旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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幻影マイスターにお願いしよう

「いやぁ、なかなかいい戦いやったで、響君。」

「八神・・・来てたのな。」

「なかなか奮闘したやんか。

ぶっちゃけなのはちゃんは管理局最強やからな。超高火力に次いで、後衛向きのくせして前衛並みの防御力。スピードもフェイトちゃんや響君には劣るものの、遅くは無い。というか例え出遅れようと、ずば抜けた反射神経でカバーできる。そんな全方位、全ポジションをやろうと思えばこなせてしまう化け物相手にようやったわぁ。」

「は、はやてちゃん!

化け物呼ばわりはないんじゃないかなッ!?

響君もそうだけど、私そんな化け物染みた強さなんて持ってないよ!!

結構傷ついてるからね?私!!」

「じ、自覚が無い・・・だと?」

 

なのはの言葉に戦慄する響。雰囲気はギャグっぽいノリだが、軽視すること無かれ。

結構本気の戦慄っぷりである。

フィールドをあそこまでぶっ壊しといて化け物じゃない?

ありえんと呟く。

響先ほど放ったディザスターブレイカーは約直径5キロの魔力爆発を起こしたこれでもかなりのものである。

しかし、なのはの「これ」は少なく見積もっても半径(・・)10キロあたりだ。

あまりの無自覚っぷり。戦慄ではなく何を思えというのか。

収束砲の素質のある人間が撃つとこうまでちがうのかな?とちょっと思ったが、もう戦う必要もあるまい。

響は安堵する。

ここ数年、やたらと戦いたがってたなのはと一度とは言え戦ったのだ。

とりあえず強く迫られることはあるまい。

何よりも響の胸の内では何かこう・・・なのはに対する負い目が消えていた。

わだかまりも同時に吹き飛ばしたような―――まぁ半分は錯覚なのだが。

なにはともあれアイシテルの思惑は上手く言っただろう。

学校などで、なんとなく馬が合わない人間と喧嘩したあと、仲良くなれるケースがたまにあるように少なくとも前よりは近しい感じに・・・良き友人、とまでは行かずとも良き知人にはなっただろうとはやてとアイシテルは顔をほころばせる。

 

 

「あの・・・」

 

そんな話の最中、響に話しかけるティアナ。

初対面の人間を見てちょっと構える響。

 

「私にも出来ますか?」

「は?」

「あ、ごめんなさい、話を飛ばしすぎました・・・えと・・・」

「ティアナは響君が使っとった動きの言い幻影人形をティアナにも使えるかどうか聞いとるんや。」

 

ティアナの要求をはやてが補足する。

 

「・・・出来ないことは無いと思うけど・・・実体を持つほうは無理だと思うよ?魔力量が並みより良い位しか無いみた―――いだっ!?」

「もう少し、言い方を考え。」

 

響のその言葉でティアナは俯く。

デリカシーの無い言い分にはやてから横っ腹をこづかれた響。

 

「私も・・・私も貴方みたいに強くなれるでしょうか?」

「・・・はぁ。」

 

いきなりの独白に響は戸惑うしかない。

ティアナが見たところ響は凡人だ。天才に見られる才能(センス)の輝きが本物と比べて弱い。

今までずっと才能のある相棒を隣に置いていたから分かるその輝き。

いや、正確には凡人よりは良いが決して天才とはいえない人間にしか見えない。

そんな人間があの天才、いや、鬼才のなのはさんにあと一歩というところまで追い詰めた。

結局負けてしまったが、それでもティアナ、彼女にとってそれは自分のような凡人の道しるべのような気がした。

昔から何でも人並み以上にはこなしてきたが、その道のプロには勝てない。

器用貧乏を地で行き、今では後衛特化することでようやく周りの天才達の一歩後をついていくという段階。

自分と同じような人間が自分よりもはるか先の高みにいる。

きっと努力したのだろう。

頑張ってきたのだろう。

沢山沢山。

沢山練習してきっと今の彼がある。

それは分かる。

しかし。

分かった上で自分よりもはるかに強い彼に強い羨望と嫉妬を抱かずには居られなかった。

周りで置いてけぼりにされそうな現状。

そして起こる焦燥感。

 

ここで訓練してもうすぐ一月になる。

ここの訓練は濃密で、ゆえにこそすぐに分かる歴然とした差。

せめて何かレアスキルがあったら。

もう少しだけ魔力があれば。

そう願ったことは一度や二度ではない。

しかし現状、見たところではレアスキルも無しになのはさんと互角に近い戦いをしていた。

魔力量では大きく劣るものの、そこは彼の持つ幻影の技術があればなんとか一矢報いる程度にはなれる。

 

ティアナは見つけたのだった。

可能性を。

超一流に凡人(ティアナ)が勝てる可能性を。

その可能性を持っている響に嫉妬するのは無理も無かった。

だが彼女は良くも悪くも立ち止まることを知らない。

だから。

だから。

 

藁にも縋る思いで、今居る仲間と何時までも肩を並べていたくて、そして何よりも自身の夢を、ランスターの名の名誉を回復するためにも自分はここで立ち止まってられないのだ。

 

 

「わ、私に・・・私にその魔法を教えてくださいっ!!

