短編ネタ 真・恋姫†無双 ~俺が、俺達が、運び屋だ!~   作:piguzam]

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今回の挿絵は、古代中国の遺跡から発掘されたものです(死んだ目)


慈恵堕李と書いてジェダイと読むww

 

 

主人公。尾美一

 

 

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あれから三ヶ月の時が流れ、もう夜が深け始めた頃。

 

 

 

やっと作業が終了した俺達は、出来上がった一隻の船に乗り、各所の状態を確かめる。

しかしGIJUTUチートの粋を集めたこの船。

幾ら素人作業の俺達が作ったとはいえ、不具合は見つからなかった。

ならば、記念すべき進水式と洒落込もうではないか。

 

『旦那ぁ!!床下と船倉に穴はありやせん!!何時でもいけますぜ!!』

 

『灯火箱にも問題なしっす!!』

 

『しょ、食料と水も大丈夫なんだな!!』

 

「よっしゃあ!!んじゃあ皆、操舵首に集合でよろぴく!!」

 

『『『応!!!』』』

 

船の『右舷に配置された操舵席』で、竹で作ったパイプ電話から報告を聞いた俺は三人を集める。

幾らGIJUTUチートとはいえ、この時代で電気なんかは使えないから、パイプ電話という画期的な方法を取り入れた。

やがて船の内部やマスト中間の物見櫓から降りてきた三人に椅子に座ったまま向き直った俺は、笑顔で皆を迎える。

そんな俺に向けてくる三人の表情も、同じく笑顔で彩られていた。

俺の計画を話した時、三人ともすっげえ楽しそうに聞いてたし、苦労して作った船の進水式なんだから余計に嬉しいんだろう。

 

「等々完成しましたね、旦那!!」

 

「あぁ。それもこれも皆が手伝ってくれたからだけどよ。ありがとな、俺の馬鹿げた面倒事に付き合ってくれて」

 

「何を水臭え事言うんですかい!!俺達ゃ旦那に何処までも着いてくって言ったじゃないですか!!」

 

「お、おで。今まで物を作った事なんか無かったから、すっごい楽しかったんだな!!やっぱ旦那は最高なんだな!!」

 

「よせやい。照れるって」

 

口々に祝いの言葉や、俺を信じてるなんて事を言われてケツが痒くなってきちまう。

じゃあ、皆もウズウズしてる事だし、いっちょ行きますか。

俺の出発の言葉に三人は頷き、俺の座る操舵席の隣の一席と、その後ろの二席に座る。

後は船を水辺に入る手前で止めてる倉庫のストッパーを外せば、並べられた丸太の上を転がって水辺に入る。

俺は片手でしっかりと舵輪を握り、フォースで倉庫の扉を全開にしてから、ストッパーの役割をしていた装置を退けた。

 

 

 

 

 

……じゃあ、いっちょ行くか……『ミレニアム・ファルコン号』の進水式だ!!

 

 

 

 

 

留め具が外れたファルコン号は丸太の敷かれた下り坂を滑り降り、水の上に浮かぶ。

水の上に無事に浮いたファルコン号は坂道を下った慣性の力でそのまま川の本流へ入り、舵輪を回して『帆の無い船』のファルコン号の船首を会稽の先の村の船着場へと向ける。

そして、俺は『レバー』を最小に抑えながら『ペダル』を中程まで踏み込む。

誰もが緊張する中、貨物船のファルコン号は……問題無く、航行を開始していた。

 

「「「「……いぃよっしゃあぁああああああああッ!!!」」」」

 

無事、問題無く水路を進むファルコン号。

それを確認した俺達は、腹の底から歓喜の声を挙げて周倉のおやっさんとハイタッチ。

デクさんとチビに至っては後ろで涙を流しながら抱き合ってる。

勿論、俺のテンションもバリ高だ。

何せ俺自ら設計して造船から何からまで指示出してたんだからな。

 

 

 

俺が設計したミレニアム・ファルコン号は、本物のYTー1300型軽貨物船とは似ても似つかない船である。

 

 

 

何せ宇宙船では無く水の上を走る様に滑る滑走船なんだからな。

だが、俺は頭の中に過ったビジョンに沿いつつこの船をファルコン号の特徴を盛り込んで設計した。

 

 

 

まず、設計の段階でこのファルコン号の用途を決めた訳だが、これは従来のファルコン号通りの軽貨物船として設計した。

しかしそのままの形では水に浮いても只浮くだけであって、とても船にはならない。

だから、俺は基本的なファルコンの形に大胆にも船の構造をとっつけたのである。

 

 

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まずコックピット。

 

これはファルコン号のイメージ通りに船体の右舷に配置してある。

やっぱファルコンのイメージは極力壊したくなかったからな。

ただ違うのは、コックピットの通路を途中まで剥き出しにして、俺達が座ってる操舵席から入口をちょっと過ぎた所の部分だけ屋根をそのまま残した。

まぁ、例え雨が降っても幌を張る事で通路を濡らす事は無いのだが。

それと操縦桿は言うまでも無く舵輪になってます。

小さく設計してあるが、普通の船の舵輪よりは軽く動く。

何せ緊急時には俺以外にも操縦してもらう訳だし。

しかも本物のファルコン号と同じで、隣の副座席にも同様の装備が施されてる。

これは緊急でどちらかが舵を離れなければならなくなった時に即座に運転が切り替えられる様に、レバーを切り替えるだけで主導権がどちらかになる仕組みだ。

 

