【転生先】⇒ “初代ウルトラマン”   作:薩摩次郎

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ウルトラ作戦第一号
第一話


 1960年代……人類は未曽有の危機に瀕していた。

 

 無限に広がる宇宙……並びにバランスの崩れた自然界から突如として出現した謎の巨大生物による来襲が世界各地にて次々と起こり始めたのだ。

 

 やがて人類はその悪魔のような巨大生物を“怪獣”と呼び始め、恐れ戦く存在として広めていくと共に眠れぬ日々を送るようになってしまうが、そんな悪魔のような怪獣たちに対し、何時までも臆するわけにはいかないと奮起したのか、後にとある特殊組織が結成される事となる。

 

 国際科学警察機構に属し、パリ本部を中心に東京・ニューヨーク・ロンドンなどに支部を持つ特殊組織……“科学特捜隊”。

 

 通称“科特隊”と呼ばれる彼らは最新化学兵器を駆使し、怪事件を調査及び解決し、世界の平和を守る任につく。

 

 

 この物語は、岩本博士を中心に御殿山の科学センターをブレインとして設立された科特隊日本支部に勤務するムラマツ隊長以下、隊員四名の科特隊ムラマツ班ともう一人………誰にも言えないとある事情を抱えた遥か遠い宇宙の彼方からやって来た不死身の宇宙人による地球の平和を守った記録となる。

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 キラキラと輝く星々が見られる夜空の彼方から突如として降ってきた謎の物体。

 青く光り輝くその物体は、雲の一部を突き抜けた後に人気のない山地へと一直線に進んでいき、一見すれば大気圏外から落下してきた隕石のように思えるであろう。

 

 

「ん?」

 

 

 偶然にも、その現場に遭遇した者が一人いた。

 科特隊日本支部の一員とされ、過去に科学特捜隊養成学校を首席で卒業したエリートという経歴を持つ人物。

 名を“ハヤタ・シン”と呼び、彼は今、科学特捜隊の戦闘攻撃機の一つである小型ビートルを操縦しながら夜間の巡回パトロールの任務に就いていたのだが、機内のフロントガラス越しに捉えた物体から得体の知れない何かを即座に感じ取る。

 

 サイズとしてはかなり大きいが、隕石にしては妙に形がおかしい。

 何故かというとボールのような綺麗な球状をした落下物など今までにない事象であるほか、青く光り輝くこと自体、通常ではありえない現象となるため、急ぎ通信機器を作動させた後に本部との通信を取り始める。

 

「ハヤタより本部へ、ハヤタより本部へ!」

 

 あの未確認飛行物体の正体を何としてでも突き止めなければならない。

 確固たる意志から瞬時に行動に移すと……。

 

 

《はい、こちら本部。どうしたの?ハヤタさん。そんなに声を出して》

 

 

 通信機器から仲間の声が流れ出す。

 科特隊メンバーの紅一点で主に通信を担当とする彼女からの返信を耳にするなり、目の前に広がっている現状を速やかに報告する。

 

 曰く、竜ヶ森上空において青い光を放つ謎の未確認飛行物体を発見したため、追跡の許可を願いたいとのこと。

 それに対し、再び通信機器から流れてきたのは冷静な判断力と勇敢な心を持つ頼れるリーダーの声であった。

 

《よし。巡回コースを離れ、追跡を続行。正体を確認せよ》

「了解!」

《君の報告次第で、我々も直ちに出動する》

《気をつけて!ハヤタさん》

 

 許可が貰えたところで、早速とばかりに件の未確認飛行物体の追跡を開始させる。

 操縦桿を力強く握りしめ、機体の速度を少しずつ上げていきながら距離を縮めていく。

 

 あまり接近しすぎてしまうと何かの拍子で接触してしまい、墜落する恐れがある。

 故に、一定の距離感を保ちながら夜空から落下してきたものを追いかけていく。

 

「このまま行くと……湖に落下するな」

 

 レーダー装置から出た結果によると球体の落下先が竜ヶ森の中にある湖であることが判明する。

 フロントガラス越しに目視すると多少見えづらかったものの、確かに遠く離れた所に大きな湖が一つ存在していた。

 もし仮に其処へ落ちるとなれば、落下物はそのまま湖の底へと沈んでいくことになる。

 

(となれば、特殊潜航艇S16号が必要に―――ッ!?)

