旧版・とあるチートを持って!   作:黒百合

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またせたな!(スネーク風に)
すっかり更新しきった気になって忘れてました。ごめんなさい。
感想でそういえばって気づきました。
ごめんなさい。
そして、ごめんなさい。



王様VSヒビキ

「ここは・・・どこだ?

私は確か・・・」

「イングヴァルト!?」

「ん?

・・・オリヴィエッ!?どうして君がここに・・・いや、そもそも私は死んだはず・・・」

「どうして・・・?私はあそこで・・・イングヴァルトっ!!構えてっ!!」

「っ!?

ああ、分かっている!!

どうしてここにあの蟲王(こおう)がいるっ!?」

 

イングヴァルトとオリヴィエはどっしりと腕を組んで憮然としている蟲王を見て構える。

 

「・・・奇怪な術を使う。己が生き返ったのは汝の術か?」

「そのとおりです。あなた方の力を借りたい。」

「ふむ・・・まぁ良い。目の前の小娘を倒せば良いのだな?」

 

蟲王は篭った渋い声で山田君の嘆願に答える。

頭に付いた大きな複眼と単眼が見つめるのはユニゾンした響の姿。

山田君も説得、それが出来なければ強制的に操らざるを得なかったため、予想以上にすんなり言ったことに驚く。

操ることに問題は無いが、それだと余計な魔力を消費する。管理局を潰すように洗脳されている山田君としては望ましくないことだった。

 

ちなみに蟲王の言葉は全てギチギチギギギギと言った口にある大アゴから出る軋みのような音のみだ。

同属を除けば蟲王インセクトゥムの言葉は術者である山田君以外、理解できていない。

ゆえにイングヴァルトとオリヴィエは困惑する。響もギギギと言うだけの蟲王を見て何を話してるかは分かっていない。

 

 

「何を驚く?」

「いえ、力を貸してもらえるとは思わなかったので・・・」

「死んだはずの己がまた生き返り戦うことが出来る。

全く持って幸福ではないか。

死にさらばえて尚、己の力を振るえると言うのだ。その礼代わりといってはなんだが、汝の些少の嘆願程度、聞いてやるのもやぶさかではない。そもそも逆らったところで無駄であろう?」

「・・・。」

「生き返らせたものが全て好意的であるということも限らん。術者である汝を殺そうとするものもいるはずだ。そうした行為を防ぐための手段の一つや二つあって当然。どのみち従うしかあるまい。無理に使われるくらいならば自ら使われてやろう。」

「・・・そのとおりです。」

「生前は従えていたものが従わされる。

これもまた良き趣向よ。」

「・・・。」

「ん?

もしや悔いておるか?それとも嘆いておるか?自身の行為に。

確かに感情の強い人間という生き物にとって非道理的であろうな、この外法は。」

「いえ、すべきことをするために使える力は使う。グレアムさんに習ったことの一つです。」

「それでよい。強者たるものただ嬲ればよいのだ。弱者を。

悪いのは強い己ではない。弱い汝らだ。強者が気に病むことなど欠片もありはせぬ。

そして所詮は己もその程度の器であったと言うこと。せめて自身の意志の下、屠るとしようではないか。貴様より弱くも脆弱な・・・王足るものの力を見て感嘆するが良い。」

 

蟲王はそう言ってすぐに力を解放した。

一気に体が膨張し、体格がさらに一回り大きくなる。

 

こんな話がある。

昆虫を人並みのサイズにした場合、人間は決して勝てない。と。

もちろん物理法則上の問題はあるし、生物学上でもそのまま大きくしたところで、気門と呼ばれる器官から酸素を血液中に直接取り込むという、人間よりも効率の悪い呼吸手段しか持たぬ昆虫の場合、すぐに窒息死する。水に酸素は溶けにくいからだ。

また、キチン質と呼ばれるたんぱく質で出来た甲殻は確かに堅いが、外骨格という特性上怪我をした場合、次の脱皮までは怪我が完全には治らないままである。

ゆえにカブトムシなど脱皮をしない成虫となった虫はおおきな怪我をした時点で雑菌が傷口から入り死亡するのが殆ど。

 

