※小説ではない※専門書 要約資料集 為替(換算)3.9万円でもらう 紐解集生成 専門 初入門 資料   作:{作者名}

282 / 382
# BOOK-0311 センサーとマイコンの実践 第1巻 — 入力を読み、判断し、出力を返す(実践工学シリーズ)

> 学問の宇宙・実践工学シリーズ センサー・マイコン冠 第1巻。ガイド役: Fable 5 監修 / Sonnet 5 執筆(脚本班)
> トーン規約: GAKUMON_UNIVERSE.md準拠。専門用語は初出で必ず説明する。
> **安全規律(絶対・§16.18準拠)**: 本冊で扱う回路・センサー・マイコンはすべて乾電池(1.5V〜9V程度)またはUSB(5V)による低電圧に限定する。家庭用コンセントの100V(交流・商用電源)を直接扱う作業、電気工事士の資格が必要な工事は本冊の範囲外であり、手順そのものを本冊には一切記載しない。マイコン本体や一部のセンサーは静電気に弱い精密な半導体であるため、部品に触れる前に金属に軽く触れて体の静電気を逃がす習慣をつけること。電池やUSB電源の極性(プラス・マイナスの向き)を逆に接続すると、マイコンやセンサーが破損することがあるため、通電前には必ず配線を目で確認すること。はんだごてを使う場面では摂氏300度前後の高温になる道具であることを忘れず、BOOK-0301第七章の安全注記に準じて作業すること。
> 中立規律: 本冊は特定のメーカー・特定の製品の実名を挙げた個別評価は行わない。マイコンは「マイコンボード」、センサーは種類の名称(光センサー・温度センサー・距離センサー・人感センサーなど)で扱い、数値は設計計算(検算)として示すものであり、実機での測定値は個体差・部品のばらつきによって変わりうることを正直に明記する。断定できるのは計算上の値のみであり、「実測」という語は実際に測定した場合にのみ用いる。
> 接続先: →BOOK-0300『回路の読み方と設計 第1巻』(オームの法則・記号読解の土台)、→BOOK-0301『電子工作の実践 第1巻』(ブレッドボード・トランジスタ・555タイマーまでの手技)、→BOOK-0005『電子回路』第1冊(理論面の深掘り)。
> 水準: 四〜九(デジタル出力・デジタル入力の基本から、アナログ入力とA/D変換、閾値判定と条件分岐、PWM、距離センサーとサーボモーター、複数センサーの組合せ、シリアル通信によるデータロギング、割り込みと省電力設計までを扱う)。
> **本冊の定着量の目安は、Lチカからシリアル通信によるデータロギングまでの入出力10作例を実際に自分の手で組み上げることである。**各章末にも章ごとの定着量の目安を明記する。

---



# BOOK-0311 センサーとマイコンの実践 第1巻 — 入力を読み、判断し、出力を返す(実践工学シリーズ)

# BOOK-0311 センサーとマイコンの実践 第1巻 — 入力を読み、判断し、出力を返す(実践工学シリーズ)

 

> 学問の宇宙・実践工学シリーズ センサー・マイコン冠 第1巻。ガイド役: Fable 5 監修 / Sonnet 5 執筆(脚本班)

> トーン規約: GAKUMON_UNIVERSE.md準拠。専門用語は初出で必ず説明する。

> **安全規律(絶対・§16.18準拠)**: 本冊で扱う回路・センサー・マイコンはすべて乾電池(1.5V〜9V程度)またはUSB(5V)による低電圧に限定する。家庭用コンセントの100V(交流・商用電源)を直接扱う作業、電気工事士の資格が必要な工事は本冊の範囲外であり、手順そのものを本冊には一切記載しない。マイコン本体や一部のセンサーは静電気に弱い精密な半導体であるため、部品に触れる前に金属に軽く触れて体の静電気を逃がす習慣をつけること。電池やUSB電源の極性(プラス・マイナスの向き)を逆に接続すると、マイコンやセンサーが破損することがあるため、通電前には必ず配線を目で確認すること。はんだごてを使う場面では摂氏300度前後の高温になる道具であることを忘れず、BOOK-0301第七章の安全注記に準じて作業すること。

> 中立規律: 本冊は特定のメーカー・特定の製品の実名を挙げた個別評価は行わない。マイコンは「マイコンボード」、センサーは種類の名称(光センサー・温度センサー・距離センサー・人感センサーなど)で扱い、数値は設計計算(検算)として示すものであり、実機での測定値は個体差・部品のばらつきによって変わりうることを正直に明記する。断定できるのは計算上の値のみであり、「実測」という語は実際に測定した場合にのみ用いる。

