「それじゃ一発かましますか。魔法は・・・ディザスターブレイカーのヴァリエーション違いで良いかな。」
『おーらい!響。』
響の目の前に魔法陣が展開。
黒い魔力光が魔法陣に集まる。
もちろん目立ったそれを阻止しようと迫り来るガジェット達だが、それらは全てリインによって撃墜される。
肝心の三人組は他の管理局員に気を取られたり、はやての遠隔射撃でくいとめられている。
「ハピネス・・・ブレイカーッ!!」
自身の不幸具合に対して威力が比例するディザスターブレイカーのヴァリエーションのうちの一つ。
自身の幸運具合と比例して威力がアップする収束砲、ハピネスブレイカー。
ちなみに、ディザスターブレイカーとの威力を比較した場合、まずハピネスブレイカーは劣る。
なぜなら響は戦闘狂ではないので、この魔法を使うと言う状況に追い込まれてる時点で、多少なりとも不幸な目に会うからだ。
戦闘で使う限り、ハピネスブレイカーの本領が発揮されることは無い。
とはいえ、ディザスターブレイカーに比べてと言う話であって・・・
「ッ悟嗚呼ああああくぁあああああああっ!?」
凄まじい悲鳴をあげながら山田君は黒い閃光に飲み込まれ、そのままかなたへ飛んでいく。
そして響がブリッツムーヴで追いかけていった。
「爆風に紛れてぶん殴る必要もないやんけ。」
というはやての言葉は響の耳に届くことは無かった。
☆ ☆ ☆
「暗黒的なエクスカリバーっ!!」
「調子に乗るなっ!!」
黒いオーラに包まれたおなじみの剣閃が、黒い奔流から逃れた山田君に襲い掛かる。
が、それをクナイで受ける山田君。
しかしクナイをそのまま切り抜いて、山田君の身体に食い込む黒い剣。
「取ったっ!!」
「影分身に決まってるだろう?」
『響っ!?』
「でぇえっ!?」
背後から大きな腕でぶん殴られ、地面に叩きつけられた響。
山田君はいつぞやのようにスサノオと呼ばれるオーラ状の大きな巨人に包まれる忍術を使っていた。
その巨人の腕だけを具現化して殴り飛ばされたのである。
地面で受身を取り、そのまま吹き飛ばされつつも態勢を立て直し、再度ブリッツムーヴで山田君の方へ攻撃を仕掛ける。
地面から助走をつけて武器を投かんした。
「全てを貫くかもしれない勢いの槍(ランス)っ!!」
剣を槍状に変形させて黒い魔力をまとう槍を作ってそれを投げつけた。
身体強化(フィジカルブースト)の魔法も相まって、すごい勢いで山田君に向かう槍は、最近使い始めた必殺技の一つである。
まさしく全てを貫く勢いの槍は山田君に当たり、簡単にあっけなく砕けた。
この槍もまたバリアジャケットを生成する技術の応用なので、それなりの強度を誇るのにも関わらず簡単に砕けた槍を見て響はため息を吐く。
もちろん毎度の事ながら普通はそうそう砕けるはずの無い槍やら剣が簡単に砕けてしまうことに呆れているのだ。
自分の周りにいる人間はチートキャラばっかで嫌になるなどと呟きつつも、さらに槍を投げては砕かれ投げては砕かれ。
「ううむ・・・魔素の収束レベルもあげたはずなんだけど・・・相変わらずの防御力で困っちゃうね。」
『まぁそれでもいいんじゃない?
最悪響が戻せなくても、ここで彼を食い止めるのが私たちの仕事みたいなものだし。ていうかさ。私としてはヴィヴィオのことの方が気になるからとっとと倒して押し通りたいんだよね。』
「ヴィヴィオか・・・状況的に・・・というか六課にヴィヴィオが彼らの一味と思わしき輩に誘拐された映像があったんだっけ?
なんでただの子供を誘拐したんだろ?
あのイケメン君の目的がいまいち良く分からん。」
『・・・もしかしてだけど、響。状況を理解してない?』
「ん?
何?
俺のことバカとでも思ってる?
