仮面ライダーアステラ×仮面ライダーエリシア ひとりぼっちの流れ星 作:teru@T
───2005年、4月24日
その日、光が街を覆うように降り注いだ。
曰く、その光景を見た者によると、強烈な光を放つ何かが
曰く、弾けた粒は七色の光を放って、夜空に虹の軌跡を描いたとか。
曰く、この現象が『星の矢』と呼称されているだとか。
多くのことは後々学び得た知識であり、実際に私自身が見聞したわけではない。
しかし、記録されている情報の周辺データを得た私にとっては既知の情報であり、それは私自身の出自に関わる『体験』でもあった。
なぜならば、私は『星の矢』で産まれたのだから。
────〜─
寂れた町工場。
不況や物価高騰が嵩み、持ち主が夜逃げしたそこに『星の矢』が降り注いだことで、私は産み落とされた。
産まれた直後、
『奪いなさい。喰らいなさい。それが私達の使命です。全て喰らいなさい』
───なるほど。恐ろしくしっくり来る。私が産まれたのはそのためだと自覚できるほどに。
ではそれは
母は私たちに全てと命じられた。しかし、全てとはどこまでのことを指すのだろうか?
生物を余すことはありえない、ならば無機物は? 大気はどうなのだろうか? ───いや、母が全てと命じたのだ。ならばこの世全てであることは疑う余地もない。
しかし、それならば1つ問題がある。
自我を獲得して数時間の私にはまだ情報が足りない。
どの様にすれば何を奪えるのか、そのために必要な物は何か、それを知る、それを産み出す必要がある。
幸い、施設ならばある。機材こそ新しいとは言えないが何、必要に応じてアップデートしていけばいい。
時間ならばいくらでもあるのだから。
──〜──
───私が誕生してから数年が経過し、いくつか気付きを得ることができた。
まず、多くの同族───その表現が正確かは定かではないが私と同じ様に星の矢に射抜かれたモノ───はコミュニケーションを取る自我を獲得していない事が判明した。
元々が意識の希薄な動植物や意識の存在しない無機物が大多数のため、与えられた命令を愚直に実行している事を
嘆かわしいとは思わない。
彼らが愚直に動いてくれているからこそ、私は
─〜───
───
データを集積する際、0,2ナノ秒に満たないデータの揺らぎ。
あるいはこの世界で気付いているのは私だけかもしれないほど無害でなんてことはない。私だって知らず知らずのうちに無視していたのでは無いかと思うほどの僅かな乱れ。
しかし、集積を続けていくうち気付くことができた。
この揺らぎには法則性が存在する。
なんらかの法則に従い、定期的に揺らぎが産まれている。
その法則を解き明かすことで揺らぎの正体を知る事が可能だろう、ならば知らねばならない。
その揺らぎも我らが喰らうべき全てなのだから。
──~~─
感度をより過敏に
これは
正確に言えば映像として出力可能な情報だった。
映し出されるのは面白みのない街の情景であったり森の中や海の底であるなど様々だ。
しかし、不可解な事に映像と同じ場所、同じ画角の監視カメラを覗き見たが映像が一致しない。
どれだけ過去に遡ろうと結果は変わらなかった。
すなわち、この映像は過去のものではなく
自身の改良と並行し、映像の究明と更なる揺らぎの観測を行わねば。
~~~~~~
全てを理解する事ができた。今となっては未来などと推測した過去は消し去りたいほど恥ずべきことだ。
あの揺らぎは
違うのは
恐らく、この世界においていや、他の世界を見渡したとしてもこれを発見したのは私だけだろう。
そして私の歩みはそこで留まらない。
揺らぎを受信できる、そしてその先に別の世界があるというのであれば───その世界へと物質を送信し、世界を渡ることが可能なはずだ。
いや、可能でなければ困る。
なぜならば我らの母は全てと申された。それはこの世界だけであるはずがない。
私が観測した
そうだ、私が世界を渡る
───それならばそう、私にも名前がいる。
私以外と出会うのならば識別するためにも必要だろう。近年現れた
ならば私に相応しい名は決まってる。
