STARWARS――銀河の悪意を纏う薔薇   作:鉅鹿

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※ジャンゴ・フェットの動向およびドラヴェナとの会話を描写し忘れていたため、冒頭の本文内容を一部修正・改稿いたしました。




13話 悪魔と狼の共闘

プレ・ヴィズラによるデス・ウォッチがマンダロアの政権を掌握してから、2ヶ月の月日が流れた。民衆を欺いた『英雄の虚像』は巧みに機能し、新政権の統治は驚くほど速やかに安定へと向かっていた。

 

戦争にこれ以上深く巻き込まれることを嫌ったジャンゴ・フェットは、ドラヴェナに「またな、お嬢ちゃん」と短く別れの言葉を残すと、愛機『スレーヴI』とともに虚空へと去っていった。ドラヴェナも深追いすることはせず、優秀な傭兵の去り際を黙認した。

 

爆撃によって破壊された首都サンダーリの修復作業には、ドラヴェナの命令により数万体のバトル・ドロイドが投入され、デス・ウォッチの戦士達と共同で当たっていた。これには、新たな同盟国である独立星系連合の印象を民衆へ植え付け、同時にデス・ウォッチとの結束をより強固に見せるという明確な政治的狙いがあった。

 

「早く動かしやがれですわ、ブリキ人形共! 私自ら手を動かして差し上げているのですから、のろのろとサボっているんじゃありませんよ!」

 

旗艦のブリッジから地上へ降りたドラヴェナは、自らの莫大なフォースを行使して作業を手伝っていた。彼女が細い指先を払うだけで、数トンの重量を持つ大理石の崩落した外壁や巨大な鉄骨が、まるで羽毛のように軽々と持ち上がり、次々と正確な位置へと積み上げられていく。

 

最強のジェダイマスター・ヨーダに匹敵するその天性の才が、建設という極めて不本意な方向に使われた結果、都市の修復スピードは劇的に向上した。今やサンダーリは、爆撃の痕跡など微塵も感じさせない、元通りの美しき近代ドーム都市の姿を取り戻していた。

 

この2ヶ月間、食料や医療品を限界まで詰め込んだ連合の大型輸送船が次々とマンダロアの軌道上へと到着し、地上へと物資を運んでいく。代わりに、衛星コンコーディアやマンダロアの地底から採掘された、極上のベスカー合金の原石が輸送船の広い船倉へと積み込まれていった。行き先は、ドゥークー伯爵が指定した連合の秘密造船所。

 

数日前、ドゥークーから届いた極秘のホログラム報告では、あの規格外の巨大戦艦《マレヴォランス》の建造は最終段階に入り、あと少しで完全な完成を迎えるとのことであった。

 

自分一人のためだけに動く魔城。その完成を夢見てドラヴェナが残忍な笑みを深めていた、まさにその時――。ブリッジのホログラム・コンソールが血のような赤色に激しく明滅し、けたたましい警報音が鳴り響いた。

 

『警告、警告。ハイパースペースからの質量出現を確認。敵艦隊デス』

 

空間が歪み、白い閃光と共にハイパースペースを抜けて現れたのは、8隻の共和国艦隊であった。編成は、共和国軍の象徴であり主力艦であるヴェネター級スター・デストロイヤー5隻。そして、その周囲を固める護衛艦のアクラメイター級アサルト・シップ3隻。

 

ヴェネター級は、全長1.2km。その巨体には重ターボレーザー砲を多数備え、圧倒的な面火力を誇る強力な戦艦だ。更に、船体全体が頑強な装甲板で覆われており、最新型の強力な偏向シールドを展開可能。ジェダイ達の過酷な前線戦闘に耐えうる、恐るべき耐久性を誇る難敵であった。

 

一方のアクラメイター級は、全長750mとヴェネター級に比べれば一回り小型であり、艦隊戦を戦うには圧倒的に火力が不足している。アクラメイター級本来の役割は、大量のクローン・トルーパーを運ぶ兵員輸送、および大気圏内に突入しての地上爆撃であり、純粋な艦隊戦には不向きな船であった。

