海賊戦隊ゴーカイジャー異伝   作:shpfive03

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紆余曲折あって、地球侵略のための攻勢をかけてきたザンギャック帝国軍を打倒し、皇帝アクドス・ギルを倒した海賊戦隊ゴーカイジャー。だが、その一員であるアイムのもとを訪れたのは…

本作はpixivユーザーちょもさんが投稿した海賊戦隊ゴーカイジャーについての二次創作小説がアイディアの元になっていることをお断りしておきます。




アイム、再びファミーユ星へ

 

ザンギャック皇帝アクドス・ギルと、その率いる帝国の大艦隊との壮絶な戦いは終わり、そしてゴーカイジャーは奇跡の大勝利。

 

そしてキャプテン・マーベラス以下、六人の男女は新たな目標として、宇宙で二番目のお宝を求め、今度はザンギャックの本星を目標とし。地球を離れることに決めていた。

 

だが、戦いが終わったゴーカイジャーの皆を待っていたのはガレオン船の修復作業や、当然ながら内部にある自分たちの居住区の後片付けという『現実』だったのだ。

 

そして、そればかりではなく、破壊された街の復興の手助けも行うことになり、男たちは手一杯の状態が、ここ数日続いていた。

 

勿論、ルカとアイムの二人も自分たちの寝室は勿論のこと、船内の自分たちの居住区の片付けに余念がない。

 

それがようやく一段落しつつある、ある日のことである。

 

修復作業も終了しつつあるガレオン船の上空に突然、光るものが見えたかと思うと、そこに姿を現したのは、お世辞にも上等とはいえない、あちこち傷だらけの宇宙船だった。

 

だが上空を見上げたアイムには、その宇宙船は見覚えがあるものだったのた。

 

「まさか……、そんな!!!」

 

アイムにとって、それは思わぬ出来事であると同時に

 

強い感動を呼び起こすものでもあったのだ。

 

ちょうどルカも他の用事でその場にいなかったこともあり

 

思わずアイムはガレオン船の外に駆け出してしまっていた。

 

あちこち傷んだ宇宙船はゆっくりと、ガレオン船から出てきたアイムの前に着陸する。

 

その宇宙船には、しっかりとファミーユ王国の紋章が刻まれていた。

 

そして、その宇宙船の中から白髪の男性と、それより若い壮年の男性、そしてアイムと同年代の女性がゆっくりと降り立ち

 

そしてアイムの姿を確認すると、一斉に、そして恭しくアイムの足元に跪いた。

 

「コルデス、レザルタス、それに…、ユニシア!!!」

 

三人を見たアイムは思わず叫んでいた。

 

その声を聞いたアイムと同年代の女性、いやユニシアは、思わず大声でアイムに向かって

 

「姫様…、ユニシアは、この目で姫様の御無事を確認できて!、本当に、本当に、嬉しく思います」

 

と喜びを抑えきれずに、大声でアイムに向かって言う。

 

「皆…、無事で…、、本当に、よかった…」

 

そんなユニシアの声を聞いたアイムは、感動のあまり思わず震えている。

 

皆、大切な王家の家臣たちだった……

 

王家の重臣として、常に政務の中心にあった大臣の一人であるコルデス

 

あの戦争の少し前に病を得て休養していたのだが、それが幸いしたのだろうか

 

帝国軍による戦禍と殺戮により、王宮にいたほとんどの者たちがザンギャック帝国の戦闘員であるゴーミン、スゴーミン、行動隊長、そして、その司令官であるザツリクたちによって惨殺されたなか

 

辛うじて難を逃れたのだろう。

 

顔中に皺が増えているのが、少し見ただけでもわかる。

 

ファミーユ王国が滅亡してから、随分と苦労もしていたのがうかがえる。

 

真ん中にいるレザルタスは、かつて王家親衛隊の副長をつとめており、最後までアイム達の側につき従って、そして彼女が亡命に成功するまで、あれゆる手を尽くしてくれた親衛隊騎士だった。

 

彼がいなかったら、アイムはファミーユ星から逃げ延びることも叶わず、いわんや異郷の地でマーベラスをはじめとする、ここにいる皆と出会うことも出来なかっただろう。

 

ここにいる皆……

 

アイムには、ある予感があった。

 

