ホロ・ハザード   作:刹那・F・セイエイ

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プレイングマニュアル.03
クリーチャー化したアバターは、脳機能が次第にウイルスに侵食され、人格の変貌や記憶の欠落など、ウイルスの影響が大なり小なり現れます。
クリーチャー化の内容によっては、他のクリーチャーを従えるなど、独自の変異を遂げるアバターもいます。
そのため、記憶と人格を完全に保持したままウイルスに適合することは不可能です。


#04 途切れた記憶

 宿直室の出入口に陣取り、こちらを待っているルイ先輩に先程手に入れたばかりのショットガンを構え、一発お見舞いしてやろうかと思うのだが、どういうわけか右手の人差し指がここへ来て反抗期を迎えたらしく、なかなかショットガンのトリガーを引き絞ってくれない。もっともそれは、隣で拳銃を構える千速先輩も同じようで、苦悶の表情を浮かべながら躊躇している様子が見える。

 

「随分見つけるのが早かったですね、確か完全に振り切ったはずだったんですが?」

「私ノ眼カラハ、逃レラレナイ。ドコニイヨウト、必ズ見ツケ出ス」

「ホークアイ、敵に回すとこんなに厄介とは⋯⋯」

 

 十字の入ったオレンジの瞳をすっと細め、明確にこちらを獲物(ターゲット)として認識しているルイ先輩。あの優しいルイ先輩は、もうどこにもいない。そうわかっていながらも、目の前のルイ先輩を撃つことを躊躇ってしまう。いくらウイルスに侵食されているとはいえ、容姿はほぼルイ先輩そのままだからだろうか。さらに言えば、ある程度質疑応答ができるぶん余計にたちが悪い。これが一方的な繰り返しのセリフだったら、ルイ先輩といえど躊躇なく倒すことができたのだが。

 

「ルイ先輩、そこをどいてもらえませんか?悪いようですが、こちらもこんなところでくたばるわけにはいかないんです」

「悪イ゙ケド、ソノ頼ミハ聞ケナイ。ココデ逃ガセバ、新タナ仲間ト武器ヲ手ニ入レテ脅威トナル」

「できれば穏便に済ませたかったんですが⋯⋯残念です

 

 なんとか藁にもすがる思いで懐柔を試みたものの、にべもなく断られてしまったため、構えたショットガンをルイ先輩の顔面に撃って強引にどいてもらうことにした。これで撃破したかどうかはわからないが、少なくとも逃げるチャンスはできた。仰向けに倒れたルイ先輩を横目に、千速先輩の手首を引っ掴んで枢先輩を探しに次の部屋を目指す。枢先輩も、きっと今もどこかで恐怖(うさぎさんみたい)に震えて泣いているのだろう。そう思うと、ちんたらフラフラ散策して回るという選択肢はもうどこにもない。

 不安そうな表情を浮かべて拳銃を握りしめている千速先輩をなだめすかし、次に入った部屋──確か給湯室とあった──で荷物整理も兼ねて暫しの休息を取る。リュックサックの整理をしていると、千速先輩が給湯室を物色して見つけてきたのであろう貴重な物資を両腕いっぱいに抱えてこちらに向かってくるのが見えた。持ってきてくれた物資を確認すると、未開封のインスタントコーヒーの粉──大容量パックなので、量はありそう──が二箱と紙コップの束、これまた未開封のクッキーの缶がふたつに拳銃とショットガンの弾薬、エデン研究所の見取図(マップ)にどこかの鍵が手に入った。

 せっかくクッキーとコーヒーを手に入れて喜んだのも束の間、今の自分たちにはコーヒーブレイクの時間などないことを思い出す。とはいえ、時間があったところでコーヒーを飲もうかという選択肢を選んだか──ポットのお湯はあったが、安全に飲める保証はない──どうかは甚だ疑問が残るのだが。

 

「早いこと枢先輩を見つけて、クッキー渡さないといけませんね」

「確かに、すうちゃんどこかで泣いてるかもしれないからね」

 

 枢先輩に出会えたときにすぐ渡せるように、とクッキーの缶をリュックサックの一番上に詰め込み、再出発。気に入ってくれるかはわからないが、きっと喜んではくれるだろう。そんな枢先輩の喜ぶ表情(かお)に期待しつつ、次の部屋を目指す。次の部屋に向かうまでの道中、ここの研究員たちが感染したと思われるゾンビたちが倒れていたのだが、そのゾンビたちがどこか妙だ。全身を食い荒らされた者、唐竹割りにされた者、全身を焼かれて黒焦げにされた者と、明らかに何者かと交戦した形跡が窺える。

 

「共食いや内輪揉めにしては、どこか()()()()()()が多いですね。千速先輩も、そう思いませんか?」

「確かに、手足だけをピンポイントで狙い撃ちにしたり、頭頂部から真っ二つに斬り裂いたり、ピンポイントで焼き尽くしたり。もしかすると、ルイ先輩以外にもウイルス感染して変異した先輩ホロメンがいるかもしれない」

「そうなると、最悪の場合敵対ですか⋯⋯やだなぁ⋯⋯これ以上先輩と敵対するの

 

 先輩ホロメンと敵対する未来を想像してげんなりしていたが、よくよく考えてみればログアウトという選択肢もあったということをすっかり忘れていた。単純にログアウトしただけなら、NPCとして行動を共にできる上に、ジリジリ削られるメンタルも少しは癒えてくれるだろう。そんなこんなで無事次の部屋にたどり着き、中へ入る。中は個人の研究室なのか、研究資料がファイリングされているであろうキャビネットが、壁一面にびっしりと並んでおり、そのすべてに厳重に鍵がかけられてある。

 

「ここは特に収穫なしですね、次の部屋に行って⋯⋯」

「君たち、勝手に入ってきて何の用かね?」

 

 振り返るとそこには、白衣を着た老研究員が怪訝そうな表情を浮かべてこちらを見ていた。




■プロフィールページ
・輪堂千速

ホロライブDEV_IS所属のVTuberで、FLOW GLOWのDJ兼運転手担当。
同期以外は基本的に優子同様に『下の名前+先輩』で呼んでおり、7期生に関してはみんなまとめて『新人ちゃん』と呼んでいる。
本作ではこよりに呼び出され、なんの説明も聞かされずにホロダイバーに参加させられたため、千速の中ではこよりはもう素晴らしい先輩ではなくなっている。
現在行動を共にしている優子には期待しており、一緒にクリアしてこよりをぶん殴りにいこうと心に誓っている。
ぼたんは千速の隠れていた部屋には来なかったため、千速がプレイしていることは知らなかった。

ホロダイバー不参加者のなかで、今後飛び入り参加してほしいホロメンは?(第一章終了時点での上位3名が、第二章以降飛び入り参加します)

  • ときのそら
  • AZKi
  • ロボ子さん
  • 赤井はあと
  • アキ・ローゼンタール
  • 夜空メル
  • 猫又おかゆ
  • 百鬼あやめ
  • 癒月ちょこ
  • 大空スバル
  • 兎田ぺこら
  • 不知火フレア
  • 桐生ココ
  • 角巻わため
  • 姫森ルーナ
  • ラプラス・ダークネス
  • 沙花叉クロヱ
  • 火威青
  • 一条莉々華
  • 儒烏風亭らでん
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