> 接続先: →BOOK-0300『回路の読み方と設計 第1巻』(オームの法則・記号読解の土台)、→BOOK-0301『電子工作の実践 第1巻』(ブレッドボード・トランジスタ・555タイマーまでの手技)、→BOOK-0005『電子回路』第1冊(理論面の深掘り)。

> 水準: 四〜九(デジタル出力・デジタル入力の基本から、アナログ入力とA/D変換、閾値判定と条件分岐、PWM、距離センサーとサーボモーター、複数センサーの組合せ、シリアル通信によるデータロギング、割り込みと省電力設計までを扱う)。

> **本冊の定着量の目安は、Lチカからシリアル通信によるデータロギングまでの入出力10作例を実際に自分の手で組み上げることである。**各章末にも章ごとの定着量の目安を明記する。

 

---

 

## 入口の物語 — 光る石の次に届いた、考える箱

 

学問の宇宙のある小さな星では、旅の職人が残した板と部品のおかげで、子どもたちはもう「光る石」を不思議がらなくなっていた。抵抗を選び、LEDを灯し、555タイマーで光や音を作ることは、集落の日常の遊びになっていた。

 

ある年、職人の弟子だという若者がその星を再び訪れた。若者が持ってきたのは、豆粒よりわずかに大きいだけの、灰色の四角い部品だった。子どもたちがそれを板に差し込むと、若者は言った。「これはただの部品じゃない。これは考える箱だ。周りの明るさや温度を感じ取って、自分で判断して、光らせたり鳴らしたりする」。子どもたちが半信半疑で光センサーをつなぎ、部屋の明かりを消してみせると、灰色の箱は自分の判断でLEDを点灯させた。誰もスイッチを押していないのに、である。

 

本冊は、その「考える箱」――**マイコン(マイクロコントローラ)**――と、周囲の状態を電気信号に変える**センサー**を組み合わせ、入力を読み取り、判断し、出力を返すという一連の流れを、10の作例を通じて手を動かしながら学ぶ。BOOK-0301でLED・抵抗・トランジスタ・555タイマーまでを組み上げた読者にとって、本冊はその先にある「回路が自分で判断する」という次の一歩にあたる。灰色の小さな箱がどうやって「感じて」「考えて」「動かす」のかを、10作例を順番にたどりながら確かめていこう。

 

---

 

## 第一章: マイコンとセンサーへようこそ — 安全の心得と三つの実践解(水準四)

 

### マイコンとは何か

 

**マイコン(マイクロコントローラ、水準四: センサーからの入力を読み取り、あらかじめ書き込んだ手順に従って判断し、LEDやモーターなどへの出力を返す、小さな1個の半導体チップにコンピュータの機能をまとめたもの)**は、BOOK-0301で扱った555タイマーICが「決まった発振回路しか作れない」のに対し、書き込む手順(プログラム)を変えるだけで、まったく違う動きをさせられるという特徴を持つ。抵抗やコンデンサの値を差し替えて動きを変えていた第九章までの世界から、本冊では「手順そのものを書き換えて動きを変える」世界に踏み込む。

 

### センサーとは何か

 

**センサー(水準四: 明るさ・温度・距離・人の存在など、周囲の物理的な状態を、マイコンが読み取れる電気信号(電圧の変化)に変換する部品)**には、光センサー・温度センサー・距離センサー・人感センサーなど多くの種類がある。共通しているのは、「目に見えない周囲の状態」を「電圧という数値」に変換するという役割である。マイコンはこの電圧を読み取り、あらかじめ決めておいた条件と比べて判断する。

 

### 用意する道具

 

マイコンボード1枚(デジタル入出力ピン・アナログ入力ピン・PWM出力ピンを備えたもの)、USBケーブル(プログラム書き込みと電源を兼ねる)、ブレッドボードとジャンパー線一式、LED数個、抵抗数種、プッシュスイッチ、光センサー(CdSセルなど)、温度センサー、超音波距離センサー、人感センサー(PIRセンサー)、サーボモーター1個、圧電スピーカー1個である。BOOK-0301で使った部品の多くをそのまま流用できる。

 

### 「考える箱」と555タイマーの違い

 

**プログラム(水準四: マイコンに書き込む、動作の手順を順番に記した命令の並び)**という考え方が、本冊とBOOK-0301との最大の違いである。BOOK-0301の555タイマーは、抵抗とコンデンサという部品の値そのものが発振の周期を決めていた。値を変えるには部品を差し替えるしかなく、回路そのものが「1つの決まった動き」しかできなかった。これに対しマイコンは、配線そのものは同じでも、パソコンで書いたプログラムをUSBケーブル経由で書き込み(この作業を「書き込み」または英語で「フラッシュ」と呼ぶことがある)直せば、まったく違う動きに変えられる。マイコンボードには、動作の手順を記憶しておくための小さな記憶領域(メモリ)と、手順を1つずつ実行していく処理速度(クロック周波数)があり、性能の高いマイコンボードほど、より複雑な判断を素早くこなせるとされる。

