STARWARS――銀河の悪意を纏う薔薇   作:鉅鹿

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6話 胎動する闇の連合

22BBY。ついに銀河の運命を決定づける歴史の歯車が、大きな音を立てて回り始めた。長きにわたる不穏な静寂は破られ、惑星ジオノーシスにて独立星系連合の発足に向けた極秘の会合が開かれようとしていた。

 

セレノーのプライベート・ポートには、ハイパードライブ装置が増設された特注の改造型シーシピード級輸送シャトルが、静かにエンジンを微動させていた。そのタラップを、漆黒と真紅のドレスを翻したドラヴェナが悠然と上っていく。彼女のすぐ後ろには、鈍い銀光を放つベスカー装甲に身を包んだ忠実な猟犬メイリスが、重厚な金属音を響かせて従っていた。

 

ドラヴェナがコックピットに足を踏み入れると、操縦席に座る二体のOOMパイロット・バトル・ドロイドが機械的な音を立てて振り返った。

 

「ドラヴェナ様、フライト・プランの設定は完了しております。いつでも出発可能です」

 

「よろしい。さっさと出しなさい」

 

ドラヴェナは特等席に腰を下ろし、計器を器用に操るドロイド達の背中を値踏みするように見つめた。2年前の彼女であれば、ただのブリキの塊と吐き捨てていたところだろう。しかし日々メイリスと接し、戦術を学ぶ中で、彼女はバトル・ドロイドという存在の評価を密かに上方修正していた。

 

(一般兵から船の操縦まで、文句一つ言わずにこなす万能な使い道。なるほど……指揮官が私のように有能であれば、この無機質な人形共も相応に強くなるということですわね。実にも使い勝手のいい道具ですわ)

 

シャトルはセレノーの重力圏を離脱し、瞬く間に星々の光が線となって流れるハイパースペースへと突入した。その暗青色のトンネルを抜けた先に待っていたのは、赤茶けた砂漠と岩肌に覆われた不毛の惑星――ジオノーシスであった。

 

無数のジオノーシアンが飛び交う不気味な尖塔の格納庫にシャトルが着陸すると、ドラヴェナは座席から立ち上がり、メイリスとOOM達に冷徹な視線を向けた。

 

「お前達はここで待機していなさい。私の許可なく一歩も動くんじゃありませんよ」

 

「了解しました、ドラヴェナ様。御武運を」

 

メイリスの滑らかな電子音声に見送られ、ドラヴェナは単身、城砦の奥深くへと進んだ。そこではドゥークー伯爵が、銀河中から集まった錚々たる顔ぶれの分離主義者達と円卓を囲んでいた。

 

テクノ・ユニオンのワット・タンバー。通商連合のヌート・ガンレイ。インターギャラクティック銀行グループのサン・ヒル。コマース・ギルドのシュ・マーイ。その他の分離主義者達。

 

彼らこそが、これから発足する独立星系連合の幹部であり、同時にドラヴェナが切望する“メイリスの量産型部隊”を製造するための資金とリソースを握る鍵であった。

 

「――紹介しよう。我が養女、ドラヴェナだ」

 

ドゥークーが厳かに促すと、ドラヴェナは完璧な、息を呑むほど優美な貴族のカーテシーを披露した。その顔には最高級のシルクのように滑らかな、品のある微笑みが浮かんでいる。

 

「皆様、お初にお目にかかります。ドラヴェナにございますわ。皆様のような偉大な先覚者の方々とお会いできて……私、身に余る光栄でございます。どうか以後、お見知り置きを」

 

その完璧なお嬢様言葉と可憐な容姿に、強欲な幹部たちはすっかり毒気を抜かれた。「おお、なんと聡明で美しい令嬢だ」「伯爵、素晴らしい後継者をお持ちですな」と、口々に称賛の言葉を浴びせる。

 

彼らは知る由もなかった。ドラヴェナの心の内で、『この金に汚い守銭奴のエイリアン共が。私の玩具のために精々大金を吐き出しやがれですわ』という、毒々しい罵倒が渦巻いていることなど。

 

 

会合が一時休廷となると、ドゥークーはドラヴェナを伴い、ジオノーシスの地下深くにある薄暗い監獄へと足を運んだ。エネルギー・バリアの牢獄の中に囚われていたのは、この地に潜入し、捕らえられたジェダイ・マスター――オビ=ワン・ケノービであった。オビ=ワンは青い光の障壁の向こうから、かつてジェダイの手本とされたドゥークーを鋭く睨みつけた。

 

「……ジェダイを捨て、共和国を裏切るとは。落ちぶれたものだな、ドゥークー伯爵」

 

「私は裏切ってなどいない。共和国の腐敗を正そうとしているのだ。ケノービ、私と共に来い。二人で組めば、銀河を裏から操る暗黒卿を倒せる」

 

ドゥークーの真摯とも言える呼びかけを、オビ=ワンは断固として拒絶した。

 

「断る。私はジェダイだ。シスの甘言には乗らない」

 

交渉が決裂し、ドゥークーが落胆の溜め息をついて黙り込む。するとオビ=ワンの視線が、伯爵の隣で退屈そうに爪を眺めていた金髪の少女へと移った。その美しいゴシックドレスと、彼女の纏う異様なフォースの密度に、ジェダイとしての直感が警鐘を鳴らしたのだ。

 

「……そこの若き令嬢。君もこの裏切り者に加担し、銀河に混沌をもたらすつもりか? ジェダイは平和の守護者だ。君のような未来ある者が、ダークサイドの闇に身を落とす必要はない」

 

その言葉を聞いた瞬間。ドラヴェナは一瞬だけきょとんとした顔を浮かべ、それから地下の牢獄全体に響き渡るような、酷く不気味で残虐な大爆笑をあげた。

 

「アハハハハハハ! お聞きになりましたか、お義父様! 平和の守護者、ですって! 笑っちゃいますわねぇー!」

 

ドラヴェナはバリアの寸前まで歩み寄ると、琥珀色の瞳を歪な愉悦にギラつかせてオビ=ワンを見つめた。

 

「弱者を守って、一体何が楽しいんですのぉー? 羊は狼に食われ、虫ケラは人間に踏み潰されるのが自然の摂理でしょう? 私のモットーはねぇ、『弱者から何もかも奪い尽くして、徹底的に痛めつける』ですわ! これから始まる戦争で、温々と暮らしている無能な連中が惨めに泣き叫ぶ顔を見るのが、今から待ち遠しくて仕方がありませんの!」

 

「……っ!?」

 

オビ=ワン・ケノービの背筋を、かつてない強烈な悪寒が駆け抜けた。額から冷や汗がだらりと流れ落ちる。彼はこれまで、数々の凶悪な賞金稼ぎや、憎悪に駆られた犯罪者達と対峙してきた。だが、目の前にいる16歳の少女から感じるものは、それらのどれとも違っていた。

 

復讐や大義、あるいは金への執着といった、人間らしい動機が一切ない。そこにあるのは、ただ純粋に他者の苦痛と絶望を渇望する、底なしの悪意。

 

(この少女は……何だ? まるで、銀河の悪意を全て凝縮させて煮詰めたような存在ではないか……!)

 

有象無象の悪党とは格が違う、本物の“怪物”がそこにいた。オビ=ワンが恐怖と驚愕に身を震わせる中。ドラヴェナはその可憐な顔を残虐に嗤わせ、来るべき大戦という名の虐殺劇に、魂を躍らせるのであった。

 




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