そしてファルコン号のスタイルだが、上の部分はスタイルだけをほぼ忠実に再現させている。

 

船の表面の部分は全て甲板で手すり付きなので歩ける様になっていて、さらに中央は一段降りたラウンジとなっている。

そして甲板やラウンジには等間隔で外灯(ランタン)を設置してるので、夜も明るさを保てるのだ。

そのラウンジから、最大十五人まで収容可能な二階建ての客室と、貨物船の肝である大型の貨物庫、更に二重床の隠れ倉庫までご用意。

 

 

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客室内部に厨房と長旅には欠かせない冷蔵+冷凍庫、そして五人まで入れる風呂、トイレは各階に二個づつ完備してあるのだ。

更に河の水を綺麗に濾過する石や砂なんかを使った濾過器もちゃんと装備している。

 

どうやって湯を沸かしたり冷やしたりしてるのかは、後述するので少し待って欲しい。

 

更に二階、つまり表面甲板に上がると、ファルコン号の大きなレーダーアンテナを模した回転式巨大望遠鏡が設置されてる。

少しでも周囲の様子を遠くから迅速に知る事が出来る様に設置した代物で、ハシゴを昇って使用するのだ。

そして船員の部屋と、このファルコン号の最大武装である超・大型弩砲が二門設置された砲室へつながる扉が備え付けられてる。

本物のファルコン号の振動ミサイルの搭載されていた部屋の一つ下の階に弩砲を設置して、その上の部分を砲手席に改造してあるのだ。

更にその砲手席の窓の両脇に灯火箱(西洋の船に使われたランプ)を設置して砲手の視界を確保しつつ、窓枠に嵌め込んだガラスのお陰で天候や風に関係なく狙撃が可能だ。

またこれらが壊れたとしても、三人に作ってあげたスコープ付きのヘッドギアのお陰で非常時も心配なし。

ちなみにスコープ付きヘッドギアはワンピースのウソップが使っていた望遠ゴーグルの片目版を作ったものだ。

 

大型弩砲もGIJUTUチートを流用して製造した物で、蜀の美女、厳顔の豪天砲の刃を外して巨大化した物を二門搭載してある。

 

その有効射程距離は実に800メートルにも及ぶ、大射程距離の最終兵器だ。

更に弾丸である巨大な木は重みがあって固い素材を使用してるので、弾丸が負ける事はまず無いだろう。

先端と尻の撃鉄が叩く箇所は鉄でコーティングしてあるので、この時代の船や城壁は軽く貫通出来ちゃう。ヤダ、怖い。

しかもリボルバー形式なので弾丸は六発……二門で十二発の連続発射が可能なオーバーキルっぷり。

 

更にファルコン号の巨大なクチバシ先端にも、鏡を反射壁にした大型ランプを搭載しているので、どんな夜間の航行でもへっちゃらなのであります。

 

だが、水に浮かぶ船倉の方はそのままでは水の抵抗を感じてしまうので、俺はその部分を大胆に変更した。

まず、先端のクチバシから後ろまでの部分に一直線に竜骨の入った船体を二つくっつけたのである。

この時代では存在しない竜骨製の船は、木の板を並べただけの船とは比べ物にならない滑走性を実現した。

うんうん、やっぱりファルコン号といえば、その巨体に見合わない速度だよな。

 

横から見たらファルコンっぽいけど、さすがにスタイルばかり追求してていざって時に役に立ちませんじゃ駄目じゃね?と思い至った。

って事で、船倉横には中世の船の大砲の代わりに中型のバリスタを五門設置して攻撃力をUPUPしてある。

 

 

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しかも物々し過ぎて取引相手が怯えない様に普段は砲門の穴を板で隠してあるので、パッと見じゃそこまで戦闘力のある船には見えない。

もし河賊が襲い易いと舐めて掛かってきたらヘルトゥユーしてもらうとしよう(ゲス顔)

更にこのファルコン号の武装である備え付けの弩は全て滑車を弦の部分に採用したコンパウンドボウっぽいカスタム品だ。

引く時は軽いのに、弦が固いので飛距離と威力を稼げる、所謂ズルい武器ってヤツだな。

 

 

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前後に備え付けた砲台はミレニアム・ファルコンのクワッドファイヤレーザーキャノンをイメージして、連弩を四門くっつけて作った。

座席と砲台は一体式で、回転も出来る優れ物。

それと給弾方式だが、後に諸葛亮が発明する連射が可能な『諸葛弩』の機構をパクって作り上げた砲台だ。

一門の連弩が三発同時発射を可能としてるので、3×4=12発の矢の様な杭を同時発射出来る。

しかも例の滑車付きなので、射程距離はこれまた驚愕の550メートル長を可能とした。

マガジンには其々弾薬を八十発装填してあり、余程の大船団と当たらない限りは弾切れの心配は無い筈。

あれ?何かフラグ建った?……いや気の所為だろ、うん。

 

またこれらの弾丸は全て矢では無く鉄製の『杭』いや『釘』に近い物を使用しているので、破壊力は比べるべくも無い事を追記しとこう。

 