 

 そのように考えた瞬間……突如として青い球体が急に進路を変え始めた。

 

 否、厳密に言えば近づいてくる輩を追い払う為の行動とでも言うべきか。

 

 まるで意思を持ったかのように動き出したため、お互いの距離が一瞬にして縮まってしまい、あと少しで接触してしまいそうになる。

 

 

「くっ?!」

 

 

 それ故に咄嗟の判断で操縦桿を思いっきり横へと倒し、機首を降下させる。

 持ち前の瞬発力のおかげか直撃には至らなかったものの、またすぐに別の問題が発生する。

 

 というのも、いきなり機体を降下させてしまったことにより、速度調整が思うように上手くいかなくなってしまったのだ。

 そのため機体のバランスが崩れてしまい、操縦不能へと陥ってしまう。

 

「くそぉ!!」

 

 次第に高度が堕ちていき、操縦席から警告音が鳴り響く。

 このままでは地上に激突してしまう。

 しかも辺り一帯には深い森林が広がっており、不時着できる場所など一切見当たらない。

 仮にあったとしても探す暇など毛頭ないため、正に八方塞がりの状況へと追い込まれつつあった。

 

《ハヤタ!速やかにビートルから脱出するんだ!》

「りょ、了解!!」

 

 最終手段として脱出装置を作動させようとするが、機体が激しく揺れてしまっているせいなのか上手く作動してくれない。

 

 “故障”……嫌な予感が過ったが、それでもなお懸命にレバーを引き続ける。

 

 しかしながら現実は無常とも言うべきか、一向に動く気配はなく、只々時間だけが過ぎていくばかり。

 

 

「ッ!?」

 

 

 加えて、機体の後方部分から大きな爆発音が鳴り響く。

 推進力を失ってしまった拍子による異常でも起きてしまったのか。

 その証拠としてジェットエンジンのメーターの数値が瞬く間に下がってしまい、最終的には“0”を示す事態と化してしまう。

 

(ここまでなのか!?)

 

 最後の抵抗とばかりに握り締めている操縦桿を再び動かしてみるも、何の変化も見られない。

 刹那、これまでの記憶が走馬灯のようにして脳裏に蘇る。

 

 憧れの宇宙へ行くための厳しい訓練に挫けることなく励み続けた養成所時代。

 科特隊の隊員として着任し、人類の平和を守るために日夜問わず働き続けた日々のこと。

 そして、忘れもしない彼女との思い出など……。

 

 

(すまない……フジくん……)

 

 

 もうすぐ地上にぶつかってしまう。

 それ故に覚悟を決めた彼は、潔く瞼を閉ざす―――

 

 

「ッ!?」

 

 

 が、次の瞬間。

 

 突然、機内が大きく揺れ出したかと思いきや先程まで感じていた振動があっという間に収束し始めていく。

 

「ッ、な、なんだ!?」

 

 何事かと思い眼を開いた途端、眩い光が外から差し込んでくる。

 

 煌びやかに輝いている真っ赤な光………それがすぐ傍にいる他、小型ビートルと編隊するように飛行している。

 

 まるで今にも墜落しそうであった機体を支えているかのように。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 直後、轟音が鳴り響いたかと思いきや揺れが完全に収まっていき、ものの数秒足らずで静寂と化した空気が流れ込む。

 操縦桿を握り締めてはいるものの、メーターを見る限りでは機能の回復はしておらず、ましてやその他の装置も壊れたままとなっている。

 

 反対に墜落の衝撃は無く、機体と共に五体満足で残っているため、もしやと思いつつ赤い光の方へと振り向く。

 ガラス越しに見えるのは、眩い光を放つ謎の物体。

 あまりの眩しさであるが故に、そっと右手を翳しながら正体を確かめようとする。

 

「ッ……」

 

 と、その時。

 輝いていた赤い光が収まっていき、正体と思しきものが中から姿を現す。

 

 

「なっ……」

 

 

 ただ、それを目撃するなり、思わず言葉を失ってしまう。

 というのも、光の中から現れたのは……今まで見たことのない巨人であったからだ。

 