 

### 低電圧限定という安全の一線

 

本冊で扱う回路・センサー・マイコンはすべて乾電池(1.5V〜9V程度)またはUSB(5V)による低電圧に限定する。家庭用コンセントの100Vのような交流の商用電源を直接扱う作業は本冊の範囲外とし、手順そのものを一切記載しない。マイコンやセンサーは精密な半導体部品であり、電源の極性を逆に接続すると、LEDが壊れる程度では済まず、マイコン本体ごと壊れてしまうことがあるため、通電前の極性確認はBOOK-0301以上に注意深く行う必要がある。

 

### 三つの実践解 — 迷ったときの選び方

 

作例を進める中で判断に迷う場面では、BOOK-0301と同じ三つの実践解を思い出してほしい。第一に「まず計算する」(検算で当たりをつけてから配線・プログラムを組む)、第二に「まず低い電流側・小さい出力側に振る」(値に迷ったら控えめな設定から始め、様子を見ながら上げる)、第三に「わからなければ止めて確認する」(配線やプログラムに自信が持てないときは通電・書き込みをせず、テキストや図を見直す)。マイコンはプログラムのミスがあっても多くの場合すぐには壊れないが、配線のミス(特に電源の逆接続やショート)は部品を壊すことがあるため、通電前の確認を怠らないことが特に重要である。

 

> **定着量の目安**: マイコンとセンサーの役割の違い(考える箱と、状態を電圧に変える部品)を自分の言葉で説明でき、低電圧限定の安全ルールと三つの実践解を言えるようになったら、第一章は定着。

 

---

 

## 第二章: デジタル出力とデジタル入力の基本 — 作例1・作例2(水準四)

 

### デジタル出力とデジタル入力

 

**デジタル出力(水準四: マイコンのピンから、HIGH(高電位、多くは5Vまたは3.3V)かLOW(0V)のどちらか一方だけを出す出力方式)**と**デジタル入力(水準四: マイコンのピンで、外部の電圧がHIGHかLOWかの2値だけを読み取る入力方式)**は、マイコンが扱う最も基本的な信号の形である。BOOK-0301の作例5で使ったプッシュスイッチのON/OFFは、まさにこのデジタル入力の考え方そのものである。

 

### 作例1: マイコンでLEDを点滅させる(いわゆる「Lチカ」)

 

マイコンのデジタル出力ピンに、検算1と同じ考え方の電流制限抵抗を介してLEDをつなぎ、プログラムでそのピンをHIGH・LOWに一定間隔で交互に切り替えるだけで、LEDが点滅する回路が作例1である。この最初の作例は「Lチカ」(エルチカ、LED点滅の略称)と呼ばれ、マイコンを使った電子工作の最初の一歩として広く知られている。555タイマーが抵抗とコンデンサの値で点滅の周期を決めていたのに対し、Lチカでは点滅の間隔をプログラムの数値(待ち時間)を書き換えるだけで自由に変えられるという違いを体感できる。

 

### 作例2: プッシュスイッチのデジタル入力でLEDをON/OFF

 

作例1の回路にプッシュスイッチを追加し、デジタル入力ピンにつなぐ。スイッチが押されている(HIGH)か離されている(LOW)かをプログラムで読み取り、その状態に応じてLEDを点灯・消灯させる。BOOK-0301の作例5では回路そのものの配線でスイッチのON/OFFがLEDに直結していたが、作例2ではマイコンがいったんスイッチの状態を「読み取り」、プログラムの判断を経てからLEDを「点灯させる」という一段階が加わる。この一段階こそが、単純な回路とマイコン回路の違いである。

 

### チャタリングという小さな落とし穴

 

プッシュスイッチの内部の金属接点は、押した瞬間・離した瞬間に、ごく短い時間だけONとOFFを細かく繰り返すことがあるとされる。この現象を**チャタリング(水準四: スイッチの接点が押した瞬間・離した瞬間に、意図せず何度もON・OFFを細かく繰り返してしまう現象)**と呼ぶ。マイコンの読み取り速度は非常に速いため、人の目には1回の押下に見えても、マイコンには数回押されたように見えてしまうことがある。作例2の段階では大きな問題になりにくいが、後の章で「ボタンを押した回数を数える」ような作例を作る際には、一定時間内の連続した変化を無視する「デバウンス」という処理が必要になることも、あわせて覚えておくとよい。

 