そして、ユニシア…

 

彼女はファミーユの有力貴族の娘であり、王宮には行儀見習いをかねて、侍女、そして世話役として王女であるアイムの話し相手をつとめていた。

 

彼女と生き別れになったときは、とても悲しかったのを今でもハッキリと覚えているのだが…

 

そのユニシアは決意したように、他の二人であるコルデス、そしてレザルタスに向かって

 

「コルデス様、レザルタス様、お約束でございます。ここは私、ユニシアに是非、姫様とお話させてくださいませ!」

 

そう決意を強く言い切った。

 

そのユニシアの言葉を聞いたコルデスとレザルタスの二人は同意の意味で頷く。

 

それを確認したユニシアはアイムを真っ直ぐに見つめると

 

「姫様っ!、姫様のそのお姿を賞金首として載せられた手配書で拝見するたびに、姫様が、今、ここにいらっしゃるはずのゴーカイジャーの皆様と、勇敢にザンギャックの帝国軍と戦っていらっしゃる事を知り、私はとても勇気づけられました!、それは私だけではありません。ファミーユ王国の国民、皆が同じ気持ちです!!」

 

それを聞いたアイムは、あらためて自分がゴーカイジャーに入ったときのことを思い出していた。

 

ザンギャック帝国軍により徹底的に破壊され、壊滅的な打撃を受けたファミーユ星から辛くも落ち延び、そして他の惑星に逃げ隠れるように移住した時

 

アイムはザンギャック帝国軍と勇敢に戦うマーベラス、ジョー、ルカ、ハカセという四人の戦士たちと出会ったのだ。

 

アイムはその場で四人の戦士たちに向かって

 

「生き延びたファミーユ星の人々の目に、自らの手配書が触れる機会を作るため」

 

に、私をゴーカイジャーの一員にしてくださいと懇願した。

 

その時の四人の唖然とした顔を今でも覚えている。

 

それでもアイムは、今は滅びたファミーユ王国の象徴としての自覚から

 

『自分が生きている』こと、そして『諦めずに戦っていること』を伝えることで、王国の滅亡により絶望の淵に落とされたファミーユ星の生き残った人々の希望として生きたいという強い意思を持って、あえてゴーカイジャーに加わり、自ら宇宙海賊になることをことを決心したのだ。

 

最初は銃すらまともに持てずにひっくり返り、剣をまともに持つことすら出来ず

 

ジョーからは

 

「そんなんだったら止めとけ!、これはお嬢様のお遊びじゃないんだ」

 

と、その場で厳しく叱責された。

 

が、アイムはめげずに頑張った。

 

最初は全く出来なかった家事も、ハカセやルカに教わりながら一生懸命に覚えた。

 

誰か(使用人)がやってくれるのが当たり前

 

そんなのは甘えに過ぎないことを嫌というほど思い知らされた。

 

けれどもアイムは持ち前の明るさと優しさを少しも損なうことなく、四人の仲間たちに次第に溶け込んでいったのだ。

 

特に妹を貧困の中で亡くしたルカは、最初は王族出身のアイムに対する反感を隠さなかったのに

 

いつのまにか最愛の妹分として、目の中に入れても痛くないほど慈しんでくれるようになったのだ。

 

そのルカは今、ちょうど不在なのだが…

 

そんなアイムの心の中を知らぬまま、ユニシアは話を続ける。

 

「ファミーユ星をザンギャック軍司令官として支配していた、あのザツリク!、あいつがアクドス皇帝の呼び出しに応じてゴーカイジャーを倒すために地球に行くという話はすぐにファミーユ星で広まりました。そして…」

 

ユニシアは声を震わせながらも

 

「姫様が!、ゴーカイジャーが!、あのザツリクを倒したと聞いたとき、ファミーユ星に残された者たちは、誰もか喜び、そして勇気づけられました!!」

 

と、その時の感動を思い起こしながら、アイムに向かって伝える。

 

なおもユニシアは続けた。

 

「そして、とうとうザンギャック帝国皇帝アクドス・ギルを倒してくださったと知り、私たちファミーユの者たちも、このままではいられなくなりました。ええ、今は亡き両陛下も、あの戦いで無下に命を奪われた国民たちも、姫様たちの快挙をどれほど喜んでいる事でしょうか…」

