旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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すかりえってぃ

「山田、知っとる?」

 

あの日。

山田君が居なくなったとはやてに聞いてから一週間が経過した頃。

どうも山田君はジェイルスカリエッティを調査している最中に捕まった。というのがはやての見解だったらしい。

しかし、今日、この日山田君が戻ってきたとのこと。

本人曰く心配かけたな。だそうだ。

何をしていたのか?

なのはやフェイトが心配してそう聞く前に、転送された人間たちを見て二人は驚いた。

 

 

ジェイル一味を拘束し、逮捕していたのであった。

山田君超頑張った。

 

☆ ☆ ☆

 

「響、知ってる?」

「ん?何?」

「なんかすっごい犯罪者が捕まったって。」

「ふぅん。別にどうでも良い・・・それよりも重大なことがある。」

「何?」

「もう家買えるんだ。どこに家を・・・どんな家を買うべきだと思う?」

 

家。

マイホーム。

スイートホームでも可。

前々からちょっと言っていたことでもある。

それが今現実になろうとしていた。

スカリエッティのことなど響の眼中には無いし、そもそも名前自体知らないだろう。

 

「母君はどうするのだ?」

 

コタツに入りながら‐と言っても冬ではないので電源は入っていない‐のんびりとする2人の元に台所からやってきたリインがたずねた。

 

「もちろん母さんが望むならこっちに移住して貰う。

これからの職業的にさすがに地球からの通勤は面倒じゃないか。それなりにお金溜まったし、というかすぐに溜まるしこの調子なら家を出て、もうフリーの魔導師が職業で良いかなぁと思って。」

「ふぅん。」

「しかし母君も気を使うのではないか?」

「今までだってこっちに来る前は一緒に住んでたし・・・問題ないでしょ。

リインもアイシテルも別に嫌とかではないよね?」

「そりゃそうだし、私は気にしないけど・・・文香ちゃんからすると結構気まずいんじゃないかなぁ・・・」

「ああ、そういえば今度から義理の母君ともなるのだったな。私としては正式な挨拶を・・・」

「だからアンタはどうしてそう・・・」

 

などなど平和な会話を繰り広げているのも、この日のこの時までだった。

この日の晩、こんなことが起きるとは誰も思わなかったのだ。

 

六課隊長陣のエース。

高町なのはの失踪。

もちろんコレの影響は大きかった。

彼女の部下にあたる四人はもちろんその親友であるフェイト、はやて、山田君。彼女らも非常に心配した。

次に山田君の失踪。

フェイトの失踪。

はやての失踪。

 

続く隊長人の失踪事件。

もちろん六課は表向きは機能停止。解散一歩手前となったのである。

 

彼女達が心配でもあるし、ヴィヴィオが心配な響としては多少成りとも情報を手に入れようとアイシテルによる六課ハッキングをしてみたところヴィヴィオもまたいなくなっていたことが分かる。

 

 

そして彼の計画は始まった。

大きな動きを見せることも無く、水面下で。

しかし多大な影響を与えるJS事件はこうして始まったのだった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

「管理局上空に未確認飛行物体?」

 

響ももちろん心配していた。

顔見知りだったわけだし、彼女らの心配をするのは当然とも言える。

はやては良き友人だし、なのはは一応世話になった人の娘だ。

多少なりとも心配するのは当然で、ヴィヴィオも心配だ。

 

そんな心配をして一週間ほどが経った頃。

いつもフリー魔導師専門の仕事斡旋所、言い換えるならば派遣社員を派遣する会社のような立場にある魔法企業から緊急の依頼が入る。

管理局本部にて未確認飛行物体と失踪していたと思われる隊長陣含め現れたのだった。

彼が。

そして彼は第一声にこう放った。

 

 

『さて、この映像を見ている諸君。

諸君らに問いたい。

例えば喧嘩の時。1人を相手に2人でかかることは卑怯だろうか?

1人を相手に3人は?はたまた5人は?

はたまた10人は?

まぁ人にもよるだろうね。』

 

管理局上空にて大きなウィンドウが開き、そこには紫の髪をした男。

ジェイル・スカリエッティ。その人が居た。

捕まったはずのその人が。

 

 

『私の場合は否だ。

元来、ヒトと言う種は群れる事を本能として是としてきた。

これは人自身がヒトという種を脆弱で惰弱。そういう存在として自覚してきたからに他ならない。

すなわち群れる事。群れて自身よりも格上の存在を狩る事。これはヒトという種において正義だ。

・・・いや、正義かどうか、ではなく正当かどうかと言った方が語弊が無くていいね。

実際、地球と言う管理外世界では戦隊物という悪役1人を複数人で攻めるジャンルの娯楽があるそうじゃないか。

実に人間らしいものだとは思わないかね?