> **定着量の目安**: 作例1のLチカと作例2のスイッチ読み取りを自力で組み、デジタル出力(HIGH/LOWを出す)とデジタル入力(HIGH/LOWを読む)の違い、およびチャタリングとは何かを説明できたら、第二章は定着。

 

---

 

## 第三章: アナログ入力とA/D変換 — 作例3(水準五)

 

### アナログ入力とA/D変換

 

デジタル入力がHIGH・LOWの2値しか読めないのに対し、**アナログ入力(水準五: 0Vから基準電圧までの間の、連続的に変化する電圧の大きさを読み取れる入力方式)**は、光センサーや温度センサーが出す「じわじわ変化する電圧」をそのまま読み取れる。マイコン内部では、この連続的な電圧を**A/D変換(エーディーへんかん、水準五: 連続的なアナログ電圧を、マイコンが扱える段階的な数値(デジタル値)に変換する処理)**によって、決まった段階数の数値に変換している。

 

### 作例3: 光センサーの明るさをアナログ入力で読み取る

 

光センサー(CdSセルなど、周囲が明るいほど抵抗値が小さくなる部品)を抵抗と組み合わせ、その中間の電圧をマイコンのアナログ入力ピンにつなぐと、周囲の明るさに応じて変化する電圧を、マイコンが数値として読み取れるようになる。作例3では、この数値を画面や光の点滅で確認しながら、部屋の明るさを変えたときに読み取る数値がどう変わるかを観察する。

 

### A/D変換の分解能(検算1)

 

A/D変換が何段階まで細かく電圧を読み分けられるかを表す指標を**分解能(ぶんかいのう、水準五: A/D変換が区別できる段階の細かさ。ビット数で表され、10ビットなら1024段階に区別できる)**と呼ぶ。基準電圧5V・10ビットA/D変換(1024段階)としたとき、1段階あたりの電圧は次の式で求められる。

 

```

1段階あたりの電圧 = 5V ÷ 1024 ≈ 0.00488V(約4.88mV)

```

 

つまり、このマイコンは電圧の変化を約4.88mV刻みでしか区別できない、ということになる。分解能のビット数が大きいマイコンほど、より細かい電圧の違いを読み分けられるが、その分だけ内部の処理に必要な情報量(データの桁数)も増える。8ビットのA/D変換であれば256段階(0〜255)しか区別できず、1段階あたりの電圧は5V÷256≈0.0195V(約19.5mV)と、10ビットの場合よりも粗くなる。一方12ビットのA/D変換であれば4096段階に区別でき、1段階あたりの電圧は5V÷4096≈0.00122V(約1.22mV)と、より細かく読み分けられる。

 

### よくある誤解 — アナログ入力は「無限に細かい」わけではない

 

「アナログ」という言葉から、電圧を無限に細かく、切れ目なく読み取れると誤解されることがある。しかし実際には、A/D変換は必ず有限の段階数(分解能のビット数で決まる段階数)に区切って数値化しており、段階と段階の間にある微妙な電圧の違いは区別できない。デジタル入力(HIGH・LOWの2段階)よりはるかに細かいが、無限ではなく「非常に細かい階段」であるという理解が正確である。

 

> **定着量の目安**: 作例3を組み、検算1の分解能の式(基準電圧÷段階数)を自力で立て、10ビットA/D変換の1段階あたりの電圧を計算できたら、第三章は定着。

 

---

 

## 第四章: 閾値判定と条件分岐 — 作例4・作例5(水準五〜六)

 

### 閾値判定と条件分岐

 

**閾値(いきち、水準五: ある値を境に、判断や動作を切り替えるための基準となる数値)**と、**条件分岐(じょうけんぶんき、水準五: 「もし条件Aが成り立つなら動作Bを行う」という形で、状況に応じて動作を変えるプログラムの仕組み)**は、マイコンが「判断する」ことの中心にある考え方である。作例3で読み取った明るさの数値を、あらかじめ決めた閾値と比べることで、マイコンは初めて「暗い」「明るい」という判断を下せるようになる。

 

### 作例4: 明るさが閾値を下回ったら自動でLEDを点灯

 

作例3の光センサーの読み取り値が、あらかじめ決めた閾値を下回ったとき(周囲が暗くなったとき)だけLEDを点灯させ、閾値を上回ったとき(周囲が明るいとき)は消灯させる。これは「もし明るさの数値が閾値より小さいなら、LEDを点灯する」という条件分岐そのものであり、入口の物語で若者が見せた「考える箱」の正体がこの作例4にある。

 

### 作例5: 温度センサーで閾値を超えたらブザーで警告

 

