短編ネタ 真・恋姫†無双 ~俺が、俺達が、運び屋だ!~   作:piguzam]

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タイトルと話は関係無い(断言)


商売繁盛を祈って魏の猫耳引き千切ったろかww

 

「しゅえぃやぁあああ!!」

 

「おっと!!」

 

バチィイイ!!とライトセーバー『同士』が弾き合う音を奏でて、俺と相対するお人は地面に着地。

しかしその状態から身軽に木の幹に向かってジャンプしてから壁蹴りの要領で三次元の動きを披露しつつ、ふたたび俺に肉薄してくる。

いやいや、ホントにどんだけなのさこの人ー。

現実的に在り得ない動きを見せながら接近する老人の振るう『緑のライトセーバー』に合わせて防御するも、体勢を整えもせずに連続で斬りかかってくる。

まるでバレリーナの様に回転しながら四方八方から繰り出される斬撃を、ソーレスの堅実な防御で合わせて相殺しつつ距離を取る。

 

「相手の攻撃を恐れて下がる様では、お主の言う”しえん”の型は会得できん……何時如何なる時でも、攻撃に惑わされて”ふぉーす”を乱してはならんぞ?」

 

「分ーかってますって。必ずモノにしますから、これからも指導お願いします。”マスター幼蛇(ヨーダ)”」

 

「ふむ……ならば、そろそろ一端休憩としようかの。わしゃお主の持ってきた食事が楽しみでな」

 

「ありゃりゃ。ならそうしますか」

 

俺の半分も無い小柄な身長を活かして下から狙い、またはジャンプして上からの奇襲を繰り返す幼蛇の攻撃を防御しながら、俺は目の前の老人の言葉に答える。

すると老人……幼蛇先生はライトセーバーを収めてその皺くちゃな顔でころころと笑いながら飯場に歩いて行ってしまった。

その様子を苦笑しながら見つつ、俺も後を追って今日の昼食の献立を考える。

 

 

はい。現在わたくしことオビ=ワンは、成都の奥深くの森の中で修行をしている訳だが……え?「誰だ?」って?あのじーさん?

 

 

 

いや、俺も良く分かんない(震え)

 

 

 

まず始めに断っておくけど、この人本物のマスターヨーダじゃないからね?

別に指三本じゃないから。

只、耳はヨーダ先生と同じ様に長くて肌も緑色なだけの皺くちゃの老人というだけです。

 

本人曰く肌が緑なのは森の恵みしか食べてこなかったからだとか。それベジタリアンとかいう種族のエイリアンなの?

 

でもこの人ってば俺と同じでフォースを使うし、ライトセーバーも持ってたからもしかしたら本物なのかもしれない(錯乱)

まぁ俺のみたいな金属製じゃなくて、木の筒だったけども。

最初の出会いは、この森に住む『仙人』の噂が本当なのか興味本位で見に来た時だったか。

森の中に強大なフォースの力を感じ取った俺は驚きながらもそのフォースの発生源を探る事にした。

そしたらあのちっちゃい爺さんと出会って意気投合し、今に至る。

 

最初名前を聞いた時に「儂は幼蛇。この森に住むしがない爺じゃ」とか言われて、頭がどうなったかと(ry

 

幼蛇。ヨーダ。分かる?俺分かんない(戦慄)

 

そして感謝の言葉は「さんきゅーべりー”はむにだ”」それ俺の台詞(大宇宙の意志)。

 

っというか結局この人どこの星の人なのハムニダ?

 

しかも本人はフォースの使い方を極めてるのに、フォースという呼び名を知らないときたもんだ。

なので同じ力を持つ俺がこの力をフォースと呼んでると言ったらそれを真似してる訳です。どんな導き合わせだよ。

そう言ったら「全ては”ふぉーす”の導きじゃ」とかドヤ顔で言われた。やかましいわ。

 

そしてこのヨーダもどきな爺さん、あろうことかマスターヨーダと同じフォームの『アタール』を使いこなしてやがる。

 

”アタール”。または”アタロ”は別名ホーク=バットの戦法とも呼ばれるライトセーバーのコンバットフォームだ。

全7種あるライトセーバーフォームの中で、最もアクロバットなアクションによる変則、奇襲性、体術を重視したフォーム。

オビ=ワン・ケノービの得意なソーレスの様に、攻撃を代償にしてまで防御に徹する戦闘法を好まない者の答えとして編み出された。

まさに「ヒットアンドアウェイ」という言葉が当てはまるフォームで、物理法則の限界を超越した全身の柔軟性、フォースによる走り・跳び・回転等を駆使し、全方位から相手に連続攻撃を行える。

この動きは相手との体格差を補うことができる他、相手への威嚇・牽制の効果も高い。

マスターヨーダは自分の小柄な体格を利用して懐に飛び込み、更にフォースの恩恵を得て身体能力を向上させる事で、800歳という高齢でもあの強さを維持している。

しかしアタールは心理戦が通じない相手とは相性が悪く、動作の大きさ故に隙も多いため、危険が伴うフォームでもある。

 

ヨーダの他にはシスのダース・シディアスやジェダイマスターのクワイ=ガン・ジンが使用者だ。

 

と、この様に使い手次第では途方も無い強さに化けるフォームを使う幼蛇の爺さんを俺はマスター、つまり先生と仰いで剣技の指導をしてもらってる。

マスター=師匠という言い方を気に入って(以下略。

まぁ戦える手段は多いに越した事は無いし、最近は修行も行き詰まり気味だったから丁度良かったのさ。

そしていまはアタールとソーレスを組み合わせて派生した、ライトセーバーと力による攻撃を重視したフォーム。

 

つまりシエン、またはドジェム・ソ。そして別名クレイト・ドラゴンの戦法と呼ばれる攻撃特化フォームの修行をしてたところだ。

 

主な使用者はあの悲劇のジェダイ、アナキン・スカイウォーカーで、劇中の戦い方からもパワフルさが見え隠れしている。

このフォームはブラスターの光弾を阻むライトセーバーの能力を活用し、光弾を敵に向かって偏向させることによって防御の動きを積極的な攻撃へと転じさせる事が可能だ。

最近、というか将来的に多数の弓矢で狙われるだろうという予知を見ちゃったから、防御を攻撃に転じられる戦法が欲しかった俺にはうってつけなんだよな。

 

 

 

