ごめんなさい。
時は三年前の冬。
木宮霞は白い服に白い髪、白い瞳をした明るい性格のわんぱく少女だった。
今日は守矢の山を自由気ままに駆けていた。
新しいこと、新しい場所そんなことをだだひたすらに求めて。
空は快晴で風が気持ちいい。
そして空気が一段とおいしい。
同じ山に同じような動物がいた。
銀狐。
その山で銀狐と少女は出会った。
「…あ、狐さんだぁ!」
静寂が訪れ、その後銀狐は逃げ出した。
「あ、ちょ…待てー!!」
霞も銀狐を追う。
そしてすぐ銀狐に追いついて、ダイビングヘッドで捕らえる。
野生の力がなんだ。そんなもの霞のわんぱくに劣る。
「わあっ…もふもふするぅ…。」
銀狐の毛を無邪気にかき回す。
少々気持ちよさそうだよ狐さん。…相手はどう考えても不審者だけど。
すると銀狐が、
「ぽわわわわわわ…。」
「……ほぇ?」
今しゃべった?狐さんあってはならない鳴き声しなかった?
霞はもっと銀狐の毛をかき回す。
すると狐は、
「ぽわわわわぁ……。気持ちいいよぉ…。」
「しゃべったよねぇ!!今、あらかさまに日本語話したよねぇ!!」
「………………………こんこん。」
「お見事な日本語だね!!こんこん言っているだけだよねぇ!!」
「…ちっ。」
「まさかの舌打ち!?」
確か、知能の高い動物は人間の言葉話すってお偉いさんが言ってたような。
気持ちいいのか、もう銀狐は抵抗をやめていた。
うん、こっちも気持ちいい。
などと感想をだして、
~二十分経過~
「ぽわわわわわわわわわわ。気持ちいいよー!!」
「ひやーっ!!サイッコーッ!!」
~一時間経過~
「わあー!!…あ、帰らないと。」
どこか残念そうな銀狐を解放して、
「……じゃあね。また会えると…うれしいなっ!」
そう言って霞は里に帰って行った。
(気持ちよかった…あの人と一緒に居られたらなぁ…)
そう銀狐は考えていた。
***
次の日。
霞は布団の中で目を覚ました。
外は寒いので出たくない。冬あるある。
布団の中は暖かいのに。
まあ、このままでも仕方ないので布団から出た。
「…寒っ。」
「…寒いっ!」
ほえ?今誰かしゃべった?
横を見てみると、昨日の銀狐が居た。
「あっ…狐さん!?なんでここに?」
「…お願いがあるです。」
「敬語!?うまく話せてないね!!…で、何?」
銀狐は恐る恐る言った。
「…これから、
「はへ?えっと…つまり?」
「…ペットにしてほしいです。私をです。」
「え?えええっ!?」
家族が一匹増える。
今は、母と霞、父は妖怪の犠牲になっちゃった。
そこに、一匹追加。
さすがに母に相談することにした。
そして、
「OKもらえたよ!!」
銀狐の表情が明るくなる。
霞の表情だってもちろん明るい。
「じゃ…名前決めよう!!」
「わーい、です!!」
もう名前は第三候補まで決めていた。
第一候補『デス』。理由は分かると思う。
第二候補『ポワン』。ぽわぽわ言うから。
第三候補『ポワ』。上に同じ。
結果。
「よし、『ポワン』でいこう!!」
「ぽわああああああっ!!」
すっごく嬉しそうにポワンはピョンピョン跳ね回る。
うん、『デス』もよかった気がするよ?
でもね…。
『DEATH』
ね?これ付けられて嬉しい?
というわけで、正式に家族が一匹増えました。
「お断りします。」
目の前の男の提案を霞は断った。
「…え、ですが。」
「しつこい。『何が銀狐を売ってくれ』よ。売らないから帰って。」
男は舌打ちをしながら帰っていった。
そんな男を霞は裏のある顔で見送った。
その後、霞は家の奥にいるポワンをのほうに行った。
「何話してたのです、
あなたを売るかどうかの話だよー、なんて言えるはずも無く、霞はニコッと笑ってみせた。
ここ最近、木宮家にこのような相談がよく来るようになった。
それもそのはず、銀狐の毛は高価で売れる。
でも、売る気は無い。
「…私を売るという話です?」
「聞いてたの…?」
「一部だけです…断ったです?」
「うん…断ったよ。」
「何故です?