温度に応じて出力電圧が変化する温度センサーをアナログ入力につなぎ、測定した電圧を温度に換算したうえで、あらかじめ決めた閾値(たとえば「暑すぎる温度」)を超えたら圧電スピーカーで警告音を鳴らす回路を作る。作例4が「明るさ」という1種類のセンサー値の閾値判定だったのに対し、作例5では「電圧から温度への換算」という一段階が加わる。

 

### 温度センサーの電圧換算(検算2)

 

多くのアナログ温度センサーは、温度が1°C上がるごとに出力電圧がおおよそ一定量だけ上がるという特性を持つとされる。ここでは「出力電圧(mV)=500mV+10mV×温度(°C)」という関係を持つセンサーを例に考える。この関係を温度について解くと「温度(°C)=(測定電圧-500mV)÷10mV」となる。測定電圧が750mVのとき、温度 = (750mV - 500mV) ÷ 10mV = 25°C と計算できる。

 

### ヒステリシス — 閾値ぴったりでの誤動作を防ぐ

 

閾値をひとつの値だけで決めると、明るさや温度が閾値のすぐ近くで小刻みに揺れ動いたとき、LEDやブザーがONとOFFを何度も細かく切り替えてしまうことがある。これは第二章のチャタリングと似た現象で、判断の基準そのものが不安定なために起こる。これを防ぐ工夫として、**ヒステリシス(水準六: ONにする閾値とOFFにする閾値を、あえて少しだけずらして設定することで、境界付近での細かい切り替わりを防ぐ設計上の工夫)**が知られている。たとえば「暗さの数値が300を下回ったらON、400を上回ったらOFF」のように、ON用とOFF用の閾値を分けておけば、300〜400の間で数値が揺れてもLEDは前の状態を保ち続け、頻繁な切り替わりを防げる。

 

> **定着量の目安**: 作例4・作例5を組み、検算2の温度換算の式を自力で立て、測定電圧から温度を計算できたら、また閾値をひとつだけにした場合に起こりうる誤動作をヒステリシスの考え方で防げると説明できたら、第四章は定着。

 

---

 

## 第五章: PWMで疑似アナログ出力を作る — 作例6(水準六)

 

### PWM(パルス幅変調)とは

 

マイコンのデジタル出力はHIGH・LOWの2値しか出せないが、**PWM(ピーダブリューエム、パルス幅変調、水準六: HIGHとLOWを非常に速く繰り返しながら、1周期のうちHIGHでいる時間の割合(デューティ比)を変えることで、見かけ上アナログ的な出力を作る方式)**を使うと、あたかも中間の電圧を出しているかのように扱える出力を作れる。BOOK-0301の第九章で扱った555タイマーのデューティ比という考え方が、ここでマイコンの出力方式として再登場する。

 

### 作例6: PWM出力でLEDの明るさを連続的に変化させる

 

LEDをPWM出力ピンにつなぎ、プログラムでデューティ比(HIGHでいる時間の割合)を少しずつ変化させると、LEDの明るさがちらつきを感じさせずに連続的に変化して見える、いわゆる「フェード」の動きを作れる。人の目には、非常に速いHIGH・LOWの繰り返しが、平均的な明るさとして見えるためである。

 

### PWMの平均電圧(検算3)

 

PWM出力の平均電圧は、振幅(HIGHのときの電圧)にデューティ比を掛けることで見積もれる。PWM出力の振幅5V・デューティ比25%としたとき、平均電圧 = 5V × 0.25 = 1.25V と計算できる。デューティ比を100%(常にHIGH)にすれば平均電圧は5Vそのものになり、0%(常にLOW)にすれば0Vになる、という両端の関係も合わせて確認しておくとよい。

 

### PWMの周波数とちらつき

 

PWMがHIGH・LOWを繰り返す速さを**PWM周波数(水準六: PWMが1秒間に何回HIGH・LOWの1周期を繰り返すかを表す値。単位はHz)**と呼ぶ。この周波数が低すぎると、人の目にもLEDのちらつきとして感じられてしまう。一般に数百Hz以上の速さで繰り返せば、人の目には連続した明るさの変化として見え、ちらつきは感じられにくくなるとされる。BOOK-0301の555タイマーの非安定回路が数Hz程度のゆっくりした点滅を作っていたのに対し、PWMによるフェードでは、目に見えないほど速いHIGH・LOWの繰り返しの中に、デューティ比という形でゆっくりした明るさの変化を乗せている、という違いに気づけると理解が深まる。

 

> **定着量の目安**: 作例6を組み、検算3の平均電圧の式(振幅×デューティ比)を自力で立て、デューティ比を変えたときの平均電圧を計算できたら、また、PWM周波数が低すぎるとちらつきが起こる理由を説明できたら、第五章は定着。

 

---

 