理解してるさ。
そりゃあ良くは分からないけど、とりあえず管理局の汚さに憤慨した一般市民のうちの1人が力を蓄えて反社会デモを起こした・・・的な?」
『・・・。』
「そんでそれに巻き込まれたのが高町さんたち・・・だよな?
で、あくまでもあの紫イケメンは管理局の不正を正すのが目的だから人を殺さない。
人を傷つけるのは好まない。いやはや、甘いとは思うけどそういう甘さ、俺は嫌いじゃないよ!!
そういう人が増えれば俺みたいな、人殺しはちょっと・・・な日本人的思考の人間がバカにされなくて良いね!!うん。
まったく、いつもいつも魔導師組合の連中が五月蝿いけどさ、やれ殺しの依頼はしないのかとかもう少し攻めに出ないのかとか害を及ぼす魔獣の駆除とかさ。いや、そりゃ別にね。
奇麗事を掃くつもりなんて微塵もないよ?
牛肉だって食うし、鶏肉だって食う。人を殺すのだってもしかしたらそんなこと言ってられない状況もあるかもしれない。
生き物を直接殺すのがダメなんですぅなんて言うつもりは無いけどさ、単純に日本にいる人間としてはちょっとスプラッタな光景は自重して欲しいと言うか?
やむえおえないならともかく、自ら飛び込むのはちょっと?みたいな?
あくまでグロイのが苦手なだけで、人殺しだってね、まぁそれは無理でも魔獣の退治くらい出来るよ。やろうと思えば出来るよ?
でも、不快感を我慢してまである一定以上の大きさの生き物を殺すのは視覚的にも。倫理観的にも?遠慮させてもらいたいなぁって思っちゃうわけでさ。
それだけで魔導師組合の受付嬢のへたれだなんだってのは言いすぎだと思うんだよ、俺は。
へたれじゃなくて温厚なんだよ、俺は。
温厚で心優しい。昆虫を殺すのも罪悪感からためらうくらいの常識人なわけ。なのにへたれってのは・・・」
『・・・。』
「とまぁ話が脱線したけど、要はこれだけ大それたことをしてたら犯罪者として手配されたり、下手したら地球で言う凶悪犯にするような対応、もとい射殺されたりされるかもしれないのに、そんな追い詰められた状況で人を殺さないように管理局と言う個人で立ち向かうには強大な組織にお前ら汚職まみれのクソドモに正義の鉄槌をっ!!てな感じでカチコミに行くのは、正直憧れてる。もとい、心情的にはあの人に味方したいくらいで・・・」
もちろんジェイルにはそんな正義感の欠片も無く、ただ自身の研究に干渉してくることが多くなったのがウザくなってきただけである。
その一つがヴィヴィオの培養である。
人造魔導師によって管理局にさらなる力と富を・・・みたいな企みだったのだが(あわよくば自身の新しい体を欲した)そうした自分の研究が指定されるのを最も嫌ったのである。
自身の正義という意味では響の言うことも間違ってはいない。
ゆえに管理局を社会的にも物理的にも潰そうとしたジェイル。
『・・・あの人すでに犯罪者扱いされてるんだけどね。』
「もう手配書がっ!?」
『いや、もうっていうか・・・大分前から・・・けどまぁいいか。知る機会なんて無いし、こっちの学校にも通う機会は無かったしね。原作知識がないと、普通はそんなもんだよね。状況的にはどっちもどっちって感じだし。』
こう話している間にも響の剣やら槍やらタンスやらの投かんは止む所をしらない。
が、全て弾かれ、山田君が動く。
タンスを投げたのは小指に当たって痛い思いをしないかなぁという思い付きだ。あとは目くらましの効果を望んで。
「相馬 響・・・だったな。どうしてオマエは邪魔をする!!
記憶の改竄が行われている山田君。
別にそこまで見当違いなことは言っていないのが救いか。ジェイルの思惑がどうあれ結果的には世の中は正されるだろう。
そういう意味では今回の戦いほど戦いにくい戦いは無い。
「くっ!?」
「超加重岩の術っ!!」
スサノオで殴りかかる瞬間に自身の攻撃の重みを増す術で一気に攻撃力を増大させて響を殴り飛ばす。
そのまま建造物を何個もぶち抜いて響は吹き飛ばされ、丁度ティアナが覚悟と作戦を持ってナンバーズの数人を倒そうとしたところでナンバーズのそいつらを巻き込んで吹き飛ぶ。
「あ、あれ?」
「いててて・・・おわっ!?
