オリジナルの話はテレビ版海賊戦隊ゴーカイジャーの第41話『なくしたくないもの』です。
「悪く思わんでくれ王女様、俺達も生活がかかっているんでな」
「うっ……」
アイムは悔しさのため、思わず唇を強く噛み締める。
そう、彼女は今、結果的に潜伏先となった惑星トラニラストの住民たちによって囚われ、ここにも姿を現したザンギャック帝国軍に引き渡される寸前であったのだ。
「それにしても、こんな上玉、そのまま帝国軍に差し出すのはもったいねえやな!」
男の一人が舌なめずりせんばかりに彼女をじろじろと見る。
そんな男のなめ回すような嫌らしい視線を受けても、彼女は抵抗することが出来ない。
既に縛られているのだ。
彼女の名はアイム・ド・ファミーユ。
つい先頃、この大宇宙で猛威を振るうザンギャック帝国軍の攻撃により、母星であるファミーユ星の統一政権であったファミーユ王国を滅ぼされ、彼女の両親である国王、王妃も、主たる大臣たちも揃って討ち死に、あるいはザンギャック帝国軍の手により処刑され
既に王国軍に入隊して士官となっていた、ただ一人の姉も行方不明、恐らくは戦死。
彼女の父である国王は、まだ当時は十九歳の未成年王族である次女のアイムを、まだザンギャック帝国軍の魔の手が届かない他の惑星へと亡命させる決断をし、妻である王妃ともども、今、娘を説得しているところであった。
「アイム、すぐにこの星を出るんだ!」
ファミーユ国王ラウール・ド・ファミーユは炎に包まれる王宮で、残されていたもう一人の娘であるアイム・ド・ファミーユを説得していた。
が、アイムは、その父の言葉を拒んだ。
「お父様、何をっ!、
だが、そのアイムに対して、母である王妃マリーは
「なりませんっ!」
ピシャリと娘に向かって
「アイム、あなたは生きるのです!」
と言いきったのだ。
そして大臣のコルデスに目で合図をする。
そのコルデスは王妃の視線を受けて頷くと
「さあ、行きましょう!」
そう言って強引にアイムを燃え盛る王宮から強引に連れ出したのだ。
「いやあっ!!、止めてえっ!、離してえっ!!」
そして悲鳴をあげながら王宮から連れ出されたアイムは、炎に包まれていた王宮が轟音と共に爆発するのを、その目で見た。
「お父様あっ!!、お母様あっ!!!」
彼女の胸は張り裂けそうであった。
その後、自分を強引に連れ出したコルデスだけではなく、護衛の騎士レザルタス、侍女のユニシアと共に王国の宇宙船に乗り、ファミーユ星から脱出したアイムだったが
追撃してきたザンギャック軍の艦隊によって宇宙船は撃墜され
ここ惑星トラニラストに不時着したものの
その後もザンギャック軍の襲撃を受け、アイムは他の三人とはぐれ、この、既にザンギャック軍の支配下にある星をあてもなく彷徨うこととなった。
ファミーユ王家の、恐らくは最後の生き残りアイム・ド・ファミーユ
世が世なら姫様とあおがれ、ファミーユ王家の娘として何不自由のない生活を送っていたはずの彼女は今、ザンギャック帝国から捕えた者に懸賞金を出すという布告がなされたことにより
いわば『賞金首』として狙われる身となり、逃げ回ったものの、結局はならず者たちに捕まってしまい
こうしてザンギャック帝国軍に突き出される直前というところまで来ていたのだ。
「よせよせ、どうせ処刑される娘だとわかっていても、その前に何かしたことがバレたら、俺達も賞金を貰えるどころか、ザンギャック帝国軍に捕まってしまうだろっ!」
まだしも多少は理性をもっていたらしき、もう一人の男がそう言ってアイムをなめ回すように見ていた男を思い止まらせる。
「ちっ!……」
残念そうに、アイムのことをじろじろと見ていた男は舌打ちする。
