独眼竜世界に駆ける(仮題)   作:鉄線攻種

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一作目は中途半端に停滞中、ノリで始めた二作目も第一話以降無更新。
そんな状態で三作目の連載がスタートです。信じられませんね。
ディケイドの方も更新せねばとは思っているのですが、色々行き詰まってまして…
ごめんなさい。これもみんな死神のせいです。



プロローグ 最愛の友、ここに眠る

 

 

 

かつて、一つの戦いがあった。

その男は敵であり、友だった。

 

かつて、一つの友情があった。

その男は最後まで屈しなかった。

 

かつて、一つの別れがあった。

その男は戦士として最期を見届けてくれた。

 

かつて、一つの………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏社会を掌握し、世界を支配するために結成された組織・ネロス帝国。

帝王ゴッドネロスに従事する四軍団の一つ、戦闘ロボット軍団にその名を轟かせる一人の男がいた。

 

彼の名を“独眼竜(トップガンダー)”。

 

「暴魂」と称される高い地位に属し、大型ライフルで狙った獲物は逃さない。

己の信念を決して曲げない強さと、敵にさえも対等な、正々堂々とした戦いを求める孤高さ。

クールな一匹狼。それはまさに彼のために用意された言葉と言えるだろう。

 

そんなトップガンダーにも、“弱さ”はあった。

 

数奇な因果の始まりは、敵として出会ったとある一人の戦士。

 

彼の名を“超人機(メタルダー)”。

 

一人の科学者から世界の平和を託された戦闘ロボット。

何物かが危機に晒されれば、特にそれが“命”と呼ばれるものならば、たとえ敵であっても鋼の心を痛ませ情けをかける優しい戦士。

 

己の信念に従い続けた結果、命令に背いたとされ追われる身になったトップガンダーを救ったのは、言うまでもなく彼だった。

彼との出会いでやがては拘り続けていた信念を否定した彼は、最高の戦友と共にネロス帝国と戦った。

彼の危機を救い、時に救われ、帝国を追い詰めていく。

 

 

だが、別れは唐突に、そして理不尽に訪れる。

“凱聖”の凶刃から戦友を守るため、その身を投げ捨て、地に伏した。

 

トップガンダーは、己の死を嘆いてくれる仲間がいることを何よりも嬉しく思っていた。

残された仲間たちの笑顔が、浮かんではまた消える。

 

後は任せた、などとは言わない。

何も言わずとも、彼は必ず成し遂げてくれるから。

 

 

 

メタルダー……!!

 

 

 

トップガンダーの機能が、完全に停止した。

 

 

 

 

 

最愛の友

ここに眠る

 

 

 

 

 

不格好な勇士の痕跡。それはあまりにも無骨な墓標だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロボットに死後の世界などあるものか。

 

 

 

暗闇の空間。水面に意識だけが浮かんでいるような、形容しがたい妙な感覚。

痛みはない。意識は虚ろ。しかし何故か、あたたかい。

今のトップガンダーを支配しているのは、ただそれだけだった。

 

 

 

第一、ロボットに生も死もないだろうに。

俺は何故、こんな人間が勝手に想像して怯えているような“死後の世界”にいるのだろうか。

報い、というやつだろうか。ロボットにも報いはあるのか。

生前犯してきた罪を思い返せば、それも当たり前か。

 

………生前、か。

 

 

 

つい先程生を否定しておきながら、そんな言葉を使ってしまった自分を嘲る。

 

 

 

生きているロボットなど“あいつ”ぐらいのものだろう。

 

 

 

残してきてしまった戦友の姿を思い浮かべる。

あいつは今でも戦い続けているのだろうか。

それとも、ネロスを滅ぼし仲間たちと平穏に暮らしているのだろうか。

 

自分にはもはや確かめる術はない。

不思議なのは、知りたいとも思わなかったことだ。

 

 

「面白いね、君」

 

「……ッ!!」

 

 

あまりにも唐突に、その“声”は聞こえてきた。

 

 

「………」

 

 

気付けば、トップガンダーはその身体を取り戻していた。

黒い体躯。赤い隻眼。不格好に盛り上がった左腕は、いつかの戒めの証。

腰にずしりという重みを感じる。見れば、共に戦ってきた相棒とも呼ぶべき黒い大型ライフルが下がっていた。

辺りを見回してみる。今立っているのは白い壁、白い床、白い家具、窓の外も白。

人間ならば目が痛くなりそうな程に白一色の小さな洋室だった。

 

 

「………誰だ?何処にいる?」

 

 

トップガンダーは虚空に問いかける。帰ってきたのは沈黙のみ。

 

 

「…ここは何処だ?俺はどうなった?」

 

 