す、すいま・・・ってうわ・・・何この人たち?
変態?」
響が咄嗟に反応し、クッション魔法で大きな怪我はないようにしたのだが衝撃を全て殺しきれずに全員気絶してしまった。
その気絶したナンバーズたちを見て変なものを見てしまったとぼやく。
「なんていうかすっごいぴっちぴっちのスーツ・・・え?デバイス?
え?てことはあれ?
この人たちのバリアジャケットがこれで・・・このぴっちぴっちの・・・たしかバリアジャケットは個人の想像で作られるから・・・ううむ・・・すごいセンスだ。異世界の流行なのだろうか?
この人たちの故郷の男性魔導師のバリアジャケットがちょっと気にならないこともない・・・別にわざわざ見たいほどの物でもないけど・・・」
『もしかしたら誰か1人が天動説が主な時代にコペルニクスよりも早く地動説を出してしまうくらいの超敏感系最先端の子がいて、それに引きづられて他の子たちも・・・泣く泣くこのバリアジャケットに統一されたとかだったら面白いわよね。』
「いや、不憫だろ。面白がらずに普通に同情くらいしてやれよ。」
『同情するくらいなら変わってくれって言われるかもよ?』
「そんなことを言われたら高町さんに相対した時以上の速度で逃げるな。っと、はやくあいつのとこに行かんと八神達のところに行ってしまうかもしれん。」
『そうね。とっとと行きましょうか。』
ドウっ!と音を発てて戻る響。
後に残されたのは拍子抜けしたティアナだけだった。
せっかく幻影人形(マリオネット)の実戦披露だと意気込んでいたのに。
「え、何?なんなの?」
困惑しつつもバインドでジェイルの部下であるナンバーズたちを縛っておくちゃっかりティアナである。
「まだ邪魔するのか?
本気で潰すが・・・良いんだな?」
「・・・そらこっちのセリフだろ。」
『結局捕まったマヌケがいまさら意気込んでもねぇ。』
「・・・しょうがない。はやくなのはたちの助っ人にも行かなくちゃ行けない。」
『なのはちゃん達はこんなこと望まないでしょ?』
「・・・しょうがない。はやくなのはたちの助っ人にも行かなくちゃ行けない。」
「いや、だから彼女達の性格上、こんなやり方は認めないのは付き合いの長い山田君の方が分かるだろ?」
「・・・しょうがない。はやくなのはたちの―――」
『・・・なるほど。記憶の改竄をしたけれどそれだけではもちろん説得される危険性がある。多少の洗脳でもしたのかしら?
都合の悪いことは全てシャットアウトして仕切りなおすように出来てるのね。多分。』
「すっごい便利な記憶の改竄だな・・・。」
「だから本気で行くぞ。」
『あ、さっきのセリフの続きかな?あのまま同じ質問をしてずっと同じこと喋らせとくのも面白かったかもね。』
「いや、つまらんだろ。特に面白いことも言ってるわけでもないし。」
『言われてみれば・・・すぐ飽きるかな。』
山田君は印を結び、忍術を発動させる。
「俺の魔力を持ってしても出来るのは二人までだが・・・」
ガコンガコンと棺が虚空に出てくる。
「・・・オマエも成長したみたいだが、こっちだってこの10年。のんべんだらりと過ごしていたつもりは無い。戦闘にも使えるようになるまで苦労した・・・」
棺の中からは綺麗形のイケメンと1人のドレスを着た美女が出てくる。
「覇王イングヴァルトと聖王オリヴィエ。そして・・・」
最後に出てきたのが昆虫のような外骨格に包まれた3メートルはあるであろう大男。いや、性別は分からない。
「蟲王・・・インセクトゥム。虫しか存在しない世界の旧ベルカ時代の王だ。」