短編ネタ 真・恋姫†無双 ~俺が、俺達が、運び屋だ!~   作:piguzam]

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こいつがジェダイ・マスターだったら、アナキンはダークサイドに落ちたのだろうか?


ちょっと怖くて想像できないww


逃げる事こそファルコンのお家芸だろJK。

 

 

そして三週間程して成都で用事を済ませて戻った俺とおやっさんは、既にこの土地に劉備ちゃんが居ない事を知った。

 

 

 

袁紹が公孫瓚を滅ぼし、そのついでとばかりに劉備ちゃん達をも攻めて、この平原を含めた徐州を収めていた陶謙が折り悪く病没。

陶謙は今わの際に劉備ちゃんを州牧にと言い遺したらしいが、それを陶謙の息子である陶商と陶応が反故にしたそうな。

それで無理矢理徐州を継いだのは良いものの、袁紹という大軍勢の前にあっさり降伏。

でもそれを呑めない劉備ちゃん陣営は劉備ちゃんを慕う民と兵を連れて成都に逃走。

……滅茶苦茶だけど、長阪の戦いの流れかね?

何十万という大軍勢を率いる袁紹達の行軍はそこまで速くないので、劉備ちゃん達は追い付かれる事無く順調に成都へと向かっているそうだ。

しかしまぁ、問題というものとは縁を切りたくとも切れないものらしく……。

 

「魏の領土が逃走経路に、か……そりゃなんともきつい所を」

 

「へぇ。劉備様の軍勢と擦れ違ったっていう商人が話してくれやしたが、そのままだと魏の領土を抜けなければ成都までは辿り着けないそうですぜ」

 

「まっ。素直に通しちゃくれねえだろうなぁ……あの人は通行料に一体、何をたかるんだろうねぇ?」

 

燃え盛る平原の町も遠い空に見えるばかりの距離まで逃げた俺達は、今ある情報を整理していた。

にゃろう。町に火を放ちやがったからなぁ。

会社にあった作物や道具は全て積み込んだので被害は無いが、住み慣れた家を燃やされたのには普通に腹が立つ。

おやっさんも舵輪を握りしめながら忌々しいって顔をしてた……が、直ぐに俺に顔を向けてニヤリと笑う。

 

「それにしても、やっぱ船長に着いてきて正解でしたわ……まさかあのいけ好かねえ袁紹に、あんな愉快痛快な事をしてくれるとは思いやせんでしたよ」

 

「あぁ、あれ?まぁ、”草の影すら見えない不毛な大地にされる気持ち”ってのを教えてあげただけさね」

 

「ぶっ、くく!!違ぇねぇ!!ありゃ向こう十年は”ペンペン草一本も見えやしねぇでしょうよ!!”」

 

「おぉ?おやっさんも言うじゃな~い?」

 

二人して顔を見合わせながら「ダーハッハッハ!!」と愉快な笑い声をあげる中、ファルコン号は洛陽脱出以来の猛スピードで航行していく。

うん。この速度なら劉備ちゃん達に追いつくのは時間の問題だろう。

 

 

 

…………え?今度は何をやらかしたんだって?

 

 

 

いや、特に変な事はしてないよ?うん。

 

 

 

え?回想しろって?しょうがねぇなぁ……ちょっとだけよん?

 

 

 

『……こちらスネーク。潜入した』

 

誰に声が届く訳じゃないけど、とりあえず独り言を零して、俺は桶を逆さに被ったまま移動していく。

既に平原の街中には何時もの様な活気は無くなり、袁紹の兵士達が家屋を荒らしてる音が聞こえるばかりだ。

やーれやれ。陛下の時も思ったけど、袁紹の軍は品が無くていけねぇや。

うちの会社の荷物は全てファルコン号に積んであるし、船も隠してあるからバレ無いだろう。

今の状況を整理しつつ桶の開いた隙間から辺りを窺っていると、何ともド派手なドリルを発見。

しかし高笑いするドリルってすっごい不思議な光景(笑)

 

『オーホッホッホッホ!!こんな駄城も残った愚民も、私の趣味ではありませんわ!!全部焼き払いなさ~い!!』

 

『あいあいさー!!ほらお前等、火の準備すんぞー!!』

 

『『『『『ハッ!!』』』』』

 

『で、でも姫様。城を燃やす前に糧食を得た方が……』

 

『なーにを言ってるんですの顔良さん。こーんな小さな領地の城の食料を、この華麗な袁本初ともあろうものが掠め取る訳無いじゃありませんか。それに少し肌寒いですから、焚き火代わりに丁度良いですわ。オーッホッホッホ!!』

 

『あうぅ……姫も文ちゃんも止まらないし……せめて民の人達、逃げててくれれば良いけど……』

 

『オーッホッホッホ!!さぁ、早く私の寒さを消す為に焚き火を――』

 

 

 

『ふむ。では俺が温めてあげようじゃないの。(ビジュゥン!!)ほい(ジュウウ!!)』

 

 

 

とりあえず寒くて敵わないらしいので、100%の善意で背後からライトセーバーで髪の毛に着火。

みるみるうちにライトセーバーで着いた火が、袁紹の髪の毛を燃やしていく。

 

『ふえ?……きゃあああああああ!?あつ、あつ、あっつぁあああああああああ!?』

 

『おー!?まるで火の玉、いや人魂か!!いやはや、その見事に重たそうなドリルの無駄な量が役に立つ時が来て良かったね☆にしてもそのリアクションはどうよ?ぶわーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!』

 

『なぁ!?ひ、姫ぇえええええええ!?』

 

『てんめぇ!!ウチの姫に何しやがるんだぁあああ!?』

 

『おろ?掛かってくんの?』

 

燃え盛る髪の毛の火を消す事も出来ずに走り回る袁紹を見て大爆笑してたら、悲鳴に気付いた顔良と文醜が武器を構えて俺に向かってきた。

他の兵士は状況が掴めない、というか何をしたら良いのか判断出来ないみたいで動かない。

まっ、その方が俺には都合が良いんだけどね。

それに――。

 

『ほうりゃさぁ!!(ブヅン!!)』

 

『『――へ?』』

 

『ん~チッチッチッチ。……その程度の腕前じゃあ、俺にゃ届かないよん?』

 

根本から熱でブッた斬られた自分達の得物を見て呆ける二人に、俺は指を振りながらにこやかに微笑む。

この二人も兵士よりは強いけど、武将としてみたら全然だね。

だからライトセーバーで普通に叩き斬れた訳だけど。

何より成り行きとは言え、こちとら”古参の大英雄や宿将”相手にしてきた経験があるんだぜ?