そんな様子を見ながら、アイムは悔しさと怒りのあまり体を震わせていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「こいつがファミーユ星の亡命王女か!」
縄で縛られたアイムを連れてきた懸賞金目当てのならず者たち四人に向かって、この基地の責任者に当たる行動隊長が声をかける。
「ザンギャックの手先っ、よくもファミーユ星を!!」
アイムは、目の前にいるザンギャック軍行動隊長と、その護衛であるスゴーミン二人、それにゴーミンたちを思わず睨み付ける。
ゴーミンたちだけでも十人以上はおり、到底縛られたアイム一人で抗う術はないにもかかわらずだ。
彼女は王女としての誇りを失ってはいなかった。
が、そんなアイムのそばに、スゴーミンの一人が近づいてくると
「スゴー、うむ、間違いなくこいつはファミーユ星王家の最後の生き残りアイム・ド・ファミーユに間違いない。お前たち、よくやった」
そう言ってスゴーミンは平伏するならず者たち四人を誉める。
「ははっ!」
ならず者たち四人は、アイムに対するものとは比較にならない恭しさでそのスゴーミンの前で畏まった。
世が世ならファミーユ星王家の姫君であるはずのアイムは、本来なら目の前のスゴーミンなど比較にならぬくらいの敬意を人々から払われてよいはずである。
「いずれにしてもだ」
ザンギャック軍行動隊長は勝ち誇ったようにアイムに向かって言った。
「お前でファミーユ王家の生き残りは最後だ。観念しろ!、これからお前はザンギャック本星に行き、そこでアクドス陛下の命により処刑されるはず。今さら無駄な抵抗などしてもはじまらぬぞ。それとも舌でも噛んで自害するつもりか?」
が、そんな行動隊長に向かってアイムは毅然として言った。
「
血を吐くような思いで叫んだアイムの、それは、せめてもの矜持であった。
「何を愚かな!」
行動隊長は、そんなアイムを嘲笑する。
そして
「そのような心根の娘を、我がザンギャック帝国が許しておくはずもないということさえわからぬと見える。バカな娘だ。かまわん、連れていけ!」
行動隊長は、そのように自分の指揮下にあるスゴーミン二人、そしてゴーミンたちに命じた。
「ゴー!」
ゴーミンたちがたちまちアイムを取り押さえる。
「止めてっ、離してええっ!」
アイムは抵抗するが、帝国軍の戦闘員であるゴーミンたちの前にはなすすべもなかった。
が、そんな時である。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「
毅然とした青年の声。
「何者だっ!」
行動隊長が、副官のスゴーミンたちが、そしてアイムを連行しようとしたゴーミンたちも声の方向を振り向く。
振り向いた先には
それぞれに赤、青、黄、緑をイメージするジャケットを着た三人の男性と一人の女性がいた。
「ちょっと、あんたたち!、か弱い女の子に対して大勢で何やってんのよ!、バッカじゃないの!!」
黄色のジャケットと白のインナー、下はデニムのショートパンツに黒タイツと茶色のロングブーツを履いたミディアムショートの茶髪女性がザンギャック帝国軍に向かって叫ぶ。
「うーん、ルカが、か弱い女の子なんて言い方をすると、今一つ、あっ痛あっ!」
思わず呟いた緑色のチェックなシャツとジャケットにネクタイをした薄い金髪天然パーマヘアーの男性の足は、ルカと呼ばれた女性のブーツの踵の犠牲となった。
「ハカセっ、つまんないこと言ってんじやないわよ!」
「おい、お前ら。こんな時にじゃれてんなよ!」
青色の上着に黒に近い紺のインナーとデニムのパンツを履いた黒い長髪の青年か言う。
その様子を確認した赤いロングジャケットと黒ベストを着用した黒髪の青年が
「みんな行くぞっ!」
と他の三人に号令をかける。
どうやら彼がこの四人のリーダーらしい。