まぁそんな感じで、俺は達人に師事しながら戦場に立つ訳でも無いのに着々と実力を伸ばしていくのだった。

 

 

 

え?マスター幼蛇の出番?これで終わり(笑)

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

唐突だが、俺の会社に於いて販売をしてる商品ってのはかなりの需要を得ている。

しかも本業である運び屋よりも需要が高かったり。ちょっと複雑。

まず食品関係だが、これは元々作る量が少ないので、何時も販売開始を他の商人に伝えればその商人が買い漁ってしまう。

なので俺は最初に蜀の商人に売り、次に商品をファルコン号に積んで大陸を回って各地の商人に売る、というスタンスを取っていた。

勿論、輸送の仕事があればその土地に行ってその土地で少しだけ売ったりもしている。

そして今回はGIJUTUチートで生産した新たな商品もファルコン号に積み込んで航海(航河?)していたのだが……。

 

「まさか街よりも先にこっちへ通されるとは思わなかったよい」

 

「あら?何か不満があるかしら?」

 

俺は商品の一覧(実物)を入れた箱を横に置きながら、玉座に座って微笑む曹操ちゃんと向かい合っていた。

 

 

 

うん、なんでこんな事に?何で商談相手が商人じゃなくて覇王様なのさー。

 

 

 

少し前の事だが、劉備ちゃん達の後を追っかけてきた袁紹の軍を、曹操ちゃんの軍は数に劣る戦況で見事撃退した。

それを機に河北一体を手に入れて、魏は中元の覇者となった訳で、俺は前に約束した通りに曹操ちゃんの領地に品物を輸出しに来たわけである。

しかし許昌の船着場へ入ったら魏の衛兵に囲まれて何事?とか思ったら「城へ来ていただきたい」とかお願いされたのです。

これが上から目線なら無視して帰ったけど、まぁ魏の真面目一徹な楽進ちゃんだったから無碍にも出来なかったのさ。

そして魏の発明王こと李典ちゃんは両手に道具を握り締めてファルコン号をキラキラした目で見てたので、俺は楽進ちゃんに条件を付けた。

船には俺達以外の人間は近づくなって。特にこの魔乳。

これは妥当なお願いだと判断してくれた楽進ちゃんの号令で、衛兵達は誰もファルコン号に近づかないでくれた。

まぁ李典ちゃんは絶望したって表情を浮かべてたけど、下手したら彼女がとんでもない船を作り兼ねないのでその牽制だ。

そんなこんなの末に、俺はおやっさんとデクさん(チビさんと空さんは成都で留守番)を街に行かせて、一人で覇王と対面していた。

 

「まぁそう緊張しないで頂戴。領主として貴方が扱ってる商品におかしな物が無いかの確認を、この目でさせて貰いたいだけなんだから」

 

「あー、そういう事でしたら納得です。じゃあ、まずは何から見ます?」

 

「そうね……まずはお酒を見せてもらおうかしら」

 

「へいへい。酒でしたら、今はこちらの三品が大人気ですね。『日ノ本酒』の松・竹・梅になります」

 

魏の武将が勢揃いしてる中で、俺は荷物を漁って酒瓶を三本取り出す。

前回の事があるからか、他の武将は突っかかってこないので楽だな。

俺が取り出した松竹梅の字が書かれた酒瓶を、曹操ちゃんはじっくりと検分する。

 

「松、竹、梅……これはどう違うの?」

 

「これは酒の喉越しとまろやかさに段階を付けてんですよ。梅が一番大人しくて、松が一番強いですね」

 

「なるほど。酒の強さという事ね……それにどの瓶からも他の酒とは比べ物にならないくらい、芳醇で強い香りが漂ってるわ」

 

「宜しかったら、試飲されますかい?」

 

「あら?良いの?商品なのではなくて?」

 

「これは試飲用でして、まぁお試しに小さい椀に一杯だけで飲んでもらう為のモンですよ」

 

こっちの提案に目を丸くする曹操ちゃんに笑顔で答えながら、どうするかを問う。

ならばと曹操ちゃんは皆の分も要求してきたので、碗は向こうに用意してもらう事に。

碗に入れるために柄杓で掬うと、濁りの一切無い透き通った清酒の透明度に全員が一度驚愕。

そして渡された碗から漂う米酒の香りにほぅ……、と溜息を吐いた。

 

「ふむ……他の酒に比べれば強いが、梅はとても喉越しが柔らかいな」

 

「まぁ、スルスルと飲めて酔いやすいという評判は頂いてますよ。ただ限度を超えると次の日がきついですが」

 

梅を試飲した夏侯淵さんの評価は概ね良さそうだ。

一気に飲むんじゃなくて、少しづつ飲んで味を楽しむという通な飲み方だな。

そして、次は竹だ。

 

「成る程。確かにこれは強いお酒ですが、味は他の安いお酒とは比べられませんね……とても美味しいです」

 

こっちは巨乳ほんわか系の曹純ちゃんが飲んで太鼓判を頂いた。

っつうか魏に巨乳成分が増えてた事に驚愕。

何か魏ってロリ属性が偏ってた様に思ったんだけどねぇ。

さて、問題の松だが、これは予め注意しといたから問題は無い筈……あれ?(フラグ)

 

「~~~~~~~~~ッ!!?」

 

「しゅ、春蘭様!?大丈夫ですか!?」

 

「だ、だから商人さんの言った通りにした方が良いですよって言ったのに!?」

 

「姉者ーーーーーーーーーーー!?」

 

ふと、そちらに視線を向けてみればアラ不思議。

夏侯惇さんが喉を抑えて涙目になりながら舌を出してビッタンビッタンと跳ねまくっていた。

 

まるで”はねるしか覚えてないギャラドス”みたいに……あっるえ?