この程度の腕前に負けてたら、とっくに俺は”あの世にララバイ”してるっての……あれ?目から汗が……。

まぁ兎に角、指示してたのが袁紹とは言え、止めなかったんだし?

 

『ユー達も同罪!!彼女と一緒に火の玉しちゃいなよぅ!!俺に情熱に燃えたあっつ~いチャチャチャを見せてくれよぅ!!』

 

『ちょ、ちょっと待った!?ひ、火の玉は出来れば勘弁……』

 

『そ、それより誰かぁ!!ひ、姫の火を消してくださーーーい!!』

 

『きゃぁああああ!?わ、わたくしの高貴な髪がぁあああああああああ!?』

 

『おーおー良く燃えてんねぇ?やっぱ質の良い香油使ってる”名門”は、”庶人”とは燃える勢いも違うってか(笑)』

 

顔良と文醜は其々ライトセーバーを突き付けられて動けなくなるが、それでも袁紹の心配するとはお優しいねぇ。

でもその優しさをほんの一ミリでも平原に向けてくれてたら、俺もここで止めてあげたんだけどねぇ。

まったく、善良な市民の俺に襲い掛かってくるだなんて、これはもう許せないね。有罪だよ有罪。裁判も判定も必要無し(暴君)

住み慣れた家を燃やされて俺もうおこよ?激おこプンプン丸なのよ?なのでお仕置きは続行♪

 

『ちぇすとぉおおお!!(ビジュウウウン!!)』

 

動けない二人に容赦無くライトセーバーを振り下ろし、二人はビビって目を瞑ってしまう。

……しかし幾ら待てども二人の体が斬れる事は無かった。

 

『ひぅ!?……あれ?』

 

『ッ!?……ん?……な、なんだよ、脅かしやが――』

 

 

 

ガチャン!!――ハラリ。

 

 

 

『って……?……んなぁああ!?』

 

『き――きゃぁああああああああああああ!?』

 

代わりに鎧と服が剥けてスッポンポン☆いやー絶景かな、絶景かな。

 

服が脱げて”金ピカ武将”から”全裸将軍”へと妖艶な進化を遂げた二人を眺めて、俺は一つ頷く。

頑張って両手で下と豊満に実った乳の実を隠そうとする顔良と、しゃがみこんでケツ以外を何とか隠してる文醜。

二人のその扇情的なポースに、袁紹の兵士はこぞって鼻の下を伸ばしながら”漢の野太刀”を構えていた。

ほう?まだ抜刀までいかないとは、さすがに自軍の将軍様には手が出せませんって事かね?

しかしこんな状況を魅せられて”夜な夜な刀身の手入れ”だけでは同じ男としてちょっと可哀想過ぎる。

 

故に、俺は懐から”常日頃携帯している荒縄”を取り出し、フォースでそれを蛇の様に操り――。

 

『緊縛は、芸術だぁ!!』

 

シュルルルルルル!!!

 

『きゃぁあああああああああああああ!?や、止めて下さぁああああああああいぃ!!!』

 

『な、何じゃこりゃああああああ!?何で縄が勝手に結ばって、ってコラァ!!何つーカッコさせやがるんだよぉ!!』

 

『そぉら兵士諸君!!ここまでの行軍の疲れを将軍様達に癒してもらいなさいよぉ!!』

 

『『『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?ありがとござまっすッ!!!!!』』』』』

 

『きゃーーーーーーーーーーーーー!?や、やぁん!!そんなに揉まないでぇ!!コネコネしちゃ嫌ぁ!!』

 

『こ、こらお前等ぁ!!斗詩に手ぇ出してんじゃねぇ!!後で酷いぞ、ってま、待て!?そこはさすがに洒落にならな……アッーーーーーーーーーーーー……』

 

二人の手を後ろにして、足をアルファベットの13番目の形にして縄で固定したった☆

そしてその芸術的な置物をフォースで兵士達の中に投げ込む。

すると、兵士達は皆揃って”漢の野太刀”を抜刀し、咆哮しながら全軍で突撃するではないか。

一糸乱れぬ軍隊行動。これには俺も唸らされずにはいられない。

 

と、投げ込まれた極上の美酒に兵士達が群がる中で、悲鳴を上げながら俺の本に走ってきた袁紹を、優しく――。

 

 

 

”肥溜めの中にフォースで頭から突っ込んで大爆笑してから”、その場を後にして皆と合流。

 

 

 

その一部始終をアンテナ型望遠スコープで見ていたおやっさんは涙を流して俺と同じく大爆笑してた。

そんなおやっさんに指示を促し、俺達は平原の地から猛スピードで離脱したのである。

 

 

 

つまり俺が何をやったかと言えば、ただちょっと”桶被って鋼鉄の歯車ごっこしながら袁紹に忍び寄ってライトセーバーで頭の毛(ドリル?)を綺麗さっぱり燃やしてあげたぐらい”だ。

 

 

 

いやー髪の量が多いから燃える火も盛大で、悲鳴をあげながら走る様は正に妖怪火の玉レディーだったぜ。

まさかこの目で”本物のファイヤーダンス”を拝める日が来ようとはww

あの子達があの後どうなったかは知る由も無いし、想像する気も無い。

まぁ侵略しにきたんだから逆に”侵略される”事もあるという教訓になったんじゃないかね?