んでもって、『ここまで来たら自重いらなくね?』という思考の到達により、俺はファルコン号のコックピットや客室の窓に『強化ガラス』を嵌め込んだ。

いやー、ある程度の小物ならスマホが出来上がった物を転送してくれるチートさまさまですな。

しかも恋姫の世界は鏡やメガネなんかが普通に存在してる世界なので、高価ではあるがガラスも当然存在している。

なのでそんなに怪しまれる事は無いだろう。

向こう側が透けて見える程の透明度を誇る強化ガラスによって、ファルコン号は風で目が開けられないという事態にならない無敵の安全性を会得した。

 

 

 

そしてファルコン号の全身に使われてる材木も、硬くて軽いマホガニーの様な素材をふんだんに使用。

帆船の命とも言える竜骨や船底は全て薄い鉄で覆い、岩なんかの衝突に対しての対策もバッチリ施してある。

さすがに一級武将の気を宿した弓矢なんかだと防げるかは怪しいが、少なくとも一般や上級兵の弓や蹴りなんかじゃ屁でも無い程の防御力だ。

 

 

 

しかしここまでは順調だったが、ある箇所でファルコン号の設計に大きな狂いが生じた。

 

 

 

それは、本来ならファルコン号の後部に存在する巨大な『イオンエンジン』と『噴射口』のある後部の存在だ。

幾らGIJUTUチートとはいえ、ファルコン号の高速力を発揮する強力なイオンエンジンなんて再現は無理だ。

っつーか空飛ぶならリパルサーエンジンとかも要るから絶対無理。

 

だから、俺はそこの部分のデザインを大きく変更せざるをえなかった。

 

 

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客室一階と二階の窓を取り付け、一階にはテラスも備え付け、客の心を癒やす快適空間を。

倉庫側には船内の倉庫扉から入らない様な大型の荷物を搬入出来る様に、下向きに扉が開いてタラップになる大型の搬入口。

しかもタラップは半分だけ開く事も可能なので、窓の役割も果たせる。

その横に5人乗りの小型ボートを収納した脱出用の出口も用意。

まさに豪華絢爛にして質実剛健な装備を施した後方部分を、三階甲板に備え付けた一門のクワッドファイヤレーザーキャノン風の連弩砲が防衛するという図式だ。

 

 

 

更にこのファルコン号の肝とも言える、『帆も無いのに進む』推進方式も語っておかねばならねえ。

 

 

 

前述した通り、この世界じゃGIJUTUチートを使ったとしても、エンジンなんて代物は再現出来ない。

だから基本はマストで風力を受けて進む帆船にしようと考えたが、それじゃ無風の時や風向きが悪い時に動けなくなっちまう。

蒸気機関システム……とはいかないまでも、俺は風まかせじゃなくても自力で強力な推進力を得る方法を欲した。

例を上げるなら、ワンピースのサウザンド・サニー号やモビーディック号のパドルに近いものだ。

しかしこのファルコン号に求めたのは、『パドルによる安定した推進力』では無く、『何時如何なる時でも抜群の速度で航行出来る推進システム』という欲張りな思想。

そこで俺が目を付けたのは、この恋姫無双の世界に度々登場する『宝貝(パオペイ)』という、所謂導師の作った不思議な道具だった。

実はクチバシ先端の大型ランプの光源も、キッチンの冷蔵庫と湯を沸かす装置もこのパオペイなのであるが、それは割合する。

そのバラエティといったら、原作でも太平要術の書や姿を晦ます蝶の仮面なんて怪しさ抜群の道具が出てきたぐらい。

もしかしたら、何か不思議な道具の中に俺の求める何かがあるんじゃないかとスマホで検索を掛けた所、見つかってしまったのである。

 

 

 

それは、『速変竹』と呼ばれる不思議な竹筒だ。

 

 

 

筒の先から吸い込んだ物をまるで俊足の如き勢いと速度で反対側の穴から噴出するという、世にも奇妙な道具だった。

水を吸い込めば水をとんでもない速度と噴出量で吐き出し、そよ風程度でもまるで突風さながらの勢いに変わる。

試しに俺達四人の体重の三倍はありそうな岩に向けて竹筒に軽く息を送り込んだら、まるで自動車に跳ねられた様な速度で飛んでいって、山の斜面にめり込んだ程だ。

一体どんな用途で作られたのかは知らないが、これはありがたいと即飛び付いたのです。

 

と、この様にとんでもない素材を手に入れた俺は、早速この竹筒をファルコン号の推進装置……つまり『エンジン』として機能に組み込んだ。

 

船倉の舵を挟み込む様に配置した四つの噴射口に、その『速変竹』を前進用に五本づつ組み込み、制御弁を取り付ける。

制御弁とは、コックピットの操舵席足元に配置した自動車のアクセルを流用した踏み込みペダルだ。

ペダルを踏み込めばその量に応じて筒を塞ぐ弁が開くというシステムで、ココが俺が特に力を入れた肝入の装置である。

更にファルコン号のハイパードライブの起動レバー部分に『無段階式開放弁』という制御装置に近いモノを採用。

レバーを下に下ろしていく度に、速変竹の出口と入り口を覆うはめ込み式の鉄板が次々と上にずれ、速変竹の本数が増えて出力の幅が上がるギミックだ。

一段階毎の段階式にしなかったのは、速度の微妙な調整を可能にする為である。

このレバーも右舷左舷に合わせて二本制作して、左右の出力で船の挙動バリエーションを増やす事に成功。

 

後もう一本レバーがあるが、それの説明はまたの機会にするとしよう。

 