## 第六章: 距離センサーとサーボモーター — 作例7・作例8(水準六〜七)

 

### 超音波距離センサーの仕組み

 

**超音波距離センサー(水準六: 目に見えない高い音(超音波)を発信し、物体に反射して戻ってくるまでの時間を測ることで、距離を計算するセンサー)**は、音が空気中を伝わる速さ(音速)がほぼ一定であることを利用している。往復にかかった時間の半分に音速を掛けることで、対象物までの距離を求められる。

 

### 作例7: 超音波距離センサーで距離を測定する

 

超音波距離センサーをマイコンにつなぎ、発信から反射波が戻るまでの時間をマイコンで測定する。音速を秒速340mとして、往復にかかった時間が0.002秒(2ミリ秒)だったとき、測定した距離 = 340m/s × 0.002秒 ÷ 2 = 0.34m(34cm)である。この式の「÷2」は、測定した時間が「行き」と「帰り」を合わせた往復分の時間であるためである。

 

超音波距離センサーには測定できる範囲に限界があり、対象物が近すぎる・遠すぎる場合や、対象物の表面が超音波を吸収しやすい柔らかい素材である場合、あるいはセンサーの正面から大きく外れた角度にある場合には、正しく反射波が戻らず、距離を測れないことがあるとされる。作例7では、対象物をセンサーの正面に置き、極端に近づけすぎない距離で試すことが、安定した測定のコツである。

 

### サーボモーターとPWMによる角度制御

 

**サーボモーター(水準六: 内部のモーターと制御回路によって、送られてくるパルス信号のパルス幅(HIGHの時間の長さ)に応じて、出力軸の角度をほぼその角度に保つモーター)**は、一般的な規格では、パルス幅1ms付近を出力軸の一方の端(0°)、2ms付近をもう一方の端(180°)に対応させ、その間のパルス幅を角度に比例させて割り当てるとされる。

 

### 作例8: サーボモーターを距離に応じて動かす(検算4・検算5)

 

作例7で測定した距離に応じて、サーボモーターの角度を変える回路を組む。パルス幅1msを0°、2msを180°とする直線的な対応関係で考えると、パルス幅1.25msに対応する角度は45°と計算できる。距離が近いほど角度を大きく、遠いほど角度を小さくするといった対応づけをプログラムで作れば、「近づくと針が振れる」ような、距離センサーとサーボモーターを組み合わせた作例8が完成する。

 

### サーボモーターの電流と電源の注意

 

サーボモーターは、角度を変える瞬間や、外から力を加えて角度を戻そうとされたときに、LEDよりずっと大きな電流を一時的に必要とすることがあるとされる。マイコンボードの電源ピンから複数のサーボモーターへ直接電流を供給すると、マイコン側の電圧が一時的に不安定になり、誤動作の原因になることがある。サーボモーターを複数使う作例では、サーボモーター用の電源を別に用意し、マイコンとは電源を分けたうえで、マイナス側(グラウンド)だけは必ず共通につなぐという配線上の工夫が知られている。

 

> **定着量の目安**: 作例7で検算4の距離の式(音速×時間÷2)を、作例8で検算5の角度の比例配分を、それぞれ自力で計算できたら、また超音波距離センサーの測定限界とサーボモーターの電源分離の理由を説明できたら、第六章は定着。

 

---

 

## 第七章: 複数センサーの組合せと条件分岐の設計 — 作例9(水準七〜八)

 

### 複数の条件を組み合わせる

 

作例4・作例5では1種類のセンサー値だけを閾値と比べていたが、実際の道具の多くは複数のセンサーの値を組み合わせて判断している。「Aかつ B」(両方の条件が成り立つときだけ動作する)、「AまたはB」(どちらか一方でも成り立てば動作する)という組合せ方は、条件分岐を設計するうえでの基本形である。

 

### 人感センサー(PIRセンサー)とは

 

**人感センサー(PIRセンサー、水準七: 人や動物が発する赤外線の変化を検知し、動きのある物体が近くにいるかどうかを電圧の変化として出力するセンサー)**は、防犯灯や自動ドアなど、身近な場所でも広く使われている。単体では「何かが動いた」ことしか分からないが、光センサーと組み合わせることで、より実用的な判断ができるようになる。

 

### 作例9: 人感センサーと光センサーを組み合わせた自動照明

 

作例9では、人感センサー(PIRセンサー)と光センサーの値を両方読み取り、「人を検知していて、かつ周囲が暗いとき」だけLEDを点灯させるという、2つの条件をどちらも満たす場合に動作する条件分岐を組む。人感センサーだけであれば昼間でも人が通るたびにLEDが点いてしまい、光センサーだけであれば暗いときは誰もいなくても点きっぱなしになる。2つのセンサーを組み合わせることで、初めて「本当に必要なときだけ点灯する」照明に近づく。

