酒寄さんちの今日のご飯 作:通りすがりの匿名さん
「今日はカレーがいいな」
そう言って彩葉は仕事に行った。
彩葉がいない間に布団を干して、洗濯物をして、朝ご飯の片付けをして、家の掃除をする。
家事をしながら今日の献立について考える。
カレー。カレーかぁ。
カレーと一言で言ってもたくさんある。スパイスから作る本格的なカレーか、カレールゥを使った家庭的なカレーか。具材にも野菜たっぷりか、お肉ゴロゴロか、お肉は牛か豚か鶏か、シーフードもある。
昨日の晩は麺から作ったジェノヴェーゼパスタだったから、グリーンカレーは選択肢から除いて良いかな。……いや、昨日の余りのバジルがまだ冷蔵庫にあったなぁ。
スマホで彩葉のスケジュールを確認しながら献立を考える。
気を抜くとすぐに不摂生な生活に戻りがちな彩葉の健康管理は私の大事な仕事だ。
「えーっと、今後の彩葉の予定はーっと、ふむふむ。明後日に大学で講演会か。
となると、たぶん晩ごはん食べた後に部屋でもう少し仕事しそうだね。じゃあ軽めのやつにしとこうか」
かぐやのボディを作ってからの彩葉は、さらなる研究だけじゃなくて講演会やテレビにラジオに引っ張りだこ。
家にいる間くらいはゆっくりして欲しいのが本音だけど、中々そうもいかないってのも分かってる。
だから彩葉が無理をしないようにサポートするのだ。
「今日のカレーはスパイス効かせたやつより家庭的なカレーにしようかな。彩葉はルゥを使ったカレーはサラっとしたやつよりドロっと派だから、ジャガイモは別ですりおろしたのも入れてとろみを付けよう。
お肉はシーフードにして脂分少なめのあっさり目に。冷凍庫のイサキの切り身も入れてみようかな?いや、エビイカホタテの旨味たっぷりカレーの方も捨てがたい〜!
はっ、そうだ、スープとサラダも考えないと。シーフードカレーに合わせるならどんなスープが良いかな〜?あっ、余ってるバジルはすり潰してドレッシングにしちゃおう!となるとオリーブオイルとお酢と塩コショウと……あっ、そういや昨日のパスタでオリーブオイル切らしてたんだった。買いに行かなきゃ!」
買うものはカレールゥとオリーブオイル。サラダ用の葉物野菜に……後は流れで。何かビビッと来るものがあるかもしれないし!
何か無いかといつものスーパーで買い物をしていると、彩葉からメッセが来た。
今はお昼時。たしか今日は研究所の女性職員とランチをするって言ってたはず。となるとお昼ご飯の写真かな。
「なん……だと……っ」
彩葉から送られてきた写真には、バゲットと白身魚のムニエル。そしてスープにはエビなどの海鮮が使われたスープがあった。
海鮮を使ったフランス料理かぁ。どこのお店だろ。今度教えてもらおう。
いやいや、そんなことよりも!
「シーフードカレーだと、彩葉のお昼ご飯と被る……!?」
彩葉の事だから、お昼と晩ごはんでシーフードが被っても文句は言わない。というか、気にしないだろう。
「かぐやの料理なら、なんでも美味しいよ」って言ってくれる。
でも、2食続けての食材被りは、かぐやが気にする!
「これは、メニューを変更するしかない……!」
ーーー
「うーん、牛、豚、鶏……鶏肉だな」
そうだチキンカレーにしよう!
そうと決まれば精肉コーナーへ一直線。カレーのメインとなるお肉を探す。
このスーパーのお肉コーナーには精肉店が入ってて、割と希少なお肉だったり、高いお肉だったりを置いてて重宝してる。たまーにA4ランクのお肉が置かれてたりするので要チェックだ。
さて、鶏肉と言っても部位によって使い方が変わってくる。もも肉、胸肉、ササミに、ひね。……ひね!?
「今日ひね肉置いてんの!?」
ひねは肉用のブロイラーではなく、採卵用のレイヤーのお肉。つまりは親鳥のお肉だ。
ブロイラーより脂は少ないし身質は固い。まーじで固い。けど、その代わり旨味と味が濃いお肉だ。
「身の固さはミンチにすれば気にならなくなるし、味付けは……よし、これで行くか!」
ひね鶏のもも肉を確保して買い物かごに入れる。
ミンチにする道具はウチにあるので、加工は帰ってからすれば良い。
後は野菜とか残りの買い物を早く済ませて帰ろう。
家に帰る頃には少し雲行きが怪しくなっていた。
ーーー
急いで買ってきた食材を冷蔵庫に入れて、ベランダに干してある洗濯物を取り込んで部屋干しする。
そういやもうすぐ梅雨入りだってニュースで言ってたなぁ。
手洗いをしっかりして、お湯を沸かして包丁とまな板を熱湯消毒する。
彩葉が作ってくれたこの体は食中毒になる心配は無いけど、だからって対策を怠るわけにはいかない。彩葉の健康は、かぐやが守るのだ!
