私は
開発者のこより先輩曰く、「ゲームの世界に飛び込み、五感を通じてゲーム世界を体験する全く新しいVRシステム」だそうで、すでに別の先輩方がテストプレイに参加しているらしく、今回はデビューして日の浅い自分にお鉢が回ってきた、という形だ。体験するゲームは何なのか、そこだけは教えてほしかったのだが⋯⋯
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!?」
あからさまに事件性しか感じない悲鳴が聞こえてきたので慌てて現場まで駆けつけると、先程までテストプレイしていたであろう戌神ころね先輩が、怯えた表情を浮かべてアンダーウェアを不自然に濡らした状態でへたり込んでいた。見ると、傍らには先程まで装着していたであろうヘッドギアが転がっており、どこか不機嫌そうな表情のこより先輩から必死になって離れようとしているのがわかる。
「もー、ルイルイが発狂して壊れちゃったから、今度はイケると思ったのに⋯⋯」
「いや、何をどう思ったらイケると思ったの!?
「あの、ころね先輩。『ぼたん先輩でさえクリアできなかった』って、どういうことですか?」
声をかけたことで、ようやくこちらの存在に気がついたころね先輩が、震える指で研究室の一角を指さす。すると、そこには胎児のように身を縮めて震えながらすすり泣くぼたん先輩と、虚ろな表情で天井を見上げてぶつぶつと何かを口ずさんでいるルイ先輩の姿だった。ルイ先輩はあのザマなので正直マトモなコミュニケーションは望めそうにないだろうからして、問題はぼたん先輩だ。普段の配信ではホラーゲームでビビったところを見たことがないだけに、いったい何が原因でここまで怯えているのだろう、と思いつつぼたん先輩に声をかける。
「ぼたん先輩、いったい何があったんですか?何があったか話せますか?」
なんとか話の通じそうなぼたん先輩の肩を叩き、一度冷静にさせてから事情を聞くことに。ぽつぽつと話してくれた内容を繋げると、こよりから「新作のVRゲームシステムが完成した」と聞かされて呼び出された、体験するゲームの内容は一切聞かされなかった、実際にプレイしてみたら初心者ボーナスも救済措置もなく、本能的に襲い来る死の恐怖にいっぱいいっぱいでゲームどころの話ではなかった、もう二度と関与したくない、ともはや散々な言いようだった。
さらにそのゲームの内容が気になり、深掘りして聞いていたところ、どうやらこのゲームは「廃研究所に潜入して脱出を目指すサバイバルホラーゲーム」らしく、初期装備は懐中電灯ひとつのみとかいう超ベリーハードモード。「初心者ボーナスも救済措置もない」とぼたん先輩が言っていたのは、おそらくこの事だろう。せめてナイフの一振りか、拳銃の一挺くらいは用意してくれてもいいんじゃないかと思う。さらに言えば、
次の
「新人ちゃん、このゲームやってくれない?なんかもう、テストプレイヤーが見つかりそうになくてさ⋯⋯」
「⋯⋯⋯これ、配信機能って実装されてますか?好きにさせてくれるのなら引き受けますが」
「それはいいよ。そのかわり、タイトルはこっちで勝手に指定させてもらうけど」
「そこは好きにしてください」とだけ言い捨て、突き出されたヘッドギアをひったくり、装着してVRシステムのもとへ。 どこか座り心地のいい椅子に腰掛けて──ころね先輩の漏らした臭いが少々気になるが──手足を固定し、ゲームが起動するのを待つ。配信に関する諸々のセッティングは先輩が代わりにやってくれるので、あとは待っているだけでOKということだ。VRシステムの外からどこか心配そうに見つめてくるぼたん先輩に軽く手を振りつつ、息を整えているとゲームが起動したらしく、視界の先が白く輝く。さあ、ゲームスタートだ。
次回、ゲームスタート。
【警告】
この先のストーリー展開の中で
悪しからず、ご理解ご了承の程、よろしくお願いします。