それらを克服し、身体を大きく進化させてきたのが彼の世界の昆虫で、その昆虫達が跋扈する自然界における厳しい食物連鎖が構築された世界で一番の力を持つ王。

人間のように群れて危機を乗り越えるのではなく、あくまでも他と競い個として勝ち残ってきたエリート中のエリート。

弱肉強食の頂点にいた王の力。

 

その力が響に襲い掛かる。

 

『響ッ!?』

「っ!?」

 

気づいたら目の前で拳を振っていた。

咄嗟に反応できたのは響が速度型の魔導師だったからだろう。

後衛型であればここで即堕ちていた。

 

ギリンと火花が咲き、響は剣で受け流した勢いそのままに切り込む。

 

「暗黒的なエクスカリバーッ!!」

 

黒い軌跡が後に続き、剣がインセクトゥムに当たる。が。

 

「ぬるい。その程度の攻撃、数多の王と渡り合ってきた己にはぬる過ぎる。」

 

インセクトゥムは何も防御もせずに剣を受けた。

しかし彼の甲殻には掠り傷もつかずに、剣が折れる。

 

「ま、まじかっ!?」

『魔力反応が無い・・・素の防御力でこれって異常・・・響っ!

右に飛んでっ!!』

「おうわっ!?」

 

ソニックブームを発生させながら繰り出された拳は虚しく空を切る。

が、拳の周りに発生したソニックブームだけで響が飛ばされる。

 

そこにイングヴァルトの収束砲が飛んできた。

 

 

『ラウンドシールドッ!!』

 

収束砲はラウンドシールドにぶつかって8つほどに分かれるが、その魔力の中からオリヴィエが現れる。

聖王の鎧を纏ったオリヴィエの拳はなのはのラウンドシールドすら打ち砕く。

つまり。

 

「ごふっ!?」

『くっ!!』

 

シールドを砕いたオリヴィエの拳は鳩尾にクリーンヒットした。

 

そのまま地面に叩きつけられる響。

 

「・・・痛い・・・もう逃げるか。」

『早いよっ!?はやてちゃん達のことを考えるとあと数分は稼ぎたいところ!!』

「・・・いや、そういうのは死んだら終わり・・・のわっ!?」

 

操られたオリヴィエが飛んでくる。

イングヴァルトとオリヴィエはわけも分からず戦うことは拒否した。そのため、身体を操られている。山田君の死者をよみがえらせる穢土転生という忍術によって。

王と呼ばれるまでの魔導師3人が相手。

響にとってはかなり分が悪い。

 

 

「くそ・・・引き際を誤ったか・・・逃がしてくれたりは・・・」

『しないでしょうね。この場できっちり気絶、もしくは四肢を折って置くくらいはするでしょう。

黒幕のジェイルが人を殺すようには命令して無いから多分、命は助かるんじゃないかなぁ・・・』

「・・・安易に戦場に突っ込むなんてこと二度としない。絶対。」

『ほら、それよりも今は勝つ算段を・・・』

「のわっ!?」

 

魔弾が響を襲う。かわしたところで、イングヴァルトの剣がふるわれる。

 

「こなくそっ!!」

 

もはや普段の剣は使わずに、イングヴァルトの剣をアイシテルの本体である一対のナイフを使って受け、カウンターとして魔力を大量にこめた蹴りをお見舞いする。

吹き飛んだイングヴァルトに10発ほどのディザスターシューターを打ち込みつつ、向かってきたオリヴィエの腕を取り、投げる。

 

「なんちゃって王の財宝っ!!」

 

そして具現化させた何十もの魔力を込めたロングソードを打ち込んだ。

爆発する。

 

さいごに襲い掛かってきたインセクトゥムの拳をギリギリで避け、蹴りを避けた後にディザスターブレードで斬り抜いた。

現在、ディザスターシリーズの威力はうなぎ登りである。

なぜかは言わずもがな。

傷口からオレンジ色の魔力が吹き出たが、しかしすぐに傷口が塞がった。

 

「・・・は?」

 

せっかく斬りぬいて勝てる思った矢先の出来事。

あまりの光景に呆然としたところでインセクトゥムの蹴りで吹き飛ばされた。

 

「いでで・・・」

『あれは・・・』

 

ビルに突っ込んだ響は距離をとりつつも今の出来事を検証する。

 

「まさか傷が治るって・・・どういうことよ?もう勝てる気しないんですけど?

