※本作のマレヴォランスの設定について
今作に登場するマレヴォランスの建造費は、22億5000万クレジットとなります。
史実(8億7550万クレジット)と比較して、「サイズ2倍」「イオン砲のチャージ時間短縮&連射可能」「超高出力ターボレーザー搭載」という超高性能スペックへ強化した結果、約2.5倍のコストがかかった……という設定です。
独立星系連合が総力を挙げて建造した、文字通りの『最強の決戦兵器』としてのスペックとなっております。
惑星セレノーを包む夜は冷徹であり、そしてどこまでも静謐だった。城の最奥、厳重なセキュリティに守られたドゥークー伯爵の自室。薄暗い部屋の中心で、青白いホログラムの光が不気味に揺らめいていた。そこに浮かび上がっているのは、既存のいかなる戦艦の常識をも超越した、規格外の超巨大宇宙戦艦の設計図である。
その名は――《マレヴォランス》。ドゥークーは肘掛け椅子に深く腰掛け、鋭い眼光でその巨体の3Dホログラムを見つめていた。
全長は8km。共和国の主力艦であるヴェネター級スター・デストロイヤーが、まるでゴミ虫のように見えるほどの絶望的な質量。
2年前、ジオノーシスでの正式な発足会合よりも遥か前から、ドゥークーは圧倒的な国力を誇る共和国に対抗するため、『質』の極致を求めて水面下で奔走してきた。企業連合の財政を限界まで絞り上げ、彼自身の莫大な私財をも投じて造り上げつつある、一撃必殺の超兵器だ。
武装の核となるのは、船体の両側面に取り付けられた、巨大な円形の『メガ=イオン砲』。従来の設計ではチャージ時間に致命的な隙があったが、ドゥークーは連合の造船技術者たちを脅迫混じりに急き立て、即座に充電可能、かつ連続で連射が可能な設計へと変更させた。
このメガ=イオン砲から放たれる莫大なエネルギー波によって敵艦隊の電力とシールドを完全無力化し、無防備になった標的を、艦首に搭載された超高出力ターボレーザーと無数の通常ターボレーザーで、塵も残さず消し飛ばす。
だが、この《マレヴォランス》には致命的な弱点もあった。艦体が巨大すぎて、戦闘機のような小さな標的に対する小回りが効かないのだ。
「……だからこその、あの娘の玩具か」
ドゥークーは低く呟いた。艦の対空レーザー砲を大幅に増強するのは当然として、それだけではジェダイの駆るスターファイターや優れたクローンパイロットによるピンポイント爆撃は防げない。そこでドゥークーが取り入れたのが、養女ドラヴェナの発案だった。
艦外の絶対防衛を、メイリスを筆頭とする『B2スーパー・ロケット・トルーパー』の精鋭部隊に担当させる。ベスカー合金の装甲を纏ったドロイド達が、真空の宇宙空間を縦横無尽に飛び回り、接近する敵戦闘機を四重レーザー砲で直接迎撃・破壊する――その完璧な防空システムが機能して初めて、この戦艦は無敵となる。
更に装甲の強化として、ブリッジやイオン砲の心臓部など、最重要区画にのみ限定的にベスカー合金の複合装甲を施す。これが完成すれば、プロトン魚雷の直撃すら易々と耐える「不沈艦」となる……予定であった。
そう、すべては未だ“予定”であり、実質として《マレヴォランス》は未完成だった。
「ベスカー合金……。平和主義者のサティーンめが」
ドゥークーは不快そうに眉をひそめた。ジャンゴ・フェットが闇ルートで調達してきた量では、ドロイド1体分を製造するのが限界だ。《マレヴォランス》の完全な性能を引き出すには、ドラヴェナとデス・ウォッチによるマンダロア政権転覆計画を何としても成功させ、ベスカーの正規ルートを開拓しなければならない。
そうでなければ、B2スーパー・ロケット・トルーパーの量産も、《マレヴォランス》の完全なる防備も叶わないのだ。
そして……この化け物戦艦の建造費用は、現時点で22億5000万クレジットという破格の天文学的数字に達していた。
通常、この規模の船を造ればこれだけでは到底収まらない。だが、この船の乗組員は全員がバトル・ドロイドであり、生身の人間は指揮官たるドラヴェナただ一人。そのため、数万人の人間が生きる上で重要な『酸素供給』『温度調節』『人工重力』『食料庫』『居住区』といった、莫大なコストがかかる生命維持設備がほぼ全域にわたって必要なかった。
ドラヴェナ一人分の豪華な私室とブリッジ周辺さえ用意すれば、後は全てジェネレーターと火器にリソースを回せる。だからこそ、この額で収まっていたのだ。
しかし、大事なのはこれからの戦果だった。巨額の資金と大量の資源を使った以上、それに見合う『元を取る』必要がある。そして何より、あの臆病で強欲な分離主義者達に、独立星系連合が『戦争に勝てる』という絶対的な事実を証明しなければならなかった。
特に通商連合のヌート・ガンレイ総督は、黒幕であるダース・シディアスとあまりにも深く関わり、その恐怖の呪縛に囚われている。彼らの心を完全にこちらへ繋ぎ止めるには、シディアスさえも打倒できる圧倒的な軍事力と、それを操る実力者の存在が不可欠だった。
「ドラヴェナ……。あの娘なら、あるいは」
ドゥークーの脳裏に、数日前にシディアスへの宣戦布告を狂気的に笑い飛ばした養女の姿が浮かんだ。
確かにドラヴェナは制御不能な怪物であり、その先天的な嗜虐性と最悪な性格はドゥークーでさえ引き気味になる。だが少なくとも彼女は、自分をここまで育て、我儘を全て叶えてくれたドゥークーに対して、奇妙な筋の通った恩義を感じている。そこにシディアスへの敵対心を植え付けた。
シディアスという銀河の全てを欺く絶対的な闇を超えるには、ヴェントレスのような憎しみの人形や、グリーヴァスのような誇り高きサイボーグ戦士では足りない。優れた戦士ではなく、銀河の全てを混沌に陥れる『最強最悪の怪物』が必要なのだ。
強大なフォースを持ち、紅の刃を振るって残虐に嗤うドラヴェナが《マレヴォランス》の玉座に座る限り、ドゥークーはシディアスに勝利する確固たる自信があった。
―――“裏切りはシスの道”。
ドゥークーの胸の奥で、暗黒の野心が静かに燃え盛る。いずれ師であるシディアスを謀殺し、自分が銀河の頂点に立つ。そのための最高の一手、最強のチェスピースは、もう手の中にあった。
ホログラムの青白い光が、ドゥークーの冷徹な横顔を妖しく照らし続ける。悪魔の令嬢と、彼女の動く城が銀河へ解き放たれるその時。共和国も、そしてダース・シディアスも、未だかつてない絶望の味を知ることになるのだろう。
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これからも、残忍なドラヴェナの活躍を描いていきます!