「売ってほしいの?」
霞はブンブンと激しく頭を横に振る。
霞は言った。
「決まってるよ…ずっとそばにいてほしいから、ね?」
「マスター…♪」
ポワンは霞に飛びついてきた。
わぁ、可愛い。もふもふするぅ。
「…
「えへへ…私もだよっ!!」
ポワンと霞の関係は良くなっていった。
そして、事件は起こった。
ポワンと霞は守矢の山の森に散歩に来ていた。
本来、人間は来ない場所だが、霞にとってこの自然は自分を育ててくれた。
家出の時はよく森に入って、里の人は探すのを躊躇ったりした。
そんな森だが、今の霞にとっては『ポワンと出会った場所』となっている。
もちろん、ポワンも『霞と出会った場所』となっている。
「わあ…この花綺麗です。」
「本当だ!!」
などと、この日は綺麗な花を見つけては摘んでいった。
ポワンが指した花を摘んだ瞬間、左手に持っていた大量の花が燃えた。
「え!?」
「
霞はポワンに突き飛ばされ、燃えている花も手放してしまう。
突然、ポワンに向かって炎の弾幕が飛んできた。
ポワンはそれを避けていく。
弾幕が無くなったとき、
「逃げるです!!
霞とポワンは走り出した。
後ろを見てみると、赤い髪で赤いワンピースを着た炎妖怪の少女が追ってきていた。
ポワンか、霞を狙ってる。
しかし、霞がポワンを担いで全力で走ってなんとか撒けた。
「家に帰ろうか…。」
「はいです。」
ちなみに、火は山の妖怪が全力で消化したそうです。
強く雪が降り始めた。
その時、霞はポワンを抱えながら家の前まで帰ってきていた。
そこで霞とポワンは「!?」と驚いた。
家が刃物を持った里の人間に囲まれていた。
その中の一人が
「木宮霞!!お前が銀狐を売らないというなら、私たちは実力行使にでるわ!!」
と言っている。
まだ諦めてなかったのか…。
私が中に居ると思ってるようだ。
ポワンは小声で言った。
「…逃げる、それか私を売るか…です。」
「決まってる…逃げるよ。」
向こうも気付いたようで「おい!!あんなところに居るぞ!!」と声を上げた。
その時には、霞は走り出していた。
「雪…お願いもっと降って…景色に紛れ込んで…。」
霞は息を切らした。
さっき全力で走ったばかりだったからだ。
「ポワンちゃん、別々に逃げるよ。私が引き付けるから逃げて。」
「…え?」
(狙ってるのはポワンだから私がポワンを担いでる振りをして引き付けたら…)
霞はポワンを下ろして言った。
「また後でね…ポワンちゃん。」
守矢の森の断崖絶壁の麓で、
白い少女は、刃物を持った者たちから
逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて・・・
「行き止まり!?」
「…もう逃げられないわよ。」
(さようなら…あなたは…私が死んでしまっても…あなたは幸せに生きて…)
そして、鋭い刃は少女の胸元へ。
次の瞬間、白い少女の白い服は紅く染まった。
***
ポワンの目の前には雪に埋もれた白い少女、霞の姿があった。
「…
霞は動かなかった。
平たい胸元から赤い液体を流し、目を閉じたまま黙っていた。
「…
ポワンは霞にそう言うが霞は返事をしない。
「返事をして…です。マスターァ……。」
急にポワンは我を失った。
***
「あの狐…何処行きやがった…。」
赤い炎妖怪はポワンを狙っていた。
あのような動物は妖力の元になるのだ。
それに知能が高い動物は式神にできる。
何処からか「マスターァ……。」という声がした。
声のしたほうを向いてみると、銀狐が居た。ポワンだ。
しかし、
「…ッ!!?」
赤い少女は驚いた。
ポワンが白い少女の死体を食べていたのだ。
人間の肉など食べたら普通の動物ではなくなるだろうが…。
ポワンは、
