ホロ・ハザード   作:刹那・F・セイエイ

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プレイングマニュアル.04
ログアウトしたプレイヤーのアバターは、再ログインするまでNPCとして行動します。
敵NPCではないため敵対する可能性はありませんが、他のクリーチャーに襲われる危険性があるので、早く助けにいきましょう。
ただし、感染していた場合、その限りではありません。


#05 悲劇(バイオハザード)の元凶

 怪訝そうな表情でこちらを見つめる白衣の老研究員に、優子は携えていたショットガンをキャビネットに立てかけ、老研究員に向き直り頭を下げる。

 

「申し訳ありません、無断で立ち入ったことについては謝罪します。ですが、こちらも先輩(ともだち)を早く助けたい一心だったので⋯⋯」

「友達⋯⋯?もしかして、背の低い青い髪の子のことかね?」

 

 そう言って研究室の奥へ消えていく老研究員が次に帰ってきたのだが、その傍らには老研究員にしがみついて不安そうな表情を浮かべる枢先輩がいた。おじいちゃんに甘える孫娘みたいな構図ではあるが、今はその構図を楽しんでいる余裕はなさそうだ。現に、今隣では口元を手で押さえ、目元に涙を浮かべて今にも泣きそうな表情の千速先輩が震えていたのだから。

 

「⋯⋯⋯すう⋯⋯ちゃん⋯⋯?」

「⋯⋯⋯ちは⋯⋯その隣にいる新人ちゃんは?」

「ああ、こっちはついさっきプレイヤーとして参加してくれた新人ちゃん。⋯⋯⋯けど、すうちゃんがいるってことは、残るプレイヤー枠はあとふたりってこと?」

「ううん、3人。すうはプレイヤーじゃなくて、NPC枠に入るから」

 

 NPC枠?とつい首を傾げていると、枢先輩がそのリアクションに気づいたのか、こちらに近づいて解説を始める。

 

「NPCっていうのは、ホロダイバーからログアウトしたプレイヤーのことで、変異していない元プレイヤーのことなの。ウイルス感染して変異したプレイヤーは、クリーチャー扱いになって敵になるんだけど、変異していない元プレイヤーは中立扱いになって仲間にすることが可能。と、ここまでNPCについて解説したけど、ここまででわからないことは?」

「NPCについてはある程度は理解できましたけど、NPC枠は最大で何人まで登録が可能ですか?」

「5人、プレイヤーと合わせて最大で10人まで登録が可能。メニュー画面を開いて⋯⋯って、もしかしてメニュー画面の開き方こより先輩から聞いてない感じ?」

「ええ、聞いてませんね。あの頭ピンクメスコヨーテ、なんの説明もなくヘッドギア押しつけてプレイさせてきましたから」

だから、言い方⋯⋯けど確かに、いきなり呼び出してヘッドギア押しつけて即プレイ(「はい、やって」)って感じだったね⋯⋯」

 

 3人揃って──うち、千速先輩は呆れた表情で──異口同音にマヨキチへの不満と愚痴をこぼし、とりあえず話もまとまったところで枢先輩からメニュー画面の開き方の説明(チュートリアル)を聞くことに。手のひらを視界の正面に向かってかざして、そのまま左右どちらかに向かってスライドさせることでメニュー画面が開くのだという。試しに開いてみると、現在ログイン中のプレイヤーとステータス、所持しているアイテムとマップ、そして赤いログアウトボタンと、UI(ユーザーインターフェイス)はある程度マジメに作られていることがわかる。

 だが、これでころね先輩が拳銃自殺(リタイア)した理由がわかった。誰も最低限の操作方法すら知らされずに、このゲームをやらされていたのだ。メニュー画面が開けないからログアウトの方法がわからない、故にこの恐怖から逃れるためには自分の頭を拳銃でぶち抜くしかない、ところね先輩は泣きながら拳銃自殺(リタイア)を選んだのだろう。⋯⋯⋯帰ったら絶対あの先輩(マヨキチ)の脳天かち割って中身拝んでやろう。うん、そうしよう。