 

### 「AまたはB」型の条件分岐の例

 

作例9とは逆に、「どちらか一方でも条件を満たせば動作する」という「AまたはB」型の条件分岐が向いている場面もある。たとえば防犯用のブザーであれば、「人感センサーが反応した、または窓の開閉を検知するスイッチが反応した」のどちらか一方だけでも警報を鳴らしたい。この場合は「Aかつ B」ではなく「AまたはB」の条件分岐を組む必要があり、どちらの型を選ぶかは、作りたい装置が「両方そろって初めて動くべきか」「どちらか片方でも動くべきか」という設計上の判断による。作例9の自動照明と、この防犯ブザーの例を見比べることで、「Aかつ B」と「AまたはB」の使い分けが体感できる。

 

> **定着量の目安**: 作例9を組み、「Aかつ B」型の条件分岐を自分の言葉で説明でき、人感センサー単体・光センサー単体それぞれの弱点、そして「AまたはB」型との使い分けを挙げられたら、第七章は定着。

 

---

 

## 第八章: シリアル通信でデータを記録する — 作例10(水準八〜九)

 

### シリアル通信とは

 

**シリアル通信(水準八: マイコンとパソコンなどの機器との間で、決まった速度(ボーレート)で1ビットずつ順番にデータをやり取りする通信方式)**を使うと、センサーが読み取った数値を、LEDの点滅や音の高さといった間接的な形ではなく、数字そのものとしてパソコンの画面に表示できる。テスターによる電圧測定が「今この瞬間の値」を知る方法だとすれば、シリアル通信は「時間とともに変化する値の記録」を残す方法にあたる。

 

### 作例10: センサーの値をシリアル通信で記録する簡単なデータロガー

 

作例10では、センサーの値を一定間隔でシリアル通信によりパソコンへ送り、画面上に数値の列として記録することで、目に見えないセンサーの変化を後から見返せる簡単なデータロガーを作る。たとえば作例3の光センサーの値を1秒ごとに送り続ければ、朝から夜にかけて部屋の明るさがどう変化したかを、後から数値の並びとして振り返ることができる。これは、作例1から作例9までの「その場で光る・鳴る」作例とは異なり、「記録して後から確かめる」という新しい使い方の入り口である。

 

### ボーレートという通信の速さ(検算6)

 

シリアル通信の速さは、**ボーレート(水準八: シリアル通信で、1秒間に何ビットのデータをやり取りできるかを表す値。単位はbps)**という値で表される。ボーレート9600bpsで、開始・終了の合図を含めて1文字あたり10ビット分のデータを送るとした場合、1文字を送るのにかかる時間は次の式で見積もれる。

 

```

1文字あたりの送信時間 = 10ビット ÷ 9600bps ≈ 0.00104秒(約1.04ミリ秒)

```

 

作例10でセンサーの値を1秒ごとに送る程度であれば、この送信時間はほとんど無視できるほど短い。しかし、より速い間隔で大量のデータを送ろうとすると、ボーレートが送信できるデータ量の上限になる、という関係も覚えておくとよい。

 

> **定着量の目安**: 作例10を組み、任意のセンサーの値を一定間隔でパソコンの画面に表示でき、検算6のボーレートと送信時間の関係を自力で計算できたら、第八章は定着。

 

---

 

## 第九章: 割り込みと省電力設計・次の一歩(水準九)

 

### 割り込みという考え方

 

これまでの作例は、マイコンが上から順番に手順を繰り返し実行する中で、都度センサーの値を読みに行く作り方だった。これに対し、**割り込み(わりこみ、水準九: 通常の手順の実行中でも、決まった条件(スイッチが押された、一定時間が経ったなど)が発生した瞬間に、優先して特定の処理を行わせる仕組み)**を使うと、マイコンは普段は別の処理をしながら、特定の出来事が起きた瞬間だけ即座に反応できるようになる。プッシュスイッチの読み取りを割り込みで行えば、作例2よりも取りこぼしの少ない反応が作れる、という発展の方向性がある。たとえば作例10のデータロガーを長時間動かしながら、その裏でプッシュスイッチが押された瞬間だけ記録の間隔を変える、といった「普段は記録を続けつつ、特別な瞬間にだけ別の動きをする」設計は、割り込みを使わずに上から順番の手順だけで作ろうとすると、常にスイッチの状態を確認し続ける手順を書く必要があり、プログラムが複雑になりやすい。割り込みは、こうした「普段は別のことをしながら、特定の瞬間にだけ反応する」設計を簡潔に書くための仕組みである。