「貴様ら、何者だっ!!」
行動隊長は怒号と共に乱入者たちに向かって叫ぶ。
そんなザンギャック帝国軍行動隊長を見て、赤いジャケットを着た青年は、バカにしたようにニヤリと笑うと、堂々と名乗りをあげる。
「俺たちは賞金首の海賊!、人呼んで海賊戦隊」
「海賊だとおっ!」
思わず行動隊長は叫ぶ。
「ならば貴様らもこいつと同じ賞金首ではないか!」
そう言って彼はアイムを指差すと
「この際、貴様らもまとめて捕縛し、その上でザンギャック本星に連れ帰り、帝国軍法による裁きを受けさせてくれるわ!」
と赤いジャケットを着た青年、そして、その仲間たちに向かっていい放つ。
そして、配下であるスゴーミン二人、そしてゴーミンたちに
「かかれえっ!」
と号令した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
が、赤いジャケットを着た青年は大胆不敵に笑うと、他の三人に目で合図をする。
そして四人は一斉に各自の持つレンジャーキーを変身用の携帯モバイレーツに差し込むと
「ゴーカイ・チェンジっ!!」
そう叫んだ。
四人は
それぞれ赤、青、黄、緑色のバトルスーツに身を包んだ戦士へと変身していたのだ。
まず赤い戦士が叫ぶ。
「ゴーカイ・レッド!」
続いて青の戦士
「ゴーカイ・ブルー!」
黄の女性戦士
「ゴーカイ・イエロー!」
最後に緑色の戦士が
「ゴーカイ・グリーン!」
と、それぞれに名乗りを上げたのだ。
そして四人は
「海賊戦隊ゴーカイジャー!!!」
今度は一斉に自分たちの海賊としての名乗りをあげる。
「貴様らが賞金首の宇宙のならず者、宇宙海賊か!!、丁度いい。お前たち、やれっ!」
行動隊長は部下であるスゴーミン二人、そしてゴーミンたちに命令する。
「スゴーッ!」
「スゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
スゴーミン、そしてゴーミンたちが一斉に海賊戦隊ゴーカイジャーに向かって襲いかかる。。
が、ゴーカイ・レッドをはじめとする四人は怯む様子さえ見せない。
それどころか
「このところ実戦経験が不足で勘が鈍っている。ちょうどいい練習台だぜ!」
というと、手に取っていたガンを上空に投げ、そしてサーベルで1振りし、そして跳躍する。
「たああっ!」
そして、いったんは上空に投げたガンを手に取り高威力の1発を放つ。
「ス、スゴーッ!」
この一撃でスゴーミンの一人が倒れ、そして自爆した。
ズカアーンッ!!
続いて
「一刀流ソウルブレード!!」
ゴーカイ・ブルーはそう叫ぶと、その手にした剣を振り上げ、そして、その剣で大きく円を描き、パワーを貯め、そして向かってくるゴーミンたちを十字に切り裂く。
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
ゴーカイ・ブルーはあっという間に数名のゴーミンたちを斬り倒したのだ。
一方、メンバーの中でただ一人の女性であるゴーカイ・イエローに対して、もう一人のスゴーミンが
「スゴォーッ!!」
と絶叫しながら襲いかかってくるのだが、彼女は少しも怯ます
「イエローオーシャン!」
と叫び、その両手のサーベルでスゴーミンに向けてX字に斬りつける。
「ス、スゴーッ…」
斬られたスゴーミンがよろめくところを、ゴーカイ・イエローは、止めと言わんばかりに右手に持ったサーベルをそいつに向かって槍のように突き刺したのだ。
「スゴォーッ!!」
スゴーミンは倒れ、そして
ズカアーンッ!!
自爆したのだ。
残るゴーミンたちはゴーカイ・グリーンが引き受ける。
「ゴーカイブラスト」
ズダーンッ!!
ズダーンッ!!
ズダーンッ!!
ズダーンッ!!