 

そこまで言ったユニシアは強い意志と決意を持って、目の前のアイムを見つめる。

 

「姫様、いいえ、女王陛下、お願いです!、ファミーユ星へお戻りください。私たちファミーユの者たちは有志をつのり、レジスタンスを結成しました。女王陛下には、是非、その指揮をとっていただき、そしてっ!」

 

「ユニシア、そこからは、このワシが云おう」

 

話しているうちに感情が激して冷静さを欠きはじめたユニシアを見て、コルデスが言葉を引き継いだ。

 

「我ら三人は、ファミーユ星のレジスタンスの代表として、未だファミーユ星を支配し、圧政を敷くザンギャック帝国軍打倒のためにゴーカイジャーの皆様のお力をお借りしたいと思い、はるばるこの地球までやって来ました。姫様、せめて私たち三人を、ゴーカイジャーの船長であるキャプテン・マーベラス様にお引き合わせいただけないでしょうか?、その上で」

 

コルデスもまた、アイムを見つめる。

 

「私たち三人は誠心誠意、ゴーカイジャーの皆様に我々の立場を説明した上で、そのお力をお貸しいただきたくお願いする所存です。姫様、どうかお取り次ぎいただけないでしょうか?」

 

だが、アイムは不自然にうつ向くと、再び顔をあげて三人を見つめ、そして言ったのだ。

 

「ごめんなさい。それについては少し考えさせてください…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

突如現れた傷だらけの宇宙船に気づき、ちょうど昼食の時間だったこともありガレオン船に戻ってきたマーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、そして鎧の五人は、アイムから事情を聞くことになった。

 

アイムはコルデス、レザルタス、ユニシアの三人に

 

「まず(わたくし)からみなさんにお話をさせてください。とりあえずコルデスさんたちは一旦宇宙船の中で待っていていただけないでしょうか?」

 

と『お願い』をした。

 

大切な姫様の頼みとあれば、致し方ないというべきか

 

コルデス、レザルタス、そしてユニシアの三人は期待と不安をないまぜにしながらも、とにかく自分たちが乗ってきた宇宙船の中へと引き上げていったのだ。

 

そしてアイムは今

 

戻ってきた仲間たちに事情を説明したのだ。

 

そして戻ってきた海賊たちは、アイムからファミーユ星の人々の突然の来訪を聞く事になるのだが、まずルカが話半ばで感情を爆発させた。

 

「はあっ?、今さら何をムシのいいこと言い出すのよ、その人たちはっ!!」

 

そう叫んだルカが思わず感情的な爆発を抑えきれずに目の前のテーブルを、思わずドスッ!と両手で叩く。

 

その拍子に。アイムが皆のためにと用意した昼食用のサンドイッチが、勢いよく、その皿ごと一瞬飛び上がる。

 

「ルカ、落ち着け!」

 

そんなルカの様子に、思わずジョーが苦言をいう。

 

「ジョー、これが落ち着いて聞いていられるような話だと思うの?」

 

ルカは苛立ちを隠そうともしない。

 

「ザンギャックのアクドス皇帝が死んで帝国軍の主力が壊滅し、これで、やっと帝国の占領軍を追い出せる『かもしれない』。だからアイムには自分たちと一緒にファミーユ星へ戻ってきてもらって女王様になってもらいたい。しかも、自分たちだけじゃザンギャックの帝国軍に勝つ自信はないから、私たちに代わりに戦ってほしいだなんて、一体、どこまでムシがいい話をしていると思っているのよ!、ほんっとに、ふざけんじゃないわよ!!、それに、どんだけアイムに甘えているのよ!」

 

(わたくし)に、ですか?」

 

ルカの激しい言葉に、思わずアイムも目を丸くしてしまう。

 

アイムの表情にはありありと困惑の色が浮かんでいた。

 

ルカが自分のことを心配してくれているのは痛いほど伝わってくる。

 

でも…………

 

「ルカってば、とにかく落ち着いて」

 

困惑するアイムの様子に気づいたハカセが思わずルカの服の裾をくいくいと引っ張って、とにかく感情を激発させるルカを落ち着かせようとするのだが、もちろんそれはルカの強烈なボディブローによって、あっさりと返されてしまう。

