本日2回目の投稿です!思いのほか執筆が進んだので、勢いでアップさせていただきました!
ハイパースペースの青白い残光を切り裂き、海賊旗を掲げた3隻のミュニファスント級スター・フリゲートが、マンダロアの軌道上へと静かに滑り込んできた。その細身の船体が標的を捉えた瞬間、強力な通信妨害装置が起動し、美しきドーム都市『サンダーリ』の全通信網を完全な沈黙へと叩き落とす。
「ふふ……さぁ、哀れな羊達の悲鳴を聞かせてちょうだいな。……おっと、通信を遮断しているから聞こえませんわね。実に勿体ないことですわ」
旗艦のブリッジで、ドラヴェナは残忍に嗤った。現在この3隻のフリゲート艦には、操縦のために最低限必要な数のバトル・ドロイドが配備されているのみで、生身の人間はドラヴェナただ1人。ジャンゴ・フェットは、不測の事態に備えて1パーセク離れた本隊のルクレハルク級に待機させていた。
「爆撃ポイントヘ到達シマシタ。攻撃ヲ開始シマス」
ドロイドの無機質な復唱と共に、ミュニファスント級の船体下部に設置されたターボレーザーが一斉に火を吹いた。サンダーリの防衛シールドが激しく明滅し、都市の周辺が炎と硝煙に包まれる。平和主義を掲げ、軍備を徹底的に削ぎ落としたサティーン政権にとって、この唐突な『海賊の襲撃』は、まさに天を仰ぐほどの絶望であった。
民衆が泣き叫び、無能な政府が右往左往する絶好のタイミングを見計らい、ついに『舞台の主役』が天空から姿を現した。雲海を割り、鋭利な翼を持つ全長約70mのコムルク級ファイターの編隊が急降下してくる。デス・ウォッチの襲来だ。
次の瞬間、コムルク級のアクセス・ハッチが一斉に開放され、伝統的なアーマーに身を包んだ戦士達が虚空へと飛び出した。彼らは各々のジェットパックから青い炎を噴射し、凄まじい速度でミュニファスント級へと肉薄していく。
「あら、相変わらず派手でイカれた演出ですわね」
ドラヴェナは窓硝子に顔を寄せ、デス・ウォッチの鮮烈な急降下爆撃を目に焼き付けていた。その天才的な悪の脳細胞が、ある閃きを弾き出す。
(あのコムルク級のような、ドロイド専用のガンシップを作れないかしら? メイリスを筆頭とするB2スーパー・ロケット・トルーパーの部隊をあの機体に乗せて、宇宙空間や大気圏内を高速移動させれば……それこそ、共和国のクローン兵など一瞬で肉片にできますわ)
自身の玩具を更に凶悪にするためのアイデア。ドラヴェナはそれを記憶に刻むと、手元のコンソールを乱暴に叩いた。
「ドロイド共、退艦命令ですわ! この使い古しのブリキの塊は放棄しますわ!」
「ラジャー、ラジャー!」
ドロイド達に脱出ポッドへの退避を命じ、ドラヴェナ自身もメイリスと共に待機させていたシーシピード級輸送シャトルへと乗り込んだ。
シャトルがフリゲート艦を離脱してサンダーリの影へと隠れるのとほぼ同時に、デス・ウォッチの凄まじい波状攻撃が始まった。ロケット弾やミサイルがミュニファスント級の装甲を次々と引き裂き、海賊に偽装された3隻のフリゲート艦は大地へと激突し、大爆発を起こした。
地上で絶望していた民衆の目に、それは凶悪な海賊を打ち破った『救世主』の姿として映り込んだ。サンダーリは歓喜と、デス・ウォッチを称える大歓声に包まれた。偽りの英雄、プレ・ヴィズラによる政権掌握は、恐ろしいほど迅速だった。
ヴィズラはサティーン公爵を即座に捕らえて冷たい独房へと監禁。サティーンを支えていたアルメク首相をはじめとする政治家達は、高潔な理想など微塵も持ち合わせていなかった。
彼らにとって最も大事なのは己の『保身』。銃口を突きつけられると、彼らは何の躊躇いもなくサティーンを裏切り、新たな権力者であるヴィズラに従うことを誓ったのだ。
その後、サンダーリの中央広場に立ったヴィズラは、ホログラムを通じて新政権の発足と、独立星系連合との同盟を全マンダロアの民衆に向けて宣言した。更に、彼はドラヴェナとの約束通り、冷徹な声で付け加えた。