下手したら昔戦った時のリインフォースよりも厄介だぞ。」

『頭を潰すとか?」

「・・・ううむ・・・」

『相手はどうせ死人じゃない。傷口から出るのも内臓や血ではなく、魔力だけみたいだし。大丈夫じゃない?』

「・・・まぁ大丈夫そうだけど・・・」

『もしくは術者を気絶させるか・・・』

「それで止まる?見た感じ、最初の召喚・・・って言って良いのか分からないけど、召喚のときにあの棺に膨大な魔力が込められた以来、山田からの魔力のリンクは無いみたいだけど・・・」

『しばらくは動くと考えて良いかもね。』

「それに自身が狙われることももちろん分かってるみたいだし・・・」

 

山田君はスサノオ状態で後方にたたずんでいた。

さすがに彼ら王と呼ばれるまでの魔導師を召喚した直後の戦闘は無理なようである。

 

 

「さきほどは良かった。ただのベルカの騎士の見習いかと思えば中々どうして強い騎士だ。見くびった非礼を詫びようではないか。」

「さっきからギチギチと言葉が分からんわっ!!」

 

ビルの隙間を高速飛行していた響は横合いから飛んできたインセクトゥムにディザスターブレードを発動させたナイフで切りかかる。

基本的にアイシテルの本体であるナイフは使わないが、さすがに相手が相手である。強度の劣る剣のみで戦うのは少々以上に辛かった。

 

それを腕甲で受けるインセクトゥム。

 

「さっきは切れたのに・・・」

『なるほど、彼にとって腕と足がカブトムシにおける角で、クワガタにおけるアゴ。一番堅く・・・』

「その通りだ。一番堅く、硬い、自慢の武器だ。」

 

ボンっと音を発てて膨張する腕。それによって弾かれるナイフ。

そして蹴りと拳の乱舞を響は必死に避ける。

しかしこれまでの戦いぶりから分かるようにインセクトゥムは完全な接近タイプ。

さらには本気を出したのか身体強化(フィジカルブースト)も使っている彼の攻勢の前に響はなすすべも無く叩き潰される。

と、思いきや。

 

 

「っ!?」

 

響は掻き消えた。

実態を持つ幻影魔法(シルエット)、幻影人形(マリオネット)である。

 

そして転移魔法で彼の後ろに出現した響の目の前には収束された魔力の塊。

 

 

「アイシテルっ!!」

『あいあいさーっ!!』

 

 

空になった魔力カートリッジが空を舞う。

 

「ディザスターブレイカァー・・・EX(エクセリオンッ)!!」

「見事だ。ベルカの騎士よ。」

 

極太の集束砲撃になすすべも無く飲み込まれるインセクトゥム。

 

「やったかっ!?」

『ちょっ!?それフラ――』

 

しかしそこにはオリヴィエが盾となっていた。

 

「余計な真似を。」

「言葉は相変わらずギチギチとしか聞こえませんが、表情を見ればある程度察せます。

・・・私とて仇敵の貴方を助けるつもりは微塵もありませんでした。

ただ、体が言うことを利かないのです。」

「なるほど。殺せない仕組みだな。」

「何を言ってるんですか?」

「別になんでもない。」

「・・・やっぱり分かりませんね。」

 

 

そしてその会話の間はイングヴァルトが響と相対していた。

 

「覇王流(カイザーアーツ)をこのような形で振るうことになるとは不甲斐ない・・・」

「そういう悔恨の言葉じゃなくて・・・ぐっ!!

どういう技かの説明が欲しいんだが・・・なっ!!」

 

 

イングヴァルトは剣を用いつつも体術も組み合わせた戦い方をしてくる。

 

「そうは言うが、これだけの戦いの中でいちいち説明してる暇は・・・あ、いかんっ!!まて、私の技には旋衝波という返し技が・・・」

「持ってけランスっ!!」

 

全開の槍を投かんする技だが、前回の名前は長かったのでこれにした響。だがその槍は巧みな腕使いで槍にかかる力に逆らうことなく方向を変え、響に襲い掛かる。慌てて避ける響。

 

「も、もっと早く言えっ!」

「だから、戦闘の展開が速すぎて口頭では間に合わんのだ!!あ、この拳は受け・・・」

「ごふっ!!」

「だから受けるなと・・・」

「シールドを貫通して来たんだが!?