 

「ぐえっ!」

 

あっさりとハカセを撃退したルカだが、さすがにアイムの困惑する様子に気づき、少し言葉を柔らかくする。

 

「ごめん、アイム。でも、ここは現実的に考えないとダメよ。だいいち、あの人たちは先立つもの、お金はあるの?」

 

「えっ?」

 

いや、アイム自身、そんなことは考えてもいなかった。

 

同時に、いかにもルカらしい現実的な指摘だとも思った。

 

「ファミーユ星は、ザンギャックの帝国軍によって蹂躙され、破壊され尽くした。これって、私たちと初めて会ったときにアイム自身が言ったことよね?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アイムは思わず沈黙してしまう。

 

「破壊することは簡単でも、再建することはとても難しいことなの。それは私たち自身が今、ガレオン船の修理や、街の人たちの手伝い、それに居住するための場所の片付け等々で、否応なくやっていることよ。でも、ザンギャックによって破壊され尽くしたファミーユ星は、恐らくこんなものじゃない!!」

 

「ルカ!」

 

思わずジョーが口を挟もうとするが、ルカは黙らない。

 

鎧は、このような時に自分が何をすればいいのか分からず呆然とするばかり。

 

マーベラスは、なぜか沈黙を守ったままだ。

 

「星一つを買い取ろうなんて考えているあたしか言うのもなんだけど」

 

ルカはそう前置きすると

 

「みんなも聞いて!、これって大事なことよ。本当のことを言うと、確かにファミーユ星の人たちの気持ちもわからなくはないわ。でも、だからって見通しもないようないい加減な話に私たちだって乗るわけにはいかないし、それが願望だけの無責任な話だったら、そんな危ない話にアイムを行かせるわけにはいかないわよ。そうは思わないの?」

 

と、この場にいるいる全員に向かって問いかけた。

 

そのルカの問いに、アイムが答えた。

 

アイムはルカの目を真っ直ぐに見つめると、心の中で

 

ルカさん、大好きです!

 

と呟く。

 

そして

 

「ルカさん、私はファミーユの王女として生まれ、今は恐らく、ただ一人生き残ったファミーユ王国の王位継承者です。ザンギャック皇帝を倒したとはいえ、ザンギャックの帝国軍が今もファミーユ星を支配し、人々を苦しめているというのなら、そして、人々が、それを求めているというなら…」

 

アイムの顔は蒼白であり、緊張しているのが見た目にも分かる。

 

(わたくし)、アイム・ド・ファミーユは、ファミーユ星へ帰らなくてはいけません。でも、それと…」

 

マーベラスさん!、ジョーさん!、ルカさん!、ハカセさん!、鎧さん!

 

私にとって、大切な、大切な、大切な、人たち…

 

これからもずっと一緒にいられると、当たり前のように思っていた…

 

でも、でも、でも

 

「困難ばかりで、得るところもなく、危険ばかりが待っているような、そんな話にみなさんを巻き込むわけにはいきません…」

 

アイムはなにかを思いきるかのように、そこまで言った。

 

だか

 

ここでマーベラスが

 

「アイム、俺たちは仲間だろ!」

 

短く、しかし、キッパリと言い切ったのだ。

 

「えっ?」

 

自分の目から涙があふれでていることさえ気づかずにいたアイムは驚くとともに、思わずキャプテン・マーベラスの方を見る。

 

「ここにいるやつらは俺も含めて皆、お人好しで嘘をつくのがヘタクソばかりだ。当然アイム、お前もな」

 

マーベラスはニヤッと微笑を浮かべながらいう。

 

「お前、今回の件で俺たちに何か隠し事をしているだろう?」

 

アイムは思わずドキッとした。

 

マーベラスの勘、洞察力、そして人を見る目は天性のものである。

 

「ルカの言うことも、いちいち尤もなんだが、俺はファミーユ星へ行き、そこを支配するザンギャックの連中を追い出して、奴等の圧政に苦しんでいるファミーユ星の人たちの力になること、それ自体は構わないと思っている」

 

マーベラスはアイムの目をじっと見る。

 

「だがアイム、お前は、あのファミーユ星からやって来たという元家臣の三人組から、恐らく、俺達に聞かせたくないような話を聞かされた。そして」

 

