さてどうしよう。
響の胸中を占めるのはほぼ全てがそれだった。
いや、どうするのかはもう決まっている。
当然、逃げる・・・だ。
こんな話は聞いていない。詐欺だ!
俺は山田君を相手にするつもりではやてを助けることにしたのに、何をどう間違ったのか。
目の前には四人の敵さんがいる。
アイシテルとユニゾンかつ、アイシテルに内蔵されてる魔力を使ってようやく倒されないでいるという現状。
詐欺過ぎる。
絶対、こういう技も使えることは知っていたはず。
なにせ同じ管理局員で、彼女は山田君を諜報員としても使っていたのだから。
それで良くもまぁ山田君は任せるなどと言えた者だ。絶対、楽な方を選んだに違いない。
これならまだなのはとフェイトを相手にする方がマシだ。
どうしよう?
どうすれば逃げられる?
それだけを考え、アイシテルの中で顔を青ざめる響。
もう帰りたい。
早々に帰りたい。
帰って寝たい。
リインの入れた紅茶を飲みつつセンベエをボリボリ貪っていたい。
「これはちょっとまずい・・・かな。」
『どう考えても不味いだろ。』
まだおっぱいチートが使えるならともかく、現在響の身体はアイシテルが動かしている。
響にはアイシテルに貯蓄された膨大な魔力を扱いきることが出来ないためだ。
もちろん昔に比べれば格段に扱える量が増しているが、それでも全体の3割強と言ったところ。
この四人を相手にした場合、それでは心もとない。
「響・・・これは賭けるしかないね。」
『・・・戦闘における賭け・・・か。戦闘(バトル)漫画においてはありきたりかつ、燃える展開だがこと当事者となるとまるで燃えない。むしろ萎える。一応聞いておきたいな。どういう賭け?』
「魔力に物を言わせた戦い方だけどね・・・こうするのっ!!」
瞬時に、響の体が分裂する。
一気にわらわらと増えた響はその数、100体以上。
幻影人形(マリオネット)による物量作戦だ。
「ちっ!!」
「す、すごいな・・・」
「これほどとは・・・私たちの時代でもこれだけの魔力を扱える人間はいませんでしたが・・・残念ながら聖王の鎧には・・・」
「うむ。圧巻の景観よ。」
それらが四方八方から攻め立てていく。
一人一人が実体を持つ幻影。
そして力が特別劣ると言うわけでもなく、技のキレも動きも一緒だ。
幻影に込められた魔力以上の魔法は使えないが、それでも厄介なことこの上ない。
だが。
「俺はNARUTOの力を使えるといっているだろう?」
その言葉と同時に影分身という実体を持つ分身を放つ忍術を使う山田君。
その数、1000体以上。
文字通り桁が違う。
数が多いのは彼が使う手元の何個かのジュエルシードの魔力供給によるもの。
が、質では響の方が勝っていた。
これは彼の魔力による忍術もどきと、響の方は魔法であることが関係するが、その辺の説明は省略する。
だが、如何せん、数が多く、さらには王たちもいる。
おされていく響。
「これでおしまいかっ!!」
山田君の咆哮に答えたアイシテルの言。
「違うに決まってんでしょ。ばかちん。」
その言葉に吊られ、空を見上げると響(アイシテル)が空を埋め尽くさんばかりの剣がある。
「
これによって山田君の分身の殆どが貫かれ、消えていく。自身の幻影人形(マリオネット)も貫かれ、殆どが消えていった。
弱っていたイングヴァルトも貫かれ、オリヴィエとインセクトゥムもあまりの物量に多少成りともお削られた。
しかし健在だ。
「あ、さ、避けてくださいっ!!」
「くっ!!」
オリヴィエの収束砲を受け、よろめいたところに――
「覇ああああああっ!!」
インセクトゥムの渾身の一撃が響の腹をぶち抜いた。
腹から血を撒き散らせながら吐血する響。
にやりとインセクトゥムが笑ったが・・・
「幻影(シルエット)・・・だと?ここまで再現するとは・・・ぬっ!?」