 

「……オビ=ワン。朕達はこれからどうするのですか?」

 

と、おやっさんと爆笑していた所に陛下が現れ、悲しみの表情で燃える平原を見ながら問いかけてきた。

……あーあぁ……ショックで一人称戻ってるし。

そういや洛陽の城も燃えて無くなちまったんだもんな。

住み慣れた家が燃えるのを二度も見るのは、やっぱり辛いだろうよ。

一度笑うのを止めた俺はおやっさんに視線を送ると、おやっさんは笑顔で頷いて操縦を代わってくれた。

おやっさんに操縦を任せ、俺は平原を見ている陛下に背後から語りかける。

 

「ご安心下さいって。ちゃんと次の住む場所も確保していますから……それに」

 

「あっ……」

 

そして、俺はその悲しみに潰れてしまいそうな華奢な体を後ろから手を回して抱きしめた。

少し驚いた声を漏らして、陛下は首だけで俺を見上げる。

今はショックを受けているであろう陛下を慰める様に、俺はニッコリと笑った。

 

「陛下の御身は、俺がちゃーんと守りますよい……平原の民なら殆どは既に居ません。袁紹の馬鹿っぷりはそれこそ大陸の知る所ですから、劉備ちゃん達に着いて行けなかった民も殆ど流浪したか避難しましたし」

 

というか、俺達が出る頃には俺達以外の民の姿なんて全くといって良い程見なかったし。

ちゃんと見てきた事実を話して安心させてあげたんだが、陛下は瞳を潤ませながら俺の腕の中で反転し、正面から抱きつき直してきた。

 

しかも「もっと……もっと強く、朕を抱きしめて……」とかいうきゃわいいお願い付き。

 

おっふぅ……胸、というか全身に感じるムッチムチの感触が堪りませんなぁ(ゲス顔)。

暫くそうして陛下を慰め(堪能し)ていると、おやっさんが目的地の近くに来た事を伝えてきた。

それを聞いた俺は陛下から躰を離し、心配そうな顔をする彼女を優しく諭して落ち着かせ、船室に匿う。

そしてジェダイを彷彿させる長いフード付きローブ(外套?)を羽織り、三人に声を掛けてファルコン号から飛び降り、船着場に着地。

そのまま河を下っていく皆と別れて、町の闇の中へと消えていく。

 

「さあて、お得意様潰されちゃ堪んねーし……いっちょいきますかねぇ」

 

俺は軽い調子で笑いながら夜闇に紛れて木を飛び移り、街の城壁外に駐屯する劉備軍と民達を一目見てから、俺は再び飛ぶ。

 

 

 

目的地は町の中央に聳える城――曹操ちゃんの居城へ、だ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「どもども。久しぶりにお邪魔させて頂きまーす」

 

通された城の玉座の間にて、曹操ちゃん率いる魏の武将や知将。

そしてその中央で礼をする劉備ちゃん達メンバーを発見。

この流れは恋姫原作じゃ無くて漫画の流れであったからもしかしてと思って来てみたけど、正解だったみてーだな。

周囲から驚きや訝しむ視線を浴びつつ、俺は外套のフードを脱いで曹操ちゃんに目礼する。

何人かの初めて会う人達には「コイツ誰?」みたいな目を向けられてるが、前に会った面子はそうでもない。

蜀のメンバーは驚きに目を見開いてるし、特に魏の中でも荀彧は前に舐めさせられた苦渋を思い出してか、凄い形相で俺を睨んでいた。

っつうか俺も知らないメンバーが多すぎじゃね?文台さん、というか呉の時も思ったけど、もしかして恋姫新武将出てんの?

 

「え!?オ、オビ=ワンさん!?な、なんで!?」

 

「あら?貴方劉備とも知り合いだったの?」

 

突如現れた俺に驚く劉備ちゃんと、門番に伝えられて此処に通す様に指示した曹操ちゃんの真反対なリアクション。

それを向けられた俺は劉備ちゃんには手を振るだけに留めて、玉座に座る曹操ちゃんには抱拳礼を取る。

立場的には城主である曹操ちゃんの居城に居るんだから、礼儀はちゃんとしとかないとマズイからな。

下手したらこの後の『交渉』に響きかねないし。

 

「いやはや、何やらお忙しそうな中すいませんね」

 

「別に構わないわ。劉備との話は終わらせたし、まだ貴方の話とやらの方が実りがありそうだもの」

 

「……」

 

「あ、あの、曹操様……」

 

「黙れ。話は終わりと言った筈よ」

 

曹操ちゃんの見下した視線を受けて劉備ちゃんは黙りこくってしまい、そこで声を出したあわわ……龐統ちゃんの言葉を曹操ちゃんは切って捨てる。

 

「私は劉備、貴方に二択を出したわ。通行料に関羽を渡すか、ここで全員死ぬか……あぁ。そういえば、関羽を渡す事を拒否したのだったわね――なら、終わりよ」

 

と、気楽な様子で片手を上げた曹操ちゃんの動きに合わせて、夏侯惇がとんでもない速度で接近して、劉備ちゃんに剣を振り下ろす。

武器を取り上げられた上に咄嗟の事も相まって、蜀のメンバーは反応が遅れたが。

 

ビジュゥンッ!!バチチチチチッ!!

 

「なッ!?」

 

『『『『『『『『『『ッ!!?』』』』』』』』』』

 

「あっぶね、間一髪。なんつー馬鹿力……ちょいちょい。まーだこっちの要件が済んじゃいねーでしょうに」

 

「オビ=ワンさん!?」

 

俺は直ぐ様ライトセーバーを取り出して、夏侯惇の攻撃を防ぐ。

この場に居る魏の人間で俺のライトセーバーを前に見たって奴は居なかったので、皆してギョッと目を見開いてる。

あの曹操ちゃんですら驚きで声が出せない様子だ。

ちなみに俺が守衛に会ってるにも関わらず武器を持ってる理由なんだが、誰もまさかこれが武器とは思わなかったからだww

取り上げられる事無くスルーされた時は心の中で吹いた。

 

「あらよ!!」

 

ガキィイインッ!!

