り出してその場で幻影(シルエット)を投影したんやろな。新しくすることは泥や傷を負っていたらつけるというだけ。

これならその道の玄人なら一瞬でも可能やろ?」

「そ、それにしたって動きが・・・」

「そこは響君が自らの身で幻影人形と戦って長い時間をかけて微調整をし、本物同然にしたんやろうな。友達がいないがゆえに・・・悲しいやっちゃ。」

 

そういうはやては久しぶりにちょっと涙していた。

友達を作ることに一生懸命になるのではなく、人形を改良することに勤しむ響の姿を見てあまりの背中の寂しさに涙したことは一度や二度ではない。とはいっても四回目くらいには慣れたから実質泣いたのは3回くらいなのだが。

ちなみに守護騎士が相手になるのはもちろん管理局への属託・・・言い方は悪いが体の良い労働力として無償奉仕をさせられていたので無理だった。

 

 

「人形やからどこか限界はあるし、攻撃パターンは決まる。そのパターンに慣れたら調整、慣れたら調整、それの繰り返しの結晶が響君の幻影(シルエット)なんや。

もはや響君独自の創作魔法(オリジナル)言うても過言やないやろ。

仮に相手に幻影だとばれたとしても臨機応変に対応できる本物同然の幻影。

ま、見破るのは特殊なレアスキルでもない限りまず無理やろうな。仮に見破ってもそれはそれで脅威となりうる。」

「・・・すごい。」

 

 

ティアナはそう呟いて響を嫉妬の目で見つめるのだった。

 

 

 

 

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