アイムは観念した。

 

マーベラスさんには、やっぱり隠し事は出来ない…

 

「あの三人組をいったん自分たちの宇宙船に戻して、自分で何とか話をまとめようとし、ダメなら自分だけファミーユ星へ戻ろうと考えていた。違うか?」

 

ここでジョーが今度はマーベラスに対して

 

「マーベラス!、アイムが悩んでいるのは俺にも直ぐに分かった。だからって!」

 

と意見するのだが、マーベラスは動じない。

 

「ジョー、俺はアイムに本当のことを話してほしいんだ。その上で」

 

マーベラスはゆっくりとアイムに向かっていう。

 

「ルカが心配する軍資金のことも含めて、俺達がこれからどうするかを決めるつもりだ。みんなの意見は勿論聞く。だが、まずはアイムにはちゃんと話をしてほしい。俺はそう思っている」

 

アイムはマーベラスをはじめとする、ナビィを含む全員に向かってペコリと頭を下げた。

 

「ごめんなさい、私、隠し事していました」

 

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「アイムから大体の話は聞いている。だが俺たちはあんたたちから直接、キチンと話を聞いた上でどうするかを決めさせてもらうことにする。まず、話してもらえないか?」

 

ここはガレオン船と、ファミーユ星からやって来た傷だらけの宇宙船との間にあたる場所である。

 

アイムからの通信を傍受したコルデス、レザルタス、ユニシアの三人は不安をいだきながらも、とにかくゴーカイジャーの皆と話をするために、ここまで来たのだ。

 

そして、それと向き合うかのように

 

マーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の六人は風に吹かれながら、その場に立っていた。

 

向かい合っているコルデス、レザルタス、ユニシアの三人には

 

大切な姫様であるはずのアイムが、ゴーカイジャーの一員として自分たちと向かい合っているという現実を感じずにはいられなくなる。

 

それでも、言うべきことは言わなければならない。

 

他ならないファミーユ星の未来のために。

 

「マーベラス様、そしてゴーカイジャーの皆様、これまで姫様をお守りいただき、本当に感謝しております」

 

コルデスが緊張を隠せない表情で、しかし、ゆっくりと話を切り出す。

 

「お守りいただき、いや、それは違うな!」

 

マーベラスは、彼なりに言葉を選びながらも、目の前のコルデスに向かって返事をする。

 

「アイムは自分から、どんな奴らかも知れないような海賊である俺たちの仲間にしてくれといって頼み込んできたんだ。賞金首の海賊と聞いただけでビビってしまうやつだっているというのに…」

 

マーベラスはチラリとハカセの方を見る。

 

そして、その視線に気づいたハカセは苦笑いを浮かべる。

 

以前、ハカセがある惑星で修理屋を営んでいた時に、ルカが、一応は貴婦人(?)らしき格好をしてガレオン船内のメインコンピューターの修理をお願いに行った時のことである。

 

ハカセは、彼女が手配中だった賞金首の海賊だったことにすぐ気づいて、思わずその場から逃げ出してしまったのだ。

 

ただ、一度引き受けた仕事はやり遂げないと気がすまないという彼の性分から、あえてガレオン船の修理に、内心ビビりながらもやって来たのだったが…

 

その彼は今や、仲間の誰もが認める『勇者』である。

 

そんなハカセの様子をチラリと確認したマーベラスは、再びコルデスたち三人に向き合うと、あえてキッパリと言い切った。

 

「最初は剣さえまともに持つことが出来なかったアイムが、今は帝国軍の戦闘員たちなど容易く蹴散らせるくらいにまで成長したんだ。そう、こいつはもう、自分の身くらい、自分で守れる。それだけ努力して強くなったんだ!」

 

マーベラスは誇らしげにアイムを見る。

 

「俺たちがザンギャックと敵対しているというだけで、その実、悪質な海賊だということだってあり得たはずだ。だが、アイムは俺たちを信じて仲間になりたいと自ら希望し、そして自分で努力して、俺たちに付いていけるだけの『強さ』を身につけることが出来たんだ。繰り返す。俺たちがアイムをお守りしていたわけじゃない」

 

マーベラスのその言葉に、思わずアイムは微笑んだ。

 

嬉しかった。

 

王国が滅亡し、一人であてもなくさまよっていた自分。

 

その自分をここまで育ててくれたのは、今、ここにいる仲間たちなのだ!