『――我が国が誇る不滅のベスカー合金。その全ての取引と運用は、連合の最高幹部であるドラヴェナ令嬢個人に限定する。強欲な商人共に、我らの聖なる鋼を汚させるつもりはない!』
その放送をシャトルのモニターで確認したドラヴェナは、ふっ、と満足げな笑みを漏らした。
「よく言いましたわ、ヴィズラ閣下。さあ、次は私の番ですわね」
ドラヴェナは即座に1パーセク離れた本隊へ通信を送り、待機させていたミュニファスント級7隻とルクレハルク級2隻をハイパージャンプさせた。マンダロアの軌道上へ突如として現れた巨大な分離主義者の艦隊は、瞬く間に強固な防衛線を構築。共和国からのいかなる介入も許さない、鉄壁の包囲網が完成した。
ドラヴェナはシーシピード級シャトルをサンダーリの王宮へと着陸させ、厳かな謁見の間へと足を踏み入れた。待ち受けていたプレ・ヴィズラが、ガントレットに覆われた手を差し出す。
「お見事な手際でしたわ、ヴィズラ閣下。これでこの国は、私達のものですわね」
「令嬢の冷徹な爆撃があってこその勝利だ。これでベスカーは貴女のものだ。有効に使い、共和国を震撼させてくれ」
二人は冷酷な強者同士の、歪んだ握手を交わした。その後、軌道上の旗艦へと戻ったドラヴェナは、最高セキュリティの通信室からセレノーのドゥークー伯爵へとホログラム通信を繋いだ。
「お義父様、マンダロアの政権掌握、全て手筈通りに成功いたしましたわ」
青白い光の中に現れたドゥークーは、その威厳ある顔に心からの称賛の笑みを浮かべた。
『素晴らしいぞ、ドラヴェナ。銀河系で最も恐れられる強力な戦士達を完全にこちらの陣営へと引き込むとはな。お前の才覚は私の想像を遥かに超えている。よくやった』
「ふん、当然ですわ。これで全てのベスカーの権利は私が握りました。お義父様、すぐにでもメイリスの同型機……B2スーパー・ロケット・トルーパーの量産を開始させますわ。それと、もう1つ提案がありますの」
ドラヴェナは琥珀色の瞳をぎらつかせ、身を乗り出した。
「マンダロアのコムルク級を見て思いつきましたの。あのメイリスたちの部隊を高速運用するための、重武装の“ドロイド・ガンシップ”を同時に新規開発させたいのですけれど――」
『いや、それはならん、ドラヴェナ』
ドゥークーは静かに首を横に振り、養女の提案を遮った。
『お前の先見性は認めるが、今はその時ではない。戦力を分散させる余裕はないのだ』
「何故ですの!? あの白いクローン共を上空から嬲り殺しにするための、最高の玩具になりますのに!」
不満げに声を荒らげるドラヴェナに、ドゥークーは低く、だが重厚な期待を込めた声で告げた。
『焦るな、ドラヴェナ。それよりも最優先すべき事項がある。手に入れた貴重なベスカー合金の第一陣を、即座に私が指定した連合の秘密造船所へと送るのだ』
「……造船所? ああ、まさか」
『その通りだ。2年前から極秘裏に建造を進めていた、あの規格外の巨大戦艦――《マレヴォランス》を、ついに完全な形にする時が来た。最重要区画にベスカーの装甲を施し、即座に実戦投入可能な状態へと仕上げる。……ドラヴェナ、あの不沈の魔城は、お前の新たなる旗艦となるのだ』
その言葉を聞いた瞬間。ドラヴェナの脳裏に、あの全長8kmの破壊の化身のホログラムが蘇った。即座に連射可能なメガ=イオン砲を搭載し、ベスカーの装甲を纏った、ドラヴェナ1人のためだけに動く城。
「――私の、新しい旗艦……」
ドラヴェナの唇が、みるみるうちに凶悪な愉悦へと歪んでいく。
「いいでしょう、お義父様。ドロイド・ガンシップの開発は、一時見送って差し上げますわ。まずはあの《マレヴォランス》を完成させ、私の手足として銀河へ解き放つのが先決ですわね」
『うむ、賢明な判断だ。完成の日は近い。期待しているぞ、ドラヴェナ』
通信が切れた暗いブリッジで、ドラヴェナは高らかに、そしてどこまでも邪悪に嗤った。
ついに手に入れた、最強の鋼鉄『ベスカー』。それが未完成の化け物戦艦へと組み込まれた時。独立星系連合は、共和国のみならず黒幕ダース・シディアスをも恐怖させる、真の悪夢を完成させることになる。