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
「ゴーッ!」
次々と倒れていくゴーミンたち。
それはいいのだが、当のゴーカイ・グリーン自身も撃つ度によろめいているのは、いささか…
「ハカセ、しっかりしろっ!」
思わずゴーカイ・ブルーがやれやれという感じで声をかける。
「ええいっ!」
部下を皆、倒されて苛立つ行動隊長は
たかが海賊風情が
とあなどっていたゴーカイジャーたちの以外な強さと、何のためらいもなくスゴーミン、ゴーミンたちを一刀両断にする、その大胆さに恐怖心さえおぼえていた。
が、だからといって帝国軍の行動隊長たるもの逃げるわけにもいかない。
「貴様らあっ!、ならば、この俺が相手だ」
そう叫び、手の大きな剣を持つと、それを振り上げ
「グワアッー!!!」
奇声を上げながら、ゴーカイジャーの四人に向かって襲いかかってくる。
「行くぞ、みんな!」
リーダーであるゴーカイ・レッドの声に四人は一つにまとまる。
「ゴーカイブラスト!!」
ゴーカイブラスト、それは
各自のゴーカイガンに、ゴーカイジャーのレンジャーキーを差し込み、そして四人が一斉に敵に向かって撃ち込む必殺技であった。
スダアーンッ!!
ブラストの一撃は行動隊長を撃破する。
「ぎゃあああああああああああっっっ!!!」
行動隊長は断末魔の悲鳴を上げ、そして、その場に倒れた。
ズカアーンッ!!
絶命し、そして自爆する行動隊長。
「ひえええっっ!!!!」
賞金目当てにアイムを捕え、そしてザンギャック帝国軍に差し出すことで、たんまりと賞金を貰える積もりでいたならず者たちは震え上がる。
次は自分たちの番に違いない…
だが、ゴーカイ・レッドは彼らに向かって厳しい声で言った。
「俺たちは抵抗さえしなければ、お前たちの命までは取らねえ、さっさと失せろっ!」
そのゴーカイ・レッドの声を聞くやいなや、ならず者たちはその場から逃げ散っていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ゴーカイ・レッドは、それを見届けるとアイムを縛りつけ、拘束していたロープを、あっという間にほどいてしまう。
その手際のよさには、思わずアイムも目を見張るしかなかった。
「もう、大丈夫だ。怖くなかったか?」
ゴーカイ・レッドは優しい声でアイムに向かって、そう語りかける。
まさか、強大なザンギャック帝国に歯向かい、賞金首であり、無一文、無力の自分を助けてくれる者がいるとは…
それはアイムにとって心底からの驚きであった。
彼女は自分を助けてくれた、この海賊戦隊を名乗るゴーカイジャーの四人に対しては、感謝の気持ちで胸がいっぱいになっていたのだ。
「あ、ありがとう、ございます……」
とにもかくにもアイムは目の前のゴーカイ・レッドに向かって、感謝の意をこめて、深々とお辞儀をする。
それを確認したゴーカイ・レッドは頷くと変身を解除し
元の黒髪の赤いジャケットを着た青年の姿に戻る。
他の三人もそれぞれ変身を解除していた。
その上で
「み、皆さまは、一体?」
と海賊戦隊ゴーカイジャー、その四人のメンバーに向かって尋ねたのだ。
「俺は海賊戦隊ゴーカイジャーの船長を勤めるマーベラス!」
まずマーベラスがアイムに向かって名乗りをあげる。
続いて青のジャケットを着た長い黒髪の戦士が
「俺はジョー・ギブケン!」
黄色いジャケットを着た女性が
「あたしはルカ・ミルフィ!」
最後に緑のジャケットを着た青年が
「僕はドン・ドッコイヤー、通称はハカセ。よろしく」
と、それぞれアイムに向かって自己紹介をする。
そして四人の自己紹介を受けたアイムはゆっくりと立ち上がると、せめてものご挨拶をと、両手でスカートの裾を軽く持ち上げ
そして片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま、ゆっくりと四人に向かって挨拶をした。
「
だが、ゴーカイジャーの四人は彼女の場違いな挨拶に、思わず顔を見合わせる。
ややあってハカセが
「あのザンギャックに滅ぼされた星の?」
とアイムに向かって問い返す。
続いてジョーが
「一人でここまで逃げ延びて来たのか?」
と、むしろアイムを責めるような語調で言う。
