ホロ・ハザード   作:刹那・F・セイエイ

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プレイングマニュアル.02
ゾンビやクリーチャー化したアバターは、ウイルス適合率によって変異する要素も変わってきます。
適合率が高ければヒトの形を残したまま変異しますが、低ければヒトの形を失い異形化します。
ただし、何事にも例外はあります。


#03 生存者たち

 目元に涙を浮かべ、怯えた表情でこちらを見返す千速先輩にどうにかして安心してもらおうと近づくも、近づけば近づくだけ同じペースで後ずさりするせいでどうにも距離が縮まる気配がない。だが、このまま距離を詰めていけば逃げられてしまいそう、と頭を悩ませていると、その千速先輩がか細い声でこちらに質問してきた。

 

「⋯⋯⋯新人ちゃん、ここに来るまでに他の生存者と出会った?」

「いいえ、死体とゾンビだけです。生きている先輩ホロメンは、千速先輩が初めてです」

 

 「⋯⋯⋯そっか⋯⋯」と力なく呟いてへたり込む千速先輩、おそらく先輩もまた、こより先輩の気まぐれの犠牲者のひとりだろう。FLOW GLOWのメンバーで既に犠牲になっているのは笑虎先輩と千速先輩のふたりだけだろう、と思っていると、千速先輩がそれを否定するようなひとことを放ってきた。

 

「ニコたんとすうちゃんの3人で最初このゲームの攻略にチャレンジすることになったんだけど、最初にニコたんがルイ先輩に襲われて、それで命からがら逃げ回っていたらすうちゃんまでいなくなってて⋯⋯それで、怖くなってひとりここに隠れてたら新人ちゃんが入ってきて⋯⋯」

「3人?リオナ先輩とヴィヴィ先輩はどうしたんです?」

「リオナは河川敷でロケ、ヴィヴィはダンスレッスン。今思えば、この地獄から逃れられてラッキーだったのかもね⋯⋯」

 

 それを聞いて、危うく同意しそうになった自分に気づき慌てて頭を振って思考をリセットする。リオナ先輩の河川敷ロケの内容は気になるものの、今重要なのはそこではない。目の前でおろおろと狼狽えている丸腰手ぶらの千速先輩を、どうやって護衛しつつ安全圏まで退避するか、そこが問題だ。手持ちの武器は、残弾10発の拳銃一挺のみで、圧倒的に心許ない。っていうか、身を守る武器がなさすぎて不安しかない。

 ぐしぐし、と袖口で涙を拭いつつなんとか立ち上がる千速先輩。ここに来るまでに怖い思いは散々してきただろうが、しかしだからといってここにずっと留まることはできない。枢先輩を探し出すためにも、千速先輩を守るためにも、まずは戦える武器探しは重要だろう。これだけ雑多に物が散乱しているのだ、身を守る武器のひとつやふたつ、あってもおかしくはないだろう。

 とりあえず、といった感じで千速先輩とふたり周囲を散策して、大振りのサバイバルナイフ二振りと拳銃の弾薬20発、オイルの切れたライターとどこかの鍵、そして何に使えるのかはわからないが二種類のガンパウダーをそれぞれふたつずつ手に入れた。贅沢を言えば、新しい銃火器が欲しかったところだが、ねだったところでないものはない。拳銃の弾薬もそうだが、サバイバルナイフが手に入ったのは大きな収穫といえる。これで拳銃の弾薬が万が一尽きたとしても、最低限身を守れる武器は手元にあることになる。

 二振りのサバイバルナイフのうち、一振りを千速先輩に手渡して拳銃の弾倉(マガジン)に追加で弾薬を装填。余った弾薬とオイル切れのライターとガンパウダー二種類をリュックサックに詰め込み、どこかの部屋をあとにする。最初に拾ったどこかの部屋の鍵をあらためて眺めていると、タグに『宿直室』と記載されており、もうひとつのどこかの鍵は『305』と3桁の数字が記載されていたため、この鍵の部屋を目指して探索することになった。

 

「そういえば千速先輩、こんなときに何なんですけどあのマヨキチマッドサイエンティストになんて言って呼ばれたんですか?」

いや、言い方⋯⋯こより先輩に「新作のVRゲームシステムが完成した」って呼び出されて来たはいいけども、なんのゲームやるかとかなんにも聞かされずにVRシステムに放り込まれて。最大で5人プレイが可能みたいだけども、あのあと他のプレイヤーと会ったことはないから、たぶん新規プレイヤーは新人ちゃんだけなんじゃないかな?」

「おかしいですね、ころね先輩とぼたん先輩もプレイしているはずなんですが⋯⋯」

 

 「少なくとも、ころね先輩の死体(アバター)は確認しましたし」と補足して返すと、どこか引きつっていた──というよりは呆れた──表情の千速先輩が次に何かを思い出した表情を浮かべて手のひらを拳で叩く。

 

「ああ、あの銃声はころね先輩が拳銃自殺したときの音だったのか。ころね先輩、きっと怖かっただろうね。こより先輩に騙しうち同然に連れてこられて、何も知らされないまま怖い思いだけさせられて⋯⋯」

「でしょうね⋯⋯そうなると、ぼたん先輩はどこに⋯⋯あっ、宿直室着きましたね」

 

 思いつきの質問からダラダラと会話していると、目的地の宿直室に到着したので、鍵を使って扉を開く。研究員たちが仮眠や休憩のために使用されていた部屋なので、少なからず物資は揃っているだろう。できれば、新しい銃火器が欲しいところではあるが。

 そうして千速先輩と宿直室を散策して、ライターオイルと研究所内のカードキー、未開封のタバコ二箱と何かのメモ書き、そして鍵のかかったロッカーからはポンプアクション式のショットガン一挺と弾薬を手に入れた。ショットガンの弾薬は5発と少ないものの、強力な武器が手に入ったのはありがたい。

 拳銃を千速先輩に手渡し、自分はショットガンを携えて宿直室を出ようとした瞬間、その宿直室の出入口に今もっとも会いたくない人物の姿を見てしまう。

 

「見ツケタ」

 

 振り切ったはずのルイ先輩が、そこにいた。




■プロフィールページ
・湊優子

ホロライブ7期生所属の新人VTuberで、デビューして一ヶ月未満のひよっこ。
まだデビューして日が浅いせいか、先輩ホロメンの呼び方は『下の名前+先輩』(例:輪堂千速→千速先輩)で統一しており、あだ名では呼ばない。ただし、罵倒時は例外。
得意ジャンルはFPSで、配信中に飛んできた視聴者コメントを戦術に活かす柔軟性を持つ。
どんな極限状態においても笑顔を崩さず、ポジティブシンキングを崩さない。
推しホロメンは?と聞かれたことがあるものの、「特にいない」とのこと。
本当は獅白ぼたん最推し、しかしまだ本人にも打ち明けていない。

ホロダイバー不参加者のなかで、今後飛び入り参加してほしいホロメンは?(第一章終了時点での上位3名が、第二章以降飛び入り参加します)

  • ときのそら
  • AZKi
  • ロボ子さん
  • 赤井はあと
  • アキ・ローゼンタール
  • 夜空メル
  • 猫又おかゆ
  • 百鬼あやめ
  • 癒月ちょこ
  • 大空スバル
  • 兎田ぺこら
  • 不知火フレア
  • 桐生ココ
  • 角巻わため
  • 姫森ルーナ
  • ラプラス・ダークネス
  • 沙花叉クロヱ
  • 火威青
  • 一条莉々華
  • 儒烏風亭らでん
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