お肉の前に、野菜の下ごしらえから始める。
今日の晩ごはんはチキンカレー。ひね肉のミンチを使ったカレーだ。付け合わせのサラダとスープも同時進行で作る。
サラダは彩り良く、水菜、ベビーリーフ、フリルレタス、赤玉ねぎを使う。赤玉ねぎは事前に水に浸して辛味を抜いておく。
スープはレタスとニンジン、ベーコンを具材にしたシンプルなコンソメスープ。
今回作るカレーだけだとビタミンの量を十分摂れないのでサラダとスープで緑黄色野菜をしっかり摂れるよう調整する。
メインのカレーに取りかかる。
玉ねぎ、ニンジンはフードプロセッサーでフーっと一気にみじん切りに、走りのピーマンも同様にみじん切りにしたらそれぞれボウルに入れて避けておく。
本当はにんにくも使いたいところだけど、明後日に講演会なので止めておこう。体臭に影響しそうなものは極力排除だ。すべては彩葉のため。
次にお肉……とと、その前にサラダのドレッシング用にバジル刻んとかないと。
まな板の上でバジルを刻んで叩いて細かくする。
後はオリーブオイル、お酢を混ぜたものにバジルを入れて、塩コショウで味を整えればドレッシングの完成だ。
彩葉は味付け濃いめが好きなのでドレッシングは少し多めに用意しておく。
さて、改めてひね肉とご対面。
ひね肉は旨味が強いけど身が固いお肉。今回はこれをミンチにする。
皮を剥いで、包丁である程度細かく切っていく。
お、脂身が白い。米食ってるやつだコイツ。
細かく切ったら脂身の多い部分は除けて、どこのご家庭にもあるミートチョッパーに入れてミンチにする。
鍋に剥いだ鶏皮を刻んだもの、脂身、少量の水を入れて、弱火でじっくり油を出していく。
水分が蒸発して、油が十分に出てきたら皮を取り出す。
カリカリの鶏皮が出来た。塩振ったらお酒に合うんだよねこれ。けど、今回は鶏皮1枚分だけで、そこまで量が無いのでクルトン代わりにサラダに入れる予定だ。キッチンペーパーで余分な油はしっかり落としておく。
鍋に残った油はそのままカレーに使う。
火は弱中火にして、ミンチを投下。しっかりほぐしながら焦げ付かないように火を入れていく。
色が変わったらみじん切り玉ねぎ投下。色が透き通ってきたらニンジン、ピーマンも投下して炒め合わせていく。
ある程度火が通ったらトマト缶を投入。舌触りが良くなるように、あらかじめザルで一度濾してトマトの身はしっかり潰してある。
後は、アクを取りながらじっくり煮込む。
煮込んでる間にお米の用意をする。
今日はカレーだから、いつもより1合多めに炊いておく。余ったら冷凍すれば良いしね。
さらにスープの用意。フォンは前に引いたやつを冷凍して保存してあるから解凍して、それをベースに作っていく。
ある程度煮込んだら火を止めて、すりおろしたジャガイモとカレールゥを投入。
再度火を付けて焦げ付かないようにかき混ぜながら火を通す。
10分以上加熱して、十分にとろみが出て来たら完成だ。
「……うん。良い感じ」
鶏肉のイノシン酸とトマトのグルタミン酸の相乗効果で旨味もバッチリだ。
「お、彩葉からメッセ来た」
内容は「もうすぐ家に着くよ」といったシンプルなメッセージ。
「了解」のスタンプを送って、カレーの用意出来てるよっと、送信。
「わ、返信はや。楽しみだって。ふふ」
気分良く鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜた。
ーーー
いつの間にか雨が降り出していた。
彩葉が帰る頃には濡れて身体を冷やしてるかも。帰ったらご飯の前にお風呂って言うかもだし、お風呂の準備もしとこう。
湯船にお湯を張っている間にふわふわのタオルを玄関に用意しておく。
洗い物が済んだ頃に炊飯器がご飯が炊けた事を知らせる音楽を鳴らす。
しっかり混ぜて、ご飯の準備完了。
サラダの盛り付けもバッチリ。
テーブルを拭いて、食器を並べる。
彩葉、まだかな。
「ただいま〜。うわっ、カレーの良い匂い!」
帰ってきた!
「彩葉おかえり!わ、足元ビショビショじゃん!ほらタオル!」
「ありがと。帰ってる途中で急に激しくなってさぁ」
「先にお風呂入る?」
「う〜ん、ご飯で」
「りょ〜」
カレー、サラダ、スープをテーブルに並べている間に、部屋着に着替えた彩葉が席につく。
「「いただきます!」」
カレーをひと口。
「うん、美味しい」
「えっへへ〜!」
かぐやがご飯作って彩葉と食べるだけの日常スピンオフが欲しいです!
たまに芦花や真実を招いてご飯したり、朝日が駒澤兄弟に料理を振る舞う回とかあっても良いと思います!
そんなスピンオフありませんか!?