 

未だ”ビッタンビッタン”してる夏侯惇さんの側に駆け寄る夏侯淵さん。

そんなふつくしい姉妹愛の様子を見ていたら、玉座の曹操ちゃんが深い溜息を吐いた。

 

「気にしなくて良いわ。春蘭は貴方の忠告を無視して継ぎ足した酒を一気に煽ったのよ」

 

「そりゃああなって当然ですって。あれだけチビチビ飲んで下さいって言ったのに……時に曹操様はどうでした、梅の味は?」

 

「えぇ。さすが各国で絶賛されてる有名なお酒ね。最初に飲んだ頃より更に洗練されてる。これは素直に称賛するわ……ただ、もう一味くらい欲しい所かしら……」

 

「それでしたら、こういう飲み方もありますよ?」

 

俺と曹操ちゃんは跳ねる夏侯惇さんを無視して話を進め、箱の中から一つの果物を取り出す。

これはつい最近、劉備ちゃん達が同盟した南蛮の人(猫?)の土地から交易で手に入れた果実で、見た目は緑色の玉だ。

交渉?ベーコンあげたら喜んで交換してくれました(笑)

 

「これは南蛮の地で採れる珍しい果実なんですが、俺は雷珠(ライム)と呼んでいます」

 

「雷珠?」

 

「えぇ。この果実は実も果汁も雷の如く駆け抜ける様な強い酸味と少しの苦味がありますんで、こう名付けました。これを半分に切って、少しづつ果汁を絞って酒に入れてみて下さい」

 

「そのままではなく、絞って入れるのね?流々。頼める?」

 

「あ、はい。では、預かっても良いですか?」

 

俺の説明で興味が沸いた様で、曹操ちゃんは魏のロリ親衛隊長の典韋ちゃんに頼んだ。

手を差し出してくる典韋ちゃんに「ほい」と手渡し、典韋ちゃんはそれを持って一度部屋から退出する。

暫くして典韋ちゃんが戻って来た時には、夏侯惇さんも跳ねるのを止めていた。

まぁ今日一日は喉が辛いだろうが自業自得。

典韋ちゃんは包丁と皿を取りに行ってたらしく、皿には半分にされたライムが乗っている。

俺が進めたのは日本酒をライムで割るという斬新なアイディアのサムライ・ロックというカクテルだ。

それを好みの文量で絞って味を調節してくださいとアドバイスを入れ、曹操ちゃんはその通りに行動して一口。

 

「……」

 

飲んだ体制からゆっくりと碗を口元から離す曹操ちゃんは……嬉しそうな笑顔を浮かべている。

それは覇王の様な堂々とした笑みでは無く、歳相応とも言える可愛らしい笑顔だ。

 

「……負けたわ。ふふっ……少しでも気に入らなければ首を刎ねるつもりだったけど、これは文句の付けようが無いもの」

 

「そんな輝かしい笑顔で何て物騒な事言うんスか」

 

思わず俺の”エクスカリ棒”が輝きを失っちゃったよ。危うく俺の”性剣伝説の幕が閉じちゃう所だったぜ”。

周りの皆は主の滅多に見れない笑顔に驚きであんぐりと口開けちゃってる。

俺は溜息を吐きながら自分の首が繋がった事に感謝するのだった。

そして商談はつつがなく進み、お菓子関係もかなり気に入って頂けたっぽい。

甘いお菓子や煎餅におかきなんかも大好評で、是非購入したいというお答えを頂けたしな。

まぁ、商人に卸すのでそっちで買って欲しいと言った時は不満気にされたけど、他の国でも城への直の卸しはしてないから我慢してくれと伝えた。

 

「城へ直で売るよりも各地の商人に売れば、色んな人が手に取れる。そうなるとウチの商品の需要は広い地域で跳ね上がりますから」

 

「ここで売ってくれるなら、私達が国を挙げて宣伝しても良いけど?」

 

「いやいや、それよりも実際に買ってもらった方が噂の真実味が増しますんで。有名人の宣伝も大事ですが、普段触れ合う事の少ない城の人達よりかは買った庶人の証言が一番でしょ?有名人に宣伝を頼むなら、特に庶人に親しみがあって影響力のある人なら尚良いんですがねぇ……黄巾の乱の前から民に絶大な人気を誇る歌姫達、とか?」

 

「ッ!?……貴方、何故それを……」

 

ちらっとこの国に居る筈の『数え役満姉妹』の話を出せば、曹操ちゃんの驚きはかなりのものであった。

他にも郭嘉ちゃんと程昱ちゃん、そして荀彧といった魏の三大軍師も大層驚いている。

まぁあの時期に出回ってた人相書きってもはや化物でしか無かったし、元々黄巾党の幹部クラスぐらいしか顔を知らないだろう。

それでもあの三人への入れ込み具合からして、他にバラす事はまず無かっただろうがな。

 

「ご安心を。今更こんな事世間にバラして面倒事を作るつもりは御座いませんから」

 

「そう……貴方、やっぱり私に仕える気は無いかしら?」

 

「お断りですって。俺は自由に国を巡りたいからこの商売やってんですよい」

 

と、俺なりの戦略を少しだけ話すと、やっぱり城へ仕えろって話を持ち出すがお断り。

食料品の話ではパンの話は余り食いつかれなかったが、サンドイッチ等のバリエーションを話すと少しばかり興味を持ってもらえたみたいだ。

そしてここで覇王様の無茶振りが発動。

今、この場で厨房を貸すから何か作ってみなさい、と来たもんだ。

 

「食事代として、使った食材とその味次第で上乗せ分を払ってあげるわ。どう?自信が無い?」

 

とまで言われちゃあ引き下がる訳にも行かず、俺はベーコンと茹でたキャベツを味付けして挟み、外側をトーストしたサンドイッチを拵えた。

そのサンドイッチは武将達に好評で、それプラスでもう一品は蜂蜜を使ったフレンチトーストを焼き上げたのだが、これが大ブレイク。

魏の料理マスターである典韋ちゃんは大絶賛し、曹操ちゃんからも再びあの笑顔を引き出す事に成功。

その魅力的な笑顔を引き出したのが男の俺という事で男嫌いの荀彧、そして曹操ちゃんの従妹である曹洪ちゃんの殺気が俺に突き刺さった。

どうやら新キャラの曹洪ちゃんも男嫌いのご様子。折角増えた魏の巨乳成分だってのに。

 

更に加工肉であるベーコンとかサラミも気に入っていただけたが、これは本当に数量が少ないのが難点だったり。

次は商品ではなく、最近俺が個人で愛用している薬用煙管の話へと入った。

とある名医からお墨付きを貰った薬草を調合してもらった品で、吸うと気分が落ち着き、頭痛なんかの慢性的な持病も緩和してくれる。

勿論とある名医とは恋姫で一番熱い漢、ゴッドヴェイドーでお馴染み華陀の事である。

そして慢性的な頭痛持ちの曹操ちゃんはこの話に思いっ切り食い付き、是非その商品を試したいと言ってきた。

 