 

「なるほど、これは、こちらの言い方が悪かったかもしれませぬな」

 

コルデスもここは素直に認める。

 

「その姫様を、いわば鍛えてくださったゴーカイジャーの皆様に、是非、お願いしたき儀があり、我ら三人、困難を承知でファミーユ星より、この地球までやって来ました」

 

「ああっ、あんたたちの苦労は確かにわかるし、大変だったと思う」

 

マーベラスは、それについては率直に彼ら三人を労う言葉をかけた。

 

「はい、未だファミーユ星はザンギャック帝国軍の支配下にあり、ファミーユ星の者たちはザツリクの後任司令官ダグラスの圧政に苦しんでいます。奴らは我がファミーユの鉱石、特にダイヤモンドなどの宝石類と宇宙船を作るのに必要なレア・メタル類の過重なまでの増産のため、未だ逃げ場もなくファミーユ星で辛い暮らしをしているものたちの多くを強制労働に狩りだし、地獄のような強制労働に従事させ、たまりかねて逃げ出す脱走者には、見せしめのため、それこそ残虐な公開処刑を行っています」

 

そのコルデスの言葉を聞いた瞬間、思わずアイムは「うっ!」と顔を手でおおう。

 

彼女にとり、ファミーユ星に残された者たちのことが気にならないはずはないのだ。

 

勿論、そんなことはマーベラスをはじめ、海賊たちは皆、承知していることである。

 

「私たちはファミーユ星を、そこに住む者たちの手に取り戻したい!、そのためにレジスタンス組織も結成しました。ですが…」

 

ふいにジョーが口を開いた。

 

「皇帝アクドスがいなくなり、帝国軍の主力は壊滅したとはいえ、未だザンギャック帝国そのものは健在、ファミーユ星の一部有志たちが抵抗を試みたところで蹴散らされるのがオチというところさ」

 

マーベラスを代表者と認識し、マーベラスと話をつければと考えていたコルデスにとり、このジョーの急な発言は、いささか意表をつかれた感があり、唐突に見えた。

 

が、コルデスは直ぐに冷静さを取り戻すと、今度はジョーの方に向かって

 

「ジョー・ギブケン殿ですな」

 

と返事をする。

 

「いかにも」

 

ジョーは頷くと

 

「これでも元、ザンギャック帝国軍の軍人として将来を嘱望されたこともある身なんでな。奴らの内情は多少は知っている」

 

と前置きし、そして説明をする。

 

「アクドス亡き後の帝位をめぐって、恐らく今、ギル一族は内輪揉めの真っ最中のはず。恐らくは皇妃のジャマス・ギルが仮の皇帝位についているはずだが、奴の息子ワルズはもう亡い。俺たちが葬った」

 

ザンギャック帝国軍…

 

ジョーにとり、それは複雑な想いを呼び起こさせる存在だった。

 

だが、今は追憶にひたっている時ではない。 

 

「一方で皇帝の弟で野心家のザンニンス・ギルが、これを機に自らが皇帝になろうとしているのは間違いないところだろう。いずれにしろ帝国は割れる。そして、それに乗じてザンギャックが征服した星々の司令官たちがこれを機に自立を画策し、その星の帝王になろうとする奴も現れている。ダグラスも恐らくはその一人だ。もっとも俺は、あいつがザツリクの後任としてファミーユ占領軍の司令官になっているというのは、今回はじめて知ったんだがな」

 

「ジョー、そのダグラスという奴を知っているのか?」

 

思わずマーベラスがジョーの方を振り返る。

 

だがジョーは

 

「ああ、昔の知り合いだ。だがマーベラス、今はコルデスさんたちとの話を先にしよう。仮にもザンギャック帝国軍に対するレジスタンスを企てようとするくらいだから何かしらの勝算はあるはずだ」

 

と素っ気なく答えた。

 

それもそうだな、とマーベラスは再びコルデスの方を向く。

 

「コルデスさん、聞いての通りだ。ファミーユ星を取り戻すためのレジスタンス、それをやろうというからには、それなりの勝算は考えているはすだろう?、それとも、まさか」

 