 

「く!?この……」

 

「姉者、下がれ!!」

 

と、夏侯惇さんの剣を弾き返した俺に向かって、夏侯淵さんが弓を三連射してきた。

しかしそれも当然、フォースの予知で織り込み済みだ。

 

「ほいほい!!そいやっさぁ!!」

 

「ッ!?(バチィインッ!!)ぐぅ!?」

 

「しゅー……さっすが噂に名高い夏侯淵将軍。あの刹那でも狙いは正確に喉と目ですかい……まっ、正確だからこそ返しやすいってなモンですが」

 

「秋蘭!?貴様ぁ……ッ!!」

 

夏侯惇さんの剣を弾き返した体勢から剣を手の中でクルリと回転させ、逆手持ちで左右斜めに矢を斬り払う。

最後に向かってきた矢は夏侯淵さんの弓目掛けて弾き返してやった。

周りの武将はこの光景に目を見開くが、黄蓋さんの怒りに震えた弓矢を体験してる俺からすればまだ対応が楽だったぜ。

しかしさすがは黄蓋さんと並ぶ程の弓使い、そう何度も受けたいとは思えないな。

その跳ね返ってきた矢に弓を弾かれて腕を抑えながら顔を顰める妹を見て、夏侯惇さんは激昂する。

さすがにここまでくると周囲の武将達も各々戦闘態勢に入るが……俺はここで構えを解いた。

 

「まーお待ち下さいや、夏侯惇将軍、夏侯淵将軍。俺がここに来たのは劉備ちゃん達の事でお願いがあったからなんで、それが済むまでは殺されちゃー困るんですよい」

 

「ええい!!そんな事知らん!!私は華琳様の命令を忠実にこなすだけ「やめなさい、春蘭」か、華琳様!?」

 

「剣を収めて下がりなさい……今の命令は取り消すわ……秋蘭も、良いわね?」

 

「……御意」

 

「し、しかし……くぅ……分かり、ました」

 

渋々、といった感じだが夏侯惇さんは剣を収め、夏侯淵さんも殺気を収めて再び曹操ちゃんの背後へ控える。

一瞬にして場が緊迫していたがそれも夏侯惇が剣を収めた事で少し和らぎ、曹操ちゃんが皆にも武器を納めろと言うと全員戦闘態勢を解いてくれた。

それでも雰囲気が少しだけしか和らいで無いのは、俺がまだライトセーバーを仕舞って無いからだろう。

 

「尾美、貴方もその光り輝く剣を仕舞いなさい。この場に居る限りは何があっても、こちらから攻撃しない事を宣言するわ」

 

「や、実はそのお言葉を待ってましてねぇ。これで漸く話が出来そうで、良かった良かった」

 

「……つまり私がそう言わなければ、貴方は攻撃してきたという事かしら?……私の誇る二大武将を軽くあしらうなんて、貴方本当に只の運び屋……庶人なの?」

 

「お褒めに預かり恐悦至極。しかし言わせてもらうなら、誰だって武将、軍師という役職に就くまでは庶人じゃありませんかい?」

 

「……成る程……どれほど知謀、武術に秀でていても在野に居るならば確かに庶人、という事ね……まぁ良いわ」

 

笑いながらライトセーバーを仕舞うと、曹操ちゃんは少し面白くなさそうな顔を浮かべる。

まぁ、これからその顔が更に面白く無い事になるとは思うけど。

 

「……それで?劉備達の事とは、一体どういう意味かしら?言っておくけど、劉備達を何も無しで通せ、なんて言わないでよ?私が劉備のそんな馬鹿げた頼みを聞く義理は無いのだか……ら……」

 

「??華琳様?」

 

と、俺が言わんとした事に感づいて、先回りしておこうとした曹操ちゃんだが、何故かその言葉が尻すぼみになっていくではないか。

背後に控えていた夏侯惇さんが声を掛けるが、曹操ちゃんの呆然とした表情が「やられた」って感じの顔に変わっていくのを見て、息を飲んでしまう。

周りの曹操ちゃんの配下もこの変化には驚いたのか、再び目を丸くしていた。

 

そんな中で曹操ちゃんの表情の変化に気付いたのは……あの時と同じ様に顔色を真っ青にした荀彧と頭の回転が早い夏侯淵さんくらいだろう。

 

そう、俺が匂わせていたのは前回の荀彧の失礼に関して口外しない代わりに『曹操ちゃんに何でもお願い出来る』という『貸し』の件だ。

それをここで劉備ちゃん達を見逃す事で『貸しを返してもらう』っていう話な訳。

しかも真名に誓ったんだから、この大陸の人間ならその約束を反故に出来る訳が無いのよね(ゲス顔)

特に『覇道』という正々堂々誰からも後ろ指を刺される事の無い道を選んだ曹操ちゃんがこれを反故にした場合、その時点で彼女の覇道は終わりになるからな。

何とも一発逆転の秘策が決まったんじゃねーかという雰囲気の中で、俺はものすっごくイイ笑顔でニヤニヤしながら曹操ちゃんに言葉を掛ける。

 

「さすが曹操様。俺が言わんとしてる事をご理解頂けたようで?」

 

「黙りなさい。心の篭ってない世辞は要らないわ……そう……貴方は、劉備に着くという事かしら?」

 

「いやいや。こちらの劉備様には、俺が平原で会社をしてる頃から随分とご贔屓にしてもらってまして。社の長として恩義があれば、個人としても少しばかり交友がありますし。それに俺はしがない運び屋、仕事に見合った金さえ払って頂けるなら何方の依頼でも受けますので、主と仰ぐ方は居ません……まぁそんな俺の会社のお得意様に死なれたり、義姉妹と引き離されて暗い顔されちゃ、寝覚めが悪いんですよい」

 

「……高く付いたわね」

 

「そうですか?少なくともこの場面で帳消しなら、それで良かったんじゃないかと思いますがね?」

 

「まさか只の運び屋である貴方がこういう使い方をしてくるとは思わなかったからよ。尤も、非礼は全面的にこちらにある上に……戦に降伏しろ、ではないだけマシと思うべきね……」

 