「これはさすがに俺の煙管って訳にはいかないんで、今回はこの場で俺から煙管を一本贈らせていただきますわ」

 

「あら?随分と気前が良いじゃない」

 

「まぁ、正直この薬を市に出回らせると、調合してくれた医師に申し訳ないんで……出来ればこの場のみの話にしていただければなーと思いまして」

 

「えぇ。それは勿論約束するわ」

 

「感謝します。では、煙管の方なんですが……どれにします?」

 

確約を頂いたので、俺は売り物にする為に煙管を入れたショーケースの木箱を開いて、曹操ちゃんの前に広げる。

両開きの扉を開けば、藍色のモコモコの中に収めた六本の煙管が顔を出す。

楽しみで仕方無い、といった表情の曹操ちゃんは箱の中身を見て……絶句してしまった。

まぁそれは仕方無いだろう。何せこの煙管、友禅和紙を羅宇と呼ばれる煙管の真ん中に貼り付けた代物だ。

管の部分は輝くクローム銀仕上げという、この時代で作ればお高いなんて話じゃ済まない。

事実、曹操ちゃん以外にこの価値が分かる人達も絶句していた。

 

「ん~。魏の色っていえば青だし……この華を金箔で表現したのなんて如何ですか?背景の青柄と相まって見事でしょう?」

 

「……あ、貴方正気?こんな見事な銀細工の煙管をタダで寄越すなんて……」

 

「ヒデェっすね?これでも、劉備様の代わりに袁紹の軍を押し付けたのを気に病んでんですよ?」

 

「それは麗羽の”不毛になった大地”を見て充分に笑わせてもらったわ。秋蘭なんて”呼吸できなくなるくらい笑ってたし”」

 

「個人的にはそんだけ爆笑する夏侯淵さんの姿にも興味あるんですが……まぁ良いか。とりあえず、これは俺からのせめてもの感謝の印ってヤツで……これを貸しと言うつもりは毛頭ありません。どうぞ、お納め下さいや」

 

兎に角これで貸し借り無しという形で、俺は曹操ちゃんに煙管を送り、問題の薬草を吸ってもらった。

吸った感想はとても気分が落ち着いて楽になったとの事なので、華陀から渡されていた紹介状を渡して曹操ちゃん本人に取引してもらう事に。

 

 

 

とまぁそんな感じで、運び屋以外の商売も順調に業績を伸ばし、俺は笑いが止まらなかった。

 

 

 

そして曹操ちゃんが”消臭剤”や”香水”の類に目を血走らせながら聞き入る様子に心の涙が止まらなかった。

 

 

 

さすがに可哀想だったのでその場で売ってあげたら涙流して感謝され、俺にも一寸の罪悪感が芽生えかけたのであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

――それから約一ヶ月程の月日が流れた。

 

 

 

ここ最近は平和に月日が流れていた漢の大陸なのだが、再び世の情勢は急展開を迎える。

文台さん達が遂に袁術を下して国号を呉と示し、歴史の表舞台に立ち上がったのだ。

まぁ不思議な事じゃないんだけど……文台さんの気質じゃ、直ぐにどっかに喧嘩売るんじゃ無いのだろうか?

 

そんな事になったらまたお得意様に変動が起きそうで怖いこの頃、俺は何をしてるかと言えば……。

 

「あん……悪戯しちゃ、駄目です……」

 

「んー?陛下はこういうのは嫌いですか?」

 

「嫌いじゃありません。とても嬉しくて、愛おしく感じますが……ん。くすぐったいです」

 

「陛下のうなじが綺麗過ぎて口付けが止まらないのはどう考えても陛下が悪い」

 

「あっ、あっ……もう……めっ、ですよ……それに、陛下だなんて他人行儀も嫌です……桜華と……真名で呼んで」

 

「んもー。可愛すぎるぜ桜華ちゃーん♪」

 

陛下と布団の中でイチャコラしてました(笑)勿論邪魔な装備はぽぽぽぽーんしてます(キリッ)

 

え?お前斬首は嫌とか言ってたのはどうしたって?

そりゃあれですよ、夜中に部屋に現れて目の前で服を脱いだ陛下に「朕を……オビ=ワンの物にして下さい」なんて傾国の美女に潤んだ目で言われたら拒否ありえないっしょ?

いやーしかし、最近は陛下の目もあって媚館に行けなかった所為で久しぶりにハッスルしたなぁ。陛下ってば豊満に育ってるし(どこがとは言わない)

その所為で陛下ってばさっきまで凄い事乱れてたんだよなぁ。凄い声で悦びを露わにして、落ち着くまで汗だくでハァハァ言ってたし。

そんな事を考えてると、仰向けに寝転がる俺に絡みつく様にして、陛下が俺の首に腕を回す。

 

「もう……媚館にはいかないで下さいね?……これからは、朕が……桜華が、貴方の昂ぶりを鎮めてあげますから」

 

「あ、あー……………………はい」

 

「……」

 

凄く、すご~く長い沈黙が葛藤と気付かれてほっぺを膨らませた陛下……じゃなくて桜華ちゃんから睨まれてしまう。

ちなみに劉備ちゃんにしたのと同じ様に指でほっぺ刺そうとしたらパクっと食われ、チュルチュルとしゃぶられてしまった。やだ、可愛い。

まぁ媚館には行けなくなったけど……武将なら大丈夫だよね?(錯乱)

 

 

 

そんな風に軽く考えてた俺が蜀王とほにゃららしちゃって大陸を巻き込んだ大事件が発生するのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

暫く平和な日常が続いていた俺達『尾美水船運送会社』の面々だが、ある日突然城から呼び出しを食らって足を運ぶ事に。

通された玉座の間では、蜀の名立たる武将と、詠ちゃんや月ちゃんといった侍女組も集まっている。

一体何事かと思って説明を求めると、またもや蜀の二大軍師からお話が。

実は近々成都でお祭りが開催されるのだが、うちの会社も出店して欲しいとの事であった。

いや、商会の寄り合いでその日は運びの仕事が入ってるから断った筈なんだけど?