そこでマーベラスはニヤッと笑う。

 

俺達六人の海賊(・・・・・・・)の力を当てにして、帝国軍退治を丸投げなんて腹積もりじゃないだろうな」

 

俺達六人の海賊

 

その六人には当然、アイムも含まれるのは自明である。

 

だがコルデスたち三人には、それは受け入れがたいことであった。

 

「マーベラス様、お恥ずかしながら、その通りです。皇帝を失い、主力が壊滅したとはいえ、未だ強大なザンギャック帝国軍に、我らが徒手空拳で敵うはずもないのは厳然たる事実。それを率直に認めた上で、皆様のお力をお借りしたいと思い、こうして地球までやって来ました」

 

コルデス、そこから先は言わないで!!

 

思わずアイムは心の中で叫ぶ。

 

だが、コルデスは当然のように話はじめた。

 

「帝国軍を追い出し、ファミーユ王国が再建できた暁には、勿論、姫様には正式にファミーユ王国の女王位に即位していただき、マーベラス様には、その配偶者となっていただきたい。勿論、他の皆様にも再建なった新たな王国に重要な地位をお約束し、場合によっては大臣位なども…」

 

コルデスの考えでは、恐らくはもう、アイムはマーベラスと肉体関係にあるだろうと踏んでいたのだ。

 

若い男女が少人数の海賊船の中で何事もないと思えるほど、コルデスは楽観的ではなかった。

 

しかし、それでもアイムは大切なファミーユ王国の唯一の正統な継承者であり、しかも、その配偶者のあても、どのみち無いのだ。

 

なら、いっそ…

 

だが、そのようなコルデスの考えを一笑にふすものがいた。

 

「ばっかじゃないの!」

 

いきなりルカの毒舌が飛び出す。

 

「マーベラスとアイムが結婚って、本人たち同士の気持ちはどうなるのよ?、だいいちアイムには他に好きな人がいるのよ!」

 

えっ?

 

アイムは思わず真っ赤になってうつ向いた。

 

ジョーが軽く咳払いをする。

 

マーベラスは何やら割りきったようにニヤリとする。

 

コルデスたち三人が思わず言葉を失っているところへ、ルカが今度は話の核心に向けて斬り込む。

 

「それはまあ、ともかくとして」

 

ルカはそう前置きすると

 

「ファミーユ王国の再建なんてこと言うより前に考えるべきことがあるでしょうよ!、そのための軍資金はどうするの?、それこそザンギャックの圧政に苦しんでいるファミーユの人たちには、それだけのお金を用意することなんか出来ないでしょう!」

 

が、これについてはコルデスは引き下がらない。

 

「軍資金工面の当てならある!」

 

だがルカは

 

「へえっ?」

 

と鼻で笑うような態度を取る。

 

勿論、わざとである。

 

コルデスはイライラした気持ちを隠すことなく

 

「ファミーユ星は元々、鉱石に恵まれ、宇宙船の建造に必要なレア・メタル類なども豊富に産する。今はザンギャックによって、ほしいままにされているそれらの鉱石を産する鉱山を担保に金融業者に金を借りることも出来るし、そのような業者の当てもある!」

 

「でっ?、足元見られて、思いっきり高利をふんだくられるわけ?」

 

ルカは冷ややかに言った。

 

が、その言葉にコルデスはグッとつまってしまう。

 

図星だっただけではない。

 

コルデスは既にゴーカイジャーの協力を得られるという前提で、そうした宇宙の高利貸したちと話をしていたのだ。

 

そして勿論、ルカは

 

大方、そんなことだろうな、と見抜いていたのだ。

 

ドン底の生活をしてきたルカは、その分、世間というものを知っている。

 

ここでルカがうって変わって、まるで天使のような微笑みを浮かべる。

 

「私たちと取引しない?」

 

動揺するコルデスに向かって、ルカは余裕綽々で言う。

 

「ザンギャック帝国軍を追い出し、晴れてファミーユ星が独立を取り戻すことが出来たら」

 

ルカはにこやかに微笑みながら言うと

 

「私たちゴーカイジャーに、そのファミーユ星の鉱山の『経営権』をくれないかしら?、勿論、ファミーユの新しい政府に、ちゃんと税金は払うし、それによってファミーユ星を豊かな、宝物の星にして見せるわ!」