私は星の群れを先導する者。
すなわち我が名は───
******
───2025年、7月
「はぁーやっとここまで帰って来られた! もー本当に嫌になっちゃうね、渋滞。そう思わない、
「うん、そうだね。お疲れ様、
「良いんだよ、これくらい。今日は楽しかったから!」
陽子ちゃんと一緒に去年も行ったレジャー施設で遊んで、買い物もした帰り道。
とても楽しかった、だけどちょっと長く遊びすぎちゃった。
帰り道でひどい渋滞に巻き込まれて、気がついたら明るかった外は日が落ちて暗くなっていた。
プールで遊んで、お昼ご飯を食べて、去年は行けなかった買い物にも今年は行くことできた。
とても疲れて、渋滞の間にちょっとウトウトもしちゃったけどそれと同じくらい満足もしている、だから全然嫌な気はしない。
後はふかふかの布団で眠るだけ……来年も行きたいな。
「───あ」
「どうしたの、花鹿?」
「ごめん、陽子ちゃん。車停めてほしい」
「まさか、出たの? 人型が?」
車を停めてくれた陽子ちゃんに頷いてシートベルトを外す。
背筋をゾクリと駆け抜ける様な不快感、いつまで経ってもこの感覚は慣れない。
結構近い……そう思ってドアを開けたら場所はすぐに分かった。
僕がそっちを向いていたから陽子ちゃんも気付いたみたいだ。
「あそこ?」
「うん、陽子ちゃんは危ないから少し離れてて欲しい」
「分かった。離れたところで停まってるから終わったら電話して。気をつけてね、花鹿」
「ありがとう。行ってくるね」
陽子ちゃんを見送ってから改めて工場へと目を向ける。
所々が錆びていて廃墟みたい……ぼんやりと明るい電球の光とか機械の動いてる音も静かな夜じゃなかったら気付けなかったかも。
シャッターは閉まってる。でも人型が中にいるならどこかから入れるはず……。
「あ……あった」
気をつけて工場の周りを歩き回ったら裏口なのでろう扉があって、そこが開け放たれていた。
近づいてみるとドアノブが外から壊されていた。
昔壊れて放置してたって感じじゃないから偶然壊して開いたから入ったのかな……?
「た、たすけてくれええ!!」
「っ!!」
工場の中から聞こえた声に考えるのを中断して壊れた扉から屋内へと踏み込んだ。
古めかしい電球の光が照らす薄暗い廊下、奥の方から機械の動く音が聞こえる。
古い油の嫌な匂いに混じっている鉄の匂い───それは金属の匂いじゃない。
血の匂いだ。
この奥に人型がいる。そう確信した僕が一歩踏み出したその時。
花鹿。
お母さんの声が聞こえた。
振り返っても誰もいない……分かってはいるけど少し寂しい。
今でもお母さんは僕を見守ってくれている、それは間違いないと思うし本当に嬉しい。
それでも……我儘かもしれないけど最近時々また会いたい───そう思っちゃうよ、お母さん。
「っ、今は人型を倒さないと」
頭を左右に振って気持ちを切り替える。
こんなこと考えたらお母さんを困らせちゃう。
僕も僕らしく頑張らないと。
そう思い直して僕は暗い工場の奥へ、人型の元へと向かった。
──~───
「そんじゃあ、再会を祝して
カチン、と3つのグラスがぶつかり合い甲高い音を立てる。
3人の男女がグラスを煽り、酒───ではなく水を流し込んだ。
「祝してって言っても1ヵ月位経ってんぞ」
「定期的に会ってるしねぇ」
「良いんだよ! 口実だ、口実! ほら、食うぞ!」
3人の男女───エリシア、煌琉、
食事をしながらも近況の報告など雑談は続いていたが3人共に僅かに浮かない様子のようだ。
「そんで? お前ら
大きめにカットしたステーキを噛み締めながら話題を切り出したのは今回の発起人であるボブだった。
エリシアと煌琉はばつが悪そうに目を泳がせながらも頷いた。
「ほとんどできてるんだけど、どうにも後一手間で詰まっちゃってさ。進まないんだよ」
「修正してはエラー吐いてのイタチごっこだよこっちは」
「苦労してんなぁ」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「俺は研究は順調だぜ?