 

「本業が大事という事は存じてますけど、他の商会や豪族の方から苦情が届いてるんでしゅ……ですぅ」

 

「お、尾美水船の商品が出店してくれないと、美味しいお菓子やお酒が祭りで楽しめないって……」

 

「えー?けどその日の仕事は大手商家からの依頼だから、今更断ると違約金払わなきゃいけねーし会社の評判も落ちるんだけど?」

 

「そ、それは重々承知してましゅ……ま、ます。ですからその違約金の方はこちらで肩代わりいたしますので、どうか……私達も楽しみにしてる人達が居ますので……」

 

「お願いしましゅ」と噛み噛みで頭を下げる二大軍師の姿に、俺は溜息を吐いて考える。

まぁ最悪商家の方は違約金と付け届けで何とか穏便に済ませられると思うけど、そうなると出店がなぁ。

正直何にも考えて無かったから、今からじゃ商品なんて間に合うかどうか分かんねーし。

 

「んー……つっても出店の案がなぁ……全ッ然考えてなかったし、今直ぐにって言われてもよぉ……」

 

「し、商品の――」

 

「こっちで作るから生産方法教えろ。なんて言ったら豪族商人連中に働きかけて蜀からやおい本殲滅してしまうかも(笑)」

 

「「何でもありません」」

 

国の文官職の最高峰がこぞって頭下げちゃったよww国の経営よりやおい本、それで良いのか蜀よ?

なーんてコントしてたら、横から恋ちゃんのつぶらなお目目でおねだり攻撃が。

 

「……オビ=ワン……お店、出して……くれないの?」

 

「止ーめーてー。そんな穢れを知らない無垢な瞳で俺を見ーなーいーでー」

 

「……お願い」

 

「こふっ。さ、さすがは恋ちゃん……その純粋さ、劉備ちゃんに見習わせたいぐらいだぜ」

 

「ねぇオビ=ワンさん。今のどういう意味かな?それと何で恋ちゃんだけは真名で呼んでるの?あぁ後焔耶ちゃんもだね。酷いなぁ。月ちゃんと詠ちゃんは仕方ないけど、差別だよこれは?」

 

「と、桃香様!?お気をお鎮め下さい!?」

 

「と、桃香お姉ちゃんが怖いのだ!?」

 

おや?りゅうびちゃんのようすが……でっででーん!!りゅうびちゃんは”仁君から覇王”にしんかした!!センターに預けて放置で。

俺の一言に笑顔で黒いオーラを滲ませる劉備ちゃんの迫力には桃園の誓いを交わした二人の義妹すらも怯えてらっしゃる。

そんな事よりも、ウルウルと目を潤ませながらチョコンと袖を掴む恋ちゃんの攻撃。クッ!?さ、三國無双の一端を見たぜ……やるじゃない。

まぁ、店を出すのも嫌いじゃねぇけど……久しぶりにのんびりとした航河がしたかったんだよなぁ。

屋台なんて出したらそれこそ戦争状態だし…………お?

 

「おー?……なーはわわちゃん。ちょっと紙と筆、貸してくんない?」

 

「ふぇ?は、はい……って、私の名前は”はわわ”じゃありましぇーん!!」

 

頭のなかでパッと彗星の如く過ったアイディアを形にする為に、戸惑うはわわちゃんから筆と紙を受け取ってサラサラと書き込んでいく。

そのまま喚く覇和和軍師(ちょっとかっこよさげ)と黒劉備ちゃんをスルーしつつ、俺は一つずつ計画を煮詰める。

 

えーっと、材料はウチの店からと、後はここからで……経費も考えればそこまで派手にしなくても客は寄ってきそうだな。

 

売上げにしても、まぁもう少し粘れば何とかなるか。

俺は自分のアイディアを纏めた紙をはわわ、あわわ軍師に手渡し、出店では無くこれをやろうと思うと伝えた。

すると、紙の内容に目を通した軍師達は目をキラキラさせて大絶賛。

更に他の武将達に説明しても色良い返事を頂けた。ついでに劉備ちゃんも元に戻って良かったです。

「これで豪族と商人達に顔が立つ」と喜ぶロリっ子軍師達に向けて、俺はニコッと微笑みながら手を差し出す。

それを見て嬉しそうな表情で俺の手を握り返そうとした二人だが……俺の『手の向き』を見て困惑した。

 

 

 

そりゃそうだろう。何故なら俺の手は『手の平が上を向いてる』のだから。

 

 

 

更にもう片方の空いた手でパチパチパチと算盤を弾き、二人に見せつける。

 

 

 

「じゃ、商家への違約金と謝罪の為の手付金。それから俺達を祭りに出させる『依頼料』と必要経費ね。ちゃーんと払って貰おうじゃない」

 

「は、え?え、え、っとぉ…………はうぁ!?こここ、こんなに!?」

 

「あわわ……ッ!?こんな金額、お馬しゃんがいっぴゃい買えちゃいましゅよぅ……ッ!!」

 

「あわわ。龐統ちゃんいっぱい噛んじゃってましゅ(笑)」

 

「あわわ……ッ!?」

 

俺の啓示した金額を見て、軍師二人は目をひん剥いてブッタマゲてしまう。

その様子を見てタダ事じゃないと思ったのか、喜んでいた劉備ちゃんが俺の背後から覗きこんできた。

 

「んーと……うえぇえええ!?わ、私のお小遣い一年分ーーーーー!?」

 

「いぃ!?そ、そんなに取るんか!?なんやそのぼったくり!?」

 

「お~?張遼さん、ぼったくりたぁ失礼な。言っとくけど、これは殆どが商家への違約金と謝罪の手付金で占められてるよい。久々の大仕事だったから、違約金も半端じゃないよい?」

 

「た、高い!!これはさすがに高いよオビ=ワンさ~~ん!!もうちょっとまけて~~~!?」

 

さすがにこれは予想してなかったのか、劉備ちゃんも目をひん剥いて絶叫してしまう。っというか君主が小遣い制って(笑)

具体的な金額を聞いた張遼さんや厳顔さんなんて顔色真っ青だ。

そんな目の回る金額を啓示された軍師二人は早々に計算して「どうしようどうしよう!?」と慌てふためいている。

更にここで女の子だけの特権である泣き落としからのお願いをしてきた劉備ちゃんに、俺は微笑みを向けて一言。

 

「ビタ一文まけねえ♪」

 

無慈悲なる宣言に合わせて飛び交う悲鳴×三人分。

あぁ、ゾクゾクしてくるねぇ(ゲス顔)

かくして搾り取れるだけ搾り取った俺は、意気揚々と城を後にしておやっさん達と準備を行うのであった。

 