何が言いたいかと言えば、今回私はそれをリスペクトしたのだ。管理局のエースオブエースも1人のときに全勢力で叩けばなんてことは』

『教授、時間を与えては逃げられるかもしれませんよ?』

『おっとそうだったね。では簡潔に言いたいことを述べよう。

私は自由に研究がしたい。しかしそれを邪魔立てする物がいる。誰か・・・どういう物かは言わずもがな。そう、管理局だ。いや、ただ邪魔するだけならば良い。

確かに私のやることは他者から見れば理解しがたいことだろうし、理解して欲しいとも思わない。

仮に邪魔してこようと逃げれば良いだけの話。退ければ良いだけの話。

それだけの技術力がある。戦力がある。

が。

ただ一つ。

私を縛り、私を討つであろう存在がある。

それが私を利用する管理局上層部。

 

すなわち。私は潰す。管理局を。』

 

何をと言わずに睨むジェイル。

その言葉と同時に操られたなのはたちが一斉に管理局を襲撃する。

そしてそれに便乗して未確認飛行物体からもガジェットがAMFを展開しながら襲っていく。

管理局員が対抗するがすぐに撃墜されていく。

 

『私は殺戮者でも殺人鬼でもない。

ゆえに私が操っている物は全て非殺傷設定だ。

つまり逃げたいものは逃げると良い。

私の目的は管理局上層に巣食う老害どもを殺すこと。それと、私に関する情報を抜き取ること。それだけだ。

ゆえに逃げるものは追わないようにプログラミングしてある。

ああ、とはいってもだ。

何度も立ち上がられては叶わない。ゆえに五体を潰すくらいのことはするように調整してあるから、五体満足でいたければ逃げるのも手だろう?』

 

それを聞いて逃げ出す職員達がちらほらと出る。

 

『賢い人間が多いようだね。』

 

ふふふふと笑いながら言うスカリエッティ。

 

『博士、此方に来る前に・・・』

『おっと、そうだね。

相馬 響。

君の友人でもある彼女達が苦しまぬよう、事が終われば全ての記憶の処理をして返そう。

何、私は恨まれたいわけではないのだ。感謝してくれても構わない。むしろ彼女達も感謝することではないか?

これで膿を一掃出来るのだから。』

 

 

アイシテルでその映像を見ていた響は名前を出されたことに辟易とした。

が、その条件なら正直この仕事を蹴って、万が一にでも巻き込まれないよう地球にでも逃げた方が良いかなと思いつつ。

確かに膿を出すと言うならこれほどの薬――劇薬と言うべきか。

もあるまい。

ただ少し懸念していることが・・・

 

『これは君達守護騎士にも言えることだよ。』

 

今度はシグナムたちが映像に映る。

シグナムたちは懸命に戦っていた。

 

「黙れっ!!

主はやての望みは・・・望みはぁあああっ!!」

 

シグナムが剣を振るい、管理局に牙を穿とうとするはやてを止める。

そう響も懸念していたことだ。

確かに記憶を戻すとか、今回の管理局を裏切った形になり、操られているとは言えどもそうした記憶を無くすと言うのは悪者にしては結構ちゃんとしたアフターケアと言っても良い。

だが、記憶を無くそうとやったことの傷跡がなくなるわけでも、他の人の記憶がどうかなるわけでもないのだ。

普通に気づくだろう。

頭は良いけどバカなのか?

それとも人の感情があまり理解できないのか?

おそらく後者だろうと思いつつ。

響はどう動くべきか考えていた。

 

相手は非殺傷。

かつ、彼に操られた連中は全員操られていたからと言って他者のせいにするほど器用な人間ではないだろう。

山田君は良く分からないが、テンプレ主人公ならばきっと自分を責めて、そこをヒロインが慰めて良い雰囲気に・・・くらいにはなりそうである。

そして操られている大半の人は痛い思いをしてまで助けたいとは思わないが、はやてと映像には映っていないヴィヴィオが気になる。

とりあえず直接会いに行ってはやてをおっぱいチートで戻し、確実に関係してると思われるヴィヴィオのことを問いただすくらいはして良いだろう。

相手は殺すことに積極的では無いというし、死にはすまい。死にそうになったら逃げればいいや。

そういう方針で。

 

響はスカリエッティの元へ向かうのだった。

 

響としては管理局がどうなろうとどうでも良かったし、そもそもジェイルスカリエッティって誰?

結構イケメンだからアイドルグループのセンター?

研究者キャラで売り出してるアイドルが反社会デモを起こしたのだろうと言う程度にしか思っていなかった。

きっとプロモ撮影とかで補導されたとかそんな感じの恨みでわざわざはやて達を洗脳するとは。

これに乗じて膿を出せるならはやて達も満足じゃないかなぁ。いざとなったらあのスカリエッティさんとやらに罪を着せちゃえば良いし。

シグナムさんたちが怒ってるのは・・・メリットもあればデメリット・・・もとい同僚たちにかなりの迷惑がかかるし、はやてに罪が被らないかを懸念してだろう。

 

響は久々に誤解していたのである。

 

もちろん洗脳なんてのは普通の人間には出来ないし、記憶の転写をキモとするプロジェクトFの発案者でもあるスカリエッティだから可能なことであり、管理局とは言うけれど、山田君がいたとか、命をかける必要があるとかで、その実体をいまいち理解しようともせず(興味が無かった)、ゆえに響の感覚は違った。

地球で言うところの大企業が不正をしていてその不正で害を被った人間が大企業に直談判を拳で語り合う的な感じで・・・自業自得なら仕方ない。

はやてから管理局の不正についてはちらほら聞いていたし、むしろ手っ取り早くて良いことだなぁと賛成していたりもしたのだった。

 

 

 

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