 

そう、キッパリと断言した。

 

「ル~カ~!」

 

マーベラスが楽しそうに笑う。

 

「ある意味、お前らしい『取引』だよな!」

 

そのマーベラスの言葉を聞いて、ルカは思わず小悪魔的な笑みを浮かべる。

 

こういう時のルカは本当に可愛いな…

 

つい、マーベラスもそんなことを考えてしまった。

 

なおもコルデスは

 

「だとしても当座の軍資金は…」

 

と言うのだが

 

「ご心配なく」

 

ルカはそう言うと悪戯っぽく

 

「じゃあーんっ!」

 

と言って懐から紙を取り出した。

 

「これは私が今まで苦労して集めた宝石たちの目録よ!、一個一個に値段が書いてある。星一個買うためにはまだまだ不足しているけど、こいつらを担保に、あたしたちゴーカイジャーの名前で地球を含む、あちこちからお金を借りれば、まあ、当座の軍資金くらいにならなるでしょう!」

 

「ルカさん…」

 

アイムが思わず感涙にむせぶ。

 

ルカがこの宝石たちを集めるのにどれだけ苦労してきたか?

 

それはアイムもよく知っている。

 

「いいわね、マーベラス。私たちゴーカイジャーはザンギャック本星へ行く前に、まずファミーユ星に向かう!」

 

そのルカの言葉にマーベラスは思わず苦笑する。

 

「いいだろう、ルカ!」

 

そしてマーベラスは、あらためてコルデスに向かって言った。

 

「コルデスさん、聞いての通りだ。俺達はファミーユ星をお宝の星にするため、まずファミーユ星へと向かう!」

 

そしてマーベラスは副官的存在であるジョーをはじめ、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の五人に号令する。

 

「みんなもいいな!」

 

「意義な~し」

 

と鎧。

 

「行きましょう!」

 

とハカセ。

 

「皆さん、ありがとうございます」

 

とアイム。

 

「コルデスさん、すまなかったな。そして他の二人も、今から俺達のガレオン船に来てほしい。今後のことについてゆっくりと話をしよう」

 

すっかり海賊たちのペースに巻き込まれてしまった感のあるコルデス、レザルタス、ユニシアの三人は、とにもかくにも頷くしかなかった。

 

「あと、言っておく」

 

とマーベラス。

 

「アイムは俺達の大切な仲間だ。だが、少なくとも俺はアイムと、国王とその家臣という関係になることを望んでいない。みんなもそうだと思う」

 

マーベラスはそう言うと、仲間たち一人一人を見ながら

 

「俺は船長だが、アイムの上司じゃないし、アイムも俺の部下じゃない。ここにいる六人は対等な関係なんだ。それは分かってくれ!」

 

と旧ファミーユ王国の家臣たち三人に向かって言う。

 

だが、それについてコルデスは返事をしなかった。

 

アイムにファミーユ王国の女王位に即位してもらう。

 

これは三人の、そして多くの同志たちの大きな目標であり、それを諦めることなど、考えることすら出来なかったのだ。

 

まあ、よい。

 

そんなコルデスにとって、ルカの提案は、ある意味で渡りに船と言ってもよかった。

 

ファミーユ星へ行き、そしてファミーユ星をザンギャック帝国軍から解放するまで時間はある。

 

その間に姫様を説得し、最終的にはファミーユ王国再建後の女王位に即位していただくのだ。

 

それはレザルタス、ユニシアも同じ気持ちであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「目標、ファミーユ星に変更、これよりファミーユ星を『お宝の星』にするため出発する!」

 

マーベラスはそう宣言する。

 

「みんなっ、派手に行くぜっ!!」

 

おーっ!!!

 

アイムを含む、他の五人の歓声があがる。

 

こうしてゴーカイジャーのガレオン船は、ファミーユ星からやって来た旧ファミーユ王国の宇宙船の先導のもと

 

一路、ファミーユ星に向かうことになったのだ。

 

(了)

 




アイムとマーベラスたちゴーカイジャーたち四人の出会いから、いきなり話が飛んでいますけど

それについては海賊戦隊ゴーカイジャー本編を見てください、ということで

本作はあくまでも原典あっての二次創作小説です。
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