 

 

そして祭りの当日。

 

 

 

何時もより一層賑わう成都の町。

俺達はその喧騒の中心……から離れて、成都の中を通る水路をゆったりとファルコン号で航河している。

しかしその船上甲板は何時もと様子を変え、食事に勤しむ人達の姿があった。

客室は勿論、甲板の上に至っても全ての場所が賑わっている。

そんな船上の様子を見て頬を緩めながら、楽師の奏でる二胡の音に耳を傾けて、俺はファルコン号を揺らさない様に安全運転していた。

夏に近い季節という事もあって晴天に恵まれた甲板の上で、少女達の働く声が木霊する。

 

「六番のエビチリと”はんばぁぐ”!!日ノ本酒・梅の水割り、お待たせしましたー!!」

 

「へぅ……十番さんの青椒肉絲と”しちゅう”、それから”唐辛子ぱすた”お持ちしました……あっ、はい。果実水のお代わりですね?少々お待ちください」

 

「はい。では御注文を繰り返させていただきます。”べぇこんさんど”が二つと”紅茶”を三つ。それから”揚げ細芋”の大皿が一つ。以上でよろしいですか?」

 

船上甲板に備え付けられたテーブル席に注文の品を運んだり注文を受け付ける詠ちゃん、月ちゃん、そして陛下こと空さん。

その他にも十人ちょっとの俺が頼んで連れてきた城の美人侍女の方々が、鼻の下をだらしなく伸ばしたおっさんや百合趣味な女性達相手に頑張っている。

俺はその喧騒に耳を傾けながらも道順を思い出して、パイプ電話に向かって口を開く。

 

「えー、御乗船中のお客様に船長から申し上げます。当船ミレニアムファルコンは~、まもなく~十八番街、十八番街の船着場へと到着いたします。お降りのお客様がいらっしゃれば、お手元の鈴を鳴らし頂くか、船員にお申し付け下さい」

 

予め決めていたアナウンスを言うと、船上甲板の三席から鈴が鳴り響き、乗降口であるタラップ前のレジに並んだ。

ここで三席空いたか。さっきから乗りたいって人が殺到してて大変だぜ。

 

『船長。船室から二席空きますんで、こちらもお通しして大丈夫ですぜ』

 

「了解だおやっさん。食材の在庫は大丈夫かー?」

 

『えーっと、そっちなんですがちょっと肉の在庫が心許ねぇかもしれやせん』

 

「あらら。確か肉の補給地点は……二十二番街か。じゃあそこに着いたら一回補給で止まろう。次の船着場で早馬出してもらうから大丈夫だと思うけど、それまでに切れたら販売を一度中止で」

 

『了解しました』

 

と、話を終えてパイプ電話の蓋を閉じた時に、疲れた様子の詠ちゃんと微笑む月ちゃん、空さんがコックピットの空いた椅子に座る。

レジの方は別の子が入っていて、どうやら清算も終わったらしい。

今は妖艶に微笑む女の子とデレデレした顔で話してるお客達。

さすが城務めなだけあってあしらい方が上手いもんだ。

 

「あー疲れた……なんで稀代の名軍師である僕がこんな事……」

 

「ふふっ。でも詠ちゃん、働いてる時、すっごく楽しそうだったよ?」

 

「そ、そんな事ないってば月」

 

「そうですか?私の目から見ても、詠は生き生きしていた様に思えましたが」

 

「へ、へいっじゃなくて、お空さんまでそんな……」

 

三人は椅子に座りながら置いてあったお茶を軽く飲む。

いやー、しかしメイド服ってのは本当に目の保養になるもんだぜ。眼福眼福。

 

「むっ。こらアンタ、何月をふしだらな目で見てんのよ」

 

「へぅ……」

 

「いやいや、月ちゃんもなんだけどね?皆して美味そうだなーと」

 

「お、美味しそう……ッ!?」

 

「ど直球に変態発言すんな!!」

 

「ところで詠ちゃん。今晩俺と”夜の武道会”なんてどう?俺の”絶技”、披露しちゃうけど?」

 

「ぶほっ!?ふ、ふふふ、ふざけんじゃないわよ!?ぜ、絶対に嫌!!」

 

と、俺の目付きから何かを敏感に察知した詠ちゃんに咎められてしまった。

その隣で陛下はニコニコしながらお茶を飲んでるけど、詠ちゃんより陛下が怖いのは気の所為だろうか?

口説いても、良いじゃない。可愛いんだもの。(字余り)

お客さんの目があるから何時もより小さめの声量で一頻り怒りを吐き出した詠ちゃんは俺の椅子をゲシゲシと蹴って収まらない怒りを発散していた。

やれやれ、その真っ赤に染まったお顔がぷりちぃ過ぎて何も言えねぇや(悟り)

やがて蹴り疲れたのか、顔に疲労を露わにした彼女は一息吐きながらジト目で俺と目を合わせる。

 

「ったく……大体、何で僕達がアンタの提案した『お店』を手伝わなきゃいけないのよ?」

 

「そりゃー月ちゃんが頷いてくれたからだけど?それで詠ちゃんだけ置いてったら詠ちゃんブッチンしちゃうだろーなと思って、連帯でお借りしますたww」

 

「くっ、確かに月だけに働かせるなんて我慢ならないからそうしたけど……月が優しいからこういう事を断れ無いの知っててやったでしょ?よりによって僕が居ない時に」

 

「それはほら、良く言うっしょ?鬼の居ぬ間の何とやらって」

 

「うっさい。誰が鬼なのよ、この変態」

 

失敬な。俺は変態という名の紳士だから。あれ?結局変わってない?