しかも例え停止した状態で無風だったとしても、速変竹の先端に取り付けた手動扇風機のハンドルを回す事で、自力で風を生み出す事を可能とした。

ハンドルは操舵席の横に自動車の手動窓のハンドルと同じ要領で取り付けてあるので、操舵席に座ってさえいれば航行は可能なのである。

更にジャイロ回転機構を組んであるから、有る程度回したら後は余力で回転もしてくれる。

この竹の吸気口は前方大型弩砲の収められてる中央クチバシの下部に設置する事に。

 

 

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自由に曲げる事が可能な素材で良かったぜ。

更に同じ仕組みで、バック航行を可能にするために一箇所に一本追加して逆向きの手順で取り付けた。

これも前進する為の速変竹と同じ給気口に先端の筒を入れて手動扇風機を入れてある。

更にアクセルペダルの隣にバック用のペダルを追加する事で、バック用の噴射口はブレーキの役割も可能とした。

勿論前からの攻撃に備えて扇風機はガードも完備済み。

正に水上戦に措いては大陸一といっても過言では無い、究極の貨物船が誕生したのであった。

 

 

 

長々とした説明になっちゃったけど許してちょ☆

 

 

 

これも語る魅力があり過ぎるファルコン号が悪いんです。

 

 

 

運転席から見る水路の流れと、ファルコン号を見て驚く他の船に洒落で取り付けた汽笛を鳴らして挨拶する。

いやー、出来ちゃったよ……GIJUTUチートパネェっす。

スマホに寸法と欲しい材料入力したら出てくるんだもんなぁ……それを組み上げるだけの簡単なお仕事。

他はパオペイは場所探して手に入れて、鉄を打ち込んだり兵器作ったりぐらいかね?

でも大きさが大きさだし、形も複雑で試行錯誤の連続だったから大変っちゃ大変だったっす。

ともあれ、これで肝心の商売道具である船は完成。

後は仕事を受けて仕事を軌道に乗せ、『尾美水船運送会社』の名を広めるだけなんだが……。

 

「その前に、どうやって文台さんを納得させるかだよなぁ……」

 

これから待ち受けるであろう苦難を考えて、俺は自然と溜息を出してしまう。

ここ三ヶ月、俺達は造船する為に倉庫に篭りっぱなしだった訳だが、おやっさん達に、偶に食料の買い出しや仕事の受注を頼んでいた訳だ。

その時、おやっさん達は気をきかせて文台さん達の情報も集めてくれた訳だが、これがまた面倒な事になっていた。

未だ袁術に顎で使われる日々を送る文台さんの不満や苛つきは天元突破の域に達し、更に俺達四人がこぞって姿を眩ました事が発覚。

俺だけじゃなくておやっさん達もそこそこの武を持っていて、其々が一般兵を凌ぐ実力を持ってるから、文台さんはおやっさん達の事も勧誘する気だったっぽい。

しかし肝心の俺達がいきなり姿を消しちゃったもんだから、文台さんの堪忍袋のほにゃららがプッチンプリン。

昼夜問わず俺達の宿の入り口に座り込んで酒をがぶ飲みしながら南海覇王を肩に担ぎ、猛虎が逃げ出す程の眼力で周りを見ながら誰かを待ってらっしゃるそうで。誰ダロウナー?

 

「あっし、遠くからこのすこーぷを使って見ましたけど……目が、目が本気でヤバかったっす」

 

三人の中で諜報とかの役割に一番向いてるおやっさんがブルリと震えながら青い顔でそう呟く。

同時に俺達は揃って股間を抑えて震えてしまう。ヤダー、まだ息子と別れたく無いよい。

こりゃマジで移住考えた方が良さそうな?

 

「ど、どうしやしょうか旦那?あっしが受けた仕事はこの後直ぐなんですが……」

 

「んー……あんまり考えたくねぇかも……あっ、それとおやっさん達。今日から俺の事を『旦那』って呼ぶの禁止な?」

 

「へ?な、なんでですかい?」

 

「そりゃーさ。今日から俺達はこの船で運び屋やるんだから、これからは『船長』って方がそれっぽいじゃん?」

 

「船長……ですか?……確かに、その方がなんかかっこいいっすね」

 

「だろー?って事で、今日から俺の事は『船長』って呼んでよい」

 

「「「はい!!船長!!」」」

 

ん~、良い響きだぜぇ……何かこう、船長っぽくなった希ガス。

ちなみにこの船をミレニアム・ファルコンと呼んでるのは俺だけで、しかも心の中だけだ。

おやっさん達には横文字とか分かんねえだろうし、ゆっくり浸透させていこう……あっ、そうそう。

 

「それと、おやっさん達の役職も決めてあんのよ」

 

「え!?お、俺達も役職が頂けるんですかい!?」

 

「あたぼーじゃん。まずおやっさんだけど、周倉のおやっさんはこの船の『副船長』だから。つまり俺の次に偉いって事ね?頼りにしてっからさ」

 

俺の副船長任命に、おやっさんは呆然とした顔になる。

しかし俺が現れるまで、チビさんとデクさんをしっかりと纏めていたおやっさんは副船長の役職が一番合ってるだろう。

二人もそれに異論は無いらしく、笑顔で「おめでとうございます!!兄貴!!」と祝福していた。

やがて、俺の言葉を理解したおやっさんは涙を流しながら副操縦席から降りて、床に土下座した。

 

「お、俺みたいなチンピラをそんな役職にすげて貰って……し、信頼してるだなんて……ッ!!勿体無えお言葉です……ッ!!」

 