片方はニヤニヤ。もう片方は苦虫を噛み潰した顔で話し合う俺と曹操ちゃん。

荀彧以外の他の面々には分からないだろう。

俺達が、一体何の話題を話しているのかってのはな。

やがて曹操ちゃんは諦めた様に玉座に深く座り、手で目元を覆ったまま郭嘉ちゃんに命を下した。

 

「ハァ……稟。劉備達を送り届けなさい……国境まで」

 

「ぎょ、御意……こちらへどうぞ」

 

「え?え?え?」

 

「尾美に感謝するのね、劉備……口惜しいけど、この場は見逃してあげるわ。さっさと消えなさい」

 

と、まぁそんな感じで劉備ちゃん達の通行は何事も無く収まり、俺も途中までその行軍に付き合う事にした。

曹操ちゃんは何れ潰すつもりだったとはいえ、迫り来る袁紹を押し付けられた感じになってたので最後まで文句タラタラだったけどな。

なのでそっちの件に関しては、今やってる運び屋だけじゃなく、またウチの商品の交易を再開するという事で手を打ってもらった。

商品もかなり増えてるし、前よりほんの少し安めの設定にするといったら笑顔で喜んでくれたよ。

何でも魏の商人達が他の土地の商人を経由して俺の所の商品をかなり品薄、しかもバリ高な値段で取引してたらしく、金がどんどんと国の外に流れていたのが頭痛の種だったそうな。

 

「政でも戦でも無く商いで国を疲弊させるなんて、食えない男ね」

 

とは曹操ちゃんの弁だ。

ついでに俺が今回ライトセーバーという剣を……いや、一角級の武を使える事がバレてしまったのが少し面倒だったな。

しかも本気では無いとはいえ夏侯惇さんの剣を片手で、しかも余裕を持って弾き返した上に夏侯淵さんまで無力化したのだから並以上の武があるとバレーの……人材確保の目になっとるやないか(震え)。

アカン、文台さんのトラウマががが。

更にこの世界に初めて来た時に出会った郭嘉ちゃんと程昱ちゃんの証言もあって、直々に「来る気は無いか?」と聞かれる始末。

まぁ相変わらず、俺は誰かに使える気は無いと言って断ったけど。

ついでに帰り際に曹操ちゃんに「袁紹さんの頭を見たら、憂鬱な気分も吹き飛ぶかもしれませんよ?ついでに言うと、アレをやったのは俺です。と、初めに事故申告しておきますんで」と言っておいた。

最初は何の事か分からなかったみたいで首を傾げてたけど、自分で見てみる事にするとだけ言って、俺を帰してくれた。

 

「うえぇ~~ん!!ありがとうオビ=ワンさぁ~ん!!もうちょっとで斬られちゃうところだったし、愛沙ちゃんを取られちゃうかもって思ったよぉ~~!!」

 

「おーよしよし。抱きついてくれるのは非常に感触が素晴らしいんだけど、鼻水と涙付きそうだからちょっと離れてー」

 

「ヴェエエエエエ~~~ン!!」

 

「ちょ、おまっwwおにゃのこが出しちゃいかん声でしょそれww」

 

そして現在、行軍に付き合って歩く俺にコアラよろしく足と手でガッチリホールドしてくる劉備ちゃんを宥めつつ、迫る鼻水から逃げる俺であった。

ほんと、何で可愛いおにゃのこに抱きつかれてんのに嬉しくないんだろうか?

ハンカチを渡して鼻水を拭かせながら溜息を吐く俺を関羽さんは馬上から苦笑しつつ見ているだけ。

おい妹、姉がご乱心だぞ?ちょっと姉を(物理で)止めれ。

 

「今回の事は、感謝の言葉しかない。桃香様を救ってくれただけでなく、私自身も助かった……ありがとう、尾美殿……礼と言っては何だが、私の真名を預かってくれ。愛沙だ」

 

「鈴々は前から預けてるのに、オビ=ワンにーちゃんは呼んでくれないのだー!!」

 

「ちーん!!……私も預けてるのに、全然呼んでもらってないー!!……ぐじゅ、ぐじゅ」

 

「あーもー。ほら、もっかいチーンして……張飛ちゃんだけじゃないんスけど、俺は真名を預かっても呼ぶ事は余り無いんでそこは了承して下さい。一国の重要人物と仲良くしてるってバレたら、商売がしにくくなるんで。その代わり、俺の事はオビ=ワンで結構ですから」

 

「そうか……まぁ、仕事上の都合があるなら仕方あるまい。兎に角、感謝している。オビ=ワン殿」

 

「いえいえ、せっかく真名を預けてくださったのにすいませんね。ほら、劉備ちゃんもいい加減離れなさいって」

 

「えー?」

 

文句を垂れる劉備ちゃんを引き剥がして、俺は伸びをする。

やれやれ、ずっと可愛い子豚ちゃんを抱っこしてたから腕が重いぜ。

考えてる事がバレたら只じゃすまないなーとか思いながら、俺は未だにブーブー文句言ってる劉備ちゃんを見やる。

行軍中にはわわ軍師が話してくれた内容だけど、どうやら曹操ちゃんは通行料に関羽さんを欲したらしい。人間がお金代わりってどんだけー。

しかも劉備ちゃん達の話だと原作と同じ様に関羽さんの容姿と武芸に惹かれて勧誘してきてたとか。

それを真正面から言われた関羽さんは絶対に行きたく無いと心の底から思ったそうな。

本当に百合百合しい国だなあそこは。俺とは一生相容れんぜ。

っと、そんな事言ってる間に来たか。

 

「じゃ、俺は迎えが来たからここで別れるとするんで、劉備ちゃん達も頑張れよー。……ほっ!!」

 

「わ、別れるって、そっちは河だよ!?オ、オビ=ワンさん!?」

 

フォースで特定の気配を感じ取った俺は劉備ちゃんに別れを済ませて河へと繋がる斜面を駆け下りた。

背後から呼びかける劉備ちゃんの声には振り返らず、俺は大きな河の真ん中に向かってフォースジャンプ――いや。

 

ポッポォオオオオオオオオッ!!