ハッハッハと笑い飛ばしていたボブも徐々にトーンダウンしていき、タイミング良く揃った3人の深い溜め息が漏れ出る。
しかし、その後も文句こそ言い合ってもそれぞれが何を作っているのか明かすことはない。
詰まりこそあれど自分以外に
「あ、そうだ。エリシア、悪いんだけどえいげっちゃんのデータだけメールで送ってよ」
「お前……警察にいるのに女子高生の情報が欲しいはダメだろ」
「
「欲しいのは戦闘データとスコアプレートの運用データだって言わなくても分かるよねぇ!? というか、君らは俺が年下に興味ないことも知ってるはずだけどなぁ!?」
怒りかあるいは恥ずかしさかで顔を赤くした煌琉が叫ぶ。
直後に飲食店で食事していることを思い出し、背中に刺さる視線をあえて無視して咳払いと共に座ってグラスを煽った。
エリシアとボブが笑い出しそうなのを堪えていると煌琉は2人をギロリと睨みつける。
「悪かったよ。構わないが何に使うんだ?」
「欲しいのはスコアプレートの同時運用のデータだよ。色々使いたくてね」
「それなら、前に渡したと思うがな」
「エリシア……物忘れするにはまだ若いと思うよ。前に貰ったのは去年でえいげっちゃんが変身する前でしょ」
「マジか……
2人の間でやり取りが完結する。
改めてステーキへと手を伸ばしたエリシアだったがそのフォークは空を切り、ステーキの乗ったプレートはボブの手にあった。
「あん? 足りないなら追加頼めばいいだろ」
「もう頼んであるぜ。それより、
「ガキがよ……まぁ隠すことじゃないけどな……変身用のドライバーだよ。話したんだから返せ」
驚くボブを他所にエリシアはひったくるようにステーキを取り返すと改めて口へと運ぶ。
ボブが追加したステーキを運んできた店員が離れるのを待って身を乗り出すと更に2人へと詰めよる。
「イマージュドライバー以外のドライバーがあんのか?」
「試作品はエリシアのところにね。まぁ、結局は没にしたわけだけど」
「へぇ……ヘイ、良いこと思いついたぜ。いっちょ学生の頃に戻らねぇか?」
「あん? 何するつもりだよ」
ニヤリと笑みを浮かべるボブをエリシアと煌琉は怪訝そうに見つめる。
「オイオイ、忘れたのかよ。よくやったろ? 研究詰まったら3人で別のテーマを共有して研究する暇つぶし」
「あぁーやったな……研究ってほど真面目なのじゃなかったが」
「懐かしいねぇ。つまり、気分転換にドライバーを完成させようってことかい?」
「せっかく俺が加わるんだぜ? ちょっと試したいこともあるからな。もっとすげぇもんにできるぜ?」
自信満々で自慢げなボブ。
それに対してエリシアと煌琉はそれぞれ考えを巡らせるが出した結論は2人とも同じだった。
「面白そうだね……どっちにしろ刺激が欲しかったところだ」
「そうだな。最近、スコアノートたちの動きも少ない……それに戦力増加には繋げられるわけだしな悪い話じゃねぇ」
「おう。うちの研究所でやりゃあ予算も使い放題だぜ?」
「「乗った!」」
最後の言葉が決め手となり意気投合した3人。
まるで遊び道具を見つけた子どものように笑みを浮かべ再びグラスを掲げるとそれを打ち合わせる。
客たちの雑談とBGMの響く店内でカチン、と一際甲高い音が鳴り響いた。
───~──
鳴り響く甲高い音を最後に動画を停止する。
「最初はここで決まりだ」
手を振るうと同時に空中に映し出されたいくつもの
すでに支度は整っている、場所も決めたのならば後は直接赴く、それだけだ。
深々と椅子に沈んだ体を起こし立ち上がろうとした時、監視カメラのモニターの1つがプツリと映像が途切れた。
「むっ……なんだ?」
椅子に座り直し、こちらから操作しようにも受け付けない。どうやら、物理的に断線したようだ。
場所は裏口の辺り。
野良猫かあるいはネズミか……どちらにしろ、面倒だが見つけてしまった以上は確認しておかねば……。