舵をゆっくりと切りながら怒れる詠ちゃんと会話しつつ、目的地まで後どれぐらいかを舵輪の前に置いたスマホのマップで確認。

今日はこうやって一日中のんびりと船を運転している訳だが、そろそろ俺がどんな『店』を出店したか話しておこう。

 

 

 

ここまでの会話で気付いてる人も居るだろうが、俺は今回の祭りに『船で遊覧しながら食事を楽しめる店』というコンセプトを実現したのである。

 

 

 

成都の街中や山、そして黄河に続く自然の中を船で遊覧しつつ、他では味わえない料理や酒を楽しめる船。

その為にファルコン号に幾らか追加で手を入れて『屋形船』っぽく仕上げたのだ。

ファルコン号中央の一階ラウンジと先端クチバシ、そして後方デッキ部分に椅子とテーブル、木で作ったパラソルっぽい物を備えたテーブルテラス席。

そして客室の中と後部テラスにも椅子とテーブルを備え付けて、人が寛げるスペースを大体的に確保。

普段の輸送船仕様からコンセプトを変えて人が寛げる事を中心に考えて仕上げたファルコン号は大人気で、街中を通れば手を振る人達も結構居る程だ。

更に乗りたいと申し出る人は後を絶たず、何処の船着場に行っても長蛇の列が出来ていた。

ゆったりのんびりと航河しつつ、おしゃかになってしまった輸送の金を取り戻せるという、趣味と実益を兼ねた仕事。

 

いやー、俺ってば天才じゃね?あ、違う?

 

更に料理は俺の会社のみで生産している食材やシルクロードを経由してきた調味料。

そしてGIJUTUチートで取り寄せた種から大量生産したジャガイモやトマトなんかの、この大陸では手に入らない食材。

極めつけに南蛮からも仕入れた珍しい果実なんかを使った料理で、ここまで何人もの美食家を唸らせてきた。

ちなみに牛乳やコンソメにブイヨン。果てはケチャップなんかはスマホで仕入れてます。ビバ、チート(笑)。

更に冷蔵庫で冷やされた飲み物や甘菓子(タルトやケーキにプリン)はこの世界で言えば最高の贅沢。氷がカランと音を立てるのが涼しさを演出して尚良いとか。

 

それを庶民の財布に優しい値段で提供してるから、乗船予約が後を絶たない。俺の笑いも絶たない。うっしゃっしゃ。

 

現在厨房に入ってるのは俺とデクさんが今日まで料理のいろはを教えこんだおやっさんとチビさん、そして監督役のデクさん達の三人で回してる。

偶におやっさんと俺が操縦と料理番を入れ替わったりしているが、基本は俺達で動かしていた。

 

更に蜀の軍師達から巻き上げ、失礼。頂いた必要経費で城の侍女達を何人か一日だけ雇い、注文を受ける娘の見た目もばっちり。

更に空さんや詠ちゃん、月ちゃんといった一線を超えた美女、美少女も用意した俺に死角は無え。

詠ちゃんと月ちゃんの説得は勿論俺を、っていうか月ちゃんに近づく男にはきつい態度の詠ちゃんが居ない時を狙ってやりましたが何か?

 

「まっ。その代わりお給金は弾むし賄いも美味しいっしょ?帰りはお土産もあげるから期待してちょーだいな」

 

「はい……ありがとうございます、尾美さん」

 

「ふんだ……まぁ、引き受けたからにはちゃんとするわよ」

 

「そいつは良かった。とりあえずそろそろ十八番街に着くから、月ちゃんはまたお客さんの案内と、詠ちゃんは二十二番街に肉の補給をしたいって早馬よろしく。空さんも後少ししたら休憩で良いから」

 

「はい。頑張ります」

 

「二十二番街ね?分かったわ」

 

「えぇ。では、そうさせて頂きます」

 

俺の指示を聞いて頷く詠ちゃん達と、微笑む空さん。

しかしこうして見ると、空さん……いや、桜華ちゃんも大分変わったよなー。

最初の頃はかなり危なっかしかったけど、今じゃ自分で何でもするし、美人だって事と皇帝オーラが無い時は庶人とほぼ変わらない。

それが良い事かは分からないけど、まぁ城に篭って何にも知らないまま歳を取るなんて勿体無いじゃん?

少なくとも初めて会った時に比べて笑顔が増えてるのは良い事なんでしょう、うん。

勝手に事故完結しながらウンウンと首を振ってると、詠ちゃんが何やら呆れた様な目付きをしてるじゃないか。

 

「……あんた、度胸あるっていうか、馬鹿っていうか……普通は陛下を働かせようなんて考えないわよ、恐れ多くて」

 

「そうかい?」

 

「そうよ。それが普通。アンタはかなりおかしいの」

 

真正面切って異常認定されるってキツイよい。

まぁ俺はこの大陸の人間じゃねーし?特に考えた事は無いな。

 

「まったく……ねぇ、今更だけど”ふぁるこん号”に護衛、っていうか用心棒は乗せなくて良いの?今の所は何も起きてないけど、祭りの熱で浮かれて馬鹿やる奴だって居ないわけじゃないのよ?それにアンタの腕が立つのは分かってるけど、操舵してたら戦えないでしょ?」

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

「……何でそう言い切れるのよ?」

 

「ふっ。あれを見るが良い」

 

「??……あ(察し)」

 

俺は詠ちゃんの疑問に答えながら、先ほど汽笛を鳴らして停船した十八番街の船着場をニヒルな笑みで指さす。

最初は俺の行動に首を傾げていた詠ちゃんだが、俺の指が差した方向を見て……口元をヒクつかせる。

まぁそれもしょうがないよねぇ。

なんてったって――。

 

 

 

「……♪(ブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオンッ!!)」

 

「ここからは”一番良い装備”が営業終了までファルコン号に装備されるから(笑)」

 

 

 

方天戟片手でブン回しながら目をキラキラと輝かせる”当世最強の武将”が居るんだもん(笑)。

寧ろ誰がこの船に手を出せると?

しかも可愛らしくちょこっとだけ微笑みながら手首の回転だけで方天戟を豪快に回してらっしゃるとか……無理ゲーキタコレww

さっきから風切り音と旋風で侍女のスカートがめくれそうでめくれないチラリズムの嵐。

そして可愛く悲鳴をあげながらスカートを抑えて恥じらう乙女達の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)。良いぞもっとやげふんげふん。出力低いよ何やってんの。

まだ停船中なので、出航する前に俺はコックピットから出て恋ちゃんに声を掛ける。

 

「やっほー恋ちゃん。今日はよろしくお願いよん?ちなみに聞くけど、今日のお仕事は覚えてる?」

 

「(コクコク)……悪い人が居たら……河に……投げる?」

 

『『『『『(落とすんじゃないんだ!?)』』』』』

 

「そーそー。でも只河に投げるんじゃなくて、ちゃーんと食べた分と迷惑料込みで財布を取り上げてから、な?」

 

『『『『『(訂正するとこそこ!?)』』』』』

 

「ん……財布、取ってから投げる……頑張る」

 