「王家の人間なら自分の星を守る義務があったはずだ。それを果たせず自分だけ今まで逃げていたなんて卑怯だろう。お前は死んでいった者たちに、なんて言い訳するつもりだ?」
ザンギャック帝国に対する深い失望感を持ったジョーにとっては、それは当然の問いかけであった。
そしてルカも
「で、そのお嬢様があたしたちに何の用?」
これもトゲのある言い方で返した。
だが、それでも
アイムの心は決まっていたのだ。
彼女は懐に入れていた海賊・ゴーカイジャーに対するザンギャック帝国が宇宙各地に配布していた指名手配書を
バッと両手で大きく広げると、四人の前に突き出した。
「ゴーカイジャーの皆様、お願いです。
だが、そのアイムの真剣な表情を見て、まずルカが呆れたように彼女に向かって言う。
「バッカじゃないの!、お姫様なんかに海賊が出来るわけないじゃないの!!」
だが、そんなルカに対して、アイムは大きな声を張り上げた。
「出来ますっ!、一生懸命頑張りますから!!」
そんなアイムの様子に何事かを感じたハカセが彼女に向かって尋ねた。
「どうして、そんなに海賊になりたいの?」
それを聞いたアイムは縋るような目でハカセを見ると
「
そこでアイムは一瞬、嗚咽する。
それでも勇気を奮い起こして話を続けた。
「故郷の星には残された人たちがいます。また他の星に逃げおおせている者もおります。そんな仲間たちが…、ファミーユ星の誇りを持ち続けられるための象徴として
が、ジョーはアイムに対する厳しい視線を変えようともしない。
「だったら海賊なんかじゃダメだろう」
アイムは負けるものかと言い返す。
「いえ、海賊だからこそ良いのです。この手配書に
彼女はそこでいったん言葉を切ると
「
その言葉は聞いたジョーは一瞬、沈黙する。
この元姫様は、少なくとも自分の知っているザンギャック帝国の皇帝、皇太子、皇族たちの誰よりも
はるかに故郷の星に残された、かつての国民たちの事を強く、本気で想っている…
その事はジョーにとり、ある意味衝撃的なことであった。
だが、その様子を黙って見ていたマーベラスは、問答無用でアイムにゴーカイ・ガンを手渡すと
「お姫様、試しにこれ撃ってみな!」
と、むしろ冷ややかに言う。
「えっ?」
当惑するアイムに向かって、マーベラスは更に
「いいから撃ってみろよっ!、それで現実が分かるだろうよ」
と有無を言わせずに言う。
アイムは恐る恐るといった様子で、マーベラスから手渡されたゴーカイ・ガンを引き金を引く。
ズカアーンッ!!
「きゃあっ!」
思わずアイムは衝撃でその場に引っくり返ってしまった。
バッターン!!
転倒するアイムを見て、マーベラスは、あえて突き放すように言う。
「分かっただろ、お姫様。それが答えだ。あんたに海賊なんか無理だ!」
だが、それを聞くなりアイムは体をぶるぶる震わせながらも強い闘志と共に立ち上がった。
そして
「マーベラス様っ、お願いします。もう一回撃たせてください!!、お願いします!」
なおもアイムはマーベラスに対して再度のチャンスを懇願するのだった。
「いいだろう、好きなだけやんな!」
マーベラスはアイムに向かって突き放すように言いつつも、だが、その場から立ち去ろうとはしなかった。
そんなマーベラスの様子に何事かを感じたジョーは、あらためてマーベラスに向かって言う。
「マーベラス、彼女は素人だ。俺が銃の持ち方を教えてあげるくらいならいいだろう。それでも出来ないならそごまでの話だ」
「ああ、いいだろう。誰でも最初は素人だ」
マーベラスはジョーに向かって素っ気なくいう。
それを確認したジョーは、ゴーカイ・ガンを慣れない手つきで持つアイムに近づいていくと
「お姫様、ガンの持ち方だけは教えてやる」
そう言ってアイムのガンを持つ小さな手に、自分の手を差しのべた。
アイムは思わず
「ジョー様、ありがとうございます!」
嬉しそうにジョーに向かって言うのだが、当のジョーは
「ジョーだ。様はいらない。教えてはやるが、自分で覚えろ!」
ぶっきらぼうに彼女に向かって言った。
「はいっ!」
感激したアイムは、そっとジョーの方を振り向く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ズカアーンッ!!