なんでもしますっ!!

だから・・・お願いしますっ!!」

 

頭を深々と下げながらお願いするティアナ。

響はいきなりのなんでもします宣言にちょっとだけピンク色の妄想を浮かべたがすぐにそれを振り払う。

そこまで思春期真っ只中というわけでもないし、彼女も居る。

仮にしようと思ってもキスも上手く出来ないダメ男が何をさせるというのか。

などなど関係ない話はともかくとして、響は困った表情を浮かべる。

 

正直面倒くさい。

幻影は行動パターンの組み立てが面倒なのだ。

どれくらい面倒かと言うと、ディスガイアシリーズで一からキャラを育てて、億ダメージをたたき出すのにかかるくらいの労力と時間が要る。

響のデータを元にしたとしてもそれなりに時間がかかるのは覚悟しなくてはならない。

そもそも響はそういうせせこましいマネは性に合わない。

今あるデータも長年の積み重ねでどんな状況、どんな戦闘、どんなタイミングにも使えるレベルに達したのであって、始めから作ろうとしていたんじゃない。

 

初めて出会った赤の他人にしてあげようと思えるほど簡単なことじゃないのだ。

ちょっと必死なのが気になるが、響に読心術などあるはずもなく。

断る。

 

「いや、その、これは凄く面倒なのでやりたくな―――」

「お、お願いしますっ!!」

 

そのまま土下座をするティアナ。

周りは騒然。

ここで断ると俺が悪者な感じにっ!?

なのはの時とは別の意味で戦慄する響。

 

だがそこは保身主義の相馬 響君。

我らが主人公。

これがはやてやアリシアならばともかく彼は―――

 

 

「悪いけど俺は君の戦闘スタイルや身長とかそういうデータは知らない。

だから無理だ。」

 

とりあえず断った。

彼女の思いの丈も知らないし、やむをえないことだろう。

何でもするといわれたが、目の前の彼女に何が出来るのかも分からないし、そもそも何かして欲しいことがあるわけでもない。

 

「・・・な、なんとかならないんですかっ!?」

「つおっ!?

顔が近いっ!?離れてっ!!」

 

せまりよってくるティアナ。

あとずさる響。

少し赤面しつつ、すいませんと謝り、居なおす。

ティアナは冷静になったのか響に対する侘びを口にした。

 

 

「・・・その、ごめんなさい。

出会っていきなり土下座とかして・・・いきなり土下座されても困るだけですよね。」

「いや、別に・・・」

 

そのままティアナは下がる。

どうやらこの話は無かったことになったようである。が、響はあれ?と思った。

 

「ええと、で、結局データは要らない?」

「は?」

「いや、俺が君用に最適化するのはめんど―――じゃなくて、無理だけど六課に勤めてる人に頼めば最適化は可能だよ?

あ、ただ地力でやろうとしないように。

それなりに処理能力のあるデバイスの、それもメンテナンス用デバイスでもない限り普通のデバイスじゃ処理落ちするから・・・」

「ほ、ほんとですかっ!?」

 

すざざざっ!と駆け寄ってきて響の手を取るティアナ。

顔が近い。

 

「お、おうさ。」

「あ、ありがとうございますっ!!」

「別に礼を言われるようなことでは・・・」

 

全くである。

響は元々持っていたデータをあげるだけ。

特別何かしているというわけではない。

強いて言えば自分の努力の結晶をタダ同然であげる・・・いや、今まで以上に幻影魔法が実戦で使いやすくなるという点では魔法界全ての利益とも言えるいわば金の卵といえるデータだ。

そのことに気づかない響ときたらなんとアホ可愛いことか。

ちなみに響にとって努力の結晶という概念は無い。

だって、自分が強くなるためにやったことがたまたま戦闘で使えるようになったというだけの話だからだ。

響にとって努力したという認識があるのは幻影人形と戦って得た、経験値であり、幻影人形のプログラム自体は使えるから使っただけというだけ。

RPGゲームなどで倒した敵の経験値を稼いでレベルマックスにしたことを自慢する人間が居ても、「レベルマックスにするまでに攻撃ボタンを連打してたから一秒間に攻撃ボタンを20回押せるぜ!」なんて自慢をする人間がいないのと同じだ。

・・・いや、違うかもしれない。

とにかく響にとって誰でもやろうと思えば面倒だけど出来ることでしょ?という認識である。

 

 

余談だがこの時から四年後ほど。

この時のデータが既存の幻影魔法の基礎データと取って代わり、幻影魔法の扱い易さや力が強力になったことで、扱う人間から響は幻影マイスターと呼ばれ、ちょっとした有名人となるのであった。

 

 

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