やはり応答はない。

呆れ果て、出口でも探そうと振り返った瞬間、まさに目の前に。

 

 

「こんにちは、トップガンダー君?」

 

「ッ!?」

 

 

これまた白いドレスに、白い髪、ついでに白い肌。

さすがに比喩表現だが、「白い」としか言いようのない華奢な少女の姿があった。

 

 

「………お前は誰だ?」

 

「私?神様」

 

 

お前は何を言っているんだ。

こんな子供が神様なわけないだろう。

 

 

「あ、酷いなあ。私結構気にしてるんだよ?」

 

「…ッ!!」

 

 

心を読まれた。

……ロボットの、心?馬鹿を言うな。

 

 

「…ふふふ、本当に面白いなあ君。さっきからそうやって自問自答を繰り返してるけど、それの何が楽しいの?」

 

「………」

 

 

どうやらこの子供にはすべてお見通しらしい。

トップガンダーは、この子供を神様という“てい”で答えを返した。

 

 

「……楽しいことだと思っているのなら、正常ではないな」

 

「スレてるねえ。生前いろいろあったみたいだしねえ」

 

「……どこまで俺のことを知っている?」

 

「全部」

 

 

あっさりとそんなことを言ってのける神様に、さすがのトップガンダーも呆れ果てる。

いい加減、こんな茶番に付き合わされるのも限界だった。

 

 

「……俺は神など信じていない。むしろ嫌悪している。それでもお前が神だと言い張るのなら───」

 

「神が憎い?結構。ではますます憎くなりますよ」

 

「お前は何を言っているんだ?」

 

 

つかみ所のない神様に肩透かしを食らうトップガンダー。

こちらには銃がある。天井にでも一発撃ち込んでやれば正直になると思っていたが、そんな気も失せてしまった。

 

 

「アワレ!今から君は理不尽な神様の手で不条理な異世界に転送されるのだ!」

 

「………は?」

 

 

自分でもどうかと思うような、間抜けな声だった。

神様のその台詞を聞いても、そんな拍子抜けした声しか出でこなかった。

 

 

「一体どういう……」

 

「だって君の人生…ん?ロボットだから…うーん…ま、何でもいいや。つまらない一生を過ごしてきた君に神様である私から特別プレゼント、ってこと」

 

「つまらない……だと?」

 

 

トップガンダーの右拳に力が加わる。

握り締めた拳からギリギリ、と金属の音がした。

 

 

「……確かに、俺は鉄と腐肉にまみれた醜い世界で戦ってきた…だが、信頼できる仲間ができた!!本当の強さを教わった!!歪んでいでも、俺が歩んできた道だ!!それをつまらないなどとッ……!!」

 

「アツいねえ。私の大好きなアツい血潮。あ、ロボットだから……あれ?君、何で動いてるの?ガソリン?」

 

「貴様ッ…!!」

 

 

半笑いで煽るように言ってくる神様に、トップガンダーの怒りが高まっていく。それでも、腰の大型ライフルを抜くことだけは抑え込んだ。

神様はそんな様子のトップガンダーさえも、自分の暇つぶしか何かにでも思っているかのようにけらけらと笑う。

 

 

「あ、そうだ。君、その外見じゃ向こうでも不都合が多いだろうし、特別サービスで人間と同じ姿にしてあげるね」

 

「………お、おいッ!?」

 

 

神様がトップガンダーに右手をかざす。

ぽん、という何とも間の抜けた軽い音と共に煙に包まれたトップガンダーは、次の瞬間には人間の青年の姿になっていた。

齢は18といったところか。長身で、無造作に伸びた黒髪。右目には眼帯。左腕は前のように不格好に盛り上がってはおらず、代わりに肩から一本一本の指先までかけて隙間なく包帯が巻かれていた。

服装は、サイズは調節されているが前の物と同じだった。大型ライフルも腰に下がっている。

 

 

「………おい」

 

「これ、どういう見た目にするか私でも選ぶことができない完全ランダム制の能力なんだけど……結構なイケメンになったねえ」

 

 

もはや意味も意図も理解できない。

人間になってしまったトップガンダーは、部屋の壁に備え付けられた姿見の前で固まっていた。

 

 

「どういうことだ…」

 

「準備万端。んじゃ、あとは………」

 

「待て…お前は一体何が目的なんだ!俺をどうするつもりなんだ!?」

 

「………覚えておいてね。私は救済の神。私はただ、ロボットでありながら心を宿した君を救いたかっただけ」

 

「何を、ふざけッ───」

 

 

次の瞬間、トップガンダーの“肉体”は陽炎のように揺らめきながら消滅した。

 

 





腕が未熟にも関わらずファンタジーに手を出してしまったことを軽く後悔しつつ、始まります。
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