「んな事無いって。俺はおやっさんこそが適任だと思うのよ……これからも、よろしく頼むわ」

 

「ぐ、うぅ……ッ!!……ばい゛!!頑張りまずう゛ぅぅう!!」

 

「あ、兄貴。涙声過ぎて分かんないんだな」

 

「デクの言う通りっすよ兄貴。締まらねぇなぁ~」

 

チビさんとデクさんが貰い泣きしながらからかう風に言った言葉に「う゛る゛ぜぇ!!」と泣きながら怒鳴るおやっさん。

そんな遣り取りを見て笑いながら、俺はチビさんとデクさんにも役職を言い渡す。

間諜みたいに気づかれない動きが得意なチビさんには「市場調査」と「数管理」、そして狙撃にも適正があるので「砲撃手」を。

中々の怪力を誇る上に料理が得意なデクさんには「厨房」と「荷物運搬係」、そして意外に手先が器用なので「修理工」を頼む。

「副船長」であるおやっさんは俺が居ない時の船の操縦と全体指示、そして人当たりが良く聞き上手なので、仕事の受注もしてもらう事に。

 

「んじゃ、行くとしますか――俺等『尾美水船運送会社』の記念すべき初仕事に!!」

 

「「「応!!」」」

 

三人から気の良い返事を貰った俺はアクセルを更に踏み込み、待ち合わせ場所の村の水上げ場に向かうのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

おやっさんが気の良い人だと称してた通り、相手方の商人さんは気さくな良い人だった。

やっぱりおやっさんに仕事取り任せて正解だったな、うん。

最初はファルコン号を見て眼を丸くしてたけど笑顔で対応してくれたし、雰囲気も悪くなかった。

初仕事としては上々の滑り出しだ。

そんでまぁ積荷を受け取って倉庫に運び込み、俺達は記念すべき初仕事に出た訳だが……。

 

「ったくもー。何で河賊が襲ってくるのかねぇ。こっちゃ記念すべき初仕事なのよ?そこんとこ汲んで見逃してくれるってのが仁義なんじゃないのかよい?」

 

「……貴様の事情等、知った事だと思うか?我々は賊だぞ?」

 

「そりゃそーだろーねぇ……でもまぁ、狙った船が悪かったな」

 

「……それを今、強く実感してる所だ」

 

着ていた衣服の幾らかを刻まれた状態で膝を着いた呉のツンデレ大将、甘寧ちゃんは俺を忌々しいってな顔で睨み付けてる。

そんな顔で見られてる俺はライトセーバーを仕舞いながら縄で彼女をきつく縛りあげるのでした。

初仕事で意気揚々としていた俺達に襲い掛かってきたのは、まだ呉に仕官していない鈴の甘寧ちゃん率いる錦帆賊だったのね。

この時代の一般的な船で徒党を組んで襲い掛かってきた彼女達だが、いかんせん相手が悪かったとしか言えない。

何せファルコン号の横に現れたもんだから、チビさんとデクさんが操作した船体横のバリスタで船はボロッボロ。

そこで頭領の甘寧ちゃんが一騎打ちの名乗りを挙げてファルコン号に乗り込んできたので、俺は操縦をおやっさんに任せて彼女と一騎打ちをする羽目に。

まぁサクッとやっつけてやったけどね。BURYOKUチート万歳。

 

「ほいじゃ、甘寧ちゃんには人質になってもらうとしましょ。おやっさーん。船を甘寧ちゃんの船に近づけてくれー」

 

「分かりやした、船長!!」

 

おやっさんの操縦で彼女の船に近づいた俺は甘寧ちゃんを倒したと相手に通告し、投降を呼びかける。

投降すれば誰の命も取らないと宣言すれば、甘寧ちゃんの部下は皆武器を手放して俺達に下った。

それは良いんだが、さすがに人数が多いので反撃されたら鎮圧が大変。

なので皆には苦しいだろうけど、港に付くまでは縛らせてもらうと説明したら、意外とあっさり承諾された。

 

「貴様は勝者で我等は敗者だ……更に命は取らないと公言した貴様に反撃すれば、我等の名は地に落ちよう。無論、私の部下達を辱めようものなら、幾らでも抵抗するがな?」

 

成る程、さすがは呉の孫権ちゃんに信頼されるだけあって、仕官する前から潔い性格だったのね。

まぁ甘寧ちゃんの部下って男も居るけど女の方が多いし。

しかも皆して可愛い上に露出強なんですけど。

何?呉の女性って皆して肌の露出多いのは土地柄なの?

まぁこれ以上事を荒立てても良い事は無いので、俺達は絶対に手を出さないと言い含めておく。

それに反撃しないって言ってくれた甘寧ちゃんの意も汲んで縄で縛るのは無し。

代わりに俺達が向こうに帰るまでの身の安全はちゃんと保障した。

 

まーしかし、とんでもないモノ拾っちゃったぜ……あれ?このままだと甘寧ちゃんってば仕官出来なくね?

 

そりゃマズイよ。河賊辞めてもらって呉に行ってもらわないと。

しかしこのまま生半可な役人に任せたら甘寧ちゃん達は間違い無く死罪になっちまうし……う~ん……あれ?待てよ?