 

現在、アウター・リムへと繋がる主要な航路は独立星系連合が完全に支配している。加えて、グリーヴァス将軍率いる本隊の艦隊が、銀河の各地で電撃的な猛攻を仕掛けているため、共和国軍の防衛兵力はそちらに大きく割かれているはずであった。

 

(にも関わらず、このマンダロアへわざわざ貴重な戦力を割いて攻めてきたということは……私達がベスカー合金を独占しているのを、何としてでも止めたいということですわね。……フン、まさか『中立を貫いた前公爵サティーンを救い出すため』などという、頭お花畑の偽善が理由なんてことは有り得ませんわよね)

 

ドラヴェナの琥珀色の瞳に、久しく忘れていた残虐な戦意が宿る。攻めてきた以上、生かして帰すわけにはいかない。こちらの戦術を組み立てるため、ドラヴェナは自軍の戦力を冷徹に計算した。

 

こちらの艦隊の主力であるミュニファスント級は、全長820m。船体の前部に、極めて強力な大型の正面主砲を備えており、遠距離からの重砲撃や、敵艦のシールドをピンポイントで破壊する能力には長けている。その反面、船体の構造上、装甲が致命的なまでに薄く、防御力は無に等しかった。

 

これには元々、ミュニファスント級がインターギャラクティック銀行グループの借金取り立ての際、対象の惑星を脅すための『威嚇用』として造られたという、ひどく世俗的な背景が関係していた。最初から、正面切っての本格的な艦隊戦を想定していないのだ。

 

ちなみに、本艦にこれほど強力な通信妨害装置がついているのも、銀行グループ独自の秘密通信網と財政データを防衛するための機能に過ぎない。

 

「ならば、やることは一つですわ。あの紙装甲の船を敵の射程に入れるわけにはいきませんもの」

 

ドラヴェナの基本戦術は決まった。敵艦との距離が完全に開いているアウトレンジのうちに、ミュニファスント級の長距離正面主砲による集中砲撃を浴びせる。同時にルクレハルク級2隻から発艦させた無数のヴァルチャー・ドロイドの大群による波状攻撃で、敵艦隊を近づく前に壊滅、あるいは撤退へ追い込むのだ。

 

その時、ブリッジのメイン・スクリーンにプレ・ヴィズラの精悍な顔が映し出された。

 

『令嬢、共和国の羽虫共が嗅ぎつけてきたようだな。サティーンの無能な治世は終わり、今のマンダロアは我ら戦士の国だ。我らの誇りを示すため、共に戦おう』

 

ヴィズラは力強く宣言すると、すでに衛星コンコーディアに待機させていたデス・ウォッチの隠密部隊を動かすと告げた。

 

敵のヴェネター級からクローン達が駆るV-19トレントスターファイターが飛び出し、こちらのヴァルチャー・ドロイドとの激しい乱戦で釘付けになっている、まさにその隙を突く。デス・ウォッチの戦士達が操る全長70mのコムルク級ファイターの編隊で、手薄になった敵艦のブリッジやエンジンへ直接奇襲を仕掛けるという、極めて合理的かつ凶暴な戦術であった。

 

「素晴らしいわ、ヴィズラ閣下! 狼の国の戦士達にふさわしい、血生臭い奇襲案ですこと!」

 

ドラヴェナは完璧な残虐の笑みを浮かべ、傍らに控えるT-シリーズ・タクティカル・ドロイドへ向けて鋭く命じた。

 

「各軍艦へ戦闘準備を通達しやがれですわ! ヴァルチャー・ドロイドは全機発艦、ミュニファスント級は正面主砲のエネルギー充填を開始しなさい! 偽善に塗れたあの白い羊共を、1匹残らず宇宙の塵にして差し上げますわ!」

 

「了解シマシタ。全艦、第一種戦闘配置」

 

機械達の復唱とともに、マンダロアの静かな軌道上が、一瞬にして赤と青のレーザーが交錯する地獄の戦場へと変貌を遂げていった。

 

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