 赤と銀を基調としたボディに加え、頭部は口元に皺がある不気味な顔立ちとなっており、あまつさえ胸の中央辺りには青く灯っているランプらしきものがあり、全体的な印象からして紛れもない宇宙人であることが窺える。

 

 でもってその巨人の白い複眼が、操縦席にいる彼の姿をずっと見つめていた。

 まるで無事であるのかどうかを確かめているかのように……。

 

「き……君は………」

 

 生き残れたことへの安心感からか。

 それとも未知との遭遇による驚きからなのか。

 どちらにしろ張りつめていた心境が一気に解放された影響により、徐々に意識が遠のいていく。

 

 

――やれやれ……無事で何よりだ――

 

 

 沈む間際に何処からか聞きなれない声が届く。

 けれども、その優しい声色を耳にするなり、自然と安堵が芽生えたのか。

 不思議な温かさに包まれたまま深い闇へと落ちていく。

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

「ハヤタ隊員、応答してください!ハヤタ隊員!!」

 

「むぅ………」

 

 その頃、科学特捜隊本部の司令室では連絡が途絶えてしまった彼の名を通信係が何度も呼び掛け続けていたものの、一向に返事が来ないことから緊迫とした雰囲気に包まれていた。

 隊長であるムラマツもまた額に汗を流しながら眉間に皺を寄せており、表情からして険しさが見て取れる。

 

(何故、応答しないんだ?ハヤタ……)

 

 レーダー探知機には依然として小型ビートルの存在が表示されている。

 即ち機体が空中分解になるほどの損傷には至っていないことを示しているが、ならどうして何も応答がないのかと疑問を抱く。

 

(それに、先ほどの影は……)

 

 続けてもう一つ気になる事案として、ビートルの上空から颯爽と現れた別の未確認飛行物体について考察する。

 探知機から見た限りでは、機体と編隊飛行するようにして急接近した後、共に速度が落ちていき、最終的には完全に停止したのちに忽然と反応が消えてしまった。

 

 あれは、一体何だったのか。

 焦る気持ちを何とか抑え込みながらいくつかの可能性を考えていると……。

 

 

「はい、こちら科学特捜隊本部」

 

 

 突然、一般市民からの連絡手段となる固定電話から着信音が鳴りだす。

 それに応えたのは極東支部きっての射撃の名手であり、怪力の持ち主であるアラシ隊員。

 こんな非常時に何か別の事件でも起きたのかと若干苛立ちを募らせながらも、彼が受話器を取るなり電話の主との会話に興ずる。

 

「はい………えぇ!?何だって?!」

 

 驚くように声を張り上げたことから、その場にいた誰もが彼の方へと振り向く。

 対する当人はというと、一言一句も聞き逃さまいと耳を傾けながら引き続き通話を行い、相手とのやり取りが終盤に差し掛かった辺りで何度もお礼の言葉を述べたのちに少々乱雑に受話器を元に戻す。

 

「キャップ!たった今、例の竜ヶ森でキャンプをしていた一般市民からの緊急の連絡がありまして!」

「落ち着きたまえ!どうしたんだ?」

「はっ!それが、怪光を発する青い球が飛来し、竜ヶ森の湖に落下したそうなんですが……」

「ん?」

「その……何とも言い難いんですが………」

「何かあったのか?」

「実は……続けて飛来したジェット機が青い球と衝突しかけた挙句、あわや墜落しそうになったそうなんですが、そのとき別の赤い球が現れて、そのままジェット機を救出したとのことで……」

 

 にわかには信じがたい内容であったものの、確かについ数刻前のレーダー探知機には、小型ビートルに接近するもう一つの未確認飛行物体の影が映し出されていた。

 今までにない事態に騒然とする中、更に耳を疑う情報が入ってくる。

 

 

「しかも、どうやらその赤い球の正体が……身長が40mくらいの巨人だったそうです」

 

「きょ、巨人だって?!」

 

 

 いの一番に驚愕したのは、自他ともに科特隊随一の天才科学者とされるイデ隊員。

 お調子者でちょっとマヌケな一面も見せる彼が、珍しく声を荒げる。

 