このまま俺達は仕事を終えたら会稽に戻る訳で……あっ、そうだそうだ。

 

「うし。甘寧ちゃんにはこのまま生贄になってもらおう。うん、それが良い」

 

「本人の真横でなんて不吉な独り言を言っている!?っというか生贄とは何だ!?」

 

「大丈夫。だ~いじょうぶ~。ちょーっと怒り狂って手のつけられない凶暴な猛虎さんの怒り鎮めてもらう捧げ物になるだけだから。ね?ね?」

 

「何が「ね?」だ!!ちょっと所の話じゃ無いだろうそれは!!」

 

「大丈夫!!さきっちょだけだから!!ちょっと擦るだけだから!!ちょっとその褌に顔埋めゲフンゲフンッ!!……顔すりすりするだけだから!!」

 

「怪しい上に変わって無い!?こ、この変態が!!」

 

息ハァハァさせながらにじり寄ると、甘寧ちゃんは両腕を抱きながらズザザ!!っと下がってしまう。

あんだよーちょっとおにーさんとお突き合いしよーよって言ってるだけじゃん。

かなり強めの拒否を食らった俺は肩を落としながら、おやっさんに操縦を頼んで甘寧ちゃん達の見張りにつくのだった。

 

後、甘寧ちゃんの部下のおにゃのこの何人かとは内緒で仲良く激しい突っつき合い(意味深)させていただきました。ごちです。

 

いやー、まさか笑顔で逆に誘われるとは……これが所謂モテ期ってヤツなんだろうか?

それとも甘寧ちゃんの部下だからあんなに押しが強かったんだろうか?謎である。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

あれから大体半年くらい過ぎた今日このごろ。

一気に時間を飛ばして俺達『尾美水船運送会社』の面々は何をしてるかというと……。

 

「船長ぉ……また孫堅様から依頼が来てやすが……」

 

「放置で良くね?」

 

「で、ですけど……依頼書には『この依頼を断ったら地の果てまで追い掛けてブッ殺す』って書いてありやして……」

 

「大丈夫大丈夫。それって何時も書いてあるじゃん?もうそれ挨拶だって。あの、元気ですかー?ってのと同じノリだよ。おやっさんてば心配し過ぎだって」

 

「そんな物騒な挨拶が書かれた依頼書が、もう数え切れないくらい来てやすけど」

 

だ、大丈夫。まだ大丈夫な筈(震え)

青い顔で報告するおやっさんに震える指でグッドサイン。

依頼書には何かちょっと赤黒くて鉄臭い墨(血ですか?血ですか?)で書かれたデッドサイン。あっ、こりゃマズイかも。

そう、俺達は会稽の地に戻って直ぐ、会稽から逃げ出して平原に身を寄せたのである。

 

 

 

正確には文台さんから逃げたのである。イノチ、ダイジ。

 

 

 

あの時の仕事はちゃんと上手くいったので、商人さんに向こうの証明書と賃金を交換してもらった後、俺は甘寧ちゃんを連れて文台さんの居城に向かった。

そして出迎えは江東の虎の繰り出す牙の連撃。熱烈歓迎ダッタゼ……。

いきなりの事で唖然とする甘寧ちゃんの事を文台さんと剣を交えながら話し、彼女の仕官を認めて貰う事に成功。

これで河を荒らす賊の中でも一等厄介な存在が消えて、代わりに今度は賊から民を守ってくれる水上戦のエキスパートが誕生したのである。

甘寧ちゃん自身も文台さんの放つ圧倒的なオーラに心酔して忠誠を誓った程だ。

まぁ孫権ちゃんとは追々に絆を深めるであろうよ。

その光景にウンウンと頷いて、俺はこう言ったのさ。

 

”じゃ、俺の代わりに甘寧ちゃん連れてきたんで、俺の仕官は無しの方向で。あーそれと俺等、運び屋やる事にしたんでここに居ない時もあると思いますが、よろしくっすー”ってな。

 

そしたら文台さん含めた呉の忠臣の方々はニッコリと笑みを浮かべて――

 

 

 

俺を総攻撃してきました。ぷぎゃー。

 

 

 

どうやら文台さん以外の人達も俺を何とか呉に入れようとか考えてたらしくて……で、考えた結果。

”とりあえずボコって捕まえて呉の女と結婚させて呉に縛ろう”となったらしい。そんな馬鹿な。

そしてそんな暴論を提案したのは周瑜さん。もう一度言おう、そんな馬鹿な。

最初は縛って俺とチョメチョメして種(何ノ事カナー?)を得ようとしてたとか。美周郎ぇ……呉ぇ……。

 

ちなみに今の情報は戦闘しながら得た物です。

 

弾ける剣戟。飛び交う弓矢。そして矢をライトセーバーで跳ね返して生まれる赤い光線。

もうね、周りを囲むのが一級の武将ばっかとか……もうね。苛メ、良クナイ。

あの時は本気でもう駄目かと思ったけど……。

 

『あー……こりゃやばいかも……』

 

『んふふー。もう観念しなさいって、オビ=ワン。ここは楽しいわよー?』

 

『ごめんね、ごめんねオビ=ワン君。でも、私もオビ=ワン君には呉に居てもらいたいから……』

 

『うむ。尾美殿の意思を無視してすまないが……その力、孫呉に捧げてもらう』

 

『いやー!!顔も知らないおにゃのこと結婚なんかいやー!!俺は自由に生きるんでい!!』

 

壁際に追い詰められてライトセーバーを二刀流で構えながら冷や汗を掻く俺に、孫策さん、太史慈さん、周瑜さんが油断無く構えながらそんな事を言う。

つーか周瑜さんてば文官なのになんでこんなに強いのよ?