本命は
その背後には黒い太陽と思うほどに巨大な魔力が蠢いていた。
ここで集束砲の原理を説明したい。
集束砲とはその名の通り魔力を集束して撃ちはなつ魔法・・・いや、魔砲だ。
その威力はいわずもがな。
才能があり、適正あるものが使えば街の一角を消し飛ばす事だって可能。
核爆弾以上の被害を出すことも可能なのである。
どうしてかの魔法がそこまで威力があるかといえば、溜めであり貯めを利用しているからだ。
そうあたかもダムのように。
空気中の魔素を加えつつ、自分の魔素も混ぜ込んで空気中の魔素も自身の制御下におく。
そして外から魔法によって圧縮し、締め付ける。
風船の中に空気を入れるイメージをしてもらえればいい。
そして自身の力量の限界、自身が押さえつけられる魔力の量まで魔素を溜め込んだ後、魔方陣によって敵の方向へその圧縮した塊に小さな穴を開ける。
すると外から押さえつけられていた力が小さな出口に一気に向かい、その牙を見せる。
膨らませた風船に穴を開ければ空気が勢い良く出るように。
すなわち集束砲における必要な技術は
☆空気中の魔素も操ることができるだけの魔力制御技術
☆集めた魔力を綺麗にまとめる技術
☆まとめた魔力に圧縮をして、それを維持する技術
の三つが主となる。
これらができない、もしくは不得意であると集束砲に適正は無いといえる。
逆を言えばこれらの技術が高ければ高いほど威力を上げることができる。
集束砲とは確かに魔力の量が大いに越したことは無いが、技術や器用さでも威力をあげることができるのだ。
三つ目は魔力を圧縮、もとい球状に押さえつける力強さが必要なため、技術とは別だがそれでも前者二点である程度の威力は見込める。
そして今回の黒い太陽。
これはまさしく今までにないほどの、響による、正確にはアイシテルによる最強魔法だ。
もともとの肉体である響の体が昔以上に成長してるのもあって、昔よりも遥かたくさんの魔素をとりこめた。
ちょうど、周囲には山田君がばかすかと使った大量の魔力の残滓。魔素が残っている。
「ディザスターブレイカーEXっ!!」
残りの魔力のありったけも込めたディザスターブレイカーEX。
まさしく黒い太陽から吹き出た極太の熱線はあたりにいた響の分身ごと山田君たちを消し飛ばし、周りのビルごと吹き飛ばす。
一応、管理局本部に背を向けて撃ったため管理局に被害は無い。が。
その熱線はもちろんのことそれ程度で満足することは無く、他のビルや人間たちを巻き込み、果てには途中でさすがに魔力制御をミスったのか、収束砲直下にいる響たちごと焼き尽くし、ありとあらゆるものを巻き込みながら分裂し分裂した光線の一部がスカリエッティの乗る飛行船にぶち当たり、風穴を開け、中枢にいるヴィヴィオも魔力ダメージノックダウンをしながら、管理局本部を破壊しつくす。
非殺傷設定であるため、さすがに死人は出ていないし、非戦闘員の避難もとっくに済んでいるのでビルの倒壊による怪我人もいないだろう。さすがに避難用のシェルターまでは壊されていなかったが、それでもちょっと怪しいものである。
アイシテルの神様印の処理能力による魔力制御と、闇の書事件のときのように大きなエネルギーで相殺されず、さらには山田君を含む数々の魔導師達が魔法を打ち合っていたため空気中に本来ならありえないほどの魔素が充満していたことが今回ほどの威力を出せた原因である。完全に罪と思われるほどの窮地=不幸に遭っていたというのもまたディザスターブレイカーの威力が上がっていた原因だ。
あたり一面、壊れたガジェットと響自身を含む気絶した魔導師達を見てなんとか耐え切ったはやてとリインは思うのだった。
「なのはちゃん以上の砲弾魔がいたとは・・・」
「さすが響・・・惚れ直したぞ。」
どちらも同じ感想というわけではなかった。