というかこいつらホント嫌だっ!!なんでどいつもこいつもデバイス無しでシールドを平気でぶち抜く攻撃ばっかり使ってくるわけっ!?

古代ベルカ時代は化け物ばっかりだっ!!」

「これは繋がれぬ拳(アンチェイン・ナックル)という技で覇王流を使える人間がとある動きをすることで会得できる技なんだが、これは炸裂点を調整することによってどんな魔法も拳で打ち砕くと言う・・・」

「チートすぎるよっ!!くそっ!!早くしないと向こうの連中も来るし・・・アイシテルっ!!」

『しょうがないか。交代ね。』

『というわけでよろしくっ!!』

 

響の身体をアイシテルが操ることになった。

同時に、黒い魔力の奔流が響の身体を包む。

一気に吹き上がったため、魔力が周りの空気を押し出すボンという音がした。

 

「なっ!?」

 

今まで響が中でも接近戦に定評のある王らと渡り合えていたのは魔力による身体強化(フィジカルブースト)で身体能力の底上げをしたからに過ぎない。あとは日々のちまちまとした努力である。

ユニゾンしたことによる地力の強化もあった。

 

 

しかしここからは違う。アイシテルが操ることによってアイシテルに蓄えられた魔力を使うことが出来る。

確かにイングヴァルトは強い。

だが、魔力による力押しがその強さを超える。

 

体が一瞬ぶれたかと思いきや、イングヴァルトの腕を斬り飛ばした。

本来は胴を斬り飛ばす一撃だが、それを咄嗟に避けたのはさすがといったところ。

そしてすぐさま順応し、切り結ぶのはまさに脱帽の思いだろう。

しかし、それも長くは続かない。

 

「ぐっ!!

ここまでの魔力とは・・・君も大概化け物だろうっ!?」

「失礼ね。ただ魔力が膨大なだけでしょ。」

『確かにな。ぶっちゃけ特に凄いと言うほどでも・・・ゲームで言うなら十分にレベルを上げまくった後でしょっぱなから必殺技とか乱用して勝つような・・・凄くありていになるけどただの力づくだし。むしろアンチェインナックルとか言うその奇妙奇天烈な技をホイホイ出せるこの人の方がよっぽど化け物だわ。ディザスターブレードが素手で砕かれるなんて終ぞ思いも依りませんでした。』

 

オレンジ色の魔力を噴出した傷口からすぐに腕は生えた。が、イングヴァルトが劣勢である。

 

「とどめっ!!」

 

とどめの一撃を脳天に叩き込むがそれでもイングヴァルトは死者へは戻らない。

しかしそのたびに彼に内包された魔力は減っている。

それに対応して弱くなっていくイングヴァルト。

元々山田君の使ったこの死者を蘇らせる術は魔力による再現でしかない。

アリシアを生き返らせたときも、定期的にアリシアに対しての魔力供給が必要なように。

ゆえに全ての源である魔力を絶やすような行動を仕掛ければこの術は解けてしまう。

斬り続ければ勝てる、と勝利を確信したものの、そこに割り込む黒い影。

 

山田君だ。

 

スサノオをによってイングヴァルトを庇った。

その手元にはなにやら強力な魔力を放つ宝石がある。

 

「・・・ジュエルシードかしら?」

「これで俺の魔力の補給はできた。そして・・・」

 

後からオリヴィエとインセクトゥムもやってくる。

 

「四対一。いい加減倒させてもらうぞ。」

 

 

胸を生やすどころじゃなくなったなぁ、と現実逃避的な思考をする響だった。

正直、もう高町さんたちとかどうでもよくない?

でもヴィヴィオやはやてが・・・逃げたい・・・でも・・・逃げたい・・・でも・・・そんなループ思考に陥ったまま、第二ラウンドが開始した。

 

 

 

 

 

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