 

「え?……あ!?”ふぁるこん”号!?」

 

粋な汽笛と共に現れたファルコン号の甲板に着地して、呆然とする劉備ちゃん達に手を振った。

直ぐに見えなくなった劉備ちゃん達の居た山道から視線を外し、俺は笑顔のおやっさんとチビさんにグッドサインを送る。

 

「お帰りなさいっす、船長!!」

 

「お疲れ様でさぁ!!船長!!」

 

「あいよー。いやー、ほんと疲れたぜ……ん?チビさん。空さんとデクさんは?」

 

「あぁ、空様でしたらずっと船長の事を心配しておられて寝てませんでしたから、新しい会社でお休みになってますよ。デクは空様の護衛で置いてきました」

 

「そっか。了解了解。それで、二人は気に入った?新しい会社」

 

俺はコックピットの操縦席に座っておやっさんと操縦を交代しようとしたが、おやっさんは「操縦はあっしがしますから、船長は休んで下せぇ」と言って聞かず、俺は大人しく操縦席に座る事に。

そうしてたらチビさんが酒を持ってきてくれたので、おやっさんの運転で航行するファルコン号のコックピットでのんびりと酒を飲む。

コックピットの外を流れる大自然の景色は、酒の肴にゃ絶好だ。

 

「はい。前の会社より断然綺麗ですし、なにより”ふぁるこん”号がすっぽり入る倉庫が凄えっすよ」

 

「チビの言う通りでさぁ。俺達の、いや船長の大事な”ふぁるこん”号がふきっさらしってのはアレでしたし、後は……隣の部屋の音が聞こえないくらい壁が厚いってのが最高ですぜ」

 

「ごく、ごく……ぷふぅ……まぁ、おやっさん達前から壁が薄いって言ってたからな。今回は防寒も兼ねて分厚い壁にしてもらったよ」

 

「「いや、船長が女を連れ込むからなんですけど?」」

 

大丈夫。その辺りもちゃんと考慮してるから(笑)

最近は特に陛下が”ぎしぎしahー!!oh-yeee!!”な事にまで知識を潤沢にさせ始めたから連れ込んで無かったんだけどなぁ。

それでもすっごくにっこりとした笑顔で「お盛んですね?」はきつかった。

俺だけにそう言うって事は……まぁそういう事なんだろうけど、さすがに陛下と”あはーん”はちょっとなぁ……美味しそうだけど。

 

 

 

今回、俺が成都に拠点を移した理由だが、まぁ消去法だ。

 

 

 

曹操ちゃんの所はまぁ隙あらばって感じで士官させられそうだし、呉なんて目も当てられない。

なので、今の所は凄く穏便に暮らせる可能性が残ってる劉備ちゃんの陣営に居る訳だ。

それに蜀は人口や国土・生産力は最小ながら、豊富な鉱物資源と良質な塩・鉄・絹など特産品専売による高い経済力を持ってる。

つまり色んな品物が豊富って事なので、安定した供給が得られるってのは大きい。

呉なら貿易品が手に入るが、それならファルコン号でちょちょいと南方やローマに行けば幾らでも入手できる。

何より呉の”二大熟女”が怖いので到底住む気にはならねーよい。

まぁ劉備ちゃんの所は居心地良いし、何より河の本流や町中に繋がる大きな水路があるっていう最高の土地をゲットしちゃったから、今更動く気にもなんねえんだよな。

 

何より焔耶ちゃんの尻と胸は捨てがた、げんふんげふん。甲乙付け難い(錯乱)

 

そして劉備ちゃんの見事な双子山は一度位味見したい(切実)

 

まぁそんな訳で今まで稼いだ資金を潤沢に、贅沢に、果てにはスマホのGIJUTUチートも盛り込んだ会社(本拠地)を蜀に作った訳だ。

平原の会社は廃屋を改装した元ボロ屋。

一応ファルコン号を収めるガレージもあったけど、あれは屋根を付けただけの吹き曝しだった。

なので今回は完全な倉庫を作ってもらい、その中にファルコン号を格納出来る様にしてある。

 

港とかでもある、船は水に浸かったままで、その周りをコの字形に床が囲ってる倉庫ってのだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

これでファルコン号は完全に格納出来るし、倉庫の中での整備も風が入ってこなくて冬は暖かい。

夏は窓を開ければ通気性も確保可能な上に、雨の日も風の日も天気に関係なく整備が出来る様になった。

正に造船から改造まで幅広いニーズに対応できる理想の屋内形式ガレージってヤツだ。

更に天井の梁をかなり頑丈で太い素材をスマホで検索して確保し、それを加工してもらった。

これによって、スマホで取り寄せたワイヤーとウインチでファルコン号を吊り上げて、船底の修理とか改装も出来る。

 

そしてそのガレージを出れば直ぐに河の本流に繋がるだけでなくガレージの目の前に会社個人の船着場を作ったので、そこで荷物の積み下ろしも可能。

 

更に梁に使用したものと同じ頑丈な木を切って作ったクレーンで、重い荷物の積み下ろしも簡単になった。

本当は電気で動く電動機械が欲しいけど、そういったのはスマホでも取り寄せ出来ないのが残念だ。

他には、この大陸にはまだ無い作物を作る畑も、そして酒蔵も作ってある。

これなら、前よりも効率良く便利に仕事が可能になってるんだ。

更に会社内部の厨房も今までより大型化して、石窯なんかも作らせたという拘りっぷり。

陛下が思いの外料理に嵌ってしまったので、彼女と料理担当のデクさんにもっと色んな料理を作れる環境をと配慮した結果である。

更に社員皆で卓を囲み易い様に対面式の厨房にしてあるし、カウンター席までセット。

ファルコン号に取り付けた手動扇風機を改良した換気扇と、豪華絢爛だ。

お風呂もGIJUTUチートを駆使して毎日入れる様にしたら、陛下がすっげー喜んでいたのは記憶に新しい。おにゃのこの笑顔、プライスレス。

 

 

 

そしてこの風呂の件が蜀の武将達にバレて作り方教えろと武官文官総出で追い回されたおもひで、プライスレス。

 