 

「ああ、そういえばほったらかしにしてましたね⋯⋯すみません」

「ああ、どうやらそちらも話はまとまったようだね。私は黒崎、このエデン研究所の主任研究員だ」

「主任研究員⋯⋯?確か、このエデン研究所はバイオハザードが発生して閉鎖されたとかって⋯⋯」

「ああ、この研究所で研究されていたウイルス兵器が漏出し、バイオハザードが発生した。そして私は、そのウイルス兵器の開発主任を担当していた」

 

 その後も断片的に語られた内容を要約すると、もともとは既存の治療薬では対応しきれない難病に対する特効薬を開発したときの副産物だった、殺人ウイルスを開発したつもりはなかった、ウイルスの持つ無限の進化の可能性に惹かれ、さらなる研究を重ねていたところでバイオハザードが発生した、と自らの行いを悔いているかのようなことを口にしていた。

 さらにそのウイルスについて深掘りして聞いていくと、感染した者のウイルス適合率が高ければ、ヒトの形と意識を保ったままウイルスに順応して肉体と精神が変異するが、ウイルス適合率が低ければ、拒絶反応を起こして意識を乗っ取って異形化するという。

 

「ウイルス適合率が高ければ高いほど、ヒトの形と意識を保ったまま変異するんですよね?だったら、完全適合すれば、変異することなくウイルスに順応できるんじゃないですか?」

「いや、それはない。ウイルスが適合する際に、細胞のデータを書き換えてしまうからだ。()()()()()()()()()()()()()()()、それは不可能だ」

 

 つまり、肉体も精神も変異していない感染者(ホロメン)はいない、ということか。できれば、これ以上感染した先輩ホロメンと会いたくはないが、贅沢は言ってられない。とりあえず、気晴らしにコーヒーブレイクと洒落込もうか、とリュックサックに入れたクッキーの缶に手を伸ばそうとした次の瞬間、ひときわデカい銃声が響き渡る。敵襲か、とキャビネットに立てかけておいたショットガンを入口に向けて構え、敵の襲来を待つ。しかし、待てど暮らせどその銃声の正体がこちらにくることはなく、隣で拳銃を構えていた千速先輩と顔を見合わせて首を傾げる。

 少なくとも、この研究室も安全地帯ではないことはわかったので、先輩たちを引き連れて移動しようとしたところ、黒崎主任研究員から提案が飛んでくる。

 

「このまま地上に留まるのは危険すぎる、一旦地下へ降りて装備品を整えてはどうかね?」

 

 どうやら、ここはただの研究所ではないらしい。




■プロフィールページ

・鷹嶺ルイ
ホロライブ6期生のVTuberで、秘密結社holoxの女幹部。
本作では、直系の7期生がデビューして名実共に先輩を名乗れるようになったため、7期生デビューの一報を聞いたときはウッキウキで歓迎パーティーの企画を考えていた。
こよりについては、なんの説明もないままホロダイバーに参加させられて恐怖体験させられたため、ルイの中ではもう同期(ともだち)ではなくなっている。
現時点で、ルイの心は既にholoxを離れており、優子がホロ・ハザードをクリアした暁には、holoxを脱退して7期生の名誉顧問を名乗ろうかと本気で考えている。

ホロダイバー不参加者のなかで、今後飛び入り参加してほしいホロメンは?(第一章終了時点での上位3名が、第二章以降飛び入り参加します)

  • ときのそら
  • AZKi
  • ロボ子さん
  • 赤井はあと
  • アキ・ローゼンタール
  • 夜空メル
  • 猫又おかゆ
  • 百鬼あやめ
  • 癒月ちょこ
  • 大空スバル
  • 兎田ぺこら
  • 不知火フレア
  • 桐生ココ
  • 角巻わため
  • 姫森ルーナ
  • ラプラス・ダークネス
  • 沙花叉クロヱ
  • 火威青
  • 一条莉々華
  • 儒烏風亭らでん
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