間合いの取り方が巧すぎで鞭捌きが華麗過ぎだって。

更に後ろには肩に南海覇王を担いですっげえ楽しそうに笑ってる文台さんと弓矢を構える苦笑いの黄蓋さん。

他にも張昭さん、魯粛さん、陸遜さんなんかの文官さん達は兵を集めてるし、程普さんは出口の前で微笑みながら手を振ってる。

しかしありゃどう考えても扉の守護である。背中から剣がチラリ。なんて危ないチラリズム。

笑みに騙されてフラフラと寄ったらアウトじゃないっすか。

しかも隣の甘寧ちゃんまで空気読んで曲刀を構える始末。お願い、空気読んで。

 

『ふふふふふ……やぁあっと追い詰めたぜ……さぁ、諦めて俺のモンになりやがれ!!尾美一!!』

 

『その言葉が違う意味だったら大歓迎なんだけどなー』

 

笑顔でちょっと勘違いしそうな台詞をのたまう文台さんに溜息交じりに返した俺。

しかしそれを聞いて文台さん以外の面々が「え?」って顔をする。

え?HITODUMAというかMIBOUJINとか燃えるじゃない?

 

『……ま、まぁ、何じゃ。これも人生だと思って諦めよ。安心せい、ぬしに宛がわれる女はとびっきりの別嬪じゃぞ?』

 

『え、それ本当っすか?嘘じゃない?』

 

なら別に捕まっても良いかなー?

 

『うむ。儂が保障しよう……まぁ、後十五年くらいしたらじゃが』

 

『ショギョムッジョ!!俺は決して!!暴力には屈しないぞー!!(ガチャン!!ブンブンブンブン!!)イィエ゛ェェア゛ァッ!!』

 

『お主、必死じゃの』

 

『光明面(おっぱい)は暗黒面(ロリコン卿)には決して屈しないのどぅぁああ!!』

 

『おい、ダダ漏れだぞ』

 

黄蓋さんの言葉を聞いた俺はライトセーバーをダースモールの様に連結させて双刃化。

それをハム音を鳴らしてブン回しながら必死の形相になる。

つまり負けたらYOUJOを宛がわれるんですね、本当にありがとうございます。

あかーんそんな青い果実はノーセンキューなんですよ。

もっと今が食べ頃のおにゃのこが良いんだって。

若しくは熟した果実でも俺ぁ大歓迎なんですけどね。

 

『ははは!!生憎だがそろそろおねんねしてもらうぜ!!なぁーに目が醒める頃にゃ結納から式まで全部終わってるから安心しな!!』

 

『記念すべき日が意識不明とか嫌ー!!』

 

そして、文台さんの咆哮を合図に武将達が動きを見せようとしたその時。

 

ポォオオオオオオッ!!!

 

『ッ!?何だ、あの音は!?』

 

突如、謁見の間にと甲高く腹に響く音が鳴り響いた。

生まれて初めて聞いた驚きで、武将の皆は軒並み足が止まって俺から注意が外れてしまう。

だが、俺はこの音を知っていた。

それは、ファルコン号に洒落で取り付けた汽笛の音だったからだ。

汽笛は謁見の間の外から響き、今は丁度俺の背後の壁の向こうから聞こえてくる。

確か、この向こうは……おぉ!?そういう事かぁ!!

 

『ぬん!!(ドジュウ!!)芸術的繰り抜きぃ!!』

 

『あ!?こら一!!てめぇ俺の城の壁に何て事しやがる!?』

 

喚く文台さんに構わず、再び分離させたライトセーバーで円形に壁を刳り貫いて壁をひっ剥がせば、そこにはお空と町の絶景。

 

『船長ーーー!!お迎えにあがりやしたぁーーー!!』

 

ポッポォオオオオオオッ!!!

 

『おぉ!?おやっさーん!!来てくれると信じてたぜ!!ヒャッハー!!』

 

アーンド、下の水路を悠然と走るファルコン号の姿を発見。

おやっさんは副操縦席に座りながら汽笛を鳴らし、デクさんとチビさんが手を降ってる。

それを確認してから振り返り、文台さん達に笑顔で手を振る。

 

『では、孫呉の皆さんさいならっす!!とぅーす!!』

 

『ちょ!?待てこらぁ!!』

 

俺は背後の声を無視して繰り抜いた壁の穴から飛び降り、フォースを使って華麗にファルコン号のクチバシに着地。

そのまま操縦席のおやっさんに向かって叫んだ。

 

『おやっさん!!出してくれ!!急がねえと黄蓋さんの”熟しきって腐りかけなぐらい熟練された腕前”の弓矢が降ってくるぜぃ!!』

 

『ちょ、船長!?そんな”言っちゃいけない真実”をさらりと!?』

 

『あっ、やっべ。”つい本音が”』

 

『本音とか駄目ですってば!?まぁ”実年齢通りに耳が遠かったら助かってますが”』

 

『おいwwおやっさんww』

 

『『兄貴ぃいいい!?』』

 

『ぬおぉおおおおおおおお!!!尾美ぃいい貴様ぁああああああああああ!!!目と喉を射抜かれたいようだなぁああああ!!!』

 

『ぎゃー!?ばっちり聞こえてたーー!?』

 

『だ、だなーーーー!?』

 

『はっはっは。やっちったww』

 

いざこれから新天地へってな感じでテンションが変な方向に入っちゃったからついつい本音が漏れたです(笑)

悲鳴を上げるチビさんはデクさんと一緒に操縦席へ逃れ、俺は後部デッキに立ってライトセーバーで片っ端から飛来する数多の矢を叩き落とす。

既にファルコン号はそこそこのスピードで河口へと合流しようとしてるのに、まだ矢が正確に俺の頭目掛けて飛んでくるとかどうなってんの?