「よーしそうそう。頑張って頼むよい」

 

「(コクコク)……オビ=ワンの手……気持ち良い♪」

 

「へへっ。そうかそうか。悪い奴を遠くへ投げ飛ばせたらもっといっぱい撫で撫でしてあげるぜー?」

 

「ッ!?……思いっ切り……投げる……ッ!!(ドドドドドド……ッ!!!)」

 

『『『『『飛将軍が燃えてるーーーーー!?』』』』』

 

「…………外道……」

 

コクコクと頷く恋ちゃんの頭を撫でてあげてたら、背後から戦慄した様な詠ちゃんの声が。

失礼な。これも全てはファルコン号の上でお客さんに安心して料理を楽しんでもらう為だっての。

いやーしかし撫でると小動物みたいに目を細めて嬉しそうにする恋ちゃんてば可愛い過ぎてドキがムネムネしちゃう♪

ちなみに陳宮ちゃんは今日は城で待機らしい。可哀想に。

 

そしてこんな殺る気MAXな飛将軍に投げられたら無事この大陸に着地出来るのだろうか?まさかのガガーリン誕生?

 

「……悪い人が……居なかったら?」

 

「おう。約束通りに待ってる間はそこで好きなご飯を頼んで良いさー。後はセキト達のお土産に餌とお菓子だったっけ?ちゃんと用意してあるから、お仕事よろしく頼むよ?」

 

「ッ!?(コクコクコクコク!!)……♪♪」

 

仕事内容を聞いて了承した恋ちゃんは月ちゃんに連れられて『只今用心棒中。飛将軍』と書かれた掛札の横の席に座って早速注文していた。

あの札見てもこの船で粗相しようって奴が居たら俺の前に連れて来い。その勇気に一杯奢るから。

そう。俺が計画していたこのファルコン号による遊覧船プロジェクトだが、その用心棒は城の武将達から選んだ。

最初はこれに難色を示した武官達だけども……。

 

『船の護衛をしてくれてる間は飲み食い自由。勿論タダですよ?』

 

と言えば私が、いや私が、いやいやウチが、といった具合にあれよあれよと皆が手を上げ始める始末。

終いには「実力で決めよう」という事になっちゃって、あっという間に大乱闘スマッシュガールズDXが幕を開けた。

 

 

 

そして初っ端から覚醒モード状態な恋ちゃんの真・覚醒無双乱舞にてあっという間に全員お空にリングアウト。残機ゼロ、確認。

 

 

 

かくして天下に名高い飛将軍が俺の船の警護をする事に決定し、船の食料が足りるのか不安になったのは記憶に新しい。

まぁしかし、良く味わって食べてくれるという約束の本に乗ってるので大丈夫……だと、信じたい。

詠ちゃんが知らなかったのは、文官連中には声を掛けてなかったからだろう。

 

その後は恋ちゃんの食欲以外は特に問題無く、営業を終了。

 

そして夜はその日の慰安会も兼ねて、蜀の武将知将そして王を乗せて、身内だけのクルージングと洒落こんだ訳である。

昼は料理しっぱなしだったおやっさん達はファルコン号の操縦をしながら酒を片手にコックピットを占領して囁かなお疲れ様会。

そして俺は招待した恋姫達を一階ラウンジに集めて、そこで料理を振舞っていた。

ちなみに砲台や下の船倉、果てはファルコン号の秘密を聞き出そうとしていたロリっ子達は酒で酔わせておいた。

この船の秘密が知られちゃったら、軍事バランス崩れて大変な事になりそうだし。

皆して美味しい美味しいと料理と酒に舌鼓を打つ中で料理が一段落した俺は、ヴァイオリンを片手に演奏していた。

ふっふっふ。こう見えて俺、生前はヴァイオリンとギターは趣味で一通りやってたのさ。

弾いてる曲はあの陽気で楽しい歌、『ビンクスの酒』である。

いや~あの曲は本当に名曲だと思うぜ。

 

そして「ヨホホホ~ヨ~ホホ~ホ~♪」という歌に合わせて璃々ちゃんも可愛らしく「よほほほ~よ~ほほ~ほ~♪」。将来が楽しみな子である。

 

皆も何時の間にか聞き入ってたらしく、演奏を終えた俺に割れんばかりの拍手をくれた。

俺はその拍手に対して恭しく一礼して演奏を終わらせる。

そしてこうまで前振りしたならせねばなるまい、と俺は満更でも無さそうな詠ちゃんと真剣な表情で向かい合い――。

 

「……すみません。”ぱんつ見せてもらっても、よろしいですか?”」

 

「  見  せ  る  か  ぁ  ッ  !  !  !  」

 

バキョオォッ!!!

 

ヨホホ!!おやおや!!テキビシー!!という台詞と共に頭に浮かぶタンコブ。こりゃご褒美にはならないねぇ。

と、瞬間でシャイニングウィザードで沈められた、いやシメられたの方が正しいだろう。

まぁその後は顔を真っ赤にして怒る詠ちゃんとほっぺをパンパンにした劉備ちゃんの二人に追っかけ回されて、お疲れ様会は幕を閉じたのである。

帰ったら空さんにものっすごい笑顔で見つめられた。ラブ臭が無い笑顔とかトラウマもんだね。

 

余談なんだが璃々ちゃんの面倒見てたらまさかの「おとーしゃん♡」発言頂きました。

思わず「パパ何でも買ってあげちゃう」と言った自分が居た。

 

な、何を言ってるんだが分かんねぇだろーが(ry

 

そしてそれを咎める事も止める事もせず妖艶に微笑む璃々ちゃんのお母様”達”。

母親が複数とか俺の耳がおかしくなったんだろうか?

最近俺を見つめる獣の様なねっとりした視線も増えてるし……いよいよ捕食対象になっちゃった?

 

 

 

だ、大丈夫。まだ”ジェットストリームアタック”じゃないから。未完成だから(震え)

 

 

 

ちなみにその祭りの日以降、城で「びんくす~のさ~けを~と~どけ~にい~くよ♪」と歌う璃々ちゃんの姿に身悶える兵士や侍女が続出したとかなんとか。紳士淑女たるもの見守るに留めろよ?

 

 

 

そしてその兵士達の尻に矢が刺さるという事件が続出したとかなんとか。知ラネ。

 

 





日常話を挟んで話数稼ぎ。


萌将伝までは……いかないかもww

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