 

### 省電力設計とスリープモード

 

乾電池で長期間動かしたい作例では、**スリープモード(水準九: マイコンの動作の一部を止め、消費電力を大きく減らした状態。特定の条件で目を覚まし、通常の動作に戻る)**を使った省電力設計が重要になる。人感センサーで人を検知したときだけマイコンを起こし、それ以外の時間はスリープで電力を節約する、といった設計は、電池だけで長期間動く装置を作るための代表的な工夫として知られている。

 

### 次の一歩

 

本冊で扱わなかった内容としては、複数のセンサーの値をより複雑に組み合わせる制御、無線通信によるデータの送受信、モーターを使った移動体の制御などがある。これらはBOOK-0300で扱ったオームの法則・回路図の読解や、BOOK-0301で扱ったブレッドボード・はんだ付けの手技、BOOK-0005『電子回路』第1冊で扱う理論面の土台があってこそ組み立てられるものであり、本冊の10作例を組み終えた後の次の一歩としてふさわしい。

 

### 作例を組み合わせて自分だけの装置を作る

 

本冊の10作例は、それぞれ単独でも学びになるが、組み合わせることで新しい装置になるという性質を持つ。たとえば作例5(温度警告)と作例10(データロガー)を組み合わせれば、「一定時間ごとに温度を記録しつつ、閾値を超えたときだけブザーを鳴らす」という、記録と警告を両立する装置になる。作例8(距離センサーとサーボモーター)と作例9(複数センサーの組合せ)を組み合わせれば、「人を検知して、かつ近づいてきたときだけ動くサーボモーター」という装置も作れる。10個の部品として学んだ作例を、10個の「組み合わせ可能な道具」として捉え直すことが、本冊を読み終えた後の実力の伸ばし方になる。

 

> **定着量の目安**: 割り込みとスリープモードの違い(即座に反応する仕組みと、電力を節約する仕組み)を自分の言葉で説明できたら、第九章は定着。

 

---

 

## まとめ — 感じて、考えて、動かす。灰色の箱と歩んだ10作例

 

本冊では、マイコンのデジタル出力・デジタル入力(作例1・作例2)から始め、アナログ入力とA/D変換(作例3)、閾値判定と条件分岐(作例4・作例5)、PWMによる疑似アナログ出力(作例6)、距離センサーとサーボモーターの組合せ(作例7・作例8)、複数センサーの組合せによる条件分岐の設計(作例9)、そしてシリアル通信によるデータロギング(作例10)まで、合計10作例を順番にたどってきた。本冊の定着量の目安は、Lチカからシリアル通信によるデータロギングまでの入出力10作例を実際に自分の手で組み上げることである。

 

本冊を通じて一貫していたのは、BOOK-0301から引き継いだ低電圧限定の安全の一線と、「センサーで感じ取り(入力)、マイコンで判断し(条件分岐)、部品を動かす(出力)」という一連の流れである。BOOK-0301までの回路は、抵抗やコンデンサの値そのものが動きを決めていたのに対し、本冊のマイコン回路は、同じ配線のままでもプログラムを書き換えるだけで違う動きを作れる、という柔軟さを持つ。この柔軟さこそが、入口の物語で若者が「考える箱」と呼んだものの正体である。

 

10作例をすべて自分の手で組み終えたら、閾値の数値を変えて作例4の点灯のタイミングを変えてみる、検算1〜検算6の数字を差し替えて計算し直してみるといった「自分だけの11作例目」を作ってみることも、本冊で身につけた考え方を血肉にする良い次の一歩になるだろう。

 

本冊の10作例を通じて繰り返し登場したのは、「まず値を検算する」「まず控えめな設定から始める」「わからなければ止めて確認する」という、BOOK-0301から受け継いだ三つの実践解であった。マイコンとセンサーが扱う対象が、抵抗値や電流から、明るさ・温度・距離・人の有無といった目に見えない周囲の状態に広がっても、迷ったときに立ち返る考え方そのものは変わらない。むしろ、扱う対象が広がったからこそ、検算で当たりをつけ、控えめな値から試し、わからなければ止めて確認するという姿勢が、これまで以上に大切になる。

 

光る石は、抵抗を選んで組み立てる道具になり、次に、周囲を感じ取り自分で判断する道具になった。豆電球しかなかった夜から始まった学問の宇宙のこの星の物語は、今や、暗くなれば自分で灯り、人が近づけば自分で気づき、変化を記録して後から語ってくれる道具の物語になっている。この続きは、読者自身のプログラムと配線が書いていくことになる。

 




# BOOK-0311 センサーとマイコンの実践 第1巻 — 入力を読み、判断し、出力を返す(実践工学シリーズ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定