 それもそのはず彼の話から要約すると、身長が40m級の巨人が自分達の仲間を助けたということになるのだ。

 前例のない出来事に吃驚してしまうのも無理もない。

 

「で?その巨人とやらは、どうなったんだ?」

「ジェット機を安全な所に置いたあと眩い光に包まれて………そのまま消えてしまったそうです」

「ということは……ハヤタさんは生きてるのね?!」

 

 微かな希望に期待を寄せるかのように椅子から立ち上がったのは、唯一の女性メンバーとなるフジ隊員。

 ハヤタとの通信を取り続けていた彼女からすれば、誰よりも彼の安否が気掛かりであったため、藁にも縋る思いでアラシに問いかけてみるも、途端に彼が何故か複雑な表情を浮かべてしまう。

 

「どうしたの?……ひょっとしてハヤタさんに何かあったの!?」

「いや実は……連絡によれば巨人が消えた後に友人たちと一緒にジェット機に近づいて、操縦席にいたハヤタを見つけたそうなんだが………どうも意識がまだ戻っていないらしい」

「……えっ?」

「どういうことなんだ?生きてるのか、ハヤタは!?」

「息はしているらしいんだが、気を失っているみたいなんだ」

 

 息があるということは、まだ生きている証拠。

 それだけでも聞いて安心したのか、彼女がホッと胸を撫で下ろす。

 とはいえ意識が戻っていないというのであれば、一刻を争う事態に変わりはなく……。

 

「アラシ、イデ!出動準備!」

「「了解!!」」

「フジ君は、サイゴー長官への報告と、引き続き通信業務を頼む」

「は、はい!」

「出動!!」

 

 科特隊は、直ちに各々の行動を取ることにする。

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 岩本博士によって開発された科学特捜隊の主力戦闘機……“ジェットビートル”。

 基地の発進ゲートから機体下部にある三つの噴射口によって高度を上げていった後に現場へと出発し、到着するまでに数十分も掛からなかったのか。

 湖のほとりに着陸した後に機体から降りた三人は、急ぎ事故現場近くでキャンプをしていた若者たちと合流する。

 

「科特隊の隊長のムラマツです。ジェット機に乗っていた操縦士は?」

「こっちです!」

 

 夜も更けていたこともあり、持参した懐中電灯を使いながら後をついてく。

 道中、事故の瞬間を目撃した彼らから自分たちが来る前に念のため救急車を呼び、いま丁度駆けつけてきたとの現状を聞かされる。

 そうして暫く進んでいくと、先に到着していた救急隊員たちが気を失っている彼を担架に乗せたまま運ぼうとする場面に遭遇する。

 

「ハヤタ!!」

「ハヤタ!おい!!」

 

 イデとアラシの両名が急いで駆け寄り、担架の上で横になっている彼の顔を覗き込む。

 幸いにも目立った外傷はなく静かに息継ぎをしていたため、改めて無事だと認識したのか、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「すみませんが、いったん離れてもらえますか?念のため、近くの病院まで連れていきますので」

「あの……ちなみに彼の容体は、どんな具合なんですか?」

 

 部下に続いて駆け寄ったムラマツの問いに対し、近くに居た救急隊員の一人がなるべく簡潔に答える。

 

「特に目立った外傷はありませんでしたが、何分意識が回復しておりませんので……詳しいことは今の所……」

「そうですか……彼のこと、よろしく頼みます」

「分かりました。おい、急ぐぞ!」

 

 担架を手にしている者に指示を出し、眠っている彼を少し離れた所に駐車している救急車まで運んでいく。

 気掛かりではあるものの、肝心の未確認飛行物体がまだ残っている。

 

 地球に飛来してきた青い球と赤い球。

 その内の一つは、これから病院へと連れていかれる部下の命を救ったとされる。

 敵か味方か……現段階では不明だが、より詳しい情報を入手したい。

 

「キャップ……」

「ハヤタのことは病院の人たちに任せよう。我々は湖へ落ちた青い球と、彼を救った赤い球から現れた巨人についての調査を開始する」

「はっ!さ~て、一仕事するぞ!」

 

 意気揚々に乗り出す一行。

 

 これから先、何が待ち受けるのか。

 

 それは、神のみぞ知る。

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