 

かくして、俺達は這々の体で孫呉の人間から逃げ出したのであった。

 

そうやって目的地も告げずに逃げたのに何でもう竹簡が届いてるんだろうか?本当に謎である。

そしてそんな状況でまだ処刑人が現れてないのは、袁術の我儘に付き合わされてるからというのが一つ。

もう一つはここが離れた土地であるからだと思う。袁術ちゃんマジ天使。

そして初仕事の時に知り合った商人を介して、平原の船着場の土地に職場を構えた訳だ。

船着場のコの字形の囲いに屋根を取り付けたファルコン号の吹き曝しのガレージ。

食料関係を生産する倉庫と裏手に畑に酒造。

その倉庫に二階建ての家をくっ付けて二階に各自の部屋、そして一階に事務所兼応接間を作り、新たな本拠地としたのである。

 

「それと、こんな手紙も来てやして……」

 

ちょっと前の大脱走を思い出していた俺に、おやっさんがまた別の竹簡を複数手渡す。

開いてみると、そこにはそれぞれの竹簡に大きな字で『尾美死なす』『尾美殺す』『尾美ブッ殺す』と書かれていた。

うん、どう考えても黄蓋さんです本当にありがとうございます。

っというか実質的に最後に暴言吐いたのおやっさんなのに何で俺だけなの?世の中理不尽。

 

「ねーオビ=ワンさーん。一緒に頑張ろうよー」

 

「劉備ちゃん今の話聞いてたよね?俺士官断って殺されそうなんだけど?これで劉備ちゃんの軍に入ったら”完熟しきったお人達”にぬっ殺されちゃうよ俺?下手せんでも劉備ちゃん達も巻き込まれる可能性大よ?」

 

「そこはほら。いざとなったらオビ=ワンさんを引き渡して無関係を装っちゃえば……」

 

「本人前にしてこの言い様。なんて腹黒いのか……」

 

「って、朱里ちゃんと雛里ちゃんが」

 

良し、あのはわわあわわが大好きなやおい本、全て焼却しちゃる。

最近うちの事務所に入り浸ってる劉備ちゃんとコントしながら、俺はハァと溜息を吐く。

そんな俺に対して劉備ちゃんは事務所備え付けの椅子に座りながらニコニコ笑顔で俺を見てる。

さて、俺がこの平原に逃げた理由だが、まぁ平たく言えば無い。

黄巾の乱が治まり始めたから、そろそろ腰を落ち着けようと思った時に一番近かったここにしただけである。

そしたらその黄巾の乱で義勇軍を率いて大活躍してた劉備ちゃんが国に平原の相に任命されていて、偶々再会しただけなのだ。

決して原作知識とかあの見事なぷるるん山に惹かれた訳では無い。無いったら無いのだ。

 

「ねー、私達の所に来てよー。可愛い子とかいっぱい居るよ?目が潤うよー?」

 

「いや、目の保養より”息子の保養がしたいんだ”」

 

「ざーんねん♪平原にはオビ=ワンさんのだ~い好きな娼館はありませ~ん♪」

 

「劉備ちゃん地味に怒ってね?」

 

「そんなことないもーん。真名を預けたのに呼んでくれないからとかじゃ無いもーん」

 

「だって真名とか呼んだら親しいってバレて他の国で商売しにくくなるかもだしぃ?男にゃ色々あるんですよい」

 

「むっ。仕事と私、どっちが大事なの!!」

 

「金」

 

「うわっ。生々しい上に質問とは関係無い答えが……酷いぃ~」

 

即答で金と言い放った俺に対して頬を膨らませる劉備ちゃんに、俺は苦笑いする他無かった。

だってなぁ~お金って大事なんだぜ?

少なくとも部下を食わせていかなきゃいけねえ俺としちゃあよ。

 

「金が無いと女と逢引だって出来ねーしなぁ。贈り物だってしてやれねーし、結構バカになんねーんだぜ?」

 

「ふーん?まるで最近誰かに会いに行って贈り物をしました、みたいな言い方だね?おっかしーなー。平原には娼館は無い筈なんだけどー?」

 

「あっはっは。薮蛇った」

 

すっごくジトーっとした目で見られて俺は笑うしかなかった。

いや、まぁあれですよ。仕事で向かった先の娼館に俺達それぞれお気に入りの子が居るわけでして、はい。

暫くの間は取りとめも無い話をしていたが、どうやら劉備ちゃんは政務に疲れて逃亡してきてたらしい。おい太守。

それを探す為に衛兵を引き連れて現れた関羽さんが鬼の様な表情で劉備ちゃんを引き摺って持って帰った。

こちらには怒らず「仕事の邪魔をしてすまなかった」と一言残して去る姿は、正に男らしかったぜ。

 

 

 

そして涙を流しながら俺に助けを求める劉備ちゃんは……察し。

 

 

 






反省も後悔も無い( ー`дー´)キリッ

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