まさか俺一人を確保するのに石兵八陣を提唱するとは、あのはわわ軍師め。まだ焼かれ足りないと見た。

 

 

 

そして買い物がしやすい様に市場に近いという超優良物件!!酒場とかの喧騒はちょびっと離れてるので、夜は静かな方だな。

……ほんとは娼館が近い方が良かったんだけど、それポロッと零したら陛下にず~~~っとニコニコと微笑まれました。

それが二日続いた時に俺の心はポッキリと折れちまったよ。

 

だから「買い物がしやすくて治安が良い市場の近くがイイネ」って言ったら「まぁ♪素敵です♪」なんて返された。陛下怖い。

 

劉備ちゃんにほっぺを膨らませた顔で二週間睨まれても平気だった俺のメンタルをたった二日でバッキバキにするとは……これが皇帝のオーラか。

そんな事を思い返してる間に、船は新生『尾美水船運送会社』の格納庫にバックで入る所だった。

さすがおやっさん、もうファルコン号の操縦はお手の物だな。

しかし平原からここまでぶっ通しの航行だったから、さすがの俺達も体力の限界がきてる。

ファルコン号に積んである荷物の積み下ろしは明日にして、その日は直ぐに眠りに着いたのだった。

 

 

 

ちなみに起きたら陛下が一緒に寝ていてモーニングセットと洒落こみかけたのはご愛嬌。

 

 

 

寸前で正気に戻って「あっぶねー」とか冷や汗かいてたが、寝ている筈の陛下が頬を膨らませてた様な気もせんでもない。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

さて、何故俺がスムーズに成都の住人になれたかという事だが、厳顔さんと黄忠さんが手を回してくれていたからだ。

まぁちゃんとお金も払ったし手続きも済ませてるから問題は全く無い。

そして劉備ちゃん達はこの国を治めてる劉璋からすれば侵略者という立ち位置。

故に今は戦の最中なのだが、元々暗愚であり腐敗した文官達の所為で政治が余り上手くいってなかった所に徳高いと評される劉備ちゃんが来ればどうなるか?

まぁ普通に民からは諸手をあげて歓迎され、この益州の主力にして名立たる武将の黄忠、厳顔、魏延という三武将からも迎え入れられた。

一応だが武はちゃんと交え、その人となりと自身の目で見て感じたからこそ、あの三人も帰順した訳である。

更に涼州を治めていた馬騰が曹操ちゃんとの戦で亡くなり、帰る国を失った馬超ちゃんと馬岱ちゃん、そして馬休馬鉄といった俺の知らない武将が劉備ちゃん達を試し、主と認めて帰順。

成都に来るまでの行軍でいっきに人材の壁が分厚くなったのだ。

 

かくして、この益州は瞬く間に劉備ちゃんに治められ、国号を『蜀』と定められた訳であり――。

 

 

 

「えぇーーー!?ど、どうしてオビ=ワンさんのお店がここに~~~!?」

 

 

 

俺達が拠点を移し変えている事も早速バレたのである(笑)

 

いや、まさか俺もこんなに早く劉備ちゃんが蜀を建国しちゃうなんて思わなかったから、ばれるのはもう少し後だと思ってたんだけどね。

なのでのんびりと英気を養ってさぁ仕事を始めよう、と思って会社の看板を貼ってた時に劉備ちゃんが店の前まで走ってきて叫ぶ→今ココ。

後ろに護衛としてか、馬超ちゃんと厳顔さんが一緒に居た。

 

「よー劉備ちゃん。無事にこの国を治められたみたいで良かったなー?よっ、さすが仁君!!」

 

「あっ、う、うん。ありがとー♪……じゃなくって!?な、なんでここに居るの!?オビ=ワンさん、あの後平原に帰ったんじゃ……ひ、ひょっとして……私の傍に居たいなー……とか?」

 

「いや。結構前から計画してたけど?」

 

「あうぅ。さっくり振られちゃったぁ……」

 

何か顔赤らめてモジモジしながらそんな事を言い出したので、ばっさりと切り落としてみた。

そしたらタパーって涙流してたけど……劉備ちゃんが泣く表情を見てると、ゾクゾクす……気分良いね!!

 

「何と、お主は桃香様とも知り合いだったのか?」

 

「あぁ、御無沙汰ですね厳顔さん。まぁ、以前は劉備ちゃんが治めてた平原で店を開いてましたんで、その縁ですよい」

 

「そうか。ならばその言葉遣いも不敬と問う必要もあるまい」

 

「??……『尾美水船運送会社』?……あぁ!?あんたの所だったのか!?あの『日ノ本酒』とか『柿種』なんかを販売してたのって!!絶品だったから、母様も大好きだったんだよ!!」

 

と、さっきから二人とは違って初見の馬超ちゃんが首を傾げていたが、俺の会社の名前を見て叫び出した。

どうやら馬超ちゃん達もウチの商品を購入してたっぽい。

 

「おぉ、そいつはありがとうございます。自己紹介が遅れましたが、俺はこの運送会社をやってる者で、性は尾美、名は一と申します。これからはこの成都で直に販売もしますので、輸入してた時よりもお安くなりますぜ」

 

「マジか!?それはありがたい!!っと、こっちも自己紹介してなかったな……アタシは性は馬、名は超。字は孟起っていうんだ。これからよろしく」

 

「はい、よろしくお願いしますよい、馬超さん」

 

と、お互いの自己紹介も済ませた所で、まぁ立ち話もなんだし、お昼もまだという事だったので完成したての社に招く事に。

三人を俺達社員が使う厨房とカウンター席のある部屋に案内すると、大層驚かれた。

まぁ、かなり拘って作ったし陛下がお洒落に花を飾ったり壁の模様も陛下が拘ったからな。

 

「ふわぁ……綺麗だね~」

 

「はい。雅なだけで無く、窓を開けた先に広がる河の流れる音。そして風に揺られて鳴る鈴の音……風情がありますな」

 

「これ、下手したら城の部屋よりも豪華なんじゃないか?」

 

「つっても城なんかとは規模が違いますから、小さく作ったお蔭で細かい所に金を掛けれたってだけですよい」

 