そう考えていると静かな重低音のみが響く工場内にガチン!と金属同士がぶつかり合う音が響いた。
あの音は過去にも聞いた覚えがある───カメラの壊れた場所を考えれば原因は自ずと浮かび上がった。
人間が故意に破壊したのだ。
「全く……物を壊さないだけでネズミや猫の方がマシ……いや、ネズミには何度もケーブルを噛み千切られた、同列だな。はぁ……」
全く、祝うべき門出だというのになんと無粋だろうか。
どうせ、浮浪者かやんちゃなガキのどちらかだ。脅かしてやれば帰っていくだろう。
「おぉーい! 誰かいるのかー!」
億劫な気持ちを抑え、懐中電灯を片手に部屋を出るとわざとらしく大声を出して目的の場所を目指す。
こうすれば手を煩うことなく逃げ帰るだろう。
大げさに懐中電灯で先を照らし声を張り上げる。
しかし、不思議なことに逃げ出す足音が聞こえること無く、裏口へと辿り着いてしまった。
無造作に開かれた扉を照らせば外側のドアノブが壊されている。
「むぅ……誰だー! いるのなら出てこーい!」
どこかに潜んでいるであろう犯人へ向けて再び声を張り上げる。
裏口を超えて工場の中を光で照らす。
その時、機械の裏で物音が響いた、どうやら1人はそこにいるようだ。
「おい、こんなイタズラするのはどこのどいつだ!」
身を乗り出し、機械の裏を覗き込んだその時。
ガツン!と後頭部に大きな衝撃が走った。
「へへ、楽勝だな」
「さっさと金目の物奪ってずらかろうぜ!」
「おう……あ、えっ? なんで……!?」
───なるほど、物取りの類だったか。
容赦なくバールで人の頭を殴るとは最近の若者は中々容赦がない。
私でなければ怪我では済まないというのに。
バールを掴み立ち上がる。
金髪の男がバールを離さないものだから纏めて持ち上げてしまったがまぁ些事だろう。
「ひっ!?」
「で、でか……化物!?」
「ちゃんと忠告してやったのに帰らなかったお前たちが悪いんだぞ?」
持ち上げられた男は私の姿に恐怖し、手を離して地面に落ちると尻もちを着いている。
もう1人の男はというと後退った後に腰が抜けて動けない相方を無視して今更になって逃げ出した。
全く、逃げるのならばさっさと逃げれば良いものをもう遅い。
「おいおい、悪いがもう逃さないぞ」
バールを投げ捨て、逃げた男へ向けて手を振るう。
私の手の動きに合わせて伸びたコードが男の腹を刺し貫いた。
「がっ!?」
「君たちにまだ仲間がいるとも限らない。君の死体は入口の前で役立って貰おう」
「あっ、あぁ……」
「さてと、君も逝くといい」
私への恐怖心かあるいはさきほどまで生きていた男が物言わぬ肉塊となったことへの恐怖かガタガタと震え、その場から動けない男へと手を向ける。
やることは変わらない。
腕から伸ばすコードで腹を刺し貫く。
後ほど喰えばいいだろう今はあまり時間をかけたくない。
「た、たすけてくれええ!!」
見苦しい断末魔を残し、目の前の男は絶命した。
工場の中に静寂が戻る。
さてと───無駄な時間を使わされたがそろそろ行くとするか。
そう思った時に背後から新たな足音が聞こえてくる。
「はぁ……君たちは何人できたんだ? 全く、そのまま逃げれば見逃したものを……」
───うんざりとしながら振り返ったことを私は後悔した。
あるいは無視してしまえば良かったのではとすら考えるほどに。
採光窓から入り込む星明かりに照らされ、そこにいたのは1人の
一見すると男のようにも見えるが私は彼女を
「なぜ君がここにいる───」
今、最も会いたくなかった。
私が大手を振って暴れなかったのは彼女と出会わないためだったとさえ言える。
そう彼女こそ我らと同じ光を宿す人型でありながら我らを狩る者。
その名は───。
「大空花鹿……!」
またの名を───アステラ。