「ふふふ、マスタァー…これでいつでも一緒ですぅ…。」
そう呟いていた。
それに赤い少女は、
「…狂ってる…。」
と呟いていた。
するとポワンが赤い少女のほうを向いた。気付かれたようだ。
…狂乱している、そんなことはポワンの目を見たときにすぐ分かった。
狂乱している奴と戦う気はなかった。負ける可能性がある。
赤い少女が逃げようとしたそのとき、ポワンが赤い少女のほうに走ってきた。
そして、赤い少女は右足の感覚を失った。
狂乱したポワンに食いちぎられたのだ。
そして赤い少女は、狂乱したポワンに…
***
ポワンは意識を取り戻した。
何があったか周りを確認する。
霞の死体、赤い少女の死体、積もった雪、それに混じった赤い液体。
そしてポワンの口の中に残った何かの肉のような味。
「…え…?」
いつの間にかポワンの姿は愛していた白い少女の姿へと変わっていた。
状況を半分ほど認識したポワンは次の瞬間、悲鳴を上げていた。
それから数日後。
ポワンは自分が妖怪になってしまったこと、それにより自分が手に入れた能力、それらを理解していた。
“想い描いた者に変化する程度の能力”
ポワンの頭は霞のことでいっぱいだった。
だから、ずっとポワンは人間の白い少女の姿だった。
さらに、人間を許すことができなかた。
大好きな人の命を奪った里の人間は絶対許さない、と。
そして…
この日の夜、ポワンは里に来ていた。
みんな寝ているので誰にも気付かれないまま木宮家の前まで来ることができた。
ポワンは赤い炎妖怪の少女を想い描いた。
すると、ポワンの姿は一瞬で赤い少女に変わる。
そして、
赤い髪、赤いワンピースの少女は自分の家に火を放つ。
住んでいた家が燃える。
その炎は隣の家その隣の家へと引火していく。
暗い夜の人里に赤い炎の光が生まれる。
この焔に怒りを込めて、赤い少女は燃える人里を見守った。
「マスター…仇はとったです…。」
霞のことを思い出し、ポワンの姿は再び白い少女の姿へ戻った。
(帰るです…
あれからちょうど三年がたった。
ポワンはずっと霞の死体の近くで三年の時を過ごした。
霞が死んだ断崖絶壁の麓。
ただなんとなく、その崖に登ってみたかった。
「わあ…綺麗です…。」
崖の上から見た景色は絶景だった。
そこからはあの里も見える。
さすがに三年も経てばまたあの事件のことなんか忘れてわいわいしているのだろうか。
「マスター…。」
寂しいかった。ここにあの白い少女が居ればどんなに良かっただろう。
まあ、今はその白い少女の姿をしたポワンが居るのだが。
この三年間、ポワンの頭の中から彼女が消えたことは無かった。
(…会いたいです…
そんなことを考えていると急に、背後に気配を感じた。
「…ッ!?」
背後の気配の正体を確認する前に白い少女は崖から放り出されていた。
(…
ポワンの意識は遠くなっていった。
***
「・・・ん・・・・・・ん?」
誰かの布団の中で、
(ここどこです!?気を失ってたです!?少なくともこんな場所しらないですっ!!)
少女は慌てて布団から飛び出た。
周りに人は居ない。
どこかの家の和室だろうか。少し広い空間に布団1枚が敷かれている。
誰かに見つかる前に逃げ出そう。そう考えた。
さて、この部屋の窓を開け・・・
「あ、起きた。」
誰かが部屋に入ってきて、即刻で見つかってしまった。
入ってきたのは緑の髪の巫女。東風谷早苗。
はい、牙焔録の一番大切な5話です。
色々カオスになってしまいました。
本当にごめんなさい。
<次回予告>
さて、何か懐かしい話だったです。
…マスターに会いたいです。
………。
健治(ポワンさん、顔赤くしてないで予告してください。)
ええっと!!じ、次回<もう何も信じない>(仮)ですっ!!