俺はお盆に載せた皿を三人の前に広げながら笑顔で答える。

実際、前の会社より大きいっつっても、元々がそんなに広さは要らないからね。

何せ五人だけの小さな会社だし。

ちなみに俺以外の面子は皆外に出てるので、陛下の事もばれる心配は無い。

 

「ほい。これは今度屋台で売ろうかなーって考えてる料理でして、試食して頂こうと思って作りました」

 

「ホント!?えへへ♪オビ=ワンさんの料理って美味しいから期待しちゃうなー♪」

 

「ほう?桃香様、尾美は料理も得意なのですか?」

 

「うん!!平原に居た時は良く御馳走になってたんです♪もうすっごく美味しくて、お口が幸せだったな~♪」

 

「へー。それは羨ましいなぁ」

 

「まぁそれだけ劉備ちゃんが政務から逃げ出してウチに入り浸ってたって事なんだけど(笑)」

 

「桃香様ぇ……」

 

「……ぴーひょろろー」

 

「誤魔化すの下手ぁ!?」

 

「く、はっはっは!!何とも面白い御仁よ、桃香様は!!」

 

俺の密告に劉備ちゃんは冷や汗を流しつつ口笛を吹いて誤魔化し、それに馬超さんがつっこんで厳顔さんが豪快に笑う。

何とも賑やかな昼食を過ごす俺であった。

ちなみに出した昼食のトーストサンドイッチはとても好評だったので、今度屋台でやろうと考えている。

さぁ、土地を新たに頑張っていきますか。

俺は食卓についてトーストサンドイッチに舌鼓を打つ三人と楽しく喋りながら昼食を済ますのだった。

 

と、まぁこんな感じで、俺はなし崩し的に蜀の武将達と交友を持っていた訳である。

 

特に焔耶ちゃんとは濃密な時間(密着的な意味で)を良く過ごしたお陰で大分打ち解けた。

具体的に言うと、最近は頬を染めて可愛らしく恥じらいながら”自分から縛って欲しい”と言い出す様になった始末。進化キャンセルボタンどこー?

しかしまぁ、ねぇ?……瑞々しい新鮮で美味しそうなお肉を(食材的な意味?)縄で縛った光景には、背筋が震えるじゃない?

他にもさ、俺に喜んでもらおうと”犬耳ち尻尾”なんか付けて可愛らしく恥じらいながらも「わ、わん……くぅ~ん」とか鳴くんだぜ?食べるしか無いじゃない(澄んだ笑み)

なので結局俺はノリノリで焔耶ちゃんとえんやこら(意味深)するのであった(笑)

蛇足だがこれを何処から知ったのか、最近は蜀王様が常に縄を懐に持ってるとか。何でダロウナー?

 

ちなみにそれから数週間後、うちの空さんの正体が陛下という事をはわわ軍師が蜀の新武将達に話して軒並み飛び上がっていたのは笑った。

 

油断して指差して爆笑してたら数多の槍と弓と杭に俺のケツがターゲットにされましたが。俺の処女は奪わせんぞー。

 

 

 

そして陛下が現れたという事は、蜀こそが漢の忠臣である国という大義名分と民達の更なる信頼を得る事に繋がる。

陛下の存在は瞬く間に大陸全土へと広がり、更に成都にて開かれた陛下のお言葉を賜る場にて、陛下直々に劉備ちゃんの政治とその名君ぶりを褒め称えた。

それによって名声は確実なものとなり、劉備ちゃんの民人気は益々鰻登り。

最近じゃ『徳王』とまで呼ばれる程になってるぐらいだ。

 

 

 

まぁその王様は相も変わらず政務を抜け出してはウチにご飯食べに来てるんだけどねww王とは一体何なのか一日くらい考えさせられる。

 

 

 

そのほんわかとしただらけっぷりを見て「あれ?今なら簡単に捕獲できて他の国に売れるんじゃね?」と冗談で言ったのだが、劉備ちゃんこれを信じちゃった。

俺の言葉をそのまま鵜呑みにした劉備ちゃんが往来のど真ん中でタパーと涙を流しながら腰にしがみついて「私を売り飛ばさないでぇええ!!」なんて大声で言うもんだからさぁ大変。

直ぐに警邏隊がやってきて今日の当番だった関羽さんの目と耳に入り、それを嗅ぎ付けた真面目(脳筋)馬超さん、そして単純な華雄さん張飛ちゃんが加わった鬼の布陣。

そして男にしがみついて「売らないで捨てないで」と泣く主君の姿。もうこの先の未来なんて決まってるだろJK。

 

その日俺が蜀軍の名立たる武将と愉快な仲間達相手に大立ち回りを演じたのは言うまでも無い。

 

しかも何故かくっついて離れない呪いの装備と化した劉備ちゃんを抱えながら町中を逃走したので更に被害と誤解が倍プッシュ。

お酒と喧嘩大好きな厳顔さんと張遼さんが意気揚々と参戦し、何処から騒ぎを聞きつけたのか華蝶仮面まで現れて、てんやわんやのお祭り騒ぎ。

それらを劉備ちゃんを装備したまま何とかいなして逃げ切ったと思ってたら、目をキラキラさせた三国最強ちゃんが降臨(絶望)。

 

何故か俺を戦う事を『主人と遊ぶ』という子犬的な発想してる彼女が現れた瞬間「あっ、俺死んだわww」と半ばやけくそ気味に劉備ちゃんを盾にしながら突貫するもあえなく蜀の王もろとも吹き飛ばされた。

 

ブンブンと振る彼女の方天戟が『大好きな主人と遊べて嬉しそうに振ってる犬の尻尾』を幻想させたのは最初だけでした(遠い目)

 

 

 

ちなみに各将に自分が抱き着いてるのに遠慮なく攻撃された蜀王はしばらく誰も信じられなかったそうな(笑)おい徳王、信じろよ。仲間だろ?

 

 

 

そして何故俺にだけ心許して抱きつく?美髪公の嫉妬が怖いじゃないか。

 

 

 

 






遂に入蜀まで来た。もうすぐ終わりですww

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