何度かの失敗のあと
やっと、まともにゴーカイ・ガンを撃てるようになったアイム。
「ジョー様、
嬉しさのあまり、無意識にわたくしではなく、わたしという率直な言い方をしてしまうアイムだった。
「だから…、別に様はいらないと言ったはずだ!」
いささか苦虫を噛み潰したようジョーは彼女に向かって言う。
そして、そんな二人の様子を見たマーベラスが、あらためてアイムに向かって言った。
「お姫様、いいだろう。かなりギリギリだが、取りあえず合格点だ。そして、お前は今から海賊見習いだ、いいな!!」
その言葉にアイムの胸はいっぱいになった。
これからだ!!
自分は生きるために、どこまでもザンギャック帝国軍と戦う!!
そのために精一杯頑張る!!
「はいっ!、マーベラス様!!」
彼女は嬉しそうにマーベラスに向かって返事をした。
それを聞いたマーベラスは苦笑すると
「だから俺は今からお前の事を、単に『アイム』とだけ呼ぶ。そして、お前も」
マーベラスはアイムをじっと見る。
「俺のことは単に『マーベラス』と呼べばいい。他の三人だって俺に『様』なんてつけねえぞ」
そこへルカが横から口を出す。
「本当よ、私だったら『マーベラス様』なんて聞いたら笑っちゃうわよ」
「こらっ、ルカ!」
ニヤニヤしながらも、ルカの突っ込みに文句を言うマーベラス。
「いずれにしてもアイム、お前はもう海賊見習いだ!、王女様なんかじゃねえ。そのつもりでやるんだな!」
そのマーベラスの激励にアイムは
「はいっ!、マーベラスさ…」
マーベラス様といいかけて、そこで戸惑うと
「すみません…、せめて…、マーベラスさん、ではダメでしょうか?、あの…、その…、なんだか言いにくくて…」
そのアイムの言葉に、マーベラスは思わず
「ははは」
と笑うと
「いいだろうアイム、慣れるまでは俺のことはマーベラスさんでいい。なあに一週間もすればガレオン船の雰囲気にも慣れて、自然にさん付けなんてしなくなるだろうさ!」
取りあえずアイムの呼び方について認めることにした。
「はい、マーベラスさん。
嬉しそうにアイムはマーベラスに向かって答える。
「さあ、皆、新しい仲間と共にガレオン船に引き上げるぞ。ザンギャック帝国軍がまたやって来るかも知れねえ。長居は無用だ!」
言い換えるとアイムの為にこの場に長居をしていたとも言えるのだが…
そんな言い方はマーベラスはしない。
「アイム、これからよろしくね」
まずルカが握手のためにアイムに向かって手を差しのべる。
アイムは、そんなルカとギュッと握手した。
「ルカさん、よろしくお願いいたします」
続いてハカセも
「アイム、これから家事とか手伝ってもらうからね」
と言うと
「はい、ハカセさん。頑張ります!」
アイムは返事をし、そしてハカセと力強く、そして固く握手する。
この時、ハカセはまだ、アイムに家事を教えるのに、これからどれだけ苦労することなるのかを知らない…
「行くぞ、アイム。これから鍛えてやるからな!」
ジョーはアイムに握手を求めた。
「はい、ジョーさん、よろしくお願いします!」
アイムはそんなジョーの手をギュッと握り返す。
そして新たに五人となった海賊戦隊ゴーカイジャーのメンバーはゴーカイ・ガレオンに引き上げたのだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一年後…
「マーベラスさん、お茶入りましたよ」
そう言ってティーカップをマーベラスの前に置くアイム。
「ああ、アイムありがとう」
そう言いながら、アイムが相変わらず自分の事をさん付けで